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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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723・序列と評判

第723話になります。

よろしくお願いします。

 王都ムーリアの正面大門を通って、馬車、竜車の群れが出発した。


 草原の街道を進むのは、50台以上だ。


 これらは皆、王都に在籍する各冒険者ギルドが所有する車両であり、今回の合同慰霊祭に参加するため、各ギルドの代表たちが乗車する車列であった。


(なんか、壮観だね……)


 窓からの景色に、僕は少し見入っていた。


 たくさんの車両は、他の民間の車両に比べて、数も多く、豪華で見栄えも良かった。


 なぜか?


 それは各ギルドの集まる場なので、それぞれが自分たちのギルドの威厳や繁栄を示すため、車両にお金をかけるからである。


 要は、同業者に対する見栄なのだ。


 もちろん、王都民へのアピールもあるだろう。


 おかげで、どこかの軍隊のような威圧感で、けれど、統一感の微妙にない不思議な車列となっていた。


 …………。


 その車列の1台に、僕らも乗っていた。


 月光の風から、2台。


 その内の1台に、僕とイルティミナさん、キルトさん、そしてギルド長のムンパ・ヴィーナさんが乗車していた。


 もう1台には、秘書さんを含めたギルド職員5人が乗車している。


 意外といい馬車だ。


 月と風をイメージした装飾が車体に施されているのも、ポイントである。


 その車内で揺られながら、


「今回はごめんなさいね、イルティミナちゃん、マール君」


 と、ムンパさんは微笑みながら謝った。


 僕は「ううん」と首を振る。


 イルティミナさんも、


「どうかお気になさらずに。私共も、次のクエストに向かう道中、良い馬車に乗らせてもらえて楽をしておりますので」


 と、落ち着いて答えていた。


 それに、美人のギルド長さんも「そう」と微笑んだ。


 キルトさんも、そんな僕らのやり取りに笑っている。


 それから、


「慰霊祭の会場までは、3日ほどじゃ。まぁ、2人とも、のんびりとしているがよいぞ」


「うん」


「えぇ、そうさせてもらいます」


 と、僕らは答えた。


 僕らの役目は、護衛だ。


 でも、のんびりしてていい、とは何か?


 それは、僕ら以外にも、各ギルドの馬車に護衛役の冒険者が多数、同乗しているからだ。


 何度も言うけど、複数の冒険者ギルドが一堂に会する。


 そのため、皆、見栄を張る。


 だから、各ギルド長も護衛役に、かなり腕の立つ冒険者を連れてきているのだ。


 さすがに『金印』は、イルティミナさん1人だけど。


 でも、他の護衛役も皆、『銀印』ばかり、それも複数人だ。


 中には、10人以上、連れているギルドもある。


 総勢100人以上の銀印以上の冒険者が集まっているのだ。


(凄いよね……?)


 ある種、ちょっとした軍隊並、もしかしたら、それ以上の戦力だ。


 護衛役だけど……ね、のんびりできそうでしょ?


 ちなみに冒険者ギルド『黒鉄の指』に在籍している『金印の魔狩人』リカンドラ・ローグさんは、不参加だった。


 当初は、参加予定だった。


 でも、現在のクエストが予想外に長引いて、不参加になったらしい。


 ま、そういうこともあるよね?


 ちなみに王国で1番の老舗冒険者ギルド『草原の謳う耳』に所属する『金印の魔学者』コロンチュード・レスタさんも不参加だ。


 養女のポーちゃん情報だと、一応、打診はされてたみたい。


 でも、その返事は……うん、ね?


 彼女は我が道を行くエルフで、草原の謳う耳側も打診しつつも期待はしていなかったみたいだ。


 そんな四方山もありつつ、でも、それぐらい王都の冒険者ギルドにとっては、この『合同慰霊祭』というのは3年に1度の1大イベントみたいだった。


 そんな僕らの車内では、


「少しぐらい、酒は飲めんかのぅ」


「さすがに駄目よ、キルトちゃん」


 なんて幼馴染ゆえの気安さで、2人の年上の美女が会話を交わしていた。


(あはは……)


 キルトさんったら、全くもう。


 僕は苦笑。


 イルティミナさんも呆れ顔だ。


 と、その時、僕とムンパさんの目がふと合って、真っ白な獣人さんは困ったように微笑んだ。


 僕も、つい笑ってしまう。


 …………。


 そうして竜車に揺られながら、僕らの慰霊祭への旅は始まった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ギルド集団の車列は、やがて、街道沿いにある美しい湖畔の街に到着した。


 本日はここまで。


 この街のホテルの1つが貸し切られて、全員がそこに宿泊することになっている。


 いや、お金かけてるなぁ。


 そんな僕らもホテルの1室を割り当てられ、やがて、大きな会場で食事会が開かれて、それが終わってようやくお開きになった。


(やれやれ)


 知らない人たちとの食事は、少し緊張するよ。


 ともあれ、料理は美味しかった。


 まさに1流ホテルの料理って感じだったね。


 そのあとは、何となく、僕とイルティミナさんはキルトさんの部屋に集まって、3人で雑談に興じた。


 その最中、


「あらあら? 私も参加していいかしら?」


 と、ムンパさんも部屋にやって来た。


 彼女も1人で部屋にいるより、幼馴染と話をしてたかったみたい。


 せっかくなので、4人でお喋りだ。


 ムンパさんも柔らかな性格なので、上司だけど、特に気負うこともなく話せた。


 その中で、


「そう言えば、月光の風の評判ってどうなの?」


 と、ふと思ったことを聞いてみた。


 ムンパさんは驚いた顔。


 少し不躾な質問でもあったので、僕の奥さんは困った顔をする。


 でも、こうしてたくさんの冒険者ギルドが一堂に会していると、どうしても、他のギルドと比べてしまうし、その立ち位置とか世間的な評判も気になるんだ。


 そして、キルトさんは、


「そうじゃな、悪くはないぞ」


 と、答えてくれた。


 彼女は、僕の奥さんを見て、


「何しろ、王国トップの冒険者を2人連続で輩出してるからの」


 と、笑った。


(そっか)


 金印の冒険者。


 それは王国の数多いる冒険者の中でも、たった3人しかなれない。 


 しかも、その内の1人は、100年以上、ハイエルフのコロンチュード・レスタが努めているので、実質の枠は2人なのだ。


 その2枠を、一時はキルトさん、イルティミナさんで独占もした。


 なるほど、評価も高い訳だ。


「じゃあ、冒険者ギルドでも上の方なの?」


「多分の」


 キルトさんは頷き、幼馴染の白い美女を見る。


 僕らのギルド長に、


「実際、どうなのじゃ?」


 と、聞いた。


 ムンパさんは頬に手を当て「あらあら」と困ったように笑った。


 それから、


「そうねぇ。格付けされるなら、トップ10には入るんじゃないかしら?」


 と、答えた。


 トップ10。


 大小含め、冒険者ギルドはたくさんあるので、結構、凄い。


 僕は「そうなんだ?」と目を輝かせた。


 自分の所属ギルドが認められていると思うと、素直に嬉しかった。


 何より、自分の活動が貢献できているのだと思えて、改めて、やりがいも感じられたんだ。


 イルティミナさんも「そうですか」と頷く。


 僕の奥さんは『月光の風』の稼ぎ頭、トップ冒険者なので、より思う所があったのかもしれない。 


 それでも、ムンパさんは冷静に、


「ただ、上位3つには入れないでしょうね」


 とも続けた。


(そうなの?)


 僕の表情に、ムンパさんは気づく。


 穏やかに微笑んで、


「私たちのギルドは、まだ設立20年ほどだもの」


「…………」


「他のギルドは老舗も多いし、在籍冒険者数も10倍以上のギルドは複数存在してるわ。仕事の安定感、人々の信頼度、そうした面では、どうしても敵わないの」


「そうなんだ……」


「うん、私たちは、まだ新参者」


「…………」


「でも、新進気鋭のギルドとして評判は上がってる……って所かしらね」


 と、教えてくれた。


 最後に、


「もちろん、それもマール君やイルティミナちゃんたち、みんなががんばってくれてるおかげよ。本当にありがとう」


 と、はにかみながら付け加えてくれた。


 その言葉に、僕も「うん!」と笑った。


 自分たちの居場所である大切なギルドのために、僕ももっとがんばらないとね。


 うん、やる気出たぞ。


 僕は、両手を握る。


 それからふと思って、


「それじゃあ、冒険者ギルドのトップってどこなの?」


「黒鉄の指ね」


「あぁ……」


 その名前に、僕は納得した。


 冒険者ギルド・黒鉄の指は、王国最大手の巨大ギルドだ。


 在籍冒険者数は4000人を超え、現在、アルン神皇国や海を渡ったドル大陸のヴェガ国などにもギルド支部を設置して、国外進出を果たしていた。


 イルティミナさんと同じ『金印の魔狩人』のリカンドラ・ローグさんも所属している。


 彼の前には、彼の兄で同じく金印だったエルドラド・ローグさんもいた。


 キルトさんも苦笑して、


「あそこは別格じゃ。なかなか、その牙城は崩せぬよ」


 と、認めていた。


(そっかぁ)


 ちなみに『月光の風』ができた頃から、ずっと序列1位の冒険者ギルドらしいよ。


 つまり20年以上、王国トップの冒険者企業。


 本当に凄いね。


 そんな風に、序列の上位グループは、ほぼ固定されているとか。


 そして、その上位にここ数年で食い込んだのが、我らが『月光の風』らしい。


 うん、がんばった。


 だって、僕らのギルドの在籍冒険者数は、約150人。


 大手と比べてあまりに少ない。


 そんな中小企業ギルドでも大企業ギルドと肩を並べるほどなのだから、褒められるべきことだろう。


 僕がそう思ったことを言ったら、


「うふふっ、ありがとう」


「まぁの」


 ギルド長と看板冒険者だった2人は、満更でもない顔だった。


 そんな彼女たちの顔を、僕は見つめる。


 この2人、『ムンパ・ヴィーナ』と『キルト・アマンデス』は、冒険者ギルド・月光の風の創立メンバーだ。


 このギルドの設立から発展を、直接、ずっと目にしている。


(…………)


 その事実に、少し思いを馳せる。


 それから僕は頷いて、


「20年前、2人は『月光の風』をどうやって作ったの?」


 と、聞いた。


 ムンパさんとキルトさんは、驚いたように目を丸くする。


 お互いの顔を見て、


「そうねぇ」


「話すと長くなるがの。……聞くか?」


「うん」


「お願いします」


 僕は即答し、イルティミナさんも興味があったのか、頷いていた。


 そんな僕らに、年長の2人は笑う。


 それから、ムンパさんは真紅の美しい瞳を伏せて、息を吐く。


 そして、


「始まりは、私たちがまだアルンにいた頃からになるわね」


 と、静かに語り始めたんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。



19日に、マールのコミカライズ第9話が公開されました。


小説とはまた違った、あわや先生の描く漫画の世界のマールとイルティミナを、どうか皆さん、お楽しみ下さいね。


URLはこちら

https://firecross.jp/ebook/series/525



あ、小説の次回更新は、来週の月曜日を予定しています。こちらも、どうぞよろしくお願いします♪

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