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752・王都の観光案内

第752話になります。

よろしくお願いします。

「ああ、いい湯だった……」


 風呂上がりのフレデリカさんは、そう吐息をこぼす。 


 時刻は夜。


 本日はお泊り会ということで、4人の客人たちも我が家のお風呂に入ることになった。


 で、トップバッターだったのが、遠い異国からのお客様であるフレデリカさんだったのである。


 濡れて艶めく青髪を、彼女はタオルで擦っていく。


 頬が上気して、どこか色っぽい。


 突然のお泊りだったので、着ているのは、イルティミナさんから借りたパジャマのシャツとズボンだ。


 湯上りで暑いのか、胸元のボタンは2つも開いていて、白く輝く谷間が見えている。


(…………)


 フレデリカさんは、中性的な美女だ。


 普段、軍服を着る男装の麗人だからこそ、今の雰囲気の緩んだ女性らしい姿には、少しドキドキしてしまう。 


 あ、あまり見ないようにしないと。


 彼女ははにかみ、


「先に湯を頂いて、すまないな」


「う、ううん」


「構いません。湯加減は大丈夫でしたか?」


「ああ、熱すぎず、温すぎず、ちょうどよかった。おかげで長湯してしまったよ」


「それはよかった」


 その答えに、もてなす側のイルティミナさんも満足そうだ。


 そんなやり取りの奥で、ソルティスが「じゃあ次、アチシ~」とソファーから立ち上がり、相棒の金髪幼女の小さな手を引っ張っていく。


 ポーちゃんは、されるがままだ。


(うん、仲良し)


 2人の様子に、ほっこりしてしまう。


 やがて、キルトさん、イルティミナさんと順番に入って、最後は僕だ。


 いつもだったら、お風呂は夫婦で入るんだけど、本日は来客中なので自重しております。


 チャポン


「ふぃ~」


 湯船に浸かると、声が出ちゃう。


 ああ、いいお湯だ。


 確かに、さっきフレデリカさんが言った通りである。


 …………。


 考えたら、このお湯に、フレデリカさんも……そして、他の4人も入ってるんだよね?


 チャポ 


 見た目は、ただのお湯。


 でも、そう意識したら、何だかいけないことしてる気がしてきた。


(いやいや)


 考えすぎだよね?


 ちなみに、僕が最後に入ることになったのは、イルティミナさんの希望だった。


 彼女曰く、


「マールが入った湯に、他の女たちが浸かるのは……その、何となく嫌なのです……」


 なんだって。


 うん、可愛い奥さんです。 


 でも、こうして意識してしまった今、彼女の言うことも何となくわかった僕でした。


 …………。


 その後、10分ほどのんびりしてから、僕もお風呂をあがった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 お風呂を出たあとは、僕とイルティミナさんで作った料理を皆に振る舞った。


 アルンの友人も料理を食べて、


「うん、これは美味しいな」


 と、とても喜んでくれた。


(えへへ)


 僕らも嬉しい。


 ただの家庭料理だけど、貴族令嬢の彼女の口にもあったようで何より。


 もちろんイルティミナさんの料理なら絶対に『美味しい』と言ってもらえると、僕は信じていたけどね。


 食べ慣れたキルトさん、ソルティス、ポーちゃんも幸せそうに料理を口に運ぶ。


(うんうん)


 その食卓の光景に、僕の奥さんも満足げだ。 


 食後は、談笑しながらお茶を飲み、やがて夜も更けて就寝の時間となった。


 寝る部屋を、皆に割り振る。


 ソルティス、ポーちゃんは、かつての『ソルティスの部屋』で眠ることになった。


 実は、彼女の部屋は当時のまま、彼女の姉がいつも掃除もして、いつ妹が帰って来てもいいようにしてあったんだよね。


 なので、


「うわ、懐かしいわぁ」


 なんて、室内を見たソルティスも笑っていた。


 フレデリカさんは、キルトさんと2階の客間を使ってもらう。


 キルトさんは、


「共に、寝酒でも飲むか?」


 と誘って、青髪のお姉さんを苦笑させていた。


 僕とイルティミナさんは当然、いつもと同じように1階の『夫婦の部屋』で就寝だ。


 ということで、


「また明日ね」


「皆、おやすみなさい」


「ああ、また明日だ。マール殿」


「ふむ、おやすみじゃ」


「おやすみぃ」


「…………(ペコッ)」


 と、僕らは廊下で笑いながら挨拶を交わし、それぞれの部屋へと向かった。


 夫婦の部屋に入り、


 パタン


 扉を閉めて、僕とイルティミナさんはベッドに横になった。


「さぁ、マール」


「うん」


 微笑む奥さんに抱きしめられて、今夜も僕は『抱き枕』と化した。


 柔らかな大人の女性の身体。


 弾力のある胸が押しつけられ、艶やかな長い髪がこぼれて僕の肌をくすぐっていく。


 甘くいい匂いが満ちる。


(……うん、幸せ)


 まるで母犬のお腹で眠る子犬の気分だ。


 そう目を閉じていると、


「今日は、フレデリカに会えてよかったですね」


 ん……?


 耳元に聞こえたイルティミナさんの声に、僕は目を開け直す。


 その声に、微妙な何かを感じた。


 彼女は今、僕を背中側から抱きしめているので、その表情は見えない。


 僕は前を向いたまま、


「うん」


 と、素直に頷いた。 


 キュッ


 僕を抱く彼女の腕に、少しだけ力が入る。 


 少し迷い、でも聞いてみる。


「……イルティミナさんは、フレデリカさんに会うの、嬉しくなかった?」


「いいえ」


「…………」


「ただ、彼女に会う時には、いつも身構えてしまうのです。フレデリカは女の私から見ても、本当に魅力的な女性ですからね」


 魅力的なのは否定しないけど……。


 数秒の沈黙。


 そして、イルティミナさんの声は言う。


「フレデリカに会うと、私は、自分がマールに選ばれた幸運を思い知るのです。同時に、それにあぐらをかいてもいけないと……」


「…………」


「要するに、女として負けたくないのですよ」


 そう言って、彼女は「ふふっ」と自嘲気味に笑った。


(…………)


 ふと思った。


 イルティミナさんは子供ができない身体で、そこにどうにもできない劣等感を覚えているのかも……と。


 僕自身は、気にしてないけど。


 でも、彼女は違うのかもしれない。


 特に、フレデリカさんは子供も産めて、それに、僕のことが好きだったと聞いている。


 本人に直接言われた訳じゃないから、本当かわからないし、確かめようもない。それに2年も前に聞いた話だから、今でもそうかわからない。


 だけど、そういう色々が、イルティミナさんの心の中に少しずつ積もっているのかもしれない。


 僕は、正直に言う。


「僕が1番好きなのは、イルティミナさんだよ」


「…………」


「みんな大好きだけど、イルティミナさんだけは特別。それはきっと死ぬまで変わらない、ううん、もしかしたら死んでも変わらないかも」


「…………」


「それぐらい、僕はイルティミナさんが大好きです」


「……マール」


 驚いたように僕を呼ぶ彼女の声は、少し震えていた。


(……何だろう?)


 なんか改めて告白したみたいで、言い終わったら急に恥ずかしくなってきたぞ……。


 段々と頬が熱くなる。


 きっと真っ赤だ、僕。


 そんな僕のことを、イルティミナさんはギュッと強く抱きしめてくる。


「はい、ありがとう、マール」


「…………」


「このイルティミナも、貴方のことを永遠に愛しておりますよ」


「……うん」


 その腕の中で、僕は何とか頷いた。


 チュッ


(うひっ?)


 首に軽くキスされて、ビクッとしてしまう。


 それに、彼女の小さく笑う声が聞こえて、


「さぁ、今後こそ、寝ましょうか」


「あ、うん」


「おやすみなさい、私の可愛いマール」


「うん、おやすみ、僕の大好きなイルティミナさん」


「……ふふっ」


 僕の奥さんは嬉しそうに笑い、同時に、ようやく安心したような雰囲気になっていた。


 その温もりの中、再び目を閉じる。


 感じる彼女の存在。


 その愛おしさを噛み締めながら、僕はゆっくりと眠りの世界に落ちていった。  



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、僕ら6人は、シュムリア王国の王都ムーリアを散策することにした。


 6年前、僕が初めてアルン神皇国を訪れた時、フレデリカさんは神帝都アスティリオの観光案内をしてくれた。


 今回は、そのお返しである。


 家を出て、シュムリア湖の美しい湖面を左に眺めながら、通りを歩く。


 やがて見えてきたのが、


「あれが僕の所属する冒険者ギルド『月光の風』だよ」


 と、白亜の塔を紹介した。


 フレデリカさんは「おお……」と感動した様子だ。


 中に入ると、イルティミナさん、キルトさんもいるので多くの注目を集める。


 アルンのお姉さんは周囲を見回して、


「なるほど、さすがだな」


「どうも」


「ま、これでも元『金印』と現役の『金印』じゃからの」


 イルティミナさんは澄まし顔で、キルトさんは笑いながら答えた。


 そのあと、受付にクオリナさんがいたので彼女に事情を話し、急だったけどムンパさんとも挨拶することができた。


 アルン皇室直属の近衛騎士。


 クオリナさんは少し緊張した様子で、でも、フレデリカさんから普段の僕の仕事っぷりを聞かれたりして、何だか得意げに、


「マール君は凄いですよ!」


「おお、そうか!」


 と、なぜか意気投合していた。


 ムンパさんは相変わらずニコニコしていて、青髪のアルン美女と握手する。


 挨拶して別れたあと、


「どうも、心の内が見えないな。大臣方のように、交渉などに長けたなかなかの御仁のようだ」


 と、フレデリカさんは、小さく口にしていた。


(ふぅん?)


 異国の彼女には、僕らのギルド長はそう見えるんだね。


 何だか新鮮だ。


 彼女の評価に、幼馴染のキルトさんは苦笑して「怒らせると怖い奴じゃぞ」と付け加えたりしていた。


 それからは、街中を歩く。


 色々な店舗を眺めて、


「ムーリアは、こんなに物価が安いのか」


 とか、


「本当に、魔血判別のために『魔力探知機』などを店先に吊るしているのだな」


 などと、アルンの首都との違いに驚いていた。


 僕らにとっては、このぐらいの値段は普通、多少の魔血差別も当たり前になっているけど、彼女には違うみたいだ。


 育った環境が違う――その意味を実感する。 


 でも、悪い意味ではない。


(きっと、物事の違った見方を考える機会でもあるんだろうね)


 そう思えた。


 常識を疑い、より良い形を模索する。


 これから『転移魔法陣』で繋がる両国だからこそ、それが大事になる気がした。


 …………。


 やがて日も高くなり、僕らは散策を中断して、大通りに面した近くのレストランで昼食を取ることにした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「シュムリアという国には、どこか自由な気風を感じるな」


 食事中、フレデリカさんはそう言った。


 僕らがいるのはレストランの2階テラス席で、そこからは大通りを歩くたくさんのシュムリア王国人が見えていた。


 彼女は、人々の賑わう風景を眺めている。


 僕は首をかしげて、


「自由?」


 と、聞き返した。


 僕以外の4人のシュムリア国民も、アルンの美女を見ている。


 フレデリカさんは僕らを見て、


「アルンは法律を厳守する。守らなければ、刑罰も厳しく行われる。だが、この国はそうではなさそうだ」


「…………」


 確かに……魔血差別は禁止されてるけど、実際には行われている。


 その行為に注意はあっても、厳罰まではない。 


「恐らく、シュムリア王国は規則よりも人の感情を大事にする国なのだろう」


「…………」


「だからか、この国の人々はおおらかに見えるし、逆にアルン神皇国の規律重視の考えは息苦しい面もあるように思える。無論、どちらがいいとは言えないが」


「……うん」


「国の違い、それを私は今、改めて感じているよ」


 そっか。


 彼女の言葉に、僕も目から鱗の気分だ。


 シュムリアの美人姉妹も、フレデリカさんの言葉には興味深そうな表情だった。


 色々両国を旅をしてきたキルトさんだけは、お酒のグラスを片手に、何だか微笑ましそうに僕らのことを眺めている。


 ちなみにポーちゃんは、うん、無表情。


 僕は言う。


「来年、転移魔法陣が民間にも解放されたら、そうした文化の交流ももっと生まれるよね?」


「ああ、そうだな」


 フレデリカさんも頷いた。


 それから、話題は『転移魔法陣』のことになった。


 来年、解放される両国の『転移魔法陣』は3つの予定で、今回、フレデリカさんたちアルン使節団は、その1つを使ってシュムリア王国まで転移してきたらしい。


 場所は、王都から5日ほどの北の街。


 両国貿易のため、去年、できたばかりの街らしい。


 今は民間人ではなく、軍人や王立魔法院の関係者だけが暮らしているとか。


 来年、民間人の受け入れも開始する予定だって。


 フレデリカさん曰く、


「アルンの神帝都からシュムリアの王都まで、今まで2ヶ月以上かかっていた旅がたったの10日で到着したのだ。これは本当に凄い魔法技術だと思う」


 と、感心した様子。


(うん、そうだよね)


 空間を渡る技術なんて、前世では空想の中だけの話だった。


 でも、この世界では現実になる。


 そう思うと、ドキドキだ。


「安全面は大丈夫なのでしょうか?」


 と、僕の奥さん。


 その問いには、キルトさんが答えた。


「まぁ、問題なかろう。両国の各地にて、特殊な魔力波を発する『魔法塔』も建造された。これにより認可された『転移魔法陣』しか使えぬようになっていると聞く」


「コロンチュード様が設計したのよね!」


 付け加えるコロンチュード信者の少女。


 でも、あの『金印の魔学者』であるハイエルフさんの考案した安全装置なら信頼できると僕も思う。


 フレデリカさんも頷き、


「実用に関しても、問題ないと聞いている」


「そうじゃな」


 キルトさんも同意する。


「去年の『竜国戦争』にて運用されたことが、図らずも実用データの取得に役立ったそうじゃ。何とも皮肉ではあるがの」


「…………」


 そうなんだね。


 少し複雑だけど、


(でも、あの戦争を、ただ悲しいだけで終わらせないのは、人の逞しさなのかもしれない)


 そう思うことにしたい。


 ソルティスなんかは、


「『転移魔法陣』も所詮はただの技術。どう使うかは人次第よ。良くも悪くも、ね」


「ん、そうだね」


「だから、私らは良く(・・)使いましょ?」


「うん!」


 彼女の言葉に、僕は大いに賛同して頷いた。


 3人のお姉さんは微笑み、真似っ子のポーちゃんも僕と一緒に頷いている。


 キュッ


 キルトさんはグラスのお酒を空にして、


「ただ……まぁ、しばらくは混乱も起きるであろうがの」


 と、遠く青空を見て呟いた。


(混乱……?)


 僕は、キョトンとする。


「『転移魔法陣』の解放により人の移動と物流は、時間と距離を大きく節約することができる」


「うん」


「じゃが、言い換えれば、その節約分、収入を失う者たちもいるということじゃ」


「え……?」


 予想外の言葉に、僕は目を見開いた。


 イルティミナさんは少し考え、すぐに答えを見つける。


「なるほど……確かに、長旅の必要がなくなれば、『護衛の冒険者』などは仕事を失いますね」


「あ……」


「それ以外にも、本来の旅の道中にある町や村の人々は、そうした旅人相手の商売で生計を立てていることも多いでしょう。最悪、小さな町や村は潰れるかもしれません」


「…………」


 そう……なの?


 僕は、銀髪の美女を見る。


 彼女は頷いた。


「そうならぬように、両国で支援政策を実施するらしいがの。今回の訪問でも、アルンの外務大臣とその辺も詰めるとレクリア王女から聞いておるぞ」


「あ……そうなんだ」


 少し安心。


 でも、キルトさんは少し心苦しそうに、


「ただ、それでも充分とは言えぬ。やはり、そうした者たちに割を食わせるのは間違いないの」


「……うん」


 さすがに全ては救えない、ということか。


 少々、落ち込む。


 イルティミナさんが慰めるように、僕の茶色い髪を撫でてくれる。


 その手が優しい。


 フレデリカさんは、そんな僕らを見つめた。


 そして、言う。


「確かに混乱はあるだろう。だが、それでも『転移魔法陣』の有用性は計り知れない」


「…………」


「この世界には、まだ人の手の届かぬ未開の地も多い。その原因の多くは、人と物資の移動の確保に莫大な労力がかかることだ」


「あ……」


 その発言の意味に、僕は気づく。


 アルンの美女は微笑み、頷いた。


「今後は、未開の地の開拓も進むだろう」


「…………」


「その際には、多くの冒険者が活躍し、また多くの人々の雇用も生まれるはずだ」


「うん」


「無論、賛否あるとは思うが、『転移魔法陣の運用』は世界をより良くする可能性を秘めている――そう私は信じている」 


 その碧の瞳の力強い輝き。


 その瞳を吸い込まれるように見つめて、


「――うん。僕も信じる」


 僕自身も、大きく頷いた。


 未来には希望がある。


 大変なこともあるけど、そう信じて生きていきたいと思う。


 そんな僕のことを、イルティミナさんも隣で微笑みながら優しく見守ってくれている。


 キルトさんは黄金の瞳を伏せ、グラスのお酒を一口楽しむ。 


 ソルティスとポーちゃんは顔を見合わせ、笑いながら一緒に肩を竦めていた。


 …………。


 そんな風にして、僕らは食事を終えると、レストランをあとにしたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 レストランを出た直後、お店の前で、


「そう言えば、明後日からの予定には、やはりマール殿たちも参加するのだろうか?」


「……?」


 明後日からの予定?


 フレデリカさんからの質問に、僕と姉妹はキョトンとしてしまった。


(え、何それ?)


 特に予定はないはずだけど……。


 僕らの反応に、問いかけた彼女自身も「?」と困惑した表情だ。


「聞いていないのか?」


「えっと……何を?」


「…………。キルト殿?」


 確認するように、アルンの美女は王国の銀髪の英雄を見る。


 その英雄様は『しまった』という顔だ。


(え? キルトさん?)


 僕らの視線が集まり、彼女はきまりが悪そうに豊かな銀髪をガシガシとかく。


 吐息をこぼして、


「すまぬ、忘れておった」


 と、謝罪した。


 ええ……?


 僕とソルティスは驚き、シュムリア、アルン両国のお姉さんたち2人は呆れ顔だ。


 ポーちゃんだけは、無表情。


 その視線に、キルトさんは、


「いや、最近、両国の色々な調整を頼まれていたのもあって、こう忙しくてのっ」


 なんて言い訳する。


(まぁ、忙しくしてたのは知ってたけど……)


 僕の奥さんは嘆息し、


「で?」


「……ぬ」


「忘れていた私たちへの連絡とは、何なのですか?」


「む、むぅ」


 冷めた視線を向けられて、さすがのキルトさんもバツが悪そうだ。


 僕らの視線が集まる。


 彼女は息を吐き、そして、意を決したように顔をあげる。


(……?)


 そこには、少しだけ緊張感が満ちていた。


 キルトさんは言う。


「実は今回の訪問で、アルン側から要望があっての」


「要望?」


「そうじゃ」


 彼女は頷く。


 そして、


「我がシュムリア王国内にある『悪魔封印の地』、その視察を両国の有識者を連れて行う予定があるのじゃ」


(……は?)


 その思った以上の内容に、僕らはポカンとしてしまった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


次回更新は、今週の金曜日を予定しています。


また10月30日(水)のお昼頃、マールのコミカライズ第13話がコミックファイア様にて公開予定です。

更新されましたら、どうかこちらも読んでやって下さいね。よろしくお願いします。

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