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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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539・4年ぶりの神帝都アスティリオ

第539話になります。

よろしくお願いします。

「シュムリアの皆様、ようこそおいでくださいました」


 国境のアルン側の砦で入国手続きを終えると、黒い鎧を着たアルン騎士の一団に出迎えられた。


 先頭に立つ40代ぐらいの騎士さんが敬礼し、頭を下げてくる。


 彼はアルン神皇国軍・第2騎士団団長の将軍だと名乗って、ここから先、アルン領内での安全のため、僕らシュムリア使節団の護衛を担当してくれるのだと語られた。


(ほへぇ……)


 アルン騎士さんたち、200人ぐらいいるんだけど……凄くない?


 ちなみにシュムリア騎士は騎馬だけど、アルン騎士は皆、2足竜に跨る騎竜だった。


 レクリア王女は「よしなに」とたおやかに微笑まれ、第2騎士団の将軍さんやアルン騎士さんたちに応えていた。


 そうして、6台の大型竜車、20人のシュムリア騎士、それに200人のアルン騎士団という大所帯になって、僕らのアルン神皇国での旅は始まったんだ。


 …………。


 …………。


 …………。


 荒野の街道を砂煙を巻き上げながら、250人近い旅団が移動する。


(壮観だねぇ)


 自分もその一員でありながら、窓から見える光景に、なんだか他人事みたいにそう思ってしまった。


 ずいぶんと大袈裟に思えるけど、でも、国賓を迎えるのだから、これぐらいは当然なのかもしれない。


 それに、


「アルンの辺境地方は、シュムリアほど治安は良くないからの」


 と、かつてこの地を旅したキルトさん。


 アルン神皇国は、シュムリア王国の3倍以上の国土を持つ大国だけれど、多くの小国を飲み込んでそれが統一国家となったのは、まだ50年ほど前と最近の話だ。


 だから、いまだ各地では内乱も起きたりする。


 アルンの首都である神帝都アスティリオとその周辺の中央部は、すでに治安も安定しているけれど、辺境はまだまだ治安が悪く、魔血差別の思想も残っているそうなんだ。


 ただ、それには『闇の子』の暗躍の影響もあった。


 アイツは、人類との決戦に備え、アルンの国力を落とすために火種の燻るアルンの各地で、それを引火させるような計略を実行していたりした。


 それによって起きた反乱と鎮圧の戦闘は数多い。


 すでに『闇の子』は存在していないけれど、その計略自体は残されてしまっているから、それによる内乱はまだあるのだそうだ。


 そんなキルトさんの説明に、僕は憮然となった。


「死んだあとまで、本当に傍迷惑な奴だよ、アイツは!」


 やっぱり僕は、アイツのことが大っ嫌いだ。


 そんな僕の態度に、キルトさんとイルティミナさんは苦笑し、ソルティスはどこか呆れた顔で「マールって『闇の子』にだけは当たりが強いわよね」と呟いていた。


(当然じゃないか)


 だって、アイツは『悪魔の欠片』なんだから。


 ねぇ、ポーちゃん?


 そう思いながら、神界の同胞である金髪の幼女の方を見たんだけど、彼女はポ~と窓から外の景色を眺めていて、


「すでにいない存在に、ポーは、そこまで興味はない」

「…………」


 そんな素っ気ない答えを返されてしまった。


 うぅ……。


 そんな感じで、僕らのアルン領内での旅は続いた。


 目指すのは、神帝都アスティリオ。


 でも、アルン辺境の街道は、まだ整備されていない場所も多くて、結果として魔物の生息域に近い所を通ったりすることも多かった。


 そのため、魔物の襲撃は何回かあった。


 だけど、


「弓矢隊、放て! アルン騎士の誇りにかけて、薄汚い魔物共をシュムリアの方々に1歩たりとも近づけるな!」


 第2騎士団の将軍さんの檄が飛び、炎の点された矢が正確無比に魔物たちを射抜いていく。


 それを抜けた魔物も、次々と斬り伏せられる。


 僕らどころか、護衛のシュムリア騎士さんたちの出番もなく、アルン騎士だけで簡単に魔物を撃破し、追い返してしまっていた。


(やっぱり強いな、アルン騎士は……)


 4年前にもそう思ったけど、本当に1人1人の練度が半端ない。


 その実力と活躍に、シュムリア騎士さんたちも感化され、刺激を受けているみたいだった。


 そんな感じで、旅は順調。


 途中の街に逗留しながら、2週間ほど移動すると、4年前にも訪れた隕石都市ロンドネルに辿り着いた。


「まぁ、飛行船ですわ!」


 そのアルン軍基地に停泊している巨大な飛行船を見つけて、レクリア王女は目を輝かせていた。


 ここからは、空の旅になるらしい。


 これで、一気に神帝都アスティリオまで移動するみたいだ。


 2度ほど乗ったことのある僕らとは違って、初めて目にする飛行船に、使節団の人やシュムリア騎士さんたちは、驚きと好奇心を持って船体を見つめていたよ。


 そんなわけで乗船だ。


 空に浮かび上がると、シュムリアの皆さんは、おっかなびっくりな顔だった。


(ふふっ)


 なんだか微笑ましい。


 そこからは特に問題もなく、雨天の時でも、飛行船は安定して空を飛び続けた。


 やがて、更に2週間ほど。


 大自然の多かった眼下の景色に、3重になった五角形の城壁に包まれた都市が見えてきた。


「やっと着きましたね」

「うん」


 一緒に眺めるイルティミナさんの言葉に、僕は頷いた。


 およそ1ヶ月半の旅を終えて、僕らは世界最大の国アルン神皇国の首都、4年ぶりに訪れる『神帝都アスティリオ』に到着したんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 五角形の都市の中心に位置する皇帝城――その敷地内へと、飛行船は着陸した。


 アルンの人々に出迎えられながら、僕らは控室へと案内され、それから1時間後にアルン皇帝陛下と謁見することに相成った。


(ドキドキするなぁ)


 陛下にお会いするのは、2年ぶりだ。


 最後に会ったのは、第2次神魔戦争の時だったっけ。


 控室にいるキルトさん、イルティミナさん、ポーちゃんはいつも通りの様子だったけれど、人見知りなソルティスだけは僕と同じ落ち着かない様子だった。


 控室で正装に着替えて、待つことしばし。


「皆様、お時間です」 


 女官さんに声をかけられ、僕らは謁見の場へと赴いた。


 シュムリア王国使節団の代表となるのは、やはり、レクリア王女だ。


 謁見のための大広間では、彼女を先頭にして、僕らは整列し、膝をつきながら皇帝陛下の登場を待つ。


(あ……)


 その時、大広間の前方、皇帝陛下の現れる予定の場所の手前に、2人の人物が立っているのに気づいた。


 1人は宰相らしい人。


 もう1人は、僕にとっては懐かしい顔である、まるで熊みたいな大柄な武人――アルン神皇国が誇るあのアドバルト・ダルディオス将軍だった。


 久しぶりではあるけれど、加齢で衰えた様子はまるでない。


 気力に満ち、威風堂々とした佇まいだ。


 距離もあるし、さすがに声をかけるわけにもいかないけれど、僕はその姿に嬉しくなってしまった。


(あとで話せるといいな)


 そんなことを思いながら、今はそれぞれの立場に徹しておく。


 やがて、陛下が現れた。


 厳かな玉座に腰を下ろして、高い位置から僕らを見下ろしながら、落ち着いた声を落とされる。


「皆、面を上げよ」


 静かな声。


 けれど、それはとても美しく、聞く者の心の奥までスッと入り込んでくるような声だった。


 シュムリア使節団の何人かは、ブルッと身を震わせている。


(さすが陛下だ……)


 そのカリスマは健在である。


 視線を上げれば、そこには、その声によって想像された通りの美しく高貴な男性の姿があった。


 まさに皇帝に相応しい貴人の具現。


 僕の視線も吸い寄せられるようになってしまう……わかっていても、その自覚があった。


 彼は、ゆっくりと唇をほどく。


「我が可愛い姪よ、そしてシュムリアの者たちよ。余の娘のために、遠路遥々よく訪ねてくれた。その友愛と親愛に、余は深い感謝を返そう」


 花咲くような柔らかな声だ。


 対して、こちらはレクリア王女が頭を下げて返礼し、


「アザナッド皇帝陛下に置かれましては、ご機嫌麗しゅう。我が父、そしてシュムリア王国民を代表してお慶びを申しあげますわ。またわたくしの従姉妹殿のめでたきことには、心よりのお祝いをお送りいたします」


 可愛らしく涼やかな声で、そう答えた。


 アルン皇帝陛下のカリスマに霞むことのない存在感を、このシュムリア王国の第3王女は感じさせていた。


 それは、居並ぶアルンの高官たちも感じたみたいだ。


 何人もが「ほう……」という顔をされている。


 そこからは、パディア皇女殿下の誕生を祝うための品が贈答されたり、親書の受け渡しが行われたりした。


 …………。


 ぶっちゃけ、僕らは何もすることがない。


 いや、何かあっても困るんだけど、そんな感じで時間は粛々と流れ、久しぶりの皇帝陛下との謁見も無事に終わりとなったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 控室に戻って、一息つく。


「ふぅ」

「ふふっ、緊張しましたね」


 僕の様子に気づいて、イルティミナさんが微笑みながら、労わるように髪を撫でてくる。


 僕も笑って「うん」と正直に答えた。


 レクリア王女や使節団の人たちは、これからアルンの高官たちとの話し合いがあるそうだ。


 僕らは、パディア皇女殿下の誕生日の祝いに参列するために来たんだけど、彼らにとっては、それだけが目的ではないらしい。


 いわゆる外交目的。


 こうした訪問に合わせて、両国間の色々な話し合いも行うみたいだ。


「それが政治というものじゃ」


 と、キルトさん。


 こうして常に細かい話し合いをすることによって、両国間の考えをすり合わせ、より大きな摩擦やぶつかり合いが起きないようにしておくのが大事らしい。


 それは国家間だけでなく、個人間でもそうかもしれないね。


 何はともあれ、そんな感じで控室には僕ら5人だけだ。


 このあとは、アルン神皇国側が用意してくれた客室に案内されて、ゆっくり休むだけなんだけど、


 コンコンコン


(ん?)


 控室の扉がノックされた。


「はい」


 代表してキルトさんが返事をすると、扉が開く。


(あっ!)


 その開いた木製の扉の向こうから姿を現したのは、典礼用の豪華な鎧を身につけた、あのアドバルト・ダルディオス将軍だった。


 2年ぶりの再会だ。


 2メードを越す大柄な将軍さんは、その碧色の瞳で僕らを見回して、


「ふははっ、久しぶりだわい。皆、元気だったか?」


 と豪快に笑ったんだ。


「将軍さん!」

「お久しぶりですね」

「……ども」

「元気だった、とポーは答える」


 僕とイルティミナさんは笑顔で、ソルティスは少し人見知りを発揮して、ポーちゃんは淡々とした声で彼に応える。


 将軍さんは、僕ら1人1人と握手を交わす。


 キルトさんも握手しながら笑って、


「久しいの、将軍」

「おぉ、鬼娘。……というか、久しいと言っても、貴殿だけはたった1年ぶりであろうが」


 彼は、そう苦笑を返した。


 将軍さんの逞しく太い腕は、僕の胴回りぐらいありそうで、見えている肌からは傷跡が見え、立っているだけで歴戦の猛者としての気配が感じられる。


 でも、大らかで優しい何かもあった。


 僕の視線に気づいて、将軍さんもこちらを向いた。


「元気そうだの、神狗殿。……ふむ? あまり見た目は変わらんが、中身はずいぶんと研鑽を重ねたようだわい」


 そう?


「将軍さんは、相変わらず強そうだね」

「がははっ、そうか?」


 彼はそう言いながらも、軽く力こぶを作ってポージングする。


 それから苦笑して、


「そう見えるかもしれぬが、寄る年波には勝てなくての。強くなるよりは、現状維持が精一杯といった感じだわい」


 と言った。


(そうなの?)


 僕にとっては、将軍さんの強さはまだまだ手が届かなくて、現状維持というだけでも凄いと思うけど、彼の声には少し切なさが滲んでいた。


「鬼娘との差が、開いていくばかりでな……」

「…………」


 そっか。


 かつて互角だったキルトさんという好敵手がいるからこそ、停滞しているだけになった自分が悔しいのだ。


 キルトさんは「ふん」と鼻を鳴らす。


「そうして簡単に老いぬからこそ、そなたの周りの若者たちは皆、必死になるのだろうが」


 衰えない将軍さん。


 その姿を見せられれば、若いアルン騎士たちは嫌でも自分を高め、追い抜こうとがんばらなければならない。


 そうして回りを鼓舞しておる癖に……と、キルトさんは言っていた。


 なるほど。


 これも最近、将軍さんが力を入れ始めたという後進の育成になるのかな?


 将軍さんは「がははっ」と笑った。


「まだまだ若いものには負けんわい。少しでも高き壁となって立ちはだかるのが老兵の務めよ」

「ふっ、何が老兵じゃ」


 キルトさんは呆れたように、将軍さんの横っ腹を殴った。


 ゴンッ


 鎧の重い音が響き、けれど、将軍さんはビクともしない。


 う~ん、鍛えられている。


 と、あのキルトさんに殴られても平気な将軍さんは、ふと思い出した顔をして、イルティミナさんの方を見た。


「そういえば、貴殿はマール殿と夫婦めおとになったのだったな」

「はい」


 頷くイルティミナさん。


 将軍さんは、厳つい顔に優しく微笑んだ。


「そうか。そうなるとは思っておったが、やはりだったわい。2人とも、おめでとう」


 バン バン


 熊みたいな将軍さんの大きな手が、並んで立つ僕とイルティミナさんの肩を叩く。


 って、痛ぁ。


 その力の強さに、肩が少し痺れてしまった。


 イルティミナさんの美貌も少しだけしかめられ、ふとお互いの同じ表情に気づいて、苦笑し合ってしまった。


「ありがとう、将軍さん」

「ありがとうございます」


 お礼を言う僕の隣で、イルティミナさんも長い髪を肩からこぼしながら頭を下げていた。


 そんな僕ら夫婦に、将軍さんも瞳を細めている。


「貴殿らなら、良い家庭を築いていけるじゃろう。まぁしかし、フィディの父親としては、少し複雑な気持ちでもあるがな……」


 そう言いながら、あご髭を撫でる。


 良い家庭……かぁ。


 イルティミナさんと僕の間に子供はできないから、2人だけの家庭なんだけどね。


 将軍さんは知らないから、仕方ない。


 イルティミナさんも何も言わなかったけれど、そんな彼女の手に僕は手を重ねて、少しだけ強めに握ってみた。


「!」


 僕に気づくイルティミナさん。


 それから、彼女は嬉しそうに微笑み、僕の手を握り返してくれた。


(うん)


 僕も微笑みを返しておいた。


 それにしても、フレデリカさんの父親として、少し複雑な気持ち……っていうのは、なんなんだろう?


(よくわからないなぁ)


 ちょっと首をかしげる。


 そんな僕ら夫婦と将軍さんの様子に、キルトさんは苦笑し、ソルティスは小さな肩を竦め、ポーちゃんはソルティスの仕草を真似をしていた。


 それから、キルトさんは、ふと表情を改める。


「それで将軍」

「ん?」

「わざわざ顔を出したのは、わらわたちに会いに来ただけか? 他にも用事があったのではないのかの?」

「おぉ、そうであったわい」


 彼は、大きな手をポンと叩いた。


 それから将軍さんは、僕ら5人の顔を見回して、最後にキルトさんへと視線を合わせた。


 そして、言う。


「皇帝陛下と皇后陛下が貴殿らに、特にパディア皇女殿下がキルト・アマンデス、貴殿に会いたいと所望されての。それを伝えに来たのだわい」

ご覧いただき、ありがとうございました。


おかげ様で故障していたインターネット機器の修理が終わりました。お騒がせを致しました。これで執筆、更新も問題なく行えます。

もしよかったら、どうかこれからもマール達の物語をよろしくお願いしますね。



※次回更新は、来週の月曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 魔物の襲撃以外は大した問題も起こらずにアルンの首都まで辿り着いたようで一安心。 いや、普通はそうそう問題など起こらないのでしょうが、水戸黄門様漫遊期みたいな…
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