右腕探し
同じ高校に通う其田優樹菜、吉田優磨、河世美蘭の幼なじみ3人。
幼なじみというのもありいつも一緒にいる3人。
そこに謎の転校生の蓑田魅那兎が加わる。
美蘭の提案で魅那兎を交えた4人で流行りのゲームである『右腕探し』をやることに。
「ゆーきーなっ!おはよ!」
「美蘭おはよう!」
「はぁ〜…。優樹菜は今日も可愛いなぁ!」
「みーらーん?そういうこと簡単に言わないのー」
「えー?ほんとのことだよぉ?」
「美蘭のほうが断然可愛いから」
「ほんとぉ?!ありがとぉ!優樹菜大好きぃ!」
「ありがと、私も美蘭のこと大好き」
そんなことを話しているといつの間にか来ていた優磨が私たちに声をかけてきた。
「よーっす」
「あ、おはよう優磨」
「優磨くんおはよぉ〜」
「おう」
「あ、そういえば今日転校生が来るらしいよ!」
「まじで?!男?!」
「そこまでは知らないけど怖い話が好きらしいよ。もしかしたら今流行りのゲームができるかも」
「流行ってるゲームって右腕探し?!」
「まじか!」
キーンコーンカーンコーン…。
「チャイムなっちゃったからまた後でねぇ!」
そう言って少し離れた席に戻っていく美蘭。
しばらくすると教室のドアが開き先生が入ってくる。
「ホームルーム始めるぞー。全員座れー。えー、早速だがみんなに発表がある!もう知っていると思うがこのクラスに転校生がきたぞぉぉぉ!」
先生の言葉に男子が反応して声を挙げる。
「うぉぉぉぉぉ!」
「転校生といえば!可愛い女子!」
女子って決まったわけじゃないのに男子ってほんと単純。
「せんせー!早く転校生に会いたいでーす!」
女子も負けずに声を出す。
「私もー!イケメン男子がいいなぁ!」
「たしかに」
「では。転校生入って!」
先生がそう言うと教室に転校生が入ってくる。
転校生は黒板の前に立つとチョークで自分の名前を書く。
「蓑田魅那兎です。これからよろしくお願いします」
魅那兎君…かぁ。
ミステリアスな雰囲気だな。
「蓑田の席だが、其田の横でいいか?」
え、私?
「僕は大丈夫です」
「其田もいいか?」
「あ、はい」
彼、魅那兎君は私の横に座る。
「よろしく」
「あ、うん!よろしく!」
そこから話題が見つからずにいると魅那兎君が声をかけてくれた。
「あんたって怖い話とか七不思議とか好きなの?」
「えっ?あー、好きっていうか友達の美蘭って子の影響で自然に好きになってたっていうか」
「へぇ〜。この学校では何が流行りなの?」
「最近では『右腕探し』かな〜」
「右腕探し?」
「うん。右腕探しっていうのはね…」
私が説明をしようとすると先生にバレたみたいで注意をしてきた。
「其田と蓑田喋ってないでノート取れー」
やば。
「すいませーん」
「すいません」
それから私達は一言も喋らず授業に集中した。
キーンコーンカーンコーン…。
「やっと終わった〜!」
授業が終わると魅那兎くんが話しかけてくる。
「さっきの話の続きしてくれる?」
「あ、うん。でも美蘭のほうが詳しいよ?」
「みらん…?」
「私の友達。ちょっと待ってて」
私は魅那兎君にそう伝えると美蘭の所に行った。
「み〜ら〜ん!魅那兎君が右腕探しのことききたいって!」
「そうなんだぁ!私が説明したほうがいいかんじ?」
「お願いできる?」
「もちろんだよぉ!早く行こっ」
「うん!」
私と美蘭は足早に魅那兎のもとへと向かった。
「魅那兎君!この子が美蘭、私の友達だよ」
「はじめましてぇ!河世美蘭っていいまぁす!美蘭って呼んでねぇ!よろしくぅ!」
「あぁ。よろしく。俺も魅那兎でいい」
「魅那兎はぁ、右腕探しに興味あるのぉ?」
「あぁ。やってみたいと思ってる」
「そっかそっかぁ!じゃあもう友達だねぇ!」
「美蘭…、友達の基準おかしいよ…」
「えぇぇ?!」
「それこっちのセリフだよ!」
ほんと美蘭って謎だなぁ。
「そんなことよりぃ!右腕探しのお話をしないとぉ!」
「そうだね」
「それではぁ、お願いします!」
「頼まれました。右腕探しっていうのは最近流行りのホラーゲームのこと。条件があるんだけど簡単なゲーム」
「条件?」
「まず天気が絶対条件」
「天気?」
「そう。右腕探しの女の人は雨の日しか出てこないの」
「雨の日?」
「さすが魅那兎君。察しがいいね」
魅那兎君の思ってる通りだよ。
「へぇ。他にも条件があるのか?」
「うん。人数だよ」
「人数?あるあるだけど1人でするとどうなるんだ?」
「あくまで噂なんだけど、恐ろしいことが起きるらしいよ。帰り道も1人で歩いてるとその女の人に出会っちゃうの」
「ふーん。で?そのゲームいつやるんだ?」
「具体的なことはまだ決めてないけどちょうど雨降ってるし今日やっちゃう?」
私がそう言うと美蘭は声を上げて喜んだ。
「私さんせーいっ!優磨くんも魅那兎くんもやるよねぇ?」
「俺はやるよ。面白そうだし」
魅那兎くんって案外物好きなのかな…。
そんなことを考えていると美蘭が聞いてきた。
「どこでやるのぉ?」
「うーん、言い出しっぺ私だし私の机でいいよ」
私達はまだ気づいていなかった。
右腕探しがどれほど恐ろしいゲームかということを…。
「ホームルーム終わるぞー。気をつけて帰れよー」
先生のホームルーム終了の言葉を合図にみんなそれぞれ帰っていく。
もちろん私達も。
「それじゃ、始めよっかぁ!」
「そうだね。じゃあみんな、右腕を服の中に入れて」
魅那兎くんが不思議そうに聞いてくる。
「なんで服の中に右腕を入れるんだ?」
「あとでみんなで私たちには右腕がありませんって言うからだよ」
「なるほど」
「準備はいい?」
私がそう聞くとみんな頷く。
「私たちには右腕がありません。ですが、莉実さんの右腕を絶対に探し出します。なので出てきてください。こう言うんだよ」
「長いな〜」
「しょうがないよ。いい?せーので合わせるよ」
みんなうなずく。
「せーの」
「私たちには右腕がありません。ですが、莉実さんの右腕を絶対に探し出します。なので出てきてください」
急に黒いモヤがかかった。
強く目をつぶった。
しばらくすると辺りが静まった。
恐る恐る目を開けると目の前には大量の車が行き交っていた。
さっきまで学校にいたのに…。
そういえばみんなは…?
辺りを見回しても美蘭たちの姿はなかった。
美蘭たちを探していると
「キャーッ!」
という声が聞こえた。
声のした方を見ると女の人が倒れていた。
もしかして、と思い倒れている女の人に近づく。
私はその女の人をみて息を呑んだ。
「優樹菜!」
呼ばれた方を見ると優磨がいた。
「優磨…。みんなは?」
「見つかってない」
「そんな…」
「それより、この女」
「うん…。優磨もそう思う?」
「あぁ。俺はみんなを探してくる」
じゃあ私はもう少しこの辺にいるね。
何かわかるかもしれないし。
「わかった。またあとで」
女の人の持ち物を探していると血で赤く染ったカバンをみつけた。
「これってあの人のカバンだよね…」
恐る恐るカバンの中を確認する。
「これって免許証だよね…。名前は……」
名字は血がついていて読めなかったが名前だけは読めた。
『莉実』
間違いなく間違いなくそう書いてあった。
ピーポーピーポー…。
誰が呼んだのかわからない救急車が来た。
救急隊の人が近づいてきてこうゆった。
「君、この女性の知り合い?もしそうだったら病院まで着いてきてほしいんだけど」
知り合いなんかじゃないけど行くしかない。
「分かりました」
女の人、莉実さんを轢いたトラックは近くのお店に突っ込んでいた。
怪我の手当を受けながら警察の人と話しをしているのが聞こえてきた。
「急にブレーキが効かなくなったんです!」
そう話しながら震えている。
「ブレーキが効かなくなるなんてドラマの世界みたい…」
そう呟いたのが聞こえたのか、近くに居た警察官が答えてくれた。
「たまにいるんだよ。でも、この耳で聞くのは初めてだ。そんなことより、早く救急車に乗りなさい」
「あ、はい。ありがとうございました」
お礼を言ってから救急車に乗る。
「ここから10分の場所に病院があるのでそこに行きます」
「わかりました。よろしくお願いします」
これで、これでやっと謎が解けるー。
はずだった…。
急に目の前が暗くなり意識が遠のく。
パーッ。
車のクラクションの音で意識が戻る。
「どうして…?莉実さんはトラックに轢かれて死んだはずじゃ…?!」
ハッとして隣を見ると莉実さんが立っていた。
「もしかして…?!」
莉実さんが助かるまで繰り返されるんじゃないか。
普通なら有り得ない。
莉実さんの世界だからこそ有り得ることだ。
「あくまで仮説だから確証なんて持てないけど…。もしそうなら早くここから離れないと…!」
私は慌てて莉実さんに声をかける。
「あの…莉実さん…ですよね…?」
莉実さんは誰?とゆうような顔をしている。
「莉実さんのお知り合いの方に莉実さんに伝言を伝えてもらうようにって頼まれたんですけど今お時間大丈夫ですか?」
私がそう説明すると納得したような顔をして右腕に付けている腕時計を見た。
そして口を開いてこう答えた。
「大丈夫よ。立ち話もなんだし近くの喫茶店でお茶でもしながらお話しましょ」
初対面の人にお茶でもしながらお話しましょなんてゆう人いるんだ…。
そんなことより接触できたし早くお店見つけないと。