No.5
「かんぱーい!」
ソルトとルーイはそれぞれソーダとコーラの入ったグラスをかち合わせ、一息に飲み干す。
「お見事だよ、ルーイ! お前のHackの腕にはいつも驚かされてばっかりだ!」
「そういうソルトもなかなかのパルクールだったじゃないか。」
ソルトはボトルから直接ソーダを煽る。
「さて、これで報酬はもらった訳だからしばらくはのんびりできるな。」
「あぁ、支部への勧誘もそろそろ来る頃かもしれない。」
ルーイはノートPCを操作して「ICOR」のサイトへアクセスする。
もちろんハッカー達のサイトなので、誰でも見られるわけではない。
2人とも通過儀礼を受けているのでアクセスできるだけである。
サイトにある「メルクリウスへのミッションについて」というバナー(指定されたサイトへ飛ぶURL)をクリックして確認する。
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今回の成功者たちに以下の報酬を受け渡す。
Solt8207
Loy9347
Alt4058
Meiwang407
Sop285
Swing9844
Leoqwat730
Dmaie3635
Hkwangma3243
Gmaien9149
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以下の成功者は支部ハッカーへ昇格する。
詳細は付近の支部からのメッセージを送る。
Solt8207
Loy9347
Swing9844
Leoqwat730
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「おい見ろよ! 支部のハッカーになれたぜ!」
「そのようだな。きっちり報酬も入っているし支部の方からもメッセージが来てる。」
ソルトはスマホを片手にソーダをグイ飲みし、ルーイはノートPCでメールを確認している。
2人の目にはそれぞれ覚悟が宿っていた。
「で、どうだルーイ。メールは来たか?」
「あぁ、それにどうやら暗号として送ってきたみたいだ。」
ルーイの画面の前には意味をなしていないアルファベットが並んでいた。
しかし、ルーイが変換ソフトにかけた途端、その画面にはメッセージが浮かんでいた。
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ようこそ「神の血」へ。
この暗号を解いたということは約束されたカナンの地に君は招待されたわけだ。
いや、君はSolt8297とコンビだったね。
そうなれば「君たちは」といった方がよかったのかもしれない。
ここでは、「一般参加」から「組織参加」として、大っぴらに組織を名乗ることが出来る。
だが、お金を盗む類の小さなことは個人の名前でやってくれ。
何でもかんでも「ICOR」の所為にはされたくないからね。
「ICOR」を名乗るのはボスが指示を出した時だけだ。
さて、私もHackに関しては少し知識を齧っている。
ほんの少しだけ齧っているからこそあの腕は称賛に値する。
相方の手際の良さも見事なものだ。
3月28日に組織へ来てくれ。
君たちを歓迎しよう。
入学生はいろいろな準備が必要だろう?
最初が大変なんだ。
入学して何日か経てば慣れるだろう。
改めて君たちを歓迎するよ。
ICOR サンフランシスコ支部 支部局長Killer Cracker
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「おい見ろよあの伝説のハッカー、『Killer Craker』だぜ!?たった1人で日本政府のサーバーをHackして極秘情報を闇市へ漏らすだけ漏らした後にソース1文字残さずCrashさせたあの! なにが『ほんの少しだけ齧っている』だよ!」
ソルトは興奮したように声を上げる。
「なんてやつが支部局長をしてんだよ…」
ルーイも驚いたように目を丸くする。
その夜、2人は朝まで祝賀会を続け日が昇るころに眠りについた…