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異世界送りの奇妙な事件簿~トイレに行こうとしただけなのに異世界へ送られました~  作者: ホットティー
1章 トイレに行こうとして異世界へ
14/35

#14 大学生は異世界で刑事になりました

事件が終わり。

 神父は重傷を負っていたものの、ジョンガリアを倒したと同時に融合が解除されそのまま救急車で運ばれた。

 響一郎とダニーは容疑者を引き渡したのち、その足で本部へ戻ることとなった。

 ダニーが報告書を書いている中、響一郎は疲れから仮眠室で体を横たえ泥のように眠った。

 泥の様に……



「おい、いい加減起きろ新人!!」


 尻を蹴られた衝撃で目を覚ます。

 見上げるとクリスがこちらを睨んでいた。


「……ここ、は……ああ、あんたは確かクリスだたったな。クリス・コールハース………で、何の用だ?」


「寝すぎなんだよボケ」


「寝すぎ……そうか、俺は寝てたか。どれくらい寝ていた?」


「丸1日ってところだな。何しても起きないから遺体安置所に運んでもらおうかと思ってたところだぜ」


 悪い冗談だ。

 思いながら響一郎は布団などをたたみ始める。


「ダニーは帰ったぜ。娘の事で何かあったみたいだからな」


「そうか。何事もなければいいんだがな……で、何の用だ?考えるに起こしに来ただけじゃないんだろう?」


 クリスは頭を掻きながら缶ジュースを差し出す。


「エリーが呼んでるんだ。だから迎えに来た。とりあえず水分補給しとけ。寝起きってのは脱水になりやすいもんだ」


 受け取った響一郎は缶をしげしげと眺める。

 材質はアルミによく似ている。


「この缶はどういう材質でできてるんだ?」


「はぁ?軽銀石を加工したものってのは学校で習った気はするけど」


「要するにアルミニウムか」 

 

 軽銀とはアルミニウムの別名のひとつだ。

 やはり加工しやすいものだったのだろう。

 案の定、自分にしか見えないコール・フレームには軽銀石について説明が出てくる。

 そして……


「ケルプ……コーラ?」


 飲み物の名前に眉をしかめる。

 何せ缶の色は緑色。それにコーラと言うのは嫌な予感がする。

 否、悪い予感『しか』しない。

 とは言え、貰った物を無下にするのも躊躇われた。

 缶を開け、一口含む。


「!!!!!!!」


 口腔内に広がる昆布出汁の香りと炭酸の刺激、不快感。

 おおよそ嗜好品としては不適格な味だ。

 

「お前はヤーパン系の連中に似てるってことだったからあっち系の飲み物を買ってきたんだ。どうだ、懐かしいか?」


「ヤーパンと言う国について知りたくなったよ。切実にね」


 皮肉交じりに言うがクリスには通じなかったようでそのまま仮眠室から連れ出されることとなった。

 ケルプコーラについては我慢しつつもしっかり飲み干した。

 『慣れると癖になる』らしくこの後も愛飲することになるがそれはまた別の話である。

   

~~~~~~~~~~~~~~~~


「そう言えばエリーもギフト能力を持ってるんだよな?」


「何を今更。あたしらのボスやってるんだから当たり前だろ」


 恐らく何もない壁に自動ドアを出現させたあの能力だろう。

 任意の場所に扉を作ることができる能力だろうか。


「……どんな能力なんだ?」


「何であたしがしゃべらないといけないんだよ」


 先行していたクリスが足を止め響一郎の方を向き睨みつけた。


「そう言うのは本人に直接聞くもんだろ。まあ、エリーの事だから笑ってはぐらかすだろうな。昔からあいつは秘密主義だ」


 そう言っている背後、壁の一部に扉が現れエリーが音もなく姿を見せた。

 クリスはそれに気づかず続ける。


「何処に住んでいかも謎だし、実年齢も謎だ。噂によれば技術革命から生きていて姿が変わっていない『魔女』だとかいう噂も……」


 エリーが笑顔でクリスの背後で何やら手を動かす。

 すると……


「クルッポーッ!!」


 唐突にクリスが鳩の様に鳴き出した。

 廊下を千鳥足で歩き鳴くクリスを無視し、エリーは手を上げる。


「ごきげんよう、ミスター白鐘」


「ごきげんよう。キョウでいいですよ、局長。その苗字にあんまり愛着もないし名前は名前で少し長いし……ところで今、何か『書き』ましたね」


 その言葉にエリーの眉がピクっと反応した。


「よくわかりましたね」


 エリーが右手を開く。

 その掌からペンがゆっくりと出てくる。


「ペンで書いた文字が、書かれたものに影響を与える能力ってところか。それにしても中々の執行能力だな」


「ここまで鍛えるのに長い時間を要しましたがね。ああ、どれくらいかかった聞いてそこから年齢を調べるのはマナー違反ですよ」


「言わなくてもそんな無謀なことはしないさ」


 直感で理解した。

 逆らわない方がいい。


「で、クリスはいつまで鳩になってるんだ?」


「まあ、放っておいても数分で戻るでしょう。さて、ミスター・キョウ。ウチで働くために必要な手続きやその他諸々が完了したのですが……どうです?」


「異論はない。よろしく頼む」


「即答ですか」


「わざわざいろいろ手を回してくれたんだ。そこまでしてもらって断る理由がない。それに、俺なんかの能力が人の役に立つならそれも悪くない」

 

 なるほど、とエリーは頷く。


「では改めて……ようこそ、ようこそニューポッカ重犯罪特捜班へ」


 差し出された手。

 響一郎はその手を取りしっかりと握りしめる。


「こちらこそな」


「クルッポー!!」


 背後で鳩クリスが鳴いていた。 


~~~~~~~~~~~~~~~~


 エリー・ウェバー

 職業:刑事(ニューポッカ重犯罪特捜班局長)

 年齢:不明(一説によると技術革命以前から生きているとのこと)

 属性:文字

 ギフト名:ストレーガ


次回からは新章が開始です。

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