#19 さんびきのデビルオーク
ザン・Aには7つの物語が収められておりそれを『攻略』することで解放される。
だが物語には『難易度』があり、どれが出てくるかはランダム。
運次第である。
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「デビルオークは悪いやつなんだ。いくつもの村を襲っては滅ぼしてるんだ」
白オオカミ、リトル・グッド・ホワイトが語る。
ある日平和だった王国にデビルオークの3兄弟が現れて暴れ始めた。
勇者の子孫だとかいう事で自分が退治を命じられたということらしい。
「なぁ、ダリア。この物語はどういう『攻略』が必要なんだ?」
「最大の目的は『デビルオークを倒すこと』。ただしデビルオークは途方もなく強いです……」
響一郎は考える。
途方もなく強いデビルオークという怪物が3匹、襲ってくる。
オークとはかつて『亜人』と分類されていた人種だが技術革命の際、時代の進歩から置いてけぼりにされ絶滅している。
元々亜人の中でも限りなく『魔物』に近い扱いだったらしい。
極めて好戦的だが知能はさほど高くなかったようだ。
それに『デビル』が付くのだから危険度の高さは容易に想像が出来るだろう。
「モンスター退治とかしたくないって言ってるのに結局出てくるのかよ……」
呟いた途端、得体の知れない悪寒が空気を通して伝わってきた。
接近されている。
直感がそう告げる。
そして背後にいるダリア達に注意を促そうと振り向き、見た。
宙に浮くのは巨大かつ凶悪な面構えの豚、その『頭部』
その両側面にも同じような顔がついた化け物だった。
そして正面、巨大な口にはダリアの身体が咥えられていたのだ。
「ダ、ダリアッッ!!」
「GUUUUUUUUUUUッッ!!」
「嘘だろぉッ!?」
三者三葉の叫びをあげる。
響一郎は即座に護身用として支給されていたナイフを取り出すと持った方の腕を解きデビルオーク目掛け伸ばす。
丁度、ロープにナイフを括り付けた様な状態になり、弧を描きナイフがデビルオークの右目に突き刺さる。
「GUUUUッ!!」
効果はあったようでデビルオークがダリアを吐き出す。
ゴミ切れのように地面を転がっていくダリアだがこの状態では近づいて救護にも行けない。
響一郎は腕とナイフを戻すと身構える。
「くそっ、攻略法を知ってるダリアが……こうなったら何とか素早く攻略して病院に連れていくしかないッ!!」
すると左側面に位置する泣き顔のデビルオークが口を開く。
「『カー』!何で獲物を放しちまうんだよぉ。勿体ないよぉ」
真ん中の『カー』と呼ばれた顔は怒りながら答える。
「うるせぇよ『ピー』。だったらお前、眼にナイフ刺されてみろよ。痛いんだよ!それにあの女、砂っぽくてなんかじゃりじゃりして不味いんだよ」
「ギャハハハ、ジャリジャリ~♪そいつは愉快痛快~」
右側の顔が笑う。
「絶対右側のやつ、『ブー』って名前だな……」
「ええッ!マジでか?お前超能力者かよぉ!!」
「パネェぜ、あの人間。デビルオークの名前良く知ってるなぁ」
いつの間にか自分の背後に隠れていたルークとオオカミが感心していた。
「俺の後ろに居ても安全とは言えないんだがな……というかオオカミは隠れてちゃいけないんじゃ……」
「そんなヒデェこと言うなよぉ。俺は王様に頼まれただけなんだ」
「役に立たねぇ……」
呆れ果てていると正面の顔、『カー』が突然歯を食いしばり苦しみだした。
ギュルギュルと何かがこすれる音がする。
そして、『カー』の牙が破砕し飛び散った。
「なっ、何が……」
「もう少し。もう少しだったんですけどね……」
気づけば木の表面がめくれ上がり腕組みをしたダリアが現れる。
「もう少しあのままなら全部の顔を砕けたのに……まあ、仕方がない、ですね」
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