#27 クワイエット・ドライブ~part4~
「何をやってるんだァァァ!!」
「ち、違うんだッ!慌てちまって思わず上に逃げちまったんだよ!!」
状況は悪化した。
上へ行くならば変わらないのだ。
響一郎は舌打ちをし、追いかける。
追いかけつつ思考を巡らせる。
そして……
「ケベル、次の階で非常口へ走れッ!質問・反論は受け付けない!!」
言われるままに次のフロアに突入すると非常口目掛け走る。
響一郎が続き、クリオネがゆらゆらと追いすがる。
「開けろッ!思いっきり、開けるんだッ!!」
非常口が勢いよく開かれる。
そして……
「オーケー、しっかりと見えたぜ」
人差し指を銃の様に構えるクリスの姿があった。
そして放たれる銃弾はクリオネの頭部、触手の回転していない根元を次々と打ち抜いていった。
「GYAAAAAAAAAAAAA」
悲鳴と共に触手が床に落ちる。
「おっと紹介しとかねぇとな『ローン・サバイバー』。それがあたしの能力の名前だぜ、クリオネちゃん」
「ナイスだクリス」
「おいおい、そんなありきたりな言葉はやめてくれよ。そうだな、EXCELLENTって言ってくれなきゃな!」
更に撃ち込まれる銃弾。
ゆっくりと地面に落ちていくクリオネ
ケベルは唖然としてその状況を見ている。
「さて、新人。『タイプ:オートトラック』は初体験だよな?先輩であるあたしが説明してやる。こういうタイプの奴は基本的にいくらダメージを与えても本体の『生命に』影響はない」
「つまり『生命以外』には影響があるってことでいいのか?」
「そういう事だ。破壊されれば相手の精神には大ダメージだ。再構成には結構精神力を使うぜ。その分頑丈な奴が多いんだが……」
更に銃弾が撃ち込まれる。
「銃は強し。だな。『ローン・サバイバー』のパワーで十分処理できそうだ。どうだ、頼もしい先輩だろう」
「ああ、全くだぜ」
と言った直後。
おっと、とクリスが呟く。
口はへの字に曲がっている。
「悪い、弾切れだ。銃弾をもっと持ってくるべきだったな。SHITってやつだぜ。VERY SHIT!!」
「前言撤回だ、この馬鹿!!」
「馬鹿とは何だ、馬鹿って言った方が馬鹿だぞ。あっ、あたしも馬鹿って言ったな……賢いじゃねぇかチクショウ!」
「ダメだ。あんたの脳みそはもう手遅れだ」
「あんたら何を言い合ってんだ!!」
遂にはケベルに突っ込まれる始末であった。
「いいツッコミじゃねぇか。おっと説明が抜けてたな。このタイプの能力者はギフト生物を使役している最中は『移動が制限される』んだよ。そして他にも別行動をしている仲間がいる。そう、問題はない」
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ホテルから少し離れたオープンカフェ。
本体であるティムは焦っていた。
自分にダメージ自体は無い。
だが『クワイエット・ドライブ』が攻撃を受けているのはわかる。
そして行動に支障が出ている。
すぐに再生させねばならない。
幸いにも『クワイエット・ドライブ』には再生能力がある。
精神力を大きく使うが仕方がない。
「それにしても本当に何が起こっているんだ?」
「本当、どうしたんだろうなぁ」
ティムの向かいに一人の男が座る。
「な、何だ……」
「ああ、店員さん。僕はカプチーノを頼むよ」
何事もないように店員に注文をし、男はティムに笑いかける。
「気になるだろう?だが確かめにはいけない。それがタイプ:オートトラックの欠点だ。君は能力を解除しないとその席から立つことができない……発動前のトイレは必須だな。きちんと済ましたかい?」
「誰だ、何でお前それを……」
「自己紹介をしようじゃないか。グッドウィン刑事だ。よろしくな、ティム・ブラケット」
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