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081 いんむすび

 確かに私は攻撃のために、やむを得ずに逆立ちで股を開いたけどさ……こんなやつに下着を指摘される筋合いはないと思うわけよ。


『変態だ』

『変態やな』

『変態であると同意するヤツがここに約1名』

「殺す」

『変態魔王』

『ちょい待ち、今マイカから乙女が口にしちゃいけない言葉が聞こえなかったか?』


「お? おまえら生きてたんだなぁ。あんとき死んでもらう予定だったのによ~」

『変態魔王! 絶対に許さないんだから! わたしのコロッケを返せ!』

「こいつなにいってんだ?」

『変わりに言おう、おまえは絶対に許さないと思っているヤツがここに約数名いるということだ!』

「おもしれぇじゃねぇか。んでも、その前に……」


 ザシュ……。


 魔王は気絶していた魔族軍の方へと一瞬で移動し、自身の大剣で一突きにしてしまった。


「ちゃんと殺さねぇとダメだろうが! ひっひっひっひ!」


 クソッ!


 私は一気に魔王の元へ走り出し、横にいる人を刺し殺そうとしているその大剣を蹴り上げる。


「おまえ、ますます速くなったなぁ! ひっひっひっひ!」

「このっ! アクアバイブレーション!」

「フレイムブラスト!」


 私の攻撃の後に合わせて、水が流れるようしなやかに鋭い水の斬撃を入れるアズサ。


 その後に拳の形をした炎の弾丸を放つハズキ。


「おまえらのはおもしろくねぇな。ほら、仲間の攻撃で死ね」

『くそ……くっ?!』


 アズサの水の刃を素手で止めた魔王は、もう片方の手で刀を握るアズサの手を掴みそのまま持ち上げる。


 そして迫りくるハズキの炎の攻撃をアズサに直撃させようとするが、アズサは咄嗟に自身を水で覆い、それを一気に気化させた。


 途端に辺りを濃い霧が覆う。


『アタシらがどれだけ一緒に訓練してきたと思ってんだ、この人でなし野郎!』

『その汚い手を離さんかい! フレイムバーン!』


 形状が変化した両手のギアメタルを振りかぶり、ハズキが拳を打ち付けた。


 その瞬間にギアメタルも形状を変化させて炎を噴き上げる。


 その勢いで魔王は地面に倒れ込んだ。


『大地魔法、アースリストレイント』


 ミサキが不思議な手の形をさせたままそう唱えると、魔王が倒れ込んだ地面から木の枝のような物が大量に伸びて巻き付け拘束する。


『闇黒魔法、ダークスピア』


 同じようにホノカも不思議な手の形をさせたままそう唱えると、空中に黒い槍の形をしたものが出現し、拘束されている魔王に向かって落ちる。


『すっげぇ! それ大地魔法に暗黒魔法じゃねぇかよ!』

『あの変態しか習得できないって噂の希少魔法か?! さすがミサキにホノカや!』

『そんなに褒められても、全然嬉しくないヤツがここに約2名』

『そう……ワタシたちの魔法ですら、一切通用していないよ』

『っ?!』


 ミサキの珍しい真面目トーンで一気に緊張が走る。

 そしてその言葉は当たっている。


「ひっひっひ! おまえらの攻撃がオレに効くかよ」


 魔王はそう言うと、何事もなかったかのように立ち上がる。

 アズサの刃もハズキの拳もホノカの槍もまるで効いていない。


「風神魔法、空輪風乱(くうりんふうらん)


 魔王は無数の風の弾丸を空中に出現させ、全方向へと放った。

 その魔法をそれぞれのギアメタルで相殺しようとアズサとハズキが攻撃を仕掛ける。


『ダメ! 逃げて!』

『え?! うぁああ?!』

『きゃあああ?!』


 魔王の魔法が当たった2人のギアメタルは砕け散り、その身も含めて弾き飛ばされてしまう。


「ひっひっひ! あいつらはギアメタルがなくなれば終わり。おまえらは魔動力がなくなれば終わりだ」


『くっ! ホノカ!』

『あぁ、わかっている!』


「いい判断だ。オレに向かってくるより2人を助けることを優先したか。さてと、そろそろこいつら全員殺して次の場所に行かねぇとだけど……簡単に行かせてくれるわけもねぇか」


 当たり前だよ、くそボケ。

 これ以上殺させてたまるかってのよ!


『忍法、分身の術』

「おまえの戦術もワンパターンだなぁ」


 残念ながら私にはこの戦術しかできないわけよ。

 姑息で卑怯なのが私たち忍者だからね。


 10人の私が手裏剣を片手に走り出し、それを投げ飛ばしながら近づいていく。


「火炎魔法、豪華爆裂!」

「火炎魔法、砲火爆裂」


 私の動きに合わせてマイカと妹っ子が遠距離攻撃をしてくれたので、魔王の逃げ道がなくなっていく。


「ちっ、あいつちょっとうぜぇ」

「っ?! あぶない!」


 咄嗟にマイカへ向けられた魔法を妹っ子が庇って被弾する。


「メイナ!」

「どんくさい……のよ……ポンコツ」


 くそっ……あまりに力量差があり過ぎね。

 このままじゃ、あの子らが本当に危ないわ。


 本体を含めた11人の私の攻撃なんかも軽くいなされているしね。


「そろそろオレの力も見せてやるよ!」


 なんだって?!

 まだこれ以上の力を隠し持っているというの?!


「忍法……手裏剣の術!」

「……」


 いや、ただの風魔法じゃん!

 一応私の分身体を吹き飛ばすほどの威力はあるけど……弱い。


「忍法、分身の術!」


 いや、だからただの風魔法じゃん!

 風が人の形のようになっているだけで、分身体とはほど遠い姿じゃん!


「いかすだろ? おまえの動きを見て、かなり練習したんだぜ?」


 いや、ないわぁ……。

 ちょっと残念な感じになっているけど、これ大丈夫?


「ひっひっひ! どうだ! 驚いただろ? かっこいいだろ?」


 ヘロヘロとした動きでへなちょこパンチを打ってくるアイツの分身体擬き。

 当たったとしても痛くもかゆくもないだろうけど、なんかこれに当たるのは嫌だったからするりと回避する。


《それは正解ですねサクヤちゃん。それに当たると、体中の水分を抜き取られてしまいます》


 いや、こえ~よ!

 めちゃくちゃ厄介なヤツだった!

 そう聞くと動きがゾンビみたいに見えるよ!


 ひぃいいい?!

 こっちくんな!

 しっし、あっちいけ!


《まずはこれらを消し去るべきですね。サクヤちゃん、家族のどなたかに「印結びの型」というものを教わってはいませんか?》


 印結びって手でいろいろな形を作るやつ?

 確か昔おじいちゃんが教えてくれたことがあったけど……。


《ではそれをやってみましょう》


 はぁ?

 だってあれ子どもの遊びでしょ?!


 えっとぉ……確か、こうして、こうして、こうやって……はい、できた。


 私が印を結び終わった瞬間、そこから忍気が炎となって噴き出し、魔王の分身体擬きを薙ぎ払った。


 ふぇ?!

 こ、これはもしかして遁術?!


《その通りです。今のは、あなた方でいうところの「火遁の術」ですね》

ここまでお読みいただきましてありがとうござます。

もしよろしければブクマや評価で応援していただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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