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ICOR  作者: 寝起きのねこ
6/9

No.6

3月28日…

2人はあるビルの前にいた。

「ついに来たか…」

「あぁ。地図の場所的にもここで間違いない。」

ソルトのつぶやきにルーイは空を睨みながら答える。

「約束されたカナンの地に俺たちはやってきた。」

「随分と上手い言葉遣いを覚えたじゃないか。」

「うるせえやい。」

ソルトは苦笑しながらルーイの体を軽く殴る。

ガラスの自動ドアをくぐって受付嬢に話しかけた。

「いらっしゃいませ、ご用件は何でしょうか。」

「約束されたカナンの地に神の血を降らせに来たんだが…」

それを聞いた受付嬢は無言で引き出しを漁るとカードを渡す。

「エレベーターホールでこちらのカードをボタンにかざしてください。カナンの地はすぐに見つかるでしょう。」

受付嬢は軽く微笑みながらルーイにカードを渡す。

ルーイはそれを興味深そうにあちこちから観察している。

「ほら、行くぞ。」

受付の前から動こうとしないルーイをソルトは引っ張ってエレベーターに連れて行った。

エレベーターホールに着くとルーイは教えてもらった通りにカードをかざす。

その瞬間、エレベーターが到着した音を立てて扉が開いた。

2人は警戒しながら中に入る。

何処からか見られているかのように2人が入った直後に扉は閉まり、このビルにある筈のない地下へとエレベーターは動き出した。

「普通のカメラで捕らえている訳では無いらしい。どうやら、サーモグラフィ(温度探知カメラ)で計測しているみたいだ。」

ルーイはビルの前と同じように空を睨みながら言う。

しかし、ルーイの目に映っているのはいかにしてそのカメラをHackするかということらしい。

「お前、やるのは構わないけどいつまでも画面を睨んでいると壁にぶつかるぞ。」

ソルトは苦笑しながら肩を叩く。

ルーイが空をにらんでいるのには訳があった。

彼の目にはコンタクトレンズが入っており、そこ映る画面をルーイは見ていたのだった。

ひっきりなしにルーイは空を叩き、Hackを試みている。

そんなことをしているうちにエレベーターは一番下までたどり着いた。

機械的な音がしてエレベーターが開く。

「…こりゃすげえ。」

目の前に広がった光景にソルトは思わずつぶやく。

そこに広がっていたのは毒々しいカラーリングで描かれた壁。

少なくとも10の髑髏の絵がこちらを見下ろしている。

ルーイもその光景に思わず手を止めて見入ってしまった。

「これは…」

「気に入ってくれたかい?」

2人が呆然としていると全身をパンク風の洋服で固めた男が歩み寄ってきた。

「《ICOR試練の間》、俺たちは勝手にそう名付けている。」

そう言って男は手を差し出す。

「ようこそ、《カナンの地》へ。俺がKiller Crackerだ。」

「あんたが?」

「そうとも、そっちの小柄な方がルーイでもう一方がソルトかな? 何はともあれ今日は少しめんどくさい書類の手続きをしないといけないからな。こっちに来てくれ。」

そういうとKiller Crackerは2人を奥へと案内する。

応接室までくると彼は2人をソファーに座らせた。

「改めて『ICOR』へようこそ、歓迎するよ。パーシー・バルーンだ。みんなは『パーティ』って呼んでる。クラッカーに風船、思い浮かぶのはパーティしかないだろう?」

パーティはウインクすると何処からか万年筆と紙を2枚取り出す。

「さて、ここの契約書にサインをしてくれ。『誰にもこの組織のことは一切話さない』ってな。」

がらりと表情を変えたパーティは真剣な表情で万年筆を紙の上に置く。

「じゃあ俺から。」

ソルトは慣れた様子で万年筆を取るとさらさらとサインを書き込んだ。

ルーイもしばらく考えた後、万年筆を手に取ってサインを入れた。

「よし、ありがとう。君たち新入生を歓迎するよ。」

パーティは責任者の欄にサインを入れると書類をしまった。

「さて、ここからはプライベートの話なんだが、君たちのコンビは本当に脱帽だよ。君がアナログデータを削除しながら…」

パーティはソルトを指さす。

「…君がサポートしつつサーバーのデータをCrashさせる。」

今度はルーイを指さした後パチンと指を鳴らした。

「いいね、特徴の違いをうまく生かすことでお互いを支援しあい、効率的に物事を進める。俺もそろそろ相棒でも作ろうか。」

「…あんたのHackを一度見たことがある。日本政府のサーバーの侵入の時に。」

今まで黙っていたルーイが口を開く。

「おや、あれを見ていてくれたのかい? 恐らくボスの仕業だな。俺みたいな奴がどこか大きなところにHackするときは大体ボスはそれを録画してるんだ。」

「ボスに会ったことが?」

「いや、ないよ。仮に俺がベガス一のハッカーだとしたらボスは宇宙一のハッカーさ。」

パーティは苦笑しながら顔の前で手を振る。

「それより、君の腕の方が俺は気になるもんでね。独学かい?」

「あぁ。」

「今度俺に指導してくれないか?」

「…考えておきます。」

「期待してるぜ。」

会話が終わったのかパーティはソファーから立ち上がった。

「ソルト、君としては『シリウス』と話した方がよかったかな?」

「シリウス!?」

「あぁ、『ICOR』一のパルクーラーだ。」

「いや、それは知ってる。まさかシリウスも『ICOR』なのか!?」

「yean。今日はこれまで。ここに残るもよし。帰るも良し。後は好きにしてくれ。」

そういうとパーティは首にかけたヘッドホンを耳に着けて扉に向かって歩き始めた。

「あ、そうそう…ここのシステムへのHackはしないでくれよ?」

パーティはそういうと今度こそ部屋を出て行った。

呆然とするルーイを置いてソルトは部屋を走って出て行った。

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