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建国祭

あと10日で建国祭。

今年は建国200年の節目の年なので、華やかな祭りになるだろう。



シャルロッテ王女の準備は着々と進んでいる。

今日は衣装の最終サイズ確認と、式進行の確認、

昼餐を挟んで、シャルロッテ王女は神殿に神楽の流れ確認に行く。


ソフィーもといルイは、午後はテーブルウェアのデザイン確認と発注する花材の確認をする予定だ。


「シャルロッテ王女殿下、バルコニーでのお召し物の衣装確認をお願い致します。」


「今年のドレスは一際華やかよね。今から楽しみだわ」


ルイはにこにこしながら衣装の最終チェックを見守る。

シャルロッテがバルコニーやパレードで見られる際に、若々しく美しいこの女主人が、最大限に目立って、フレッシュさを人々に印象づけるのに、

黄色と黄緑のオーガンジー生地を重ねたグラデーションの美しいドレスにした。


前回、デザイナーにビスチェだったデザインを、レースの袖を作るように修正を依頼をした。思った通り、過度な露出が抑えられ、ノーブルに仕上がっていた。


袖を作るために使われた刺繍は大振りの花をベースにしており、そのデザインに合わせでドレスに色とりどりの花と、蝶がドレスの右肩から斜め下に向かって散らしてあり、ボタニカルなデザインに仕上がった。


くるりと一回転すると、腰周りに使ったたっぷりのオーガンジーでできたリボンがふわりと舞い、軽やかさと華やかさが若い王女にふさわしいドレスだった。



「シャルロッテ王女殿下、まるで妖精のように美しいですわ。」


心からの称賛を込めてルイが言う。シャルロッテは頬を染める。


「まぁ!ソフィーにそんな風に言われると、退屈な建国祭でも頑張ろうと思えるわね。」


「それでは神楽の衣装もご確認お願い致します。」

「えーこっちもなの…」

「夜会のドレスもございますので。」

「ソフィーの笑顔は好きだけど、今は憎々しいわ」

「わたくしは美しいシャルロッテ王女殿下を拝見できて恐悦至極にございます。」


ため息をつきながら、シャルロッテは結局3着ドレスのサイズをきっちり確認した。





シャルロッテ王女は現国王の一人娘だ。

王妃との間には3人の子供が、女の子のシャルロッテ以外上二人の男子は病死及び落馬による事故死を遂げており、現在ではシャルロッテ一人しか後継者がいない。


王太子として2年前に立太子して、帝王学も学び始めており既に王配の座を狙って沢山の令息や諸外国の王子からの婚約打診が絶えない。


実際、その立場になくともシャルロッテは子どもと大人の境目に居て独特の美しさが眩しい時期である。


ルイは、その眩しさを誰よりも間近で見守っていた。

美しいものがとにかく好きなルイはシャルロッテの側にいるだけで幸せな気持ちになれるのだった。




「ソフィーも午後の神殿に一緒に来てよ」


普段は言わない可愛らしいわがままを、最後のドレスを脱いで上目遣いで言ってきた。


シャルロッテにとってソフィーは唯一歳の近い上級侍女で、少しでもこの若くて淑やかなお姉様とお喋りしていたかったのだ。


ソフィーは困って眉尻を下げる。

近くのリュッケ子爵夫人が、にこりと頷いてくれた。


「かしこまりました。リュッケ子爵夫人、恐れ入ります。」


―――あぁ、テーブルウエアも見たかった。

花材もどんな花をどこに飾るか見たかった。

でも、神楽の雰囲気を見られるのも悪くないかな。


ルイは気持ちを切り替えて、ぱぁっと喜ぶとシャルロッテにふんわりと笑顔を投げかけた。

その笑顔をみて、こんなに可愛らしい王女様と一緒にいられるならそれもいいな、とぽかぽかした気持ちになった。


シャルロッテはルイの腕にギュッとしがみつく。

腕に胸があたってその柔らかさに思わず身を固くしてしまった。


「ソフィー?どうしたの?少し顔が赤いわ。」

「いっ、いえ、いえ、なんでもございません。

 では、昼餐の準備をいたしますね。」

「?ええ、お願いね!」









ルイが公休を取り領地に戻っていると聞いたオスカーは、思わず自分も休みをとり公爵領に向かっていた。


また明日には会えると思っていたのに、1日だって会わないと落ち着かない。


先ぶれも出したが馬でかけて領地に向かったので1日短縮できた。



「ルイ!お前が領地に戻るなんて珍しいから、

 来てやったぞ。」


オスカーが公爵邸に乗り込んできたのはソフィーがファーレンハイト子爵の報告を受けている時だった。


セバスチャンをじと目で見る。


―――こいつ、来るって先ぶれあった?

―――ございません

―――めちゃ身内の話中なのに乗り込んでくるとか、馬鹿なのこいつ?止められなかったの?

―――申し訳ございません。が、ルイ友かと。

―――何うまいこと言っちゃってんの?!?!


目と目で通じ合う二人。

オスカーは二人の視線に気がついて眉根を寄せる。



「お前達、随分と親しげだが誤解を招く恐れがあるので控えた方が良いのではないかと」


―――おーまーえーのーせーいーだー空気読め



ソフィーの眼はもう死んでいる。

が、ファーレンハイトからの報告は確認しないと丸投げするにも仕事しなさすぎである。


「オスカー、よく来てくれた。

 セバスチャン、私の客人だ。お疲れの様子だから客間に案内して。湯を用意してゆっくり休めるようにしてやってくれ。

 オスカー、それでは晩餐で会おう。ゆっくり休んでくれたまえ。」


「お?おぅ…」


ソフィーは、この滞在中ソフィーの姿に縛りが出来てしまったことに地味に苛立っていた。

リリーの結婚式の日には注意が必要だ。







ファーレンハイトからの報告は、ギルドマスターのミラーから聞いた内容に加え、山賊の頭のもとに組織化された経緯として隣国リストニア帝国の工作員が仕込んだという情報が買えたとのことだった。



リストニア帝国はソフィー達の王国の南側、及び一部東側に広がる軍事国家で二代続いて対外遠征に一段落つけ内政強化をしており、文化と技術の発展による国力増加が目覚ましい国である。


―――何故そのような大国、リストニア帝国の工作員がわざわざこんな王都から離れた山賊なぞにちょっかいをだすのか。


工作員の確保と山賊の拿捕をして事情聴取が必要だな。

全体の人数が分からないが工作員を取り逃すことだけはしたくないので少なくとも確保には少数精鋭で確実に捉えて、残りの山賊拿捕については質より量で人員配置するか。


んー、自分一人で無闇に動いて失敗したくないけど時期も逃したくないし、お父様には報告しよう。



ソフィーはすぐにペンを取り、要点を簡潔に書き記して伝書鳩をタウンハウスに飛ばした。


ーーー明日にはお父様からの指示で街の自衛団と公爵家の騎士団が動かせるようになるだろう。

それまでにおよその山賊組織の人数が掴めないか間諜を送っておこう。


ソフィーは公爵家の間諜の一人をすぐに呼び出し指示を出した。





やることをやって、一息ついたところでセバスチャンが紅茶を淹れにきてくれた。


「ありがとう。セバスチャンが優秀すぎて癒される」

「恐れ入ります。癒しのソフィー様」

「ふふ。ここだけでね。ソフィーはもう今はこの領地には居られないから。オスカー、早く帰ってくれないかな…」

「侍女を口説いてまわっておりましたよ。」

「え?まだ湯を浴びたくらいじゃないのかあいつ」

「もう暇だとおっしゃっておりました。」

「えー…ちょっと面倒なことになる前に早く帰ってもらうよう話に行ってくるわ。せっかく淹れてくれたところ申し訳ないけれど、サロンにお茶菓子と紅茶を用意して、オスカーにそちらに来るよう伝えて。」

「かしこまりました」


―――あいつ、仕事簡単にほっぽって遊びに来た上人ん家で何してんだ…


ソフィーは、男性への理想や幻想は持ちたくても持てない。そう思いながらサロンに向かった。

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