#11 ギフト~目覚め~part2
かつて世界には魔法が溢れていた。
ある程度修練を積み習得する一般魔法。
そして個人に与えられた特別な才能・固有魔法。
技術革命以降、魔法は衰退していく。
しかし、時折固有魔法に目覚めることがある。
それが、神の贈り物=ギフトである。
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「敵意の正体ってのは重要だ。なぁ、ダニー、彼を見てくれないか。分析だ」
響一郎は長椅子に組み込まれた神父を指さす。
抵抗した時についたのか顔には痣があったがそれ以外はない。
「特殊な状況だ。組み合わさっている部位は出血もなく融合しているといった感じだ」
「つまり生物と物質を融合させられる能力ってことかな?」
「それだとトラップの説明がつかない。見てくれ、神父の右脚は身体から離れて椅子の脚と融合している。そうだな、これは組み換えだ。性質はそのまま組み替えているんだろう。だから脚が離れていても出血はしていない」
先ほどのトラップも床や周囲の材質を分解して組み合わせ作り出したものだろう。
「ダニー、ギフト能力というのはどういう発動をするものなんだ?」
「多岐にわたる、としか言えないな。『範囲』の場合もあるし発動には本人が手で触れる必要があったりすることもある。ともかく多岐にわたる」
だが、とダニーは付け加える。
「恐らくは『触れている』のだろう。そうでないなら、『範囲』だというなら教会内部に入った段階で僕らは犠牲になっている」
響一郎も頷く。
範囲を攻撃するなら罠を仕掛ける必要はない。
「この状況はギフトによるものだろうが、どうなるんだ?治るのか?」
「正直わからない。ホルダーを倒せば治る可能はあるがそれも100%とは言えないな」
「フム……今更だがこの神父、角が生えているがそれはもともとそういう種族なのか?」
「『人種』と言うべきさ。彼は『魔人』だな。そうだな……2本角ってことは北部の出身かな?」
「モ、モンラトヴィル……モンラトヴィルから来た……ハァ、た、助けて……あいつは、あいつは異常だ」
神父が息も絶え絶えに助けを求める。
響一郎の頭に情報が流れてくる。
<北部の都市、モントラヴィル。かつて聖教会の修道士たちが作った街です。特産はアイスローズ>
どうやら情報の分析・学習能力が機能し始めたらしい。
ただ、一気に全部覚えられるわけではないようだ。
情報を『読む』必要があるようで知りたい言葉はたくさんあったが後にしようと思った。
そういうこともできる様子だ。
「あいつ、そいつは誰だい?この教会には君の他に誰かいたんだよな?」
「み、見習いなんだ。学校も退学になって……哀れに思ってうちで預かった……ハァ」
「なぁ、神父さん。重要なのは名前だ。生い立ちとかはいいんだ。後で調べられるからな。今追跡に必要なのは名前だ。男なのか、女のか、若いのか、年を食ってるのかとかそういう情報だ」
「ジョンガリア、ジョンガリアだ!あの子は…あの子はイカれてる。こんな芸術あり得ない、神への冒涜だ……がはっ!」
そこまで言った瞬間。
神父の額に矢が突き刺さった。
矢とは言うがナイフを『組み替えた』ものだった。
「キョウ、奥の扉だッ!奴が隠れているぞ!ボウガンで狙っている」
ダニーの呼びかけに響一郎も無事な長椅子の影に身を隠す。
「便利な能力だ。そして厄介ってやつだな。構造さえ知っていればその辺に材料はたくさんあるからな」
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扉の向こう側にその男は立っていた。
周囲にあった木材やらを能力で組み替えて作った即席ボウガンを手に持って。
「ったく。何かわかりゃしないが俺の芸術活動を邪魔しやがって」
左手人差し指の爪を噛みながら。
人差し指全体が緑色の青銅器みたいに変化していた。
その男の名はジョンガリア。
「潰してやるぜ。あの神父様みてぇになぁッ!!」




