理不尽な現実からの解放
世の中ってのは本当に理不尽だ。結局は生まれ持った何かによって人生が決まる。何かってのは見た目、頭脳、運動神経、環境…etc、まぁ色々なものが組み合わさって出来ている。天才の中にも才に溺れるやつ、才を持って努力する奴、凡人であるが人より努力した奴、元から顔が良かった奴。人ってのは沢山の種類がいる。その中で天才ってのは本当に嫌気がさす、努力してない天才はひたすらウザい。努力している天才も性格が悪かったら鼻にかけてきてウザい。性格が良くても無性にイライラする。
そしてそんな事を言いながら汚い部屋でひたすらゲームをやり続けているのが俺だ。見た目がいいわけでもなく、勉強が出来るわけでもなく、努力すらして来なかった俺である。更に自分で自覚しているくせに一切直す事すら出来なかった俺である。いや正確に言えば直そうとは思った、しかし実行する気力が湧かないだの、今更など言い続けて逃げ回った人種の中の最底辺であるだろう。自分が出来ない怒りを他にぶつけるしかなく、それを自覚しているがため更に身勝手な怒りを沸かせ、小学生だと思しき相手をフルボッコにして一瞬の快感を覚えているのが俺だ。小説などによくあるゲームは誰よりも強い主人公とかだったら、オンラインゲームから徐々に世間に認められたりするのだろうが、そもそもそこまで強い訳でもない。言うなれば取り柄というものが存在しないのだ。結局自分の少しだけ得意な分野で格下相手に勝って快感を得て虚無を覚えるだけの人生をこれからも過ごしていくのだろう。
この時はそう思っていた。
まぁ勿体ぶる話ではないし、端的に言おう。
「異世界転生したわ」
ゲームを終えた後寝ていたら、とてつもなく眩しい光によって起こされた。
目を擦り体を捻ると、何故か下に落ちた。下に落ちたと言ってもほんの一瞬。すぐにドサっと音をたてながら地面に叩きつけられた。感触的には土だろう。
落ちた衝撃で強制的に目が冴えた俺の目に最初に映ったのはとてつもない光だった。それは太陽の光である。カーテンというバリアによって日に当たって来なかった俺にとって何年ぶりの光であるだろうか。中々慣れない目を擦りながら徐々に慣らしていくと、そこは見慣れない街であった。高層ビルなどは一切なく、何処か中世の街並み。
正直この時点で薄々気付いていた。いや、そうであって欲しかった。
俺は 異 世 界 転 生 したのだと。
すぐさま頬をつねって痛みを感じるのか試してみた。正直この方法が夢かどうか確認する方法で正しいのかは知らない。しかし頬をつねって痛かった、即ちもうほぼほぼ決まったと言っても過言ではないだろう。
「異世界転生だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
叫んだ後で気付く、異世界転移じゃね?と…
正直どっちでもいい。とりあえず、どうするかを決めよう。
そう思い、すぐ近くにあったベンチに腰掛けた。
ガサッ
「ん?」
どうやらベンチに座った際何かを踏んづけたらしい。見てみるとそれは手紙だった。
立川優樹様へ
手紙の表面にはそう書かれている。
ははーん?これは恐らくだが、ここに転移させた奴からの手紙なのでは?
そう思い俺は手紙を開いた。
『間違えて殺しちゃったので生き返らせました。気付くの遅れて元の世界ではとっくに死体燃えちゃったので違う世界で蘇らせました。どんまい!』
そのまま俺は引きちぎった。
「…何がどんまいじゃ、舐めとんのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
今日はいつもよりも喉を使う日だ。こんなに叫んだのは、スマプラで『お前雑魚』って言う名前のゴリラ使いからひたすら煽られた時以来である。もちろんその試合は負けた。
おっと、そんなことは今はどうでもいい大事なのは俺が本当に異世界にいると言うことだ。こんな手紙普通は胡散臭いだろうが、俺に手紙をよこす間柄なんて存在しない。この内容は本当のことと見て大丈夫だろう。
「……ちょっと待てよ?大事なことが書かれてないな。」
ふと気付いた。この状況に応じてとても大事なこと。そう俺に与えられたチートは?
「まさか勝手に殺しといてチート無しなわけ…。いやいや仮にも異世界転移だぜ?異世界だよ?異世界。異世界と言ったら、なんかあるじゃん?とんでもないスマホとかさ?とてつもない身体能力だったり?成長チートなんかもあるじゃん?無しなわけ……。そうだ冒険者ギルドだ、あるかは知らないけれども冒険者ギルドだ。そこであるかは知らないけれどもステータスを測定的な?それで俺の隠されたチートを確認できる的な?よし、そうなったらとりあえず冒険者ギルドへ行こう」
そう言っておれは立ち上がった。
果たしてこの男にチートは与えられているのか、冒険者ギルドは本当にあるのか、そもそも剣と魔法の世界なのか。