表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

821/825

漫画マール第14話の公開記念SS

久しぶりに、こっそりと……。


現在、休載中ですが、漫画マールの第14話が本日公開されまして、せっかくなので小説もSS投稿してみました。

こうして、この投稿に気づいて頂いて、本当にありがとうございます。


どうか、のんびりお楽しみ頂けたら幸いです♪

 僕、マールは、冒険者だ。


 特に『魔狩人』と呼ばれる魔物討伐専門の冒険者。


 しかも、僕の奥さんのイルティミナさんは、王国1番の『金印の魔狩人』なので、依頼があると、シュムリア王国の各地まで討伐に出かけるんだ。


 都会や辺境など、東西南北あちこちへ。 


 でね?


 その各土地には、特徴がある。


 特に料理は、北国と南国では大きな違いがあったりする。


 その中でも、お酒。


 地酒は、各地にある。


 種類も多くて、エール、ワイン、清酒、焼酎、ウイスキー、ブランデーなどなど、色々あるんだ。


 僕は、あまりお酒は飲まないけど……でも、飲むなら、果実酒が好みかな。


 そして、魔物の討伐が終わったあと、王都の人たちへのお土産に地酒を買っていくことも多いんだ。


 で、今回も買って、帰った。


 まずは、冒険者ギルドの宿泊施設の一部屋で、


「はい、キルトさん」


「おお! いつもすまんな」


「ううん、どういたしまして」


「ほう、北のクレファンド産の地酒か……甘口で飲み易い酒じゃったの」


「…………」


 知ってるんだ?


 さすが、お酒大好きお姉さん。


 僕は、イルティミナさんと顔を見合わせ、苦笑しちゃったよ。


「今夜、早速、楽しませてもらうぞ」


 と、銀髪の美女は笑った。


 はい、どうぞどうぞ。


 …………。


 次は、義妹の家に向かった。


「はい、ソルティス、ポーちゃん」


「あら、ありがと」


「ポーは、感謝する」


「ううん、どういたしまして」


「へぇ、綺麗な色ね?」


「うん」


「ポーも成人してから、時々、2人で晩酌するのよ。助かるわ」


「お酒は良いものだ、とポーは言う」


 コクコク


 と、頷く金髪幼女。


 見た目、10歳ぐらいなんだけどね。


(ま、実年齢的には合法だから)


 渡した酒瓶を抱えて笑い合う2人に、僕ら夫婦も微笑んでしまった。


 そんな感じで、お土産を配る。


 それも終わり、


「じゃ、帰ろうか」


「はい。せっかくですから、私たちも家飲みで楽しみましょう」


「うん、そうだね」


「はい、うふふ」


 と、僕らは、自分たちの自宅に戻ったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「うふふふぅ、マ~ァル♪」


「…………」


 僕の奥さんは、完璧超人だ。


 何でもできるお姉さんで、美人で、偉くて、お金持ち。


 でも、1つだけ弱点が。


(……お酒に弱い)


 普段は、そこそこの量で自制する。


 けど、キルトさんが言ったように、今回の地酒は飲み易いせいか、少し量を間違えたみたい。


 はい、今は、酔っ払いお姉さんです。


 顔、真っ赤。


 目もトロンとしている。


(ああ……)


 久しぶりに見たよ、こんなイルティミナさん。


 僕は、


「大丈夫?」


「はい? はい、大丈夫ですよ。貴方の奥さんは元気です!」


「そ、そっか」


「マールはどうですか?」


「げ、元気だよ」


「まぁ、素敵!」


「…………」


「あら? あらあらあら? だから、元気過ぎて、マールは分裂したのですか?」


「え?」


「だって、マールが3人に増えましたよ」


 彼女の視線が揺れてる。


 うわぁ、酔っ払いだ。


 僕とその左右を指差しながら、


「うふふ、いいですね」


「…………」


「これなら、1人は保存用、1人は自慢用、1人は愛玩用にできますね」


「そ、そうだね……?」


 え、何それ? 怖い。


 でも、今の彼女に理屈は通じない。


(素直に頷いとこう)


 きっと、その方がいい。


 と思ったら、


 ムギュッ


(わっ?)


 急に抱きしめられた。


 柔らかくて弾力のあるお胸が、僕の顔を挟み込む。


 そして彼女は、


「……お腹が空きました」


「え?」


「なので、マールを食べます」


 モグモグ


 うひゃっ!?


(み、耳を甘噛みされてる)


 くすぐったくて、気持ちよくて、僕は悶えた。


 でも、彼女は『魔血の民』。


 どんなに暴れても、彼女の腕の中からは逃れられない。


 彼女の歯と舌と唇は、僕の耳から頬、鼻、そして首筋へと移動していく。


(うひゃああ……っ)


 ゾ、ゾクゾクする。


 僕の奥さんは、


「アムアムアムアム……」


 と、僕を甘く噛み、時に強く吸う。


 そして顔を離すと、


「ああ、美味しいです。マールは、どうしてこんなに美味しいのでしょう……?」


「そ、そう。よかったね」


 よくないけど。


 でも、僕は笑って言う。


 彼女も気持ち良さそうな笑顔で、


「きっと、マールもお酒でできてるのですね」


「そ、そうだね……?」


「でも、お腹が空きました。こんなにマールを食べてるのに……」


「そ、そう」


 小首をかしげるお姉さん。


 綺麗な深緑色の髪がサラサラと揺れて、僕の肌を撫でていく。


(いや、それはそうでしょ)


 と、突っ込みたい。


 でも、我慢。


 ただ、この美人の酔っ払いお姉さんが、お腹が空いているのは本当みたいなので、


「じゃあ、僕、何か作ろうか?」


 と、提案した。


 彼女は、キョトンとする。


「よろしいのですか?」


「うん」


「では、お願いしましょうか」


「うん、任せて」


「はい」


「じゃあ、ちょっと待っててね」


「わかりました。私は、もう2人のマールと待っていますね」


 ホニャ


 と、笑うお姉さん。


 僕は苦笑しながら「うん」と頷いた。 


 ということで、彼女の手をようやく逃れ、僕はキッチンへ。


 すると、


「あら? あらら……2人のマールが消えました。どこに行ったんですか、マールたち?」


 なんて、悲しげな声が聞こえる。


(あはは……)


 急いで戻ってあげないとね。


 …………。


 …………。


 …………。


 僕の奥さんは料理上手だけど、僕自身は簡単な物しか作れない。


 でもまぁ、今回はおつまみだし、大丈夫かな。


(よし、手早く作ろう)


 と、エプロン装着。


 保冷庫の食材を確認する。


(ん……っと)


 これでいいか。


 まず、チーズと竹輪があったので、チーズを切り、竹輪の穴に詰める。


 次に、ベーコンを発見。


 フライパンで焼く。


 軽く火を通したら、ベーコンに切れ目を入れ、チーズ入り竹輪をのせて巻きつけ、切れ目で挟んで固定する。


 ジュウ ジュウ


 少しコロコロし、お皿に移す。


 仕上げに、黒コショウ、小葱の輪切りをパラパラ。


 お皿の端に、マヨネーズも盛り付ける。


(よし、完成)


 フライパンには、ベーコンの脂も残っている。 


 せっかくなので、人参を千切りして炒める。


 炒めたら、削った鰹節、白胡麻、醤油も入れて、もうちょっとだけ火を入れる。


 お皿に移し、こっちも完成だ。


 おまけで、胡瓜を輪切りに、塩昆布を薄切りにして、混ぜて揉み込む。


 最後に、胡麻、パラパラ。


 以上、3品。


 冷めない内に、奥さんの元へと運んでいく。


 …………。


 …………。


 …………。


「んん~♪ マールも美味しいですが、マールの作る料理も美味しいですね~♪」


 モグモグモグ


 僕の奥さんは上機嫌で食べてくれる。


(よかった)


 僕も安心。


 自分でも食べてみて……うん、悪くないかな。


 お酒との相性も悪くないので、晩酌しながら、おつまみも楽しめた。


「マ~ァル♪」


「はいはい」


「大好きですよ、チュ~ッ」


 食べてる僕の頬に、キスされる。


(あはは)


 何か、くすぐったい。


 大きな可愛い犬に甘えられてる感じで、微笑ましい気分。


 だけど、


 ムニュッ


「…………」


 大きな胸が当たり、お酒交じりの甘い女性の匂いがする。


 しかも、美人さん。


 やっぱり、ドキドキもするよね。


 彼女は笑い、


「マールと結婚できて、私は幸せです」


 と、赤ら顔ではにかんだ。


 その表情は、潤んだ瞳も相まって、本当に綺麗で可愛い。


 そして、


 ハムッ モグモグ


(わっ?)


 また、耳を甘噛みされた。


 僕は困ったように、


「もう、おつまみあるよ?」


「んふふ♪」


「ん?」


「マールは別腹です♪」


「そっか」


 苦笑し、受け入れる僕を、彼女はまた抱きしめた。


 …………。


 そんな感じの今夜の晩酌。


 珍しいイルティミナさんの酔っぱらう姿を、久しぶりに見れたけど……ま、たまにはいいよね?


 ただ、


(明日、どうなるかな?)


 と、少し心配。


 だって、彼女は酔っても、その時の記憶を失わないから。


 きっと、今夜のことも覚えてる。


 明日の朝、正気に戻った彼女がどんな反応をするのか……さてさて?


 でも、


(……うん)


 僕は、クスッと笑った。


 その姿は、きっと、彼女の旦那様である僕だけが見れる特権なのである。

ご覧頂き、ありがとうございました。



本日、コミカライズ第14話が公開されております。


赤牙竜との戦いも、ついに決着!


URLはこちら

https://firecross.jp/ebook/series/525


今話も無料なので、どうかお楽しみ下さいね♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミックファイア様よりコミック1~2巻が発売中です!
i000000

i000000

ご購入して下さった皆さんは、本当にありがとうございます♪

もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひご検討をよろしくお願いします。どうかその手に取って楽しんで下さいね♪

HJノベルス様より小説の書籍1~3巻、発売中です!
i000000

i000000

i000000

こちらも楽しんで頂けたら幸いです♪

『小説家になろう 勝手にランキング』に参加しています。もしよかったら、クリックして下さいね~。
『小説家になろう 勝手にランキング』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ