#20 勇者オオカミの雄姿?
ダリアは髪についた砂を払いながら一面が沈黙したデビルオークに目をやる。
「残るは2面……まぁ、好戦的な『カー』を潰せたから良しとしましょう」
「ダリア、あんたは……」
「何の能力か。一々聞かれて答えるのも面倒なので先に答えましょう。私の能力は『砂』。砂を扱う能力。砂で自分に似せた人形を作り噛みつかせました。砂で木の幹を偽装して隠れていました。名は『ミスター・サンドマン』」
ダリアは砂で自分の肩に小鳥を作る。
動きこそしないが精巧な作りでパッと見たところ偽物とはわからなかった。
更に、その鳥を木にぶつける。
ギュルギュルと音を立て、その部分が削れる。
「砂を拭きつけガラスを削り文字や絵柄を刻む加工法があります。それはこの威力を上げたもの。砂で相手を『削る』戦法です。流石にあれだけの巨体に致命傷を与えるにはかなり力を使いますが……」
「な、何がどうなってやがる。ダリアちゃん……マジシャンだったのか」
「あ、もう説明が面倒なんでそういう事でいいです。名は『ミスター・サンドマン』。大事なことなので繰り返させていただきました」
「すげぇ、マジックショーする時呼んでくれよ。俺絶対見に行くよ!」
「はいはい、ありがとうございます」
割と雑にルークをあしらうとダリアは自分の周囲に同じくらいの背丈の槍を数本作る。
「デビルオークの弱点は口の中です。下の上に埋まっている宝玉が弱点。開くのは攻撃の時くらいで潰すには骨が折れますがが……」
腕を振るうと砂の槍が泣き虫の『ピー』めがけ奔る。
槍は顔面のあちこちに刺さり破砕を生み出す。
「ヒィィィィィッ!ひ、ひどいぃぃッ!!」
悲鳴。
大粒の涙と共に『ピー』が大きな口を開ける。
そこ目掛け、今度は響一郎が解いた腕を投げナイフを突き立てる。
何かが破裂すると音と共に『ピー』の面も活動を停止する。
「能力者が二人いれば、攻略は楽ってことだな!それじゃあ後は笑い顔の『ブー』だけか」
「はい。デビルオークは自ら攻撃に転じるのではなく口の中を攻撃しようとしたものを攻撃するカウンターが多いので攻略難易度が一気に下がりました」
瞬間。
顔がその場で回転を始める。
それにより響一郎の手から舌に突き刺さったままのナイフが離れてしまった。
「しまった!ナイフがッ!!」
「世の中そう簡単に行くと思うなよッ」
キャハハと笑いながら高速回転を続けるブー
しかし、そうやって回転を続けた結果。
「うぇ~ッ!」
酔った様子で動きを止め吐き始めた。
「何やってんだよこの豚はッ!!」
思わずツッコミを入れていた。
「だが動きは止まったようですッ!」
再度砂の槍を投げ飛ばす。
しかしブーは向きを変え活動を停止しているカーの顔面で槍を受け破壊から逃れる。
「他の部位で受ける、か……」
「代わりのナイフとかは持ってないんですか?」
「護身用みたいな感じで持ってきてたやつだからなぁ。マズイなぁ」
現段階で一番高い攻撃力を出すことができるのはダリアの砂攻撃だ。
しかし、砂の槍は別の面で受けられてしまう。
「砂をまとわりつかせてぶった切るとかそういう攻撃とかできないのか?」
「残念ながらそう上手くはいきません。どうしても形のあるものに砂を加工した方が威力が出ます。そういう使い方、出来たらかっこ良いのかもしれないですが私に無理なんです」
「だからこそ敵の動きを読んで攻撃を避けた瞬間に動いた先に撃ち込むのが最適な対処だよな」
どうしたものか、と腕を組んだ瞬間。
「ひぇぇぇぇっ!!」
あらぬ方向から勇者オオカミが投げつけられた。
ブーは自分の面でオオカミを受け止めるとそのまま口にくわえてしまう。
「あら、どうせなら勇者がきばれよって投げたはいいけど……ダメだった?」
投げたのはルークであった。
「あのオオカミは……何と言うかデビルオークの説明に来ただけの付属品なので正直、役に立たないです……」
「えぇ~、そんなぁ」
瞬間、勇者オオカミから炎が噴き出し爆発を生む。
爆発はブーの牙を溶かし、舌を焼き払い、弱点である宝玉を砕いた。
「GUUUUUUUUUUUッッ!!」
悲鳴と共に身体が崩れていきデビルークは爆発飛散。
後には唖然とする3人が残された。
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