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異世界送りの奇妙な事件簿~トイレに行こうとしただけなのに異世界へ送られました~  作者: ホットティー
1章 トイレに行こうとして異世界へ
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#8 エンジェル・ダイバーpart2

エンジェル・ダイバー

およそ30年前に外科手術用麻酔薬として開発された薬物である。

但し麻酔から覚醒する際に強力な妄想や解離感覚が生じるため使用が中止された。

その作用に目を付けられ幻覚剤として乱用されるようになったが……


「エンジェル・ダイバー自体は過去の代物だ。一時期すさまじい勢いで流行ったがトリップ時間がそれほど長くなくて廃れたんだ」


「じゃあ今はマイナーってことか?」


 ああ、とダニーは頷いた。

 二人は朝焼けを浴びながらとある小さな教会前にやって来た。


「さて、裏の事ならいい相談相手がいる」

 

 教会の前には移動販売車が停まっておりラジカセを抱えた大柄な男が立っていた。

 浅黒い肌にドレッドヘア。奇妙な紋章が描かれたシャツを着ていた。

 登り旗には「ホットドッグ」の文字が。

 

「やぁ、マクシアン。元気かい?」


「オゥ!旦那じゃねぇかい。俺っち超元気ってやつYO」


「屋台に音楽ガンガン……ホットドッグ……まさかさっき言ってた神官兵士ッ!?いやいや、神官って感じが全然しないぞ。もう転生させてキャラメイクしなおしたって言ってもおかしくないくらいじゃないか!!」


「ヘイッ!何だい旦那そのボーイは?」


「ウチの新人だ。お前と同じ転移者だ。まあ、世界は違うようだがな」


 オゥ、と大げさなリアクションを取るマクシアン。

 頭痛を感じながら響一郎はため息。


「ボーイも大変だねぇ。俺もさ、いきなりこの世界に飛ばされてマジでビビったね。ビビッと来たよ。車を見て鋼鉄のドラゴンだって斬りかかってパクられてさぁ」


 そう言いながらホットドッグを包み始める。


「ムショでつとめて出てきて出会ったのがこいつよぉ。俺のソウルメイトだな。こいつを色々な教会の前で売ってるのさ」


「何で教会の前で……」


「やっぱ教会が懐かしいのかねぇ。信じる神は違うけどこうやって傍に来ちまうんだ。同じ様に神を信仰して教えを広める。一種の戦友ってやつかな」


 瞬間。

 勢いよく開かれた扉から頭部から2本の角を生やした老神父が出てきて怒鳴りつけた。


「えぇい、毎日教会前で低俗な音楽をかける目障りなウジめ、さっさと立ち去らんか!!」


「うっせぇ、この禿げ神父が!!」


 中指を立て口を尖らせる。


「無茶苦茶仲悪いじゃねぇか!!」


 思わずツッコミを入れてしまっていた。

 ダニーはそんな様子お構いなしで二人分の小銭を販売車のカウンターに置きホットドッグを響一郎に勧める。


「まあ気にするな。このやり取りはいつものことだ。それより腹ごしらえでもしておけよ」

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