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#22 ある家族の秘密

 重犯罪捜査犯本部。

 ここに作戦ルームと呼ばれる一室がある。

 捜査に関する会議などが行われる場所であり、響一郎はここに来ていた。

 他にダニー、クリス、そして局長であるエリーの姿もあった。

 

「どういうことだ、ダニー。緊急事態と聞いたが……」


「その通りだ。僕とクリスが見に行った死体だが、おさらいしよう。被害者はソロイ・ホートン。26歳。ギャンブラーと言う肩書だが要するには無職に近いと考えていいだろう」


 ダニーが文字盤を操作すると空中に巨大なスクリーンが現れホートンの顔や情報が映る。


「前科持ちだな。窃盗やらでガキの頃から警察の世話になってやがる」


「警察としてはギャンブラーということでカジノ絡みの線で捜査をしている。だが僕はそうでないと考える。今から10年ほど前の話だがこいつはある事件で事情聴取を受けている」


 画面が変わり、どこかの家の現場写真が投影される。


「この家に住むブラケット一家が失踪した事件だ。玄関が開けられたままになっていることを近所の住民が不審に思うい通報。発覚した。現場には多量の血痕が残されており大半はこの家の主、ピーター・ブラケットのものだった。出血量からして死亡しているのは確実だった。そして……」


 画面にはピーター・ブラケットの他、女性が2名並ぶ。


「残りの血痕は妻のジル、娘のルーシーのものだった。この3人は現在も行方不明。妻と娘は生死もわからん。夫も遺体は見つかっていない」


 更に男の子写真が並ぶ。


「警察が捜索を始めて数時間後、家の裏にあった雑木林で当時6歳だった息子のティムが発見、保護された。容疑者の1人としてホートンが事情聴取を受けたが彼の仕業だと断ずる証拠は無かったんだ」


「容疑者の1人だったということはそれなりに怪しくはあったということか」


 うむ、とダニーが頷く。


「ホートンは行方不明になったルーシー・ブラケットと同じ高校に通っていて、交際していた事が分かっている。そして事件の前、二人が学校で言い争う姿も複数の友人によって目撃されていた。中にはケンカの結果別れたという噂もある」


「でもなぁ、喧嘩別れしたくらいで恋人とその家族を殺しちまうもんかねぇ」


 するとエリーが静かに口を開く。


「他にもブラケット一家が事件に巻き込まれる要素はありました。捜査をしていく中で、ブラケット家は会計士である夫の収入以上の生活をしていたそうです。しかし、借金をしているわけではない」


「ああ、そういうことか」


 響一郎は納得が言ったようで頷く。

 一方のクリスは状況が飲み込めてない様子であった。


「どういうことだよ。遺産が転がり込んでたとかそういうのか?」


「いや、恐らくは何かしらの違法行為に手を染めていたのだろう」


「その通りだ。よくあるのは自宅での大麻栽培だがブラケット家の場合は、『密猟』だった。ニューポッカには広大な自然保護区があるんだがそこには狩猟禁止とされているマーブルホーンというウサギがいる」


 マーブルホーン。

 それはこの国固有の種で頭に一本の角が生えているツノウサギ科の動物である。

 その角は大理石のような美しい模様を刻んでおり古くからアクセサリーなどに加工され人気であった。

 また、上質な柔らかい肉を持つため食用としても人気であった。

 しかし乱獲により絶滅の危機に瀕しており、10年ほど前絶滅危惧種として保護されるようになった。

 当然、狩猟は禁止でありマーブルホーンの角の価値は高騰した。

 

「自宅の庭にはウサギ塚があり、マーブルホーンの骨が大量に見つかりました」


「マジかよ。可愛いウサちゃんを狩るなんて最低な連中だな」


「ウサちゃんて……」


 クリスの言い方に吹き出しそうになった響一郎だったが睨まれたので慌てて口をつぐむ。


「マーブルホーンの角の密売に関するトラブル、という方向で捜査は勧められたが結局迷宮入りだ。だが、当時殺人課の刑事だった僕はホートンの仕業という線は捨てきれなかった。『こいつは何かを隠している』と感じていたんだ」

 

「ダニー、ホートンが怪しいということはよくわかった。だが今回の事件とどうつながる?」


「唯一生き残った息子ティム……彼は家族に危害を与えた連中を『見た』と言っていた。だが途中で突然『やっぱり見てない』と供述を翻したんだ。その時の目、あれは『黒い殺意』をはらんでいた」


 つまり、ダニーの主張はこうだ。

 ティム坊やは家族に危害を与えた連中を覚えていたが自身で手を下すために証言をしなかった。

 そして大きくなった彼は何かしらの方法でその一人であるホートンを殺害したのではないか。


「ケチをつけるようで悪いが根拠はあんたの勘だよな?」


「その通りだ。証拠はない。あくまで俺の勘が、成長したティムの仕業ではないかと言っているに過ぎない。科学的な根拠は何もない」


「なるほどな。根拠には乏しいな。だが『次元振動波』は確認されている。ギフト犯罪であることは間違いないだろうな」


 響一郎は講習の時に学んだ『次元振動波』という言葉を口にした。

 ギフト能力が使われた時、特殊な振動波が起こりそれが現場や被害者に残留する。

 振動波にはそれぞれ固有の波系があり、登録されているなら個人の特定にもつながる。

 重犯罪捜査犯に所属している響一郎たちもそれぞれ能力の振動波は登録されている。

 今回の犠牲者、ソロイ・ホートンの傷口にも振動波の痕跡があったという。


「我々は犯罪の捜査機関ですが普通の捜査とは違った視点と手法で捜査を進めます。まずはホートンの昔の仲間を探す。そして、生き残ったティム・ブラケットの現在を『追跡』してください」

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