#28 クワイエット・ドライブ~part5~
「刑事……そうか、あんた覚えてる。父さんたちの事件を捜査してた刑事さんの1人だな」
ダニーは頷く。
「残念ながら事件を解決に繋げることは出来なかった。力不足を感じたよ。そして月日がたち、復讐者となった君と再会にすることになるとはな」
ティムは眼をつむり大きく息を吸い込む。
「そうだな、恐らくとぼけたところで無駄なんだろう。認めるよ。俺が、ホートンを殺した。そして今、もうひとりも能力で襲っているところだ」
「潔いな。話が早くて助かるよ」
「なぁ刑事さん、ここは見逃してくれないか?」
ほう、とダニーは呟いた。
「確かに父さんがやってた事は褒められたことじゃあない。だがだからと言って命を奪われるのは理不尽だ。俺はあの夜父親と母親、そして姉。家族を一度に喪ったんだ」
ダニーは無言で運ばれてきたカプチーノに口をつける。
「奴らはあの事件の後も違法行為などに手を染めてきたクズだ。俺はあいつらを許せない。家族の敵を討ちたい、ただそれだけだ。終わったらあんたの所に自首するよ。わかるだろ?」
「わからんな。僕はお前を捕まえる。それだけだ」
一言。
一言でダニーは切り捨てた
その冷たい視線にティムは眼を見開く。
「さて、君はドラマみたいに同情されつつ『家族が悲しむ』とか『家族が今の君を見たらどう思う』とか言って欲しかったのかな?ハハ……笑えるね。そんな赤の他人からの説得で思いとどまるなら苦労はしないさ」
「冷たいんだな」
「確かに家族を奪われた事には同情するさ。犯人を捕まえたいとも思った。だが君は道を間違えた。ホートンを殺したことで君もまた、犯罪者のひとりに過ぎないのだとわかっているのか?」
「それでもッ!俺は、俺は奴らを許せない。奴らを抹殺しないと俺の中にある復讐の炎は消えないんだ」
「もう一つ。復讐を果たしたとして、だ。君の家族の居場所は永遠に謎のままになるぞ」
何、とティムの動きが固まる。
「君の家族はまだ見つかってない。恐らく彼らがどこかに遺棄したのだろう。知りたくはないのか?」
「う……」
「遺棄現場を知っている人間は既に一人死んだ。そして君は今まさに見つかる確率を減らそうとしているわけだ」
ティムの腕が小刻みに震える。
明らかに動揺していた。
「さぁ、どうする?ちなみに忠告をしておくと、だ。周囲を見てみろ」
気づく。
ティムの周りには風船が漂っていた。
「僕の能力だ。ナイフやクギを数本、『風船』にした。解除すれば元に戻り君に突き刺さるぞ」
「脅迫か……本当に警察官かよあんた……」
「もちろん、愛と平和を愛するおまわりさんさ。さぁ、どうする?」
深呼吸。
ティムは眼をつむり、紡いだ。
「……俺の負けだな。なぁ、頼めるか?父さんたちを見つけてくれるって」
「ああ。見つけてやる。今度は連中を逃がさないさ」
「そう……か。じゃあ頼むぜ。ダメだったら……化けて出るからな」
「何ッ!……今…今、何と言った?」
ティムの言葉に違和感を感じた瞬間だった。
ティムの胸を衝撃が貫く。
「な、何だとッ!これは……ティ、ティム!君は……」
「こういう『契約』をしてたんだ。俺が敗北してあんたらに拘束されそうになったらこうしてくれってな」
「そ、狙撃ッ!くそッ、こんなことが……」
「約束したぜ、刑事さん。見つけてくれよ。俺の家族…………」
ティムはゆっくりと眼を閉じ……そして二度とその眼を開けることはなかった。
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ティム・ブラケット(死亡)
職業:復讐者
ギフト名:クワイエット・ドライブ
属性:妖精
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