087 せまるきょうい
少し冷静になってみるとかなり恥ずかしい……。
人前で泣いたのは何年ぶりだろうか。
し、しかもあんな声を出して子どもみたいに……は、恥ずかしいわ……。
《サクヤちゃんにもあんなかわいい一面があるんですね。ふふふふ。》
や、やめてよ!
からかわないで!
ていうか、みんなの視線が……痛い。
「サクヤ氏のあんな泣き顔を初めて見たやつがここに約1名」
「マイカ~マイカ~」
「やめろよ、ミサキ! 思い出すだろが……クククッ」
「まぁミサキの方もなかなかいい感じに大泣きしていたけどな?」
「だって~あれはアズサちゃんがさぁ~?」
「わ、悪かったって! ずっと謝ってんじゃねぇかよ……」
「それよりも、なんでサクヤだけ前世と一緒の姿なんや?」
「あ、やっとそれにツッコミ入れたな。誰もなんも言わねぇから触れちゃいけねぇのかと思ったぞ」
「みんなも知らなかったの~?」
「だっていつもフード被って顔見せてくれねぇし」
「パンツ晒しても、顔だけは晒してくれへんかったもんなぁ」
なにやら私の話で盛り上がっているところ悪いけど、あれから抱き着いて一切離れなくなってしまったこの子をどうにかしてもらえないだろうか?
今学園の寮の部屋に戻っているんだけど、ずっとマイカに抱き付かれていてそろそろ暑苦しい。
それにずっと妹っ子がもの凄い剣幕で拳銃を突き付けているからね?
一応言っておくと、それ結構トラウマだからやめてね?
それにしてもあの時のマイカに起こった現象ってなに?
《あれは……神機の力と思われます》
カミオリ?!
私のカミナリの力っていうものとなんか名前が似ている気がするけど……なんか関係があるの?
《神機……それはこの世界の神の名です》
あのクズ神の名前?!
あのクズ神とマイカはなにか関係があるということなの?
《おそらくは……ただ正直私も今のところはなにもわからないのです》
ちょっと待ってよ……それが本当ならスマコ、あなたも。
《これ以上隠しても仕方がありませんね……私は神成ウラシス。あなたが呼ぶクズ神と向こう側の神、それともう2人いる神の内の1人が私です》
へぇ、そうなんだ。
《……え?! それだけですか?!》
まぁ驚いてはいるけどね。
《いやもっといろいろ聞かれるものだと……》
聞いたら教えてくれんの?
《それは……》
別にいいよ。
アンタにもいろいろ事情があるんでしょ?
前にも言ったけど、私はアンタを信用しているから。
《サクヤちゃん……》
それよりも今後の動きをどうするかだよね。
あの大暴露からクズ神も全く反応がないし。
あの時、マイカが2つも封印を壊したことでかなり力が弱まっている。
さらに魔族も人族もクズ神の大暴露によって戦う気力が皆無の状態。
これ以上封印が強まることが無くなった今、残りの封印をさっさと破壊してクズ神を開放したいところだけど……向こう側の勢力がこのまま何もしないわけはないのよね。
それでもこの状況をすぐにどうにかできるとも思えない。
しばらくは様子見だと思うから、その間になにか対策を打ちたいわね。
人族に攻めてきていた魔族の人たちは、全員がこのルドラルガに集結している。
あの後しばらくはいろいろと混乱が生じていたけど、今ではそれも落ち着いている状態。
なんか前向きに人族も魔族も平和に向けて話を進めている感じ。
それぞれのトップが通じ合っていたことはもう周知の上だし、あれからその魔王も勇者も姿を見せていないわけだしね。
まぁなんか洗脳みたいなものが解かれれば、同じ人間同士誰も殺し合いたいなんて普通は思わないわけよ。
逆に言えば、よくここまで殺戮の歴史を築いてきたとさえ思えるわね。
まぁそれも終わって、これからみんな仲良く暮らしていけばいいわけだし。
その辺は勝手にどうぞって感じ。
それから人族と魔族は、数日をかけて平和に向けた話し合いを進めた。
これはこの子らが望んだ世界になってきているのかな。
まぁ私にはそもそも関係ないことだけどね。
この子らやマイカがそれを望んだから私も手伝っただけだし。
《ふふふ、そういうことにしておいてあげますよ》
……それにしても、平和過ぎでは?
まぁ確かにあれから数日なにもなかったけどさ、気を抜きすぎじゃない?
今日も今日とでダラダラし過ぎなのよ、アンタら。
ちょっとは体動かしなさいよ。
まだ戦いは終わっていないのよ?
《マイカちゃんの膝を枕に横たわったまま、お菓子を頬張っているサクヤちゃんがそれを言うのですか?!》
私はいいのよ。
これでも周りにちりばめた分身体と桜飾で警戒をしているんだから!
《前にも言いましたが……それをやっているのは私なのですが?》
前にも言ったけど、スマコは私の一部なんでしょ?
それなら私がやっているのと同じことじゃないの。
《前から思っておりましたが、私の扱い……結構ひどいですよね》
そう?
まぁ、それができるくらいには信用しているということよ。
《なんか……それを言えば全部許されると思っていませんか?》
バレたか。
それにしてもこいつら、本当に緊張感の欠片もないわ。
こういう時が一番危なかったりするんだけどなぁ……。
《それは確か、サクヤちゃんたちの世界でいうところのフラグというやつですよね!》
やめてよ!
そういうことを言うとさ……
私がそう言った瞬間、室内に異常を知らせるサイレンがけたたましく鳴り響いた。
「な、なんや?!」
「まさか敵襲か?!」
「ふぁ……もう朝?」
「まさか、魔王?!」
私は瞬時に国中の桜飾の音声を拾い集めて、情報を収集した。
「なにごとだ?!」
「各国の……四災岳が消滅した模様です!」
「それにより、各国それぞれに魔物が大量出現!」
「死傷者多数!」
「国が……このルドラルガ以外の国は、ほぼ壊滅状態です!」
《まさかそうきましたか……やられましたね》
はぁ……ないわぁ……。
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