表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界送りの奇妙な事件簿~トイレに行こうとしただけなのに異世界へ送られました~  作者: ホットティー
1章 トイレに行こうとして異世界へ
12/35

#12 ギフト~目覚め~part3

寄宿学校に入れられ抑圧された日々を過ごしていたジョンガリア。

 だがある日転機が訪れた。

 物質を分解し再構築する、正に彼に相応しいギフトを手に入れたのだ。

 その能力を使い彼は寮に秘密の部屋を作り芸術活動にいそしんでいた。

 彼を気味悪がったルームメイトによる密告で発覚するまで。

 放校され、勘当された彼を拾ってくれた神父には心の底から感謝をしていた。

 ギフト能力を教会の改築などに役立て恩返しをしていた。

 だが、運命の悪戯は彼を襲った。

 ある日改築をしていて見つけた白い粉。

 かつてこの建物で使用されていたエンジェル・ダイバーであった。

 違法になったことを知った所有者が小遣い稼ぎのために処分せずとっておいたものが忘れ去られたまま置いてあり、それが改築で発見されたのだ。

 興味本位だった。

 だがエンジェル・ダイバーによる覚醒は彼の中にあった芸術に対する渇望を増加させ狂気へと走らせる。

 教会通いをしていた大学生に少し盗まれたが実のところ彼は気づいてなかった。

 大学生がエンジェル・ダイバーの服用で幻覚を見て死んだことも。

 その捜査の過程で響一郎がやって来たことも。

 ただ、彼の眼には芸術活動を邪魔する『悪人』にしか見えていない。

 そしてエンジェル・ダイバーで蝕まれた精神は恩人である神父すら手にかけることに……


~~~~~~~~~~~~~~~~


「それにしてもボウガンか。有効射程はどれくらいだろう?だいたい長くとも100mくらいが限界とは思うが……」


 ダニーが敵の様子を伺いつつ考える。

 今は敵まで10mもない。

 だが射程距離によっては更に離れた位置から攻撃されることとなる。


「ボウガンだけが危険じゃあないぜ。奴は色々なものを武器に作り替えることができると考えていいだろう!矢は危険だ。金属製のものなら十分矢に組み替えることができる」


「なぁ、キョウ。君の能力だが、どの程度把握している?」


「正直ほとんどわかってない。腕が伸びるらしいんだが無我夢中だったしあれ以来伸ばそうと思っても伸びないんだ」


 特殊な能力があることはコンビニ強盗の件で確認できた。

 だが、発動条件が分からない。

 自由に使えないのでは役に立たない


「まだ少ししか覚醒していないということか……」


 ダニーも能力を持っているが1人で相手を制圧出来るかと言われると苦しい。

 ならば慎重に動かざるを得ない。

 周囲を見渡し、何があるかを確認していく。 

 すると……


「……やはり、これしかない、か……」


「ん、キョウ!?」


 響一郎が意外な行動をとる。

 物陰から姿を現すとそのままドアに向かって直進を始めたのだ。


「君、一体何をっ!?」


「重要なのは進むという『意志』だ!俺は意に反して異世界へ飛ばされた。足踏みをしていては運命に飲み込まれるだけだッ!!」



 ボウガンの矢が飛んでくる。

 それをしっかり『視る』。

 そしてかろうじて腕で受け止めた。

 今度はフォークだった。


「痛っ!!」


 響一郎は考える。

 思えばコンビニ強盗の時以外にも何度か不思議なことはあった。

 クリスにかけられた手錠から逃げていた時。

 彼女から逃げていた時。

 共通して彼は必死だった。

 ならば敢えて自分を追い込もう。

 トイレに行こうとして異世界へ飛ばされるというとんでもない体験をしたのだ。

 腕にナイフやフォークを撃ち込まれることくらい大したことではない。



「何だ、こいつ危険だッ!イカれてやがるのか!!」


 ジョンガリアにとっては誤算。

 攻撃を続けていれば相手は怯む。

 その間に壁の一部を組み替え逃走経路を『作ろう』としたのに。

 まずい、接近されてしまう。

 ジョンガリアの能力は人差し指でなぞったものを組み替える。

 冠した名前は『ヴェロニカ』。

 接近されても指でなぞれば勝てる。

 だが元の身体能力が高いわけではない。

 その為なるべく接近は許したくない。


「ならばッ!」


 ナイフの矢を撃つ。

 狙うは……脚。

 響一郎の右太ももに矢が刺さる。


「ぐあっ!」


 動きが停まる。

 腕で受け止めた時、「何だ、大したことないな」と思っていたがやはり痛いし脚を撃たれれば動きは鈍る。

 相手まであと少し。

 しかしその距離でスピードが遅くなるということは……


「マズイ、狙い撃ちにされる…ッ!」


 飛んでくる矢。

 今度はスプーンだった。

 ただしやはり先は鋭利に加工されている。

 受け止めねば。

 頭部への着弾は避けたい。

 防御姿勢を取ろうとした瞬間、響一郎の視界にふわっと飛び込んできたものがあった。


「ふ、風船ッ!?」


 奇妙な風船だった。

 独特の模様。

 否、それが何か響一郎が理解するのに時間はかからなかった。

 先ほどまで自分たちが隠れていた教会の長椅子。

 それがそのまま膨らんだような風船。

 風船が矢を受け止め、破裂する。

 すると破壊された長椅子へ戻り床に落ちた。


「これは……まさか奴らも神からの贈り物を……俺と同類ッ!ハッ!?」


 気づく。

 敵が、響一郎がさらに距離を詰めていたことを。

 ジョンガリアの頬が引きつる。

 そして…


「うおおおおっ!!」


 響一郎の『伸びていない』拳がボウガンを叩き落とした。


「やれやれ、本当にクレイジーな奴だな君は。だが嫌いじゃないぜ、そういうのッ!!」


 そこから数m離れた場所ではダニーが苦笑いをしながら周囲に風船を浮かして立っていた。

 そして、響一郎の胸の奥で何か大きな揺らぎが起こり燃え始める。 


~~~~~~~~~~~~~~~~


 ダニエル・グッドウィン

 職業:刑事(ニューポッカ重犯罪特捜班所属)

 結婚:離婚歴あり

 属性:風船

 ギフト名:ガ・ガ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ