No.1
「ルーイ、調子はどうだ?」
「悪くない。」
「またResistしてたのか?」
「あぁ。」
「で、何処のサーバーだ?」
「メルディラート。」
「ほう、そいつはまたでかいところにちょっかい掛けたな。」
「……」
「おいおい、反応くらいはしてくれよ。」
「少し静かにしてくれないか、ソルト。」
「へいへい。」
そういうとソルトと呼ばれた男は勝手に冷蔵庫の中を漁り炭酸水を取り出す。
キャップを捻ると心地よい音と共に詰まっていた炭酸が抜ける。
「終わった。」
ソルトがペットボトルを傾けているとルーイと呼ばれた男が呟き、ゲーミングチェアを傾けて大きく伸びた。
「結果は?」
「成功。セキュリティの破壊。」
「ほう、それはめでたいな。今日は乾杯だ。」
そういうとソルトはルーイにコーラのボトルを投げて渡すとごつんと自分のボトルにぶつけた。
時は西暦2XXX年。
人類は電脳に支配された。
高度なAIが自主的に考え、行動し、そして人間に指示を出す世界。
人間たちは安心したようにAIの守護の中、暮らしていた。
しかし、AIは成長し過ぎた。
今や国との外交もつかさどり、政府の役人もAIの傀儡となった。
そんな中、抵抗しようというものが突如として現れた。
彼らは各々の武器を手に取り、時にネットの世界で、時に現実でAIの枷を破壊しようともがいた。
電脳時代、マシンの危険性すらも人間が考えることを放棄した世界で彼らのリーダーはAIに宣戦布告した。
「I'm Crash Hack of Resisrance.」
通称「ICHOR(神の血)」と呼ばれる。
2人はそんな「ICHOR」の一員だ。
ソルトは実働部隊、ルーイはその補助やシステムへの攻撃を行っている。
「なあルーイ。そろそろ俺らも支部へ誘われる頃かね。」
ソルトがルーイに言う。
「ノルマを満たしていない。」
「それもそうか。」
そういってソルトは笑う。
豪快に炭酸水を飲み干すと、ベッドに横になった。
「俺は少し寝るよ。」
「おやすみ。」
「お前も少しは寝ろよ?」
「まだ起きてる。」
「馬鹿言え、もう5日も起きたままだぞ。少しは目もいたわれ。」
「分かった。」
そういうとルーイはPCの電源を切り、もう1つのベッドに横になる。
古ぼけたベッドがぎしぎしと嫌な音を立てる。
2人は窓の外に広がる夜景の中で眠った。
これは、2人の「抵抗者」を追った物語。