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470・2人との再会

第470話になります。

よろしくお願いします。

「皆、息災そうじゃの」


 抱き着く僕らに、キルトさんは瞳を細めている。


 それからクシャクシャと、そばにいた僕とソルティスの髪が少し乱暴にかき混ぜられた。


(あはっ)


 懐かしい感触だ。


 僕は心地好さに目を伏せ、ソルティスは、


「キルト~っ」


 涙目でキルトさんの名前を呼んでいた。


 イルティミナさんは、いつもよりも穏やかに微笑みながら、


「貴方も元気そうですね、キルト」


 と声をかける。


 キルトさんは、そんな後輩の『金印の魔狩人』に笑みを返し、「そなたもの」と頷いた。


 ポーちゃんは、少し離れて、そんな僕ら4人を見ている。


 それに気づいたキルトさん。


 視線が合うと、ポーちゃんは無表情のまま、親指だけをピッと立てた手を軽く持ち上げた。


 キルトさんは苦笑する。


 それから大きく息を吐くと、


「……皆、ただいまじゃ」


 ギュウッ


 僕とソルティス、イルティミナさんのことを両手で強く抱きしめてくれたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇




 寄港の手続きの間、僕らとキルトさんは、港湾施設の応接室を借りて再会を懐かしむことになった。


 テーブルには、お茶のカップが並んでいる。


 それを眺めて、


「茶よりも、酒が良かったのぉ」


 そんな言葉をこぼすキルトさん。


 僕らは、相変わらずの彼女に、思わず苦笑してしまったよ。


 …………。


 キルトさん、少し雰囲気が変わったかな?


 前と比べて、ちょっと明るくなった気がする。


 これまでは『金印の魔狩人』として多くの人々の命を守る重責を担っていたけど、今の彼女はそれから解放されて、自由なんだ。


 背負うのは、自分1人のみ。


 そのせいか、まとう空気が軽く、なんだか輝いているみたいだった。


(…………)


 キルトさんは、ようやくキルトさんとして生きられるようになった……そんな感じなのかもしれない、なんて思った。


 お茶を残念そうに飲むキルトさん。


 僕らは、その姿を、色々な思いを感じながら眺めた。


 すると、


「しかし、マールとソルは、ずいぶんと見違えたの」


 キルトさんは、カップをテーブルに戻しながら、そんなことを言った。


(え? そう?)


 僕は驚く。


 ソルティスも同じ顔だ。


 その反応を面白そうに眺めながら、キルトさんは「うむ」と頷いた。


「貫禄、とでも言えば良いのか、1人前の空気というものを身につけているの」

「…………」

「…………」


 僕とソルティスは顔を見合わせる。


 そう……かな?


 自分ではよくわからないけれど、イルティミナさんは頷いていた。


「2人とも、貴方がいなくなってからも努力を続けていましたからね。気がつけば、2人とも『銀印』ですよ」

「そうであったな」


 キルトさんは頷いた。


 僕らを見て、


「マール、ソル、おめでとう。そなたらの成長は、わらわも嬉しく、とても誇らしく思うぞ」


 と、白い歯を見せて笑い、祝福の言葉を送ってくれた。


 あ……。


 それが心にじんわりと熱を持って広がる。


 少し泣きそうになりながら、僕も笑った。


「うん、ありがと、キルトさん」

「ありがと、キルト」


 ソルティスも嬉しそうにはにかみ、頷いている。


 キルトさんも笑う。


 その白い手が伸びてきて、僕らの頭をまたクシャクシャと撫でてくれた。


(ん……)


 1人前と褒めてくれたけれど、扱われ方は、子供だった頃と変わらないみたいだ。


 でも、悪い気はしない。


 その懐かしいやり取りを眺めて、イルティミナさんも優しい表情だ。


 それから、他愛もない話をした。


 現在のキルトさんの話を聞くと、


「今は、ダルディオス将軍の屋敷で世話になっていての。たまにアルン騎士に手ほどきをしたり、皇帝陛下の話し相手になったり、自由に神帝都を散策したり、色々じゃ」


 とのことだ。


 どうやら前に聞いていた通りみたいだった。


 でも、


(当たり前のように語っているけれど、それって全然、当たり前のことじゃないよね?)


 稀代の英雄。


 第2次神魔戦争での立役者の1人として、また、そのずば抜けた実力と功績あっての厚遇なんだろう。


 今回だってそう。


 シュムリア王国は、このキルトさん1人のために、アルン神皇国の領地まで『使節団の船』で迎えに来ているのだ。


 アルン神皇国側も、それを認めている。


 普通じゃない。


 でも、それだけのことをしてきたからこそ、両国はそれを許してくれる。


(…………)


 僕は改めて、目の前の銀髪の美女を見つめる。


 のんびりした様子で、お茶を飲む。


 その何気ない仕草にあっても、不意を衝けるような隙はどこにもなく、それが自然体になっている。


 武の境地に至っているような、静かな深い気配。


 これが、キルト・アマンデス。


 両国が最大限の敬意を払い、その行動の自由を認めてしまった人物なのだ。


(う~ん?)


 もしかしたらだけど、キルトさん、僕らと別れた時よりも強くなっているかもしれない。


 自由を得て、今までにあった強さが、より研ぎ澄まされたような雰囲気だ。


 1つ上の領域。


 彼女は、そこに辿り着いている――そんな気がするんだ。


 僕は言う。


「ねぇ、キルトさん? ドル大陸につくまで、船の上で、また前みたいに稽古をつけてもらえないかな?」


 突然の提案に、キルトさんは目を丸くした。


 すぐに破顔して、


「よかろう」


 大きく頷いてくれた。


「マールがどれほどの腕となったのか、この1年の成長を確かめさせてもらおうかの。ふふっ、楽しみじゃ」

「うん」


 僕も笑った。


 自分がどれだけ強くなれたのか、彼女なら、正しく見極めてもらえると思えた。


 自分でも楽しみだ。


 ソルティスは「2人とも相変わらずね」と呆れたように、でも楽しそうに言った。


 イルティミナさんはクスッと笑い、


「せっかくですから、ソルも久しぶりに稽古をしてもらってはどうですか?」

「え? 私も?」


 驚くソルティス。


 キルトさんは「ふむ、そうじゃの」と頷いた。


「現在のソルの剣士としての実力も知っておきたいしの。ついでに、イルナの『金印』としての実力も教えてもらおうかの」

「おや、私もですか?」


 姉の方も驚いた顔をする。


 それから、キルトさんは、ずっと黙って見守っていたポーちゃんにも視線を送って、


「ポー、そなたとも手合わせを願いたいの。前回は不覚を取ったが、今回はそうはいかぬぞ?」


 と言った。


 ポーちゃんは、目を瞬く。


 それから、


「了承した」


 と短く答えた。


(キルトさん、前回、負けた時のことをまだ気にしてたのかな……?)


 ちょっと驚く僕。


 結局、キルトさんは、僕ら全員との手合わせを約束して、子供みたいに笑っていた。


「いやぁ、楽しみじゃの」


 あはは。


 キルトさんの太陽みたいな明るい笑顔に引き寄せられて、僕らもみんな一緒になって笑ったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「そういえば、今回、わざわざ来てもらったそなたらには、ぜひとも会わせたい人物がおっての」


 話の中で、ふとキルトさんはそんなことを言い出した。


(会わせたい人物?)


 僕らはキョトンとなる。


 キルトさんは、


「アルン滞在中に、とても世話になっていての。そやつも、そなたらに会いたいそうじゃ」


 と笑った。


 はて……誰だろう?


 そんなことを思っていた時、応接室の扉が、コンコンコン……と音を立ててノックされた。


「お、来たの」


 とキルトさん。


 すぐに「入れ」と彼女が声をかけると、応接室の扉が開いていった。


 あ……。


 僕は、目を見開いた。


 そこにいたのは、青い髪をした軍服姿の女性だった。


 頬には傷がある。


 前に見た時は長かった綺麗な髪は、今は、短く切られていて、まるで美しい青年みたいにも思えた。


 凛とした佇まい、その雰囲気は変わらない。


 そして、彼女は、その美貌に美しい微笑みをたたえて、


「久しぶりだな、マール殿」


 と懐かしい声を響かせた。


 僕は、思わず立ち上がっていた。


「フレデリカさん!」


 その名を、強く呼ぶ。


 彼女は、嬉しそうに笑みを深くして、頷いた。


 アルン神皇国の英雄ダルディオス将軍の娘であり、これまで、何度も僕らと共に死線を潜り抜け、大切な異国の友人となった女性だった。


 ソルティスも驚いた顔である。


 イルティミナさんは、


「……フレデリカ」


 と、その真紅の瞳を丸くしながら、彼女を見つめていた。


 立ち上がった僕は、フレデリカさんに近づく。


 ……懐かしい匂い。


 伝わってくる、何年経っても変わらない、優しい気配。


 僕は笑った。


「髪、切ったんだね、フレデリカさん」

「あぁ」


 彼女は微笑み、その指で、短くなった青い髪に触れる。


「色々と心機一転したい気持ちもあってな」


 そうなんだ?


 僕は、軽く首を傾けながら、


「前の長かった髪も良かったけど、短くなった髪も素敵だね」


 と、正直な気持ちを口にして、笑いかけた。


 彼女は、僕の顔を見つめる。


「そうか」


 瞳を伏せながら、フレデリカさんは、なんだか噛み締めるように頷いた。


 イルティミナさんは、唇を引き結んでいる。


 その左手の薬指にある指輪を、右手で何度も触りながら、大きく深呼吸していた。


 キルトさんが苦笑する。


「マールは、相変わらずじゃの」

「え?」


 なんのこと?


 困惑する僕に、キルトさんは「いや、なんでもない」と首を振り、ソルティスは「でしょ?」と呆れた顔で賛同していた。


 ポーちゃんだけが無表情である。


(え、えっと……?)


 戸惑っていると、僕の奥さんであるイルティミナさんがコホンと咳払いをした。


 そして、


「久しぶりですね、フレデリカ。どうして貴方がここに?」


 と問いかけた。


 フレデリカさんは、イルティミナさんの美貌を真っ直ぐに見つめる。


「マール殿に会いに」

「!?」

「というのは、冗談だ」


 愕然としたイルティミナさんに、彼女は苦笑して、すぐに訂正した。


「安心しろ。人の夫を奪うほど、私も愚かではない」

「……本当ですか?」


 睨むイルティミナさん。


 フレデリカさんは「本当だとも」と軽い口調で答え、


「まぁ、アルンの貴族には、一夫多妻の制度もあるのだがな?」


 と、冗談っぽく付け加えた。


 イルティミナさんは、美貌を強張らせる。


 すぐに、ニッコリと笑った。


「どうやら、貴方も相変わらずのようですね、フレデリカ? 本当に諦めの悪い女です」

「そう褒めるな」


 フレデリカさんもにこやかに応じた。


「マール殿が幸せなら、それでいい。それは本心だ」

「…………」

「だが、婚姻した事実に胡坐をかき、彼への思いが疎かになることがなきよう、私のような女がいた方が、貴殿も張り合いがあろう?」


 凛した口調。


 イルティミナさんは、少し憮然とした表情だった。


「貴方がいなくとも、私のマールへの愛は変わりませんよ」

「そうか」


 フレデリカさんは頷いた。


 そのまま、しばらく正面に立つイルティミナさんの美貌を見つめる。


 やがて、少し切なげに瞳の光を揺らして、


「マール殿もそうなのであろう。……全く、貴殿が羨ましいよ」


 と、吐息をこぼす。


 …………。


 いったい、2人の会話は何なんだろう?


 よく意味がわからない。


 ゲシッ


「アイタ!?」


 突然、ソルティスに足を蹴られた。


 え、何?


 驚く僕を見つめて、


「きっとアンタが全部、悪い」


 え、ええ……?


 きっぱり言われてしまったけれど、僕には、やっぱりわからない。


 キルトさんは、


「やれやれ、マールも罪深い男よの」


 なんて、苦笑しながら呟いた。


 そして、フレデリカさんを警戒するように見つめるイルティミナさんは、背中側から僕をギュッと抱き締めて、


「マールは、私のマールですからね!」


 と子犬を守る母犬のように、強い声で宣言した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「実は、このキルト・アマンデスの護衛を、パディア皇女殿下に命じられてな」


 僕らの集まったテーブルの一角に腰を下ろしたフレデリカさんは、僕らに、自分がここにいる理由をそう説明した。


 パディア皇女殿下って、


(確か……アルンの皇帝陛下の娘さんだっけ)


 そう思い出す僕である。


 初めて会った時はまだ幼くて、そんなパディアちゃんに、僕はお腹に頭突きを喰らったんで、よく覚えていたりする。


 その皇女殿下の命令なの?


 僕らの視線に頷いて、


「今の私は、パディア皇女殿下の直属の近衛騎士なんだ」


 と教えてくれた。


 かつてのフレデリカさんは、『神の眷属』であるラプト、レクトアリスの世話係となる『神護騎士』と呼ばれる皇帝陛下直属の立場だった。


 けれど、第2次神魔戦争の終結と共に、2人の『神の子』は『神界』へと帰ってしまった。


 それに伴い、フレデリカさんの役職も消えてしまったんだ。


 だけど、彼女も多くの功績を収めていた。


 それが認められて、フレデリカ・ダルディオスは、なんとパディア皇女殿下の側近として、護衛の近衛騎士に選ばれたんだ。


 現在、パディア殿下は10歳。


 フレデリカさんは、そんな幼い皇女の良き理解者として、深い信頼も寄せられているそうだ。


(凄いなぁ)


 フレデリカさん、本当に大出世だ。


 でも、


「その皇女様の近衛騎士なのに、フレデリカさん、キルトさんの護衛を命じられたの?」


 僕は、素直な疑問を口にした。


 それに、フレデリカさんとキルトさんが苦笑する。


 そして、


「実は、わらわが皇帝陛下と話をする中で、パディア殿下ともよくお会いしての」


 とキルトさん。


 そして、この銀髪の美女は、パディア殿下にも気に入られてしまったのだそうだ。


 フレデリカさん曰く、


「このキルト殿の活躍の噂は、神帝都アスティリオの中でも話題になっていてな。その実在の人物に、殿下も会いたいと仰せだったのだ」


 とのこと。


 キルトさんの活躍の噂。


 それは、アルン各地で、恐ろしい魔物たちを次々と狩り、盗賊団を壊滅させているというものだ。


 通常、そういう脅威への対処は、各地の領主が行う。


 けれど、組織が動くには時間がかかり、その間にも、町や村の人々には大きな被害が起きてしまうことも少なくない。


 それが現実だ。


 けど、その町や村に現れた『銀髪の美女』は、たった1人で、即座に、それらの脅威を排除してしまうのだ。


 報酬は、1杯のお酒。


 それを美味しそうに口にして、彼女は、その町や村から去っていくという。


(…………)


 最初はただの噂だと思われていた。


 けれど、その噂は各地で生まれ、広がり、吟遊詩人たちも吟じるほどで、アルン国中へと伝わっていった。


 ――その者の名は、『銀髪の鬼姫』。


 人々の苦境に現れ、青き雷を落として悪と魔を滅する鬼神なり。


「…………」

「…………」

「…………」


 僕らは、キルトさんを見る。


 キルトさんは複雑そうな顔で、お茶のカップを口に運び、それから吐息をこぼした。


「……ちと、やり過ぎたかの」


 そう反省を口にする。


 どうやら羽目を外して、好き勝手に暴れられたようです。


(なるほど……)


 むしろ、余計な立場がないから、遠慮なくその剣の腕を振るったわけだ。


 それだけ各地で自由奔放に戦い続けたなら、そりゃ強さも研ぎ澄まされるかもしれないね……。


 フレデリカさんが苦笑する。


「噂の当人に出会えて、皇女殿下も大層お喜びだった」


 そして、キルトさんは殿下のお気に入りとなったんだ。


 フレデリカさんの実家ともなるダルディオス将軍の屋敷に滞在しているので、しょっちゅう、キルトさんは呼び出されたそうだ。


 話をしたり。


 剣の稽古をしたり。


 その技を見せたり。


 フレデリカさんと戦わせたり。


 まぁ、色々とあったらしい。


 そんな中、今回のヴェガ国のアーノルド王子の即位式の話があり、キルトさんがアルン神皇国を離れることになった。


 パディア皇女殿下は、焦った。


『もしかしたら、シュムリア王国の仲間と再会したキルト・アマンデスは、もうアルン神皇国に戻ってこないかもしれない』


 そう思われたんだって。


 もちろん、杞憂。


 だけど、幼い皇女殿下は、本気でそれを心配なされた。


 そして、自分が一番信頼している近衛騎士のフレデリカ・ダルディオスに、『キルト・アマンデスの護衛』という任務を命じた。


「つまり、護衛という名の見張りだ」


 と、フレデリカさん。


 僕らは、なんと言っていいのかわからなかった。


 というか、


「それ、暴露しちゃっていいの?」

「構わない」


 青い髪の男装の麗人は、涼やかに笑った。


 その瞳がキルトさんを見て、


「本人にもバレている。……というか、パディア殿下以外は、皆が知っているのだ」


 と肩を竦めた。


(あらぁ……)


 なんか、パディア殿下、可愛いなぁ。


 キルトさんは「ま、そういうことでの」と、お茶のカップを空にしてテーブルに戻した。


 フレデリカさんも頷いて、僕らを見る。


 優しく微笑み、


「私自身、マール殿や貴殿らに会いたい気持ちもあった。なので、こうして私はここにいるというわけだ」


 と言った。


(そっか)


 僕も、またフレデリカさんに会えて嬉しかった。


 ちなみに、この港からは、僕らに合わせて、アルン神皇国の使節団の乗った船も出航するそうで、一緒にヴェガ国に行くことになるのだそうだ。


 フレデリカさんは、


「私は、キルト殿についていなければいけないので、そちらに乗船させてもらうことになる」


 とのことだ。


 それを聞いたイルティミナさんは、少し渋い顔をした。


 その視線に、


「任務だからな」


 軍服のお姉さんは、澄ました顔で繰り返した。


 僕としては、またフレデリカさんと一緒に旅ができるのは嬉しいけれど、イルティミナさんは嫌なのかな?


 少し心配になる。


 そんな僕の視線に気づいて、イルティミナさんは嘆息した。


「仕方ありませんね」

「…………」

「まぁ、好きにしてください。何しろ、マールは、もう私のものなのですから」


 まるで自分や周りに言い聞かせているみたいだ。


 でも、


(なぜ、そこで僕のことが出てくるの?)


 僕はキョトンだ。


 フレデリカさんは苦笑する。


「あぁ、わかっている」

「そうですか」


 イルティミナさんは、静かに頷いた。


 キルトさんは、そんな2人を眺めて、それから僕を見た。


 小さく笑う。


「そなたらを見ていたら、なんだか懐かしくて、安心してしまうの」

「そう?」


 僕は首をかしげる。


(まぁ、キルトさんがいいなら、いいか)


 そう楽観する。


 そんな僕の顔を見て、キルトさんは喉の奥で「くっくっ」と可笑しそうに笑うと、僕の髪をまたクシャクシャと昔みたいに撫で回したんだ。


 …………。


 それから1時間後。


 僕らの乗船したシュムリア王国の大型船と、アルン神皇国の使節団が乗った軍船は、ドル大陸を目指して、青き大海原へと漕ぎ出していったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ キルトとの感動の再会も鈍感系主人公の能力を遺憾無く発揮するマールのお陰で印象が薄い(笑)。 ……ホントにそろそろ誰か止めてさしあげろ( ̄∇ ̄) [一言] フ…
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