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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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422・保管庫のお宝

第422話になります。

よろしくお願いします。

「お前は、本当に凄くなったな、イルティミナ」


 活動停止した『ゴーレム生命体』を見て、それからレオルクさんは、ため息交じりにそう言った。


 イルティミナさんは、澄ました表情で、その賛辞を聞いている。


 小さく肩を竦めて、


「これでも『金印の魔狩人』ですからね」


 と答えた。


 レオルクさんは「そうだな」と苦笑した。


 ジャックさんは無言、オルファナさんは尊敬の眼差しで、イルティミナさんを見ていた。


(ふふふ……っ)


 自分のことじゃないけど、奥さんが褒められるのは嬉しいな。


 僕は心の中で、1人、ほっこりしていた。


 それからレオルクさんは、気持ちを切り替えたように表情を引き締め、


「さて」


 と、ゴーレムが守っていた扉に近づいた。


 ここからは、『真宝家』の本領発揮だ。


 これは、未知なる扉。


 取っ手を掴む前に、まず罠がないかを確認し、それから開けようと試みる。


 ガチッ


 動かない。


「……ふむ」


 呟き、彼は、扉の表面に触れながら、開け方を丹念に調べていく。


 やがて、


「魔法的な鍵じゃないな。なら、機械式の錠前か? それなら、この窪みから……」


 そう呟いて、先端の細長い器具を取り出した。


 扉に空いた小さな穴に、それを差し込んで、カチャカチャといじる。


 見守ること、20分。


 ガチャンッ


 その音は、遺跡の通路内に大きく響いた。


「よしっ」


 レオルクさんは、満足そうに額の汗を腕で拭う。


(おぉ、さすが!)


 太古の鍵を開けた『白印の真宝家』は、僕らを振り返って、得意げに笑った。


「さぁ、お宝とご対面だ」



 ◇◇◇◇◇◇◇



 重そうな扉をジャックさんが押し開いて、僕らは、扉の奥へと入った。


(う……っ)


 扉が開いた途端、連動していたのか、内部の照明が点いた。


 白い光が満ちる。


 暗闇に慣れていた僕らは、しばらく動けなくなった。


 やがて、目が慣れてくる。


 僕ら5人は、そこで初めて、室内の様子を見ることができた。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 そこは、真っ白な金属の壁に覆われた20メード四方ぐらいの部屋だった。


 壁には、金具が並んでいる。


 本来なら、そこには『何か』が収まっていたんだと思う。でも、僕らの目の前にある金具には、何もなかったんだ。


(どういうこと?)


 僕は困惑した。


 オルファナさんは、悲しそうにため息をこぼし、ジャックさんは目を閉じる。


 レオルクさんは、


「……そうかぁ」


 と力が抜けたように、しゃがんでしまった。


(えっと……)


 困ってしまった僕に、イルティミナさんが教えてくれた。


「残念ながら、この保管庫には『タナトス魔法武具』は保管されていなかった、ということですよ」


 え……。


「そもそも『タナトス魔法武具』は、悪魔たちと戦うための道具です。そして、400年前は、神魔戦争の真っ最中……保管するよりも、持ち出され、使われる量の方が多かったということでしょう」


 あ、そういうことか。


(でも、それじゃあ……)


 僕は、恐る恐る、イルティミナさんを見上げる。


「僕らは……無駄足?」

「はい」


 彼女は苦笑しながらも、しっかり頷かれました。


 ……そ、そんな。


 ここまで苦労してやって来て、番人の『ゴーレム生命体』まで倒したのに、その先には何もなかったなんて。


(そんなこと、ある?)


 呆然とする僕。


 レオルクさんは、重そうに立ち上がって、


「……まぁ、『真宝家』をやってれば、こういうことはよくあるものさ」


 と、苦そうに笑った。


 仲間の2人も、力なく笑って、頷いている。


(レオルクさん、ジャックさん、オルファナさん……)


 なんて声をかけていいのか、わからない。


 僕は、なんとなく正面奥の壁に近づいた。


 真っ白な壁だ。


 何もかかっていない金具だけが、空しくそこにある。


(…………)


 ここに何かあればなぁ……なんて思いながら、なんとなく、その金具に触れた。


 ガチャン


 金具が大きく動いた。


 へ?


 ガコッ ガガン ガコォン


 目の前の壁の内部から、大きな音が響いてくる。


 そして、壁に、幾何学模様の亀裂が生まれて、ゴゴゴ……ッと振動しながら左右に開いていった。


「お、おおお?」


 レオルクさんたちが目を丸くした。


 イルティミナさんも驚いたように、


「隠し扉?」


 と呟いた。


 やがて、開いた壁の奥には、青白い光に照らされた空間があった。


 そこに、1本の剣が安置されている。


(…………)


 僕の手は、引き寄せられるように、その剣に伸ばされた。


 美しい片手剣だ。


 銀の装飾が施された蒼い鞘に納められていて、僕は、その柄を掴んで、刀身を鞘から抜いた。


 リィイン


 現れたのは、白銀の両刃の刀身だ。


 3つのタナトス魔法文字が、そこに刻まれている。


 刃と柄の間には、真っ赤な魔法石があった。


「…………」


 僕は、イルティミナさんたちを振り返った。


 みんなも僕を見ている。


 ゴクン


 誰かが唾を飲みこんだ。


 そんな4人に、僕は笑って、


「お宝、見つけたよ!」


 手にした『タナトス魔法武具』の剣を、頭上に向かって大きく突き上げたんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、明後日の水曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ マールの未練が奇跡を見せた! 一振の剣もデカイのでしょうが、無駄足にならなかった事が一番の収穫ですかね(*´ω`*) [一言] 次回は一振の剣の行方についてです…
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