表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界送りの奇妙な事件簿~トイレに行こうとしただけなのに異世界へ送られました~  作者: ホットティー
1章 トイレに行こうとして異世界へ
9/35

#9 エンジェル・ダイバーpart3

 場所を変え、リリッドパークと呼ばれる公園。

 マクシアンは売り物であるはずのホットドッグを頬張りながらダニーの話を聞いていた


「……なるほど、エンジェル・ダイバーね」


 指についたケチャップを舐めながらしばらく考える。


「それは骨董品だ。違法になったのもそうだがトリップ時間の短さに比べ致命的な欠点があったんだ。『素材』だ。ミラージュビースト。この国じゃ西海岸周辺の森林地帯にしか生息していないカメレオン型の魔獣だ。そいつの体液が生成に必要だった」


「そうだな。狩猟にはそれなりの技術がいる。コストがかかる。だからこそ裏でこそこそ作るメリットがなかったわけだな」


 ダニーの言葉に元神官剣士は頷く。


「だから、ギャングだって扱ってやしない。だが、麻薬として流行った時代に蓄えてたやつの所にはあるのかもしれないぜ?そいつが小遣い稼ぎに流したのかもしれないし『全く意図しない形』で流れたのかもしれない」


「なぁ、ホットドッグ屋。その意図しない形ってのはどういうことだ?」


「そいつはなぁ新入り。ガキってのは好奇心の塊だ。そして時に愚かなわけだろ?どこかで見つけちまったのかもしれない。白い粉だ。興味が沸いたのかもしれないな」


 なるほど、と響一郎は思った。

 つまり死んだ大学生が立ち寄った場所にエンジェル・ダイバーがあり偶々それを見つけ興味本位で使用してしまったということだ。

 だが……


「大学生が寄るところなんて無数にあるはずだ」


「その通りだ新入り。ところがだ、この俺が、マクシアン・ベリーホットドッグが」


「お前、そんな苗字を取得してたのか……確か元はグレイチェルとかいう名家の出だろ」


 どうやら苗字の習得は意外にいい加減らしい。

 話の腰を折ってはいけないと思い敢えて突っ込みはしなかったが…


「過去は振り返らないってのが信条だからな。おっと話を戻すぜ。俺は死んだ大学生ってのを見たことがある。あいつはな、熱心に教会に通ってたんだ。ただ信仰心からじゃねぇ。『ボランティア』をしてたんだ。ボランティアをしていると就職に便利だからなぁ」  


 どこの世界も若者が考えるのは同じことだな、と響一郎は思った。

 むろん、真剣にボランティアを行っているものも多いのだが一定数そういう考えの持ち主はいる。


「教会……教会か。なぁ、それってもしかしてさっきあんたが居た教会とかじゃないのか?」


「おいおい、そりゃいくら何でも都合がよすぎだろ……まあ、そうなんだけどな」


「そうなのかよ……」


「だが何故だ。何故教会なんかに麻薬が保管してあったんだろうか……」


 ダニーが考え込む。

 ふと、響一郎の思考が回転する。


「なぁ、ダニー。あの教会、少し気になったことがあるんだ。見に行かないか?」


「……ほぅ?」




 そして……

 マクシアンと別れた二人は再度、通りの反対側から教会を眺めていた。


「聞かせてくれ、何を感じた?」


「そういうことがあるのかはわからないがこの教会、本来は教会として建てられたものではないんじゃないか?何か外観が教会っぽくない気がするんだ。例えばそう、『歯医者』。そういったものの建物を再利用してるとかはないか?」


「歯医者……確かに言われてみれば昔、娘を連れて言っていた病院とかはこういう外観だった気がする」


 改めて教会を見る。

 建物に病院の看板などをつけてみても何ら違和感はない。

 むしろしっくりくる。

 ただ、歯科医院から教会というビフォーアフターが中々にぶっとんでいるとは思っていた。


「俺の世界じゃ開業歯科医院って威厳や格調を重視した建物が多くて存在感が強かったんだ。だけど最近じゃそういうものではなく『親しみやすさ』や『気軽さ』を強調した建物が多いって本で読んだことがあるんだ。もしかしてそういう意味で教会にリフォームしたのかもしれない」


「なるほど……よし、ちょっと待ってくれ」


 マクシアンは空中にフレームを展開し誰かと通信していた。

 そして数分後。


「君の言う通りだ。この教会は5年前まで歯科医院だったんだ。歯医者を再利用した教会だと一時期話題になったらしい。そしてエンジェル・ダイバーだが……歯の治療で使われている時期もあったらしいぞ」


「大学生がここでエンジェル・ダイバーを入手した可能性が出てきたってことだな。だけど只の推測だ。捜査するにはやっぱ礼状ってのがいるんだろ?」


「その通りだ。だがキョウ、窓のところを見ろ」


 指さす先へと視線をやる。

 カーテンが少し開いており誰かが覗いているのが分かった。

 中が暗いためか顔までは見えないが明らかに誰かがのぞいている。

 そしてこちらに気づいたのかカーテンが素早く閉じられる。


「俺達の動きを探っているやつがいる!?いや、だがそれはあくまで推測でしかない。曖昧な根拠では動けないんじゃないのか」


「その通りだ。とても利口だな。だがこの状況、僕は『敢えて』動くッ!!」


 宣言と同時にツカツカと大股で歩き出す。


「え?え?ちょっと……どういう……えぇ!?」


 唖然としつつも追いかける響一郎。

 ダニーは教会の扉を3回ノックすると。


「失礼ッ!!」


 返答を待たず力強く開け放つ。


「ええッ!何その猪突猛進!?」


「そんなことはどうでもいい。それより見てみろ、クレイジーな光景だぞ」


 ダニーに促され中を覗く。

 そこには教会らしからぬ光景が広がっていたのだ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ