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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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064・ゴブリンの巣

第64話になります。

よろしくお願いします。

 5体のゴブリンを倒した僕らは、そのまま森の探索を続行した。

 まだクエストは、終わりじゃない。


(油断するな、マール)


 自分に言い聞かせながら、周囲の気配に神経を張り巡らせて、草木を分けていく。


 と、


「マール」


 ん?

 後ろから、キルトさんに声をかけられた。


「そなた、ゴブリンを倒した剣の動き、どこで覚えた?」

「え?」


 思わず、振り返る。

 師匠であるキルトさんは、とても不思議そうな様子だった。


 よく見たら、姉妹も興味深そうに、こちらを見ている。


 僕は、びっくりしながら、正直に答えた。


「どこって、キルトさんに教わって」

「……何?」

「ずっと見せてくれてたよね、僕に。……剣を振る姿を」


 3人は、なぜか唖然とした。


(う……あんまり下手だから、呆れられたかな?)


 ちょっと落ち込む。

 でも、イルティミナさんが焦ったように言う。


「まさか……では、マールは見ただけで、キルトの剣の動きを覚えたと?」

「う、うん」


 …………。

 なんだろう?


 みんな、黙ってしまった。


 ソルティスが、複雑そうに唇を尖らせる。


「な、何よ……ただのまぐれでしょ?」

「…………」

「まぐれで、1人の子供が、ゴブリン5体を倒せると思いますか?」

「……だ、だって……」


 姉の言葉に、妹もまた黙る。

 キルトさんが、白い指を形の良いあごに当てて、「ふぅむ」と唸る。


「どうやら、マールの剣才は、我らの想像以上のようじゃな」

「…………」

「…………」

「本格的に剣を教えたら、どの領域まで届くのか……フフッ、とても楽しみであるの」


 師匠は、なんだか子供みたいに笑う。


 ソルティスは「……マールのくせに」と不服そうに僕を睨み、イルティミナさんは「さすが、私のマールです」と嬉しそうに笑って、大きく頷く。


(みんな、大袈裟だなぁ)


 少々困りながら、僕は、小さな手で目の前の草を払う。


「ほら、もう行くよ?」

「うむ」

「はい」

「……私は、まだ認めないもん」


 そんな3人を後ろに率いて、僕らは、森の探索を再開した――。



 ◇◇◇◇◇◇◇


 

 5体のゴブリンのいた場所からも、獣道は続いている。

 しばらく、そこを進んでいくと、


(ん?)


 また臭いがした。


 僕は足を止めると、手を上げて、後ろの3人にも合図をする。

 彼女たちの足も、すぐに止まった。


 生臭い、獣のような臭い。


(これは……ゴブリンの臭いだ)


 気づいた僕は、また犬マールになって、草に隠れながら、慎重に進んでいく。

 しばらくすると、


(……いた)


 ゴブリンだ。


 そこは、小さな崖になっていた。

 崖には、大人が通れるほどのサイズの亀裂が走っている――洞窟だ。


 ゴブリンは、その洞窟の前に1人で立っていた。


(……見張り、かな?)


 退屈そうに欠伸をするゴブリン。

 周囲を注意深く見たけれど、他にゴブリンの姿は見当たらない。きっと、残りのゴブリンたちは、あの洞窟の中だろう。


(つまり、あそこがゴブリンの巣だ)


 ようやく見つけた。


 僕は、興奮を抑えて、しばし考える。


「……よし」


 右手で『マールの牙』の柄を掴み、左手で、地面に落ちている石を拾った。


 拾った石を、ゴブリンの頭上を越して、反対側の森へと投げる。


 コォーン


『ギ?』


 木にぶつかる乾いた音がして、ゴブリンは、そちらを向いた。


(今だ!)


 僕は草むらから飛び出し、背後から走って、左手でゴブリンの口を塞いだ。


 ザシュッ


 右手の刃で、その首を深めに斬る。


『……ッ!?』


 瞬間、ゴブリンが物凄い力で暴れた。うわっ!?


 弾かれた僕は、慌てて体勢を立て直し、すぐに『マールの牙』を構える。


 ようやく見つけた僕に、ゴブリンは怒ったような、泣きそうな顔をして、喉を押さえた。それから洞窟の仲間のために『警告の叫び』をあげようとする。


『ッッ……ッ』


 ……でも、声は出ない。


 僕は、彼の頸動脈だけでなく、気道も斬った。


 首の傷からは、気泡交じりの血液が、ブクブクと吹き出している。


 ゴブリンは、苦しげな顔で僕を睨んだ。

 震える右手が、伸びてくる。


「…………」


 僕は、横に避けた。

 ゴブリンは、そのまま僕の前を通過して、2歩、3歩と進み、そのまま膝から崩れるようにして倒れた。地面の上に、紫の血が広がっていく。


 ――ゴブリンは、死んだ。


「……ふぅぅ」


 僕は、大きく息を吐く。

 

 感傷に浸る暇はなかった。

 僕は、すぐにゴブリンの死体を引っ張って、洞窟からは見えない森の中へと隠す。


 そして、森の中で待っていてもらった3人を呼んだ。


「ほう? またやったか」

「さすがです、マール」

「ま、まぐれよ、まぐれ……絶対に!」


 新しいゴブリンの死体を見て、3人の反応はそれぞれだ。


 僕は苦笑しながら、洞窟のことも伝える。


「ふむ。それは、ゴブリンの巣じゃな」

「やっぱり」


 僕は頷く。


 そして僕らは、その洞窟の前へと移動した。


(……中は、真っ暗だね?)


 入口から覗き込んで、僕は、改めて思った。


 日の当たる場所だけは、辛うじて、視界がある。でも、その先は、本当に真っ暗だ。伸ばした自分の手さえ、わからない。


「こんな中で、ゴブリン、本当に暮らしてるの?」


 ちょっと疑問だ。

 すると、久しぶりのイルティミナ先生が教えてくれる。


「ゴブリンには、暗視がありますから」

「暗視?」

「はい。ゴブリンだけでなく、魔物の多くは、暗視を持っています。なので魔狩人は、魔物との夜の戦闘を、あまり好みません。もちろん、避けられない場合もあるのですけれど」


 そうなんだ?

 魔物は、暗視ができる――うん、覚えておこう。


 頷く僕。

 その後ろを通って、ソルティスが洞窟の入り口に近づき、その左右の壁に、あの長い大杖を伸ばした。


 コン コン


 先端を軽く当て、難しい顔をする。


「ふぅん? ちょっと狭いわね」


 確かに。

 この洞窟、狭くて、横に2人並ぶこともできない。


(これじゃ中で、タナトス魔法文字を描くのも、無理そうだよね)


 キルトさんも頷く。


「奥は、広いかもしれぬがな。しかし、狭い通路がどこまで続いているかは、わからぬ」

「じゃあ、どうする?」


 少女の視線は、僕を見ていた。


「ここでも、マールを先頭にしたら、さすがに死んじゃうと思うわ」

「ふむ」


 うん……そうだよね。


 ここで戦闘になったら、1対1の状況になる。

 そして、それに勝っても、倒したゴブリンの向こうから、新しいゴブリンが次から次に襲ってくるんだ。


(……きっと全滅させるまで、終わらない)


 正直、僕は、途中で力尽きる。


 イルティミナさんが、僕の肩に、優しく白い手を置いた。


「ならば、ここは、私が参りましょう」

「イルティミナさん……」

「リーダーは貴方です、マール。どうか、命じてください。そうすれば、私は貴方のために戦ってみせますよ?」


 頼もしく、凛とした表情だ。


 …………。

 でも僕は、素直に「うん」と言えなかった。


 イルティミナさんが強いのは、わかっている。きっと彼女なら、ゴブリンなんて物の数ではないんだろう。

 だけど、


(理屈じゃなくて、感情で嫌だ……) 


 大好きな人に、危険な役目を押しつけるなんて、男として、やっぱり抵抗がある。


 それに――これは、僕の試験だ。


 ここで逃げたら、3人が許しても、僕が自分を認められない。


「…………」


 3人とも、僕を見ていた。

 リーダーである僕の決断を、待っていた。


(……どうする?)


 僕は考える。


 洞窟の中に先頭で入るのは、僕か、イルティミナさんか……それとも、他に方法が?

 あぁ、せめて外なら、一緒に戦えるのに。


 ……ん?


(……洞窟の外、なら?)


 そうか。

 ふと思いついた。


 その閃いた作戦を、頭の中でシミュレーションする。


 ……うん。


「きっと、これならいけるかも!」


 表情を輝かせる僕に、3人は、キョトンとした表情を浮かべた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 地面に座った僕は、リュックの中から荷物を取り出す。


 ロープ。

 火の魔石。

 ランタンの燃料油。


(うん、これで行けるはず)


 僕の手元を、3人は、興味深そうに覗き込む。


「これを、どうされるのですか?」

「うん、まずはね」


 言いながら、僕はロープを手にして、洞窟近くの木の根元にしっかりと結びつけた。

 そのままロープの反対側を持って、洞窟の前を通る。


(高さは、このぐらいかな?)


 僕の脛ぐらいに合わせて、ロープをピンッと張りながら、また近くの木にしっかりと結びつける。 


 ギュウウ


 これでよし。


 試しに、ロープに触ってみる。

 うん、固い棒みたいだ。


 自分の仕事に満足して、僕は笑いながら、パンパンと手を払う。


 そして、3人を振り返った。


「みんな、落ち葉や枯れ枝を集めるの、手伝ってくれる?」

「ふむ?」

「わかりました」

「ま、いいわ」


 彼女たちは、快く了承してくれる。

 そして僕らは、森の中から、燃やせそうな乾燥した葉や枝を集めて、洞窟の入り口から少し入った地面に、それらを積み重ねた。


 うん、要するに焚き火の準備だ。


 さすがにここまで来ると、彼女たちも、僕の意図に気づく。 


「なるほどの」

「そういうことでしたか」

「ふぅん? マールのくせに、やるじゃない」


 あはは。

 まだ上手くいくかはわからないけれど、アイディア自体は悪くないみたいだね?


 そして僕は、枯れ枝と落ち葉の山に、燃料油を垂らす。


 ポタポタ


(こんなものかな?)


 最後に、その真ん中に、赤いビー玉のような魔法石――『火の魔石』を置いた。


 ピトッ


 幼い人差し指を、その赤い輝きに押しつける。


 この5日間、ソルティスと一緒にやったように呼吸を整えて、指先にお湯が集まるイメージで、魔力を集め、そのまま火の魔石へと流し込む。


 ボワンッ


(うわっ!?)


 赤い魔石を包むように、炎が溢れた。


 でも、思った以上の高火力!

 ライターの火ぐらいかと思ったら、普通に30センチぐらいの火柱が発生してた。


 炎は、あっという間に燃料油に引火して、更に、集めた枯れ枝や落ち葉を燃やしていく。揺らめく赤い輝きと共に、真っ黒な煙がモクモクと噴き出していく。黒い煙は、そのまま洞窟の天井にぶつかって、広がっていった。


(うっ、目に染みる……っ)


 口と鼻を押さえて、僕は慌てて、洞窟の外に出た。


「大丈夫ですか、マール?」

「う、うん」


 涙目の僕を、イルティミナさんが心配そうに出迎えてくれる。


 キルトさんとソルティスは、洞窟内で揺れる焚き火の炎と、その黒い煙を眺めていた。


「ふむ。どうやら、成功しそうじゃの」

「そうね」


 僕も振り返る。


 黒い煙は、一部は、空へと逃げていく。

 でも、その大半は、真っ暗な洞窟の奥へと、音もなく流れ込んでいた。


(うん、狙い通りだ)


 やがて、洞窟内に煙は充満し、中にいるゴブリンたちは、慌てて外へと逃げ出してくるだろう。 


「じゃあ、少し待とうか」

「はい」

「うむ」

「はいよー」


 僕らは、呼吸を整えながら、その時が来るのを待ち続けた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「マール、来ました」


 突然、イルティミナさんに肩を触られ、そう教えられた。

 え?


 見れば、座っていたキルトさんも、大剣を手にして立ち上がっている。


(2人とも、どうしてわかるのかな?)


 不思議に思いながら、僕も立つ。

 その表情に気づいて、イルティミナさんが笑った。


「振動です。指を地面に触れさせておくと、足音が伝わってくるのですよ」

「へ~?」


 そうなんだ?

 うん、今度、実践してみよう。


 そんな呑気な会話をする僕らに向けて、ソルティスが『しーっ』と唇に幼い指を当てて、怒った顔をしていた。

 あ、ごめんごめん。


 気を取り直して、僕らは、洞窟脇で息を潜める。


 洞窟は、もう真っ黒だ。

 入り口付近まで、完全に黒い煙に包まれている。


 やがて、


 タッ タタッ タタタッ……


 軽い複数の足音が近づいてくるのが、僕の耳にも聞こえてきた。


「…………」


 僕ら4人は、視線を交わす。


 そして僕は、『マールの牙』を、ゆっくりと鞘から抜いた。

 3人も、それぞれの武器を構える。


 咳き込む音。

 喚く声。


 反響するそれらは、すぐそこだ。


 そして――ついに闇の奥から、赤褐色の魔物たちが飛び出してきた。


 涙目で、咳き込みながら走るゴブリンたち。

 その1体の足が、


 ビンッ


『ギヒャ?』


 入口に張ったロープに引っかかって、盛大に転んだ。

 続けて、もう1体。

 更に奥から、もう2体。


 ビンッ ビビンッ


 次々に、ロープの罠で転倒していく。


(今だ!)


 ヒュッ


 一番近くのゴブリンの首を、『マールの牙』の鋭い刃で撫でる。


『ヒギッ!?』


 ゴブリンは驚き、紫の血が溢れる首を押さえ、慌てて立ち上がる。

 僕と目が合った。

 でも、その目から光が消えて、すぐによろめき、地面に倒れて動かなくなった。


「…………」


 僕は、振り返る。 


 トス トス バキィン


 イルティミナさんの白い槍が、霞むような速さで、2体のゴブリンの心臓を正確に貫いていた。キルトさんの雷の大剣は、1体のゴブリンの頭蓋を砕き、吹き飛ばしている。

 相変わらず、2人とも強い。


 見ている僕に気づいて、イルティミナさんは、優しく笑う。


「また倒しましたね。さすがです、マール」

「うん」  


 褒められて、ちょっと照れる。


 と、魔法使いの少女がこちらにやって来て、倒れているゴブリンたちの足を掴んだ。


(ん?)


 何をするのかと思ったら、


 ポォ~ン


 ゴブリンたちの死体を、まるで軽い荷物でも投げるように、森へと放り込んだ。


「死体があると邪魔になるでしょ? 私がどかすから、マールは戦いに集中して」

「あ、うん」


 驚く僕に、そう言った。

 そして、残る3つの死体も、すぐに森に飛んだ。


 洞窟を見ていたキルトさんが、警告する。


「ふむ、次が来るぞ」

「ん」


 僕は頷いた。

『マールの牙』を構えて、また待ち受ける。


 それから、ゴブリンたちは次々に、洞窟から姿を現した。


 ヒュッ


 そのたびに、僕は、ロープの罠で転んだゴブリンたちの首を、『マールの牙』で撫でていく。


 2人の魔狩人も、淡々と彼らを殺す。


 魔法使いの少女は、そうして生まれる死体を片づける。


 ――まるで、流れ作業だ。


(……感覚が、麻痺してきたかも?)


 殺すことに抵抗がなくなる自分を、自覚する。

 でも、それを深く考える前に、新しいゴブリンが目の前に現れて、僕はそれに刃を振るった。


 …………。


 どのくらい、戦ったのか?


 20体から、数えるのはやめていた。


 そして気づいたら、ゴブリンは、出てこなくなった。


「…………」


 焚き火も消えて、もう黒い煙の発生も止まっている。

 洞窟の煙も、少し薄らいでいる。


 イルティミナさんが、真紅の瞳を細めて、洞窟内を見つめながら言う。


「……全滅させましたかね?」

「ふむ」


 キルトさんも、判断がつかない顔だ。


 警戒して、僕らは10分ほど待った。

 でも、変化はない。 


 キルトさんは、ついに構えていた大剣を背中に戻して、大きく頷いた。


「どうやら、終わったようじゃの」

「はい」

「ようやくかぁ」


 姉妹は、安心したように息を吐く。


(これで……終わり?)


 呆気ない終幕に、僕は、ちょっと戸惑った。

 最後の方は、戦いというにはあまりに一方的で、危険らしい危険は、1度もなかったんだ。


「…………」


 血に濡れた『マールの牙』を見る。


 振り返れば、ゴブリンの血に染まった大地が広がっている。森の中には、たくさんの死体が積み重なっている。麻痺するほどの血の臭いが、ここには充満していた。


 全て、僕がやったことだ。


 目を閉じる。


(……僕は、『何か』を失ったのかな?)


 きっと、心の大切な何かを。


「マール?」


 僕の様子に気づいて、イルティミナさんが声をかけてくる。


「どうかしましたか?」

「ううん」


 目を開き、笑った。


「大丈夫。ちょっと疲れただけだよ」

「…………。そうですか」


 心配そうに僕を見つめ、それから彼女は、その白い腕を伸ばして、僕を抱きしめる。


(わ?)


 綺麗な指が、僕の髪を撫でて、


「お疲れ様でした、マール。今日は、とても見事でしたよ?」

「……う、うん」

「帰ったら、ゆっくり休みましょうね?」


 いつもより優しい声だった。

 

 ……少しだけ、失った『何か』を取り戻せた気がした。


 そんな僕らのことを、キルトさんもソルティスも、黙って見つめている。


 何はともあれ、これでクエストも終わりだ。


(……あとは、みんなの結果待ちだね?)


 そう思った時だった。


『グギギ……』 


 洞窟の奥から、低い唸り声がした。


「!?」


 僕は、慌ててイルティミナさんから離れた。

 彼女はすぐに、僕を守るように立ち、白い槍を構えている。


 キルトさんも、ソルティスを庇うようにして、すでに大剣を構えていた。


 そして僕らの視線の先――洞窟の裂け目から、黒い煙をまとった魔物が、ゆらりと姿を現した。


(……ゴブ、リン?)


 困惑した。


 姿形は、とてもゴブリンに似ていた。

 でも、体格が違う。


 子供みたいな大きさのゴブリンに比べて、現れた魔物は、大人と同じサイズだった。

 肌は黒褐色で、筋肉も太い。

 身に着ける鎧は、とても頑丈そうで、手には錆びたグレートソードがある。


 明らかに、今までのゴブリンよりも強そうだ。


 キルトさんが、黄金の瞳を丸くする。


「ほう? ここには、大人鬼ホブゴブリンもいたのか」


 ホブゴブリン!?


 その名前は、前世の知識で知っている。

 ゴブリンよりも強く、大きな、いわゆるゴブリンの上位種だ。


「こいつが……」


 僕は、息を呑む。

 洞窟から現れた巨大なホブゴブリンは、黄色い眼球を僕らに向けて、


『グギャアアオ!』


 威嚇するような雄叫びを上げた。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、明後日の金曜日0時以降になります。よろしくお願いします。

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