表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/35

#24 クワイエット・ドライブ~part1~

 ティム・ブラケットがルークから小瓶を受け取ったのと同時刻。

 響一郎とクリスはホテル・ヨーツカッスルに来ていた。

 19階建てのリゾートホテルだ。

 ダニーは別行動でティムを探している。


「そう言えば聞いたことがある。この辺って確かダニーの娘が通ってる学校があったな。確か聖ウルズ女学院……」


 名を口にすると同時にクリスが眉をひそめた。

 響一郎はその様子に違和感を覚え、問うた。


「どうかしたか?」


 クリスは何でもないと返し進む。


「名前からしてお嬢様学校だな」


「まあ、制服が可愛いって有名だな。お嬢様って言ったって箱入りってわけじゃないしどっちかっていうと中堅くらいだな」


「詳しいんだな」


「何回か事件で行ってる。お嬢様っていったって結局はティーンだからな。事件に巻き込まれる奴もいるんだよ」


 そう言うとクリスは写真を取り出す。

 写真には無精ひげを生やした男が映っていた。

 この男、響一郎は見覚えがあった。

 ついさっき出会った露店商だった。

 名はケベル。

 どうも模造品を路上で販売していて過去に逮捕されたこともあるらしい。


「どう考えてもこういうホテルに泊まれる奴じゃあねぇな」


「宝くじとか当てて金を追ってるのかもしれないぞ、クリス。人を見た目で判断するのは良くない……まあ、十中八九悪いことしてるだろうけどな」


「やっぱ碌でもねぇじゃねぇか。奴は18階だそうだ。馬鹿は高いところが好きって本当なんだな」


「そりゃ良かった。俺は高いところは好きじゃないから馬鹿じゃなさそうだ。泊まるならせいぜい4階くらいまでだな」


 そんなことを言い合いながら部屋の前までやってくる。

 支配人に頼んで部屋のロックを解除してもらい、中に踏み込む……が


「チッ、一足遅かったか。馬鹿は逃げ足も速いぜ」


 部屋はもぬけの殻であった。

 

「だが見ろクリス。テーブルにグラスが『ふたつ』ある。どうやら、ケベルは誰かと会っていたようだ。そいつが誰かも気になるが口紅もついていないし男かもしれない。だが重要なのは氷はまだ溶けていない。飲み物も残っている。つまり連中は慌てて立ち去ったってことだ」


「じゃあ、そう遠くへは行っていないな。追跡はまだ可能だッ!」


 響一郎は部屋から出ると廊下を見渡す。

 エレベーターは3基あるが逃走するならばあまりいい手段とは言えない

 ならば、と非常階段へ続く扉を開く。

 このホテルの非常階段は外に設置されていた。

 外へ出ると同時に階段を駆け下りる音が耳に飛び込んできた。

 視線を下に向ける。

 遥か下の方、一心不乱に階段を駆け下りる男の姿が見えた。


「クリス、非常階段だッ!降りているぞ!相手は一人だッ!もう一人はいない!どこか別のルートらしい!!」


「クソっ、今何階くらいだ?かなり下まで行ってやがるな。エレベーターで降りて行っても間に合わねぇ」


「それならやることは1つだッ!」  


 言い終えると同時に響一郎は手すりを飛び越え空中へ身を躍らせた。


「ああああ!?馬鹿かこの馬鹿ッ!!」


 混乱したクリスが叫ぶ。

 響一郎の身体は地面目掛け真っ逆さまに落ちていき……


「行くぞ、『ネバー・サレンダー』!!」


 腕を解くと3階辺りの手すりに巻きつけ地面激突ギリギリで落下が止まる。


「おっと、危なかった。もう少し『上』で巻き付けておけばよかった。少しキモが冷えたな。微妙に腕も痛い。使い方はもう少し考えなきゃあいけないな。だが……」


 非常階段を降り切ったケベルの前に立ちはだかる。


「どうやら『間に合った』ようだな。結果オーライってやつだ」


「て、てめぇはさっきのおまわり!?」


「やぁ、久しぶりだな露天商さん。ちょっとあんたに聞きたいことがあるんだ……出来れば追いかけっこはもうしたくない」


 そういった瞬間、気づく。

 ケベルの背後の空間が揺らめいていた。

 揺らめきはだんだん激しくなり『それ』は現れた。


「クリ……オネ?」


 氷の妖精と呼ばれる殻を持たない巻貝の仲間。

 それがケベルの後ろに浮いていた。

 ただ、響一郎がしっているクリオネとだいぶ違う。

 まず大きさだ。約50cm明らかにオーバーサイズだ・

 そして色、紫っぽいというか黒と言うか、不気味な色であった。

 ただならぬ雰囲気にケベルも気づき振り向く。そして巨大クリオネを見て……


「っ!あああああ!!」


 悲鳴を上げた。


「このクリオネ、魔物?いや勘でわかる。これはギフト能力だ。ホートンの反応からして奴の能力ではないな……一体誰の能力だ?目的は何だ?」

  

 腰を抜かし地面を転がりながらも逃げるケベル。

 クリオネはゆっくりと向きを変え、ケベル目掛け動き出す。


「マズイ、この動き……『標的』はケベルだッ!解るぞ、ケベルを『殺そう』としている!!」

少しでも面白いな、いいな、続きが読みたいな、と思ってくださったのなら下から評価、ブックマーク等していただけるとものすごく嬉しいです。

執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ