表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/208

079 いやなよかん

 この国の防衛体制は大きく分かれて前方3箇所になっている。

 後方には四災岳があり、砦もあるからそこには人員を少し配置しているようだ。

 そして左右と中央にそれぞれ魔動兵団を中心とした陣営が配置された。


 私らがいるのは中央の軍隊の一番最先端。

 普通ここは魔動兵団のみなさんを先頭に配置するべきでは?

 なんで学生の私らが先頭なのよ。

 さすがはあの鬼畜勇者。


 おそらくここが一番の激戦地帯になるとよんでいたんだろう。

 そしてそれはおそらく間違っていない。

 だって実際にあの化け物がやってきているから。


 あいつがいるということは、それが敵の本体だということ。


 アイレンズ上にはアイツが持っていた桜飾の反応が示されている。

 それがゆっくりとこちらへ向かって来ているところだった。


 しばらくすると、5隻の戦艦が並んでやってきた。

 1隻あたり、3000人くらいが乗っているとして約1万5千人が攻めてきたということになる。


 それに対して、こっちにいるのは5千人弱。

 その殆どが魔動兵団の団員とマキシム学園の生徒や先生たち。


『あれが敵の本体であると申告する、元魔族のヤツがここに約1名』

『あぁ、5隻もいるな……5倍美しい』

『おまえはなに言うてんねん、顔ヤバいで?』

『グヌヌヌヌヌヌッ!』

『おまえはさっきからなにしてんねん、ミサキ』

『知ってた~? どんなに頑張っても顎は肘に付かないんだよ~?!』

『どんな豆知識やねん! 聞いたウチがアホやったわ』

『牛とキリンの泣き声はほぼ一緒だと知っているヤツならここに約1名』

『だから今そんな豆知識いらんねん!』

『おまえら緊張感ねぇなぁ』

『それ言うならまず戦艦を見ながらニヤケるのをやめようか、アズサ……』


 おまえら全員緊張感なさすぎるわ!

 あんたらの会話が理解できるマイカと妹っ子の顔見てみなさいよ。

 ドン引きよ?!


 それに、あんたら知らないかもしれないけどさ、後ろにいる魔動兵団の人ら5隻の敵船見てヤバい顔になっているからね?



《サクヤちゃん、来ます!》


 スマコがそう言うのと同時に、あの魔王が持っていた桜飾の反応が高速でこちらに接近している反応をキャッチした。


 あの化け物の相手は私にしかできない!


『忍気爆発、フルバースト!』


 私は1人飛び出した。


「サク?!」


 マイカの呼びかけを無視して、迫りくる反応を迎え打つ。


『忍殺拳が一ノ舞、桜雷拳』


 私は超高速で近づいてきた魔王の化け物に向かって全力の忍殺拳を放った。


《これはっ?! サクヤちゃん、離れてください!》


 え?!

 うそぉ?!


 高速で向かって来たそれは、化け物ではなく人の形をした人形のようなものだった。


 その人形目掛けて全力で振り抜いていた拳を止めることはできず、私はその人形の胴体からあばら骨のように広がる鋼鉄製ものに拘束されてしまった。


 その拘束具が私の体を包み込むようにギチギチと締め上げていく。


 いだだだだだ?!

 背骨が折れそうだし……内臓も口から全部出そう。


 それにこの変な人形に抱き着かれて押し倒されているこの状況が個人的に無理だわ。


 人形の首がさっきからゆっくりとクルクル周り続けているんだけど、その度に体を拘束している締め付けが強くなっているのよね。


 しかも押し倒されたあげく、その回転する人形の首が究極に近いわけ。

 なにこれ、ほんとキモい。

 しかし困った、今にも体の中身が全部出そうだ。


 グヌヌヌヌヌヌヌッ!


 全力のフルバーストでやっと首が回転するのを止めることができたけど、この拘束を解くまでには至らない。


 私がこの拘束に手間取っている間に5隻の戦艦は突き進み、遂に人族側との交戦を初めてしまった。


 まんまと誘き出されて、罠にハメられたわね。

 なんたる屈辱。


「サク、大丈夫?! 今、解いてあげるからね!」


 そこへマイカがやってきて、人形を引きはがそうとする。

 でも、あの場にマイカがいないのはかなり厳しいと思う。


「マイカ……あっちに……」

「嫌だよ! あっちに戻るのはサクと一緒なんだから! 約束したんだから!」

「……え?」

「あの4人もメイナも……そしてDクラスの方々や先生も、自分たちが危ないのに行ってこいって送り出してくれたの! 絶対に2人で帰って来いって! それまでは絶対に帰ってくるなって! ……だから!」

「……」


 そうだったんだ……

 それなのに私は1人で飛び出したりして……


「もう、離れてよ! 人形だってわかっていても、なんかムカつくんだから!」

「……」


 私はフルバーストを維持しているので精一杯。

 マイカも全力でこの拘束具を引きはがそうとするけど、ビクともしない。


《サクヤちゃん、あちらの状況もかなりまずいかもしれません……》


 スマコにそう言われ、アイレンズで向こう側の戦いを見てみる。

 すると、魔族軍は人族側のギアメタルを狙って破壊しているようだった。


 人族はギアメタルなしでは魔法が撃てない。

 即ちそれがなくなれば人族は終わりだ。

 だから、各所に予備のギアメタルをストックさせている。

 前世の戦争で弾薬や武器を補充するのと同じように。


 対して、魔族軍は魔法スキルを介して魔法が発動できる。

 自身の魔動力が尽きない限り、魔法を発動し続けることができるのだ。


 だから圧倒的な人数差で広範囲に長距離からの魔法攻撃を繰り返して、人族側の生命線でもあるギアメタルをほとんど大破させてしまっている。


 武闘派の人族と長距離魔法派の魔族。

 この人数差では、圧倒的に人族側が不利な状況だった。


 死者の数もかなり多いわね。

 くそ……どうしたらいい。

 今の私に一体なにができる?


《一つだけ方法があります……》


 それは?!


《なにも言わず、分身体を作り出して全てを私に預けてください》


 うわぁ……すんごい嫌な予感しかしないのだけれど?

ここまでお読みいただきましてありがとうござます。

もしよろしければブクマや評価で応援していただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ