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077 まおう?!

 もう滅びてしまったあのテンガラスでは、勇者のおっさんや魔動兵団たちの気配はしなかった。


 もしかしたら死んでしまった可能性もあるけど、生きていれば魔法兵団の総本拠地があるルドラルガへ戻るはずだ。

 ただ、残念ながら国王やギアバトル闘技大会に出場していた生徒や先生たちは全て帰らぬ人になってしまった。


 魔族軍が今後どういう動きを見せるか不明だけど、とりあえずルドラルガに戻って体制を整えないとね。


 ……ということで、私らはまた絶賛高速移動中である。


 なんか遠くの方で5人の絶叫と妹っ子の罵声が聞こえるのは気のせいだろうね。

 最近やたらと妹っ子が突っかかってくるのよ。

 まぁ私がマイカを特別扱いして背中におんぶしているのがどうやら気にくわないらしい。


 久しぶりにこの子を背中に乗せて走っていると、あのアトラス大迷宮での生活を思い出すわね……いい思い出なんてないのだけれど。


 しばらく走り続けてルドラルガまで帰ってきた。

 そして私らは絶句することになる。


 なんとこのルドラルガにも、あのテンガラスに攻めてきた戦艦の亡骸が見えたからだ。


 街並みは荒れ果て、家屋は焼かれ、田畑は見るも無残な状態だ。

 いたるところに人族、魔族の死体が入り交じっている。

 この場所で戦いが起こっていたことは一目瞭然だった。


 とりあえず私らはマキシム学園へと戻った。

 そこを本拠地に生徒たちを含めた魔動兵団の軍隊編成が行われていた。


 その先頭で指示を出しているのはあのおっさんだった。


 あいつら生き延びていたのか。

 あの国はもうダメだと早々に見捨てて逃げ帰っていたのね……この戦いを想定して魔動兵団を指揮するために。


 総団長としての判断は間違っていないと思う。

 だけど、それに対してなんだか気にくわないと思っているのは私だけではないようだけど。


 まぁでもそのおかげで今のところ人族側の被害を最小限に抑えることができていた。

 特に魔動兵団の本拠地であるこの場所に向けての攻撃は特に酷かったようね。

 まだおっさんらが戻るまでの間、少ない魔動兵団とこの学園の生徒で持ち堪えたようだ。

 その中でも特に活躍したのは私らと同じDクラスの男子どもだったみたい。


 そして、おっさんらが戻ったことで一気に形勢は逆転したというわけね。


 現状、このルドラルガは完全に体制を持ち直している。

 攻め込んでいた魔族軍も一旦引いて、お互い様子見の状態ね。


 ただ、テンガラスを占領した軍がこちら側に向かっているという情報もあって、再度軍編成が行われていた。


 そして私らが学園へと戻ったことでその編成の中に取り込まれることになる。


 子供を戦争に投入なんて……どこのファンタジー世界だよ。

 まぁ基本的には魔法兵団の軍隊の一部に取り込まれている感じ。

 しかもそれに異を唱える者が1人もいないところが凄いね。

 逆にやったるぜオーラが半端ではない。


 大昔の日本でもこういう感じだったのかな?

 戦争バンザイ、日本バンザイ、御国のためなら命捧げます……的な?


『くっだらね』

『まったくや』

『盛り上がっていこ~イエ~イ!』

『ミサキ、おまえはちょっと黙ろうか』

『それよりもホノカ、おまえら使徒だったんだろ? 魔族軍止められねぇの?』

『無理であると即答するヤツがここに約1名。そもそも自分らの上にいた使徒が魔族の王、魔王だから』


 え?!

 あの化け物魔王だったわけ?!


「サ、サク……みなさんがなにをしゃべっているのかわかんないよぉ」


 ちょ、ちょっと待って!

 今大事なところなんだから!


《勝手に対処します》


 はっ?!


『ウチらもその使徒とかいうやつらに会ったねん』

『そうそう、転生者は記憶がないとか、生贄だとかそいつらに聞いたぞ?』

『……肉マン食べたい』

『なんでやねん』

『ピザマンでもいい』

『おまえマジで黙れ』

『他にも使徒がいたことを知らないヤツがここに約2名』


「あ……わ、わかる。言葉がわかるよ、サク!」


スマコが一体なにをしたのか知らないけど、マイカにも日本語がわかるようになったらしい。


「ちょっとぉ! ワタシを除け者にするんじゃないわよ! 撃つわよ?」


 めんどくさいぞ妹っ子。

 そんな物騒なものを人の後頭部にグリグリ押し当てるんじゃありません。

 引き金引かないでよね?

 マジで痛いから。


《サクヤ様、桜飾で花びらのイヤリングを作りましたので妹っ子様へ》


 私は言われた通りに妹っ子へイヤリングを渡す。

 すると、マイカが付けているものとお揃いのもので嬉しかったのか、微かに口角を上げながら自身の耳に付けた。


「な、なんか不思議な感じね……言葉がわからないのに、なにを言っているのかはわかるわ……」


 まぁ妹っ子も大人しくなったところで話を聞く。

 その会話内容をまとめるとこうだった。


 私が戦ったあの化け物は使徒であり魔族の王、魔王。

 魔族側は人族側とは違って、魔王1人の独裁政権。

 ただ、魔族側でもここにいる2人と魔王の3人が使徒であるということは隠されている。

 その魔王は使徒の仕事を上から指示されていた。

 つまりは魔王を動かすもっと上の存在がいるということ。

 魔王はそいつのことを「天使様」と呼んでいた。

 この2人はそれ以外の使徒がいることも接触したこともなかったし、あまり情報を貰ってもいなかった。

 ただ、どうやらこのアズサとハズキが転生者だという情報だけはもらっていて、この子らの命を人質に取られていたとのこと。


 知り得た情報はこのくらいかな。


 ここからは私の憶測だけど、この子ら2人は使徒の中でも下っ端の部類なんだろうね。

 そしてあの戦争合図のダシに使われた被害者かな。

 私いなかったら多分死んでいたと思うし。

 魔王の上にいる「天使様」とやらが気になるところね。

 そいつが多分いろいろとやらかしてくれた黒幕っぽいわ。


 でもあの魔王の化け物を従えているほどの化け物ってなにもんだよ……マジで。

 ふざけるんじゃないよと大いに愚痴りたい。


 結局あのクズ神も沈黙を保ったままだし……まぁそれはこの封印の力が強まっているからだろうね。


 とにかく今はこの戦争を止めないといけないね。

 あぁ……ないわぁ。

ここまでお読みいただきましてありがとうござます。

もしよろしければブクマや評価で応援していただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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