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076 つんでれひめ

 今私に出せる最大火力の技を持ってしても、ケロリと無傷の化け物。

 やはりどうあがいても今の私には勝ち目がないようだ。


 だというのに……あれは一体どういう状況?!


 私の真下でいきなり両膝と両手を地面に付けてうなだれている。


「おまっ……それ……まるで……忍者じゃ……ねぇかよぉおおおお!」


 ぐはっ……う、うるせぇ。

 いきなりデカい声出すから鼓膜が破裂するかと思ったわ。

 この距離なのにどういうこと?

 あいつの肺活量はいかほどに?


「ふざけんじゃねぇよぉ……なんだそれ……」


 なにやらまた俯きながらブツブツと独り言を喋り出してしまった。


「か……カッコいいじゃねぇか……」


 はっ?

《はっ?》


 スマコと同時に同じリアクションをしてしまった。


「サク! 道を開いたよ! 早く!」


 きた!


 私がこの化け物を引きつけている間、6人は魔族との激戦を繰り広げていた。

 こいつさえ引きつけていれば、能力的にあの子らが負けるようなことは絶対にないと思ったからだ。


 それでも数の暴力とはよく言ったもので、束になって延々と魔法を打ち込まれていればさすがに疲労もしてくるし、魔動力もなくなってくる。


 かなり厳しい戦いではあったけど、見事にあの子らはやり遂げてくれた。

 特に妹っ子の活躍は正直ビックリね。

 後でヨシヨシしてあげようかしら……。


 私はそんなことを思いながらも絶賛全力空中ダッシュ中だ。


 どういうわけか、あれから化け物がピクリとも動かない。

 なんかずっと忍者がどうとか分身がどうとか変わり身の術がどうとかブツブツ独り言をしゃべっているのよ。


 まぁ忍者という言葉を知っている時点であいつも転生者だということよね。

 忍者にトラウマでもあんのかしら。


 とにかくあいつはなぜか動かない。

 だったら今の内に全力で逃げるしかないでしょ。


「ということで……行くよ……」

「なにがっ?! きゃああああああ?!」


「あ……うごぉおおおおお?!」

「い……にぎゃぁああああ?!」

「う……はぎゃぁああああ?!」

「え……いやぁああああん?!」

「お……うぉおおおおおお?!」


 私はマイカ以外の5人を瞬時に特殊糸で拘束する。

 そして、最後にマイカを抱きかかえるようにキャッチすると、そのまま止まることなく6人が作ってくれた大群の隙間を一気に突き抜けた。


 そんな私らに向けて魔法を発動しようとしているけど、それよりも私は速い。

 全ての攻撃がこちらに届くよりも前に、私らは先に通り過ぎている


 5人を引っ張り、1人を抱きかかえていてもフルバーストの私は止められない。


 というか、止まったら終わるのよ。

 私はさっきからずっとフルバースト状態なわけ。

 今までこの力をこんなに長時間発動し続けたことはなかったのよね。

 というよりもできなかったのよ。


 まぁ今はたまたま頑張れているけど、いつ忍気が止まってもおかしくないわけ。

 それくらい限界は当に過ぎている状態なのよ。


 あ……ほらっ!

 そんなことを考えているから体止まっちゃったじゃん!

 全く動かなくなったじゃん!

 どうしてくれんの?!


「サ、サク?! 髪がいつもの黒色に戻った……よ?!」

「……はぁ……はぁ……げん……かい」

「うそぉお?!」


 その他芋虫シリーズの6人は失神中で大人しい。

 だけど動きを止めた私らに、敵からの魔法の雨が降り注ぐ。


 もうちょっとだったのに……スマコ、あんた動けない?!


《無理です。分身体は作れてもサクヤ様の忍気がないと動かせません》


 分身体や空輪でガードは?!


《それも忍気がないと、とても持ち堪えられるレベルではありません》


 ないわぁ……万事休すじゃん。


「……今度はアタシが!」


 動けない私を今度はマイカが抱えて走り出す。

 私はマイカの歩幅に合わせて空輪で空中に壁を出していく。


「こ、こわい……見えない空中の壁を歩くって恐怖すぎる……」

「だい……じょうぶ……信じて……」

「うん! サクを信じてる!」


 マイカはさらにスピードを上げた。

 それでも私よりもスピードは断然に遅い。


 だけど、襲い掛かる攻撃も、迫りくる大群も遠ざかっていく。

 なぜなら少しずつマイカの足元の壁を高くして、高度を上げたからだ。


 そのうち攻撃は止み、魔族軍が追って来ることもなくなった。


 それを確認した私は少しずつ高度を下げていく。


「さっきは無我夢中だったけど、さすがに6人を運ぶのは重たいね」


 実はこの中だったらアンタが一番重いのよ……と言うのはやめておこうか。


「む? なんか失礼なことを考えていない?」

「っ?!」

「あ、やっぱりそうなんだ!」


 す、鋭いわね……。

 まるで乙羽を相手にしているみたいだわ。


「ひぇ……ひぇえええええ?!」

「「え?! えぇえええええ?!」」


 あ、芋虫シリーズたちが目を覚ましたわ。

 いきなりの状況にかなり戸惑っているようだけど、そろそろ自分で歩いてほしかったから助かったわね。


 マイカも、みんなの糸を持っている私の腕も結構限界だったのよ。

 とりあえずそのまま高度を下げていき、私らは地面へ降り立つ。


「アタクシ……こんなにも地面が恋しく感じたのは初めてですわ」

「アズサちゃんは昔から高いところが苦手でしたの」

「いつまで経っても変わりませんよねぇ」

「それは全員同じことであります」


 おろ?

 なんでこの4人ってこんな仲良しになってんの?


「ちょっと、あれどうなってんの? 説明しなさいよ!」


 ちょ、それ私に聞く?!

 大好きなお姉ちゃんに聞けばいいじゃん。

 それに足を踏むのはやめてくれないかな?


「メイナ、あの方々は昔からのお友達なのだそうですよ」

「……ふん。アンタに聞いていないわよ。このブアイソに聞いたの! 勝手にしゃべるんじゃないわよ」


 誰がブアイソですか!

 背中にナイフ当てるのもやめようね?


「アハハ……メイナまでサクと仲良くなってしまいましたか。なんだかアタクシだけ疎外感です……」

「は、はぁ?! アンタついに頭までポンコツになったの?! こいつはワタシのペットよ! もう決めたんだから!」


 誰がペットですか!

 勝手に決めるな!


 というかこのツンデレ姫をこれ以上挑発しないであげて……私じゃなかったら本当にこれ刺さっているからね?


 しかしマイカも、どこをどうみたらこれが仲良く見えるのかな?

 その微笑ましいものを見るような顔は正直やめてほしい。


 そしてしばらく休んだ後、アタシらはとりあえず自分たちの国ルドラルガを目指す。

ここまでお読みいただきましてありがとうござます。

もしよろしければブクマや評価で応援していただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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