#32 エリザベス・グッドウィンからは逃げられない~part3~
ダニーの愛娘、エリザベス・グッドウィン。
愛称はリズ。
初見から数分経つがわかったことがいくつかある。
ひとつ、彼女はギフト能力者である。
どのような能力かは謎だが家の電気が次々についたのは彼女の能力とみていいだろう。
無論、別の可能性もある。
元居た世界ではIT技術により家電の遠隔操作が可能であった。
それに類似した技術が使用されたという事もあるだろう。
だが、響一郎は確信していた。
リズは能力者である。
引き合うものを感じるのだ。
ひとつ、彼女は父親から響一郎が居候していることを知らない様子である。
つまり、彼女にとって響一郎は存在すら知らない他人。
不審者である。
ましてやこうやって隠れている状況。見つかれば間違いなく『変質者』扱いである。
ひとつ、リズは年齢の割に発育が良い。
ダニーは『ヨウジョ』と称していたがどうやらその定義を確認する必要がありそうだ。
顔に幼さこそ残るが幼女とは呼べないだろう。
とここまで冷静に分析していたが……
「見つかるのはヤバい。今、この娘『始末する』とか言ったぞ……本気でやりそうだ」
仮に始末されなかったとしても社会的に抹殺されそうだ。
ニュースに出るかもしれない。
見出しはどうだろうか。
<異世界出身の捜査官、女子中学生にいかがわしい行為を行い逮捕、ありだと思います>
久々に専用のコール・フレームが出現する。
しかも今回は特にスキルを習得したお知らせなどではなく単に煽ってるだけである。
「自我あるよな絶対……ていうかいつもの働きはどうしたんだよ…」
<気配隠蔽スキルを習得しました………覗きは犯罪ですよ>
「これ絶対その内、ナビゲートしてるやつが出てくるパターンだな。女性キャラとして……」
やや緊張感に欠けたことを考えているも状況は悪い。
何せ不審者がいることに対しこの中学生は逃げるのではなく立ち向かうことを即決した。
実にありがた迷惑な頼もしさだ。
「『ユー・ノー・マイ・ネーム』、展開!」
リズが呟くと同時に身体から何かが様々な方向に飛び散っていった。
恐らく呼んだ名前はリズのギフト能力だろう。
「やはり能力者か……だが何を展開したんだ?」
リズの下着姿に目がいってしまうが目を凝らし周囲を観察する。
すると脱衣所の至る所で小さく黒い『手』が動いていた。
大きさにして小学校に入学したての女の子くらいだろうか。
「手……だと!?まさかあれで探索してるのか。不審者の存在を探索してる!!」
その手が響一郎が隠れている棚まで這い上がって来た。
「近づいている!あれで隅々まで探るつもりか。いや、だがこの狭い棚に隠れることができる人間は常識的にありえない。息をひそめて奥に入ればやり過ごせるか」
ゆっくり。
音を立てない様棚のさらに奥へと移動していく。
『手』が棚の入り口を探っている。
問題はない。
奥までは来ない。
そう考えていたが手はすっと開き掌をこちらに向ける。
そして……
「見ーつけた」
聞こえてきたリズの言葉に血の気が引く。
そして気づく。
開かれた掌に目が一つ、こちらを睨んでいたのだ。
そして目が消えると今度は掌から腕が伸びてきて響一郎の腕をつかんだのだ
「うぉぉぉぉぉ!?な、なんだこいつの能力は!?」
そしてすさまじい力で手ごと棚の外に引きずり出される。
「音がした……だから『目』を『転送』させて確認させてもらったの。その姿は……驚いた。ギフト能力者ね?」
錐を揉むような鋭い視線が響一郎に向けられ。
「この変質者!!」
全く言い訳のしようもない怒声が浴びせられた。
<変質者スキルアップです。おめでとうございます>
「め、めでたくないッ!!」




