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有限会社無間  作者: Ydct
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(サブタイトル)

ひさびさに

...目を開けると見覚えのない建物の前に立っていた。

周りを見渡してもただ森が広がるばかりでポツンと建ったその建物以外に何も無い。

何故私はここにいるのか、寝起きで頭痛がする頭を回転させても昨日の記憶が思い出せない。


「記憶が無くなるまで飲んで、森に迷い込んだ...?」誰に問いかける訳でもなくぽつりと呟く。


ある程度酒には強いと思っていたが、この頭痛とも合わせて考えると余程飲んだのだろうか。


「あっ、そうだ携帯。」頭がようやく回り始めてきてこの状況を解明する手がかりを思い出した。


昨日何があったのかは分からないが、何かしていたならSNSの一つや二つにその形跡はある。

そうして携帯を開こうとポケットに手を伸ばす...-が


「無い」 無い、携帯が無い。それどころかカバンも財布も鍵も何も無い。


そこまで気づいて自分の体を急いでまさぐる、着衣の乱れや痛みは無い。

良かった、物は無くなったようだが体を弄ばれたりはしていない。


そうなると一体誰が何の目的で私をこんな森の中に置いて行ったのだろうか?

考えれど考えれど答えは全く見つからない。

そうして頭を捻って悩んでいるとポツポツと雨が降り始めた。

頭が痛い、何にしてもここは建物の住人に電話の一つでも借りて警察と仕事場に連絡を入れるべきだろう。


建物は古い屋敷のような作りだ、大きな扉の前まで来たがインターホンといったものは見当たらない。

「すいません、誰かいらっしゃらないでしょうか?」

そう言いながら扉をノックしようとしたら、大きな扉が手招きするかのようにギィーッと開いた。

自動ドア---には、見えなかったが。大きな扉の先にはまた扉がある。

覚悟を決めて私はその扉に手をかけてドアノブを回した---。



----------------------------------------------------------------------------------------------------------



いつものようにコーヒーを飲みながら新聞に目を通している。

また新聞にはいつものような陰鬱とした記事が並んでいるが、自分が見たいのはそこではない。

『今日の猫』 猫、それは癒しを与えてくれる偉大な生物である。よく犬は忠実で猫は恩を三日で忘れるというがそれは間違いだ。

猫であっても飼い主や面倒を見てくれた人の事は覚えている、ただそれを全て表面に出すか出さないかの違いだ。

そんな風に、猫にくだらない思いを馳せていると扉のドアノブがガチャっと回った。

仕事か、新聞を畳みながら自分はいつものように目いっぱいの笑顔を作って言った



「有限会社無間へようこそ」



----------------------------------------------------------------------------------------------------------


恐る恐る扉を開けた先にはロビーのような場所が広がっていた。

小ぎれいで人の出入りを想定しているかのように最低限の装飾が施されていて、それでいて過剰すぎない作りだ。


その正面に"それ"はいた。口からヒッ..と声が漏れ、腰から崩れ落ちる。

正面にはまるで人間のように大きく、それでいて二足歩行で人語を話すスーツを着た犬が居たのだ。


「おや、どうされました?あぁ成程失礼しました。少々お見苦しいものを見せてしまいましたね。」


そう言うと犬の顔をした男(?)の骨格が歪み、まるで脱皮をするかのように下から人間の顔が出てきた。

「あっ...あぁ...」もはや悲鳴にすらならない声を出しながら私の意識はそこで途切れた。



--------------------------------------------------------------------------------------------------------



夢を見た、嫌な夢だ。地面に頭から落ちる。そして頭がザクロのように弾ける瞬間。

目が覚めた。今日は続けて悪夢を見る日だ。「喋る犬が居ると思ったらその下から人間の顔が出てきて、しかもそれに加えて飛び降りる夢までなんて」


「少なくても前者の喋る犬周りは間違いなくあったことですがね」「そう、あんな夢みたいな犬が現実な訳が----」


思考が完全に止まる


「確かに先ほどは失礼いたしました。あなた様の前にいらっしゃったのが犬のお客様でしたので少々対応を遅れてしまいました。」


「ヒィッ!!!」手元にあった枕を全力で投げつける。


「おっと、そんな急に動いたら危ないですよ?まだ大人しくしていないと」私が投げた枕は犬(?)にヒョイっと躱される。


「貴方誰なんですか!警察に通報しますよ!さっさと私を家に帰してください!」


張り裂けんばかりの声で私は犬男に叫ぶ。しかしながら犬男は飄々とした様子で言う。


「そうですね、まず第一にここは有限会社無間で、私はそこのオーナーを務めている者です。

 第二に警察に連絡は難しいのではないでしょうか?ここは電話繋がりませんし。

 そして第三に帰るとおっしゃられましても、もし帰れたとしても少々その風貌では厳しいかと。」



そう言って  犬男が  差し出してきた  鏡には  脳症をぶちまけて  頭の半分が欠損していた 私の姿 わたし? これがわたし?



--------------------------------------------------------------------------------------------------------


「落ち着きましたでしょうか?」


犬男が私に声をかける。何をどう落ち着けというのか、現実離れした事しか無い。犬が話しかけてきたと思ったら人の顔になって、

そして鏡を見たら頭の半分が無くなっている私が映っていて、くだらないジョークだ。嫌な夢だ。早く目を覚まさなければ。


「自分と致しましても、お客様の記憶が混乱して気が立っていらしたようなので落ち着かせる為にさせていただきました。」


あぁ早く目が覚めてくれ、こんなクソッタレた悪夢はさっさと終わらせていつものように会社に行かせてくれ。


「ふむ、どうやら落ち着かれたようなのでもう一度自己紹介と説明をさせていただきます。

 ようこそいらっしゃいませ、有限会社無間へ。自分はここのオーナーを務めさせて頂いております、以後お見知りおきを。

 ここでは輪廻転生される前に、亡くなった貴方様の望みを""どんな願いでも一つだけ""叶えさせていただきます。

 ただし、どんな願いでもと言いましたが例外は勿論ございます。まずは生死に関係する事、要するに蘇生するといった事は受け付けておりません。。

 次に願いの個数を変更する事、よくいらっしゃいますが願いを100個にしてくれといった願いは無効となります。

 これらを除けば例え未知の事であっても叶えてさしあげますので、しっかりとお考えになってお決めくださいませ。」


待て、この犬男はなんと言った。輪廻転生?亡くなった?望みを叶える?


「そもそも私は死んでません!こんな茶番はもう結構です!早く私を家に帰してください!」


もう嫌だ、付き合いきれない。私はもう帰らないといけないんだ。


「ふむ、まだ記憶が混乱しておられるようですね。大丈夫です皆さん初めはそうですので。

 幸いなことに時間は幾らでもあります。気持ちの整理がつきましたらまた私をお呼びください。

 お客様の記録はベットの横に置いておきましたのでご確認くださいませ。それでは失礼いたします。」


 そう言って犬男は部屋から出ていった。

 一人になった私は、この悪夢から目を覚ます為にもう一度ベットに意識を預けた---。


つづくかな?

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