表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

466/825

418・見つけた槍を

第418話になります。

よろしくお願いします。

 翌日、僕らは地下3階へと降り立った。


『グギャアア!』


 移動を開始してほどなく、僕らは、5体のオークと遭遇する。


(やっぱりいたね)


 そう思いながら、僕は武器を構えた。


 迫る5体のオークの内、防御に徹したジャックさんが2体を受け持ち、1体をレオルクさんが受け持った。


 残った2体が側面から、2人を狙う。


 キュボッ ザシュン


 その2体のオークたちは、イルティミナさんの槍によって、一瞬で倒されてしまった。


 更に、ジャックさんと対峙する2体を、槍は貫く。


 これで4体。


 その間に、レオルクさんもオークの1体を倒して、魔物は全滅だ。


(僕の出番なしだね)


 オルファナさんも、魔法を使う必要もなかった。


 やっぱり、イルティミナさんの存在が大きいみたいだ。彼女がいることで、魔物の脅威が脅威じゃなくなっている。


(……ま、いいことなんだけど)


 でも、何の役にも立てなくて、ちょっと寂しい僕だった。


 そんなこんなで、通路を進む。


 古い研究所みたいな空間だ。


 時々、通路には6年前の戦いの痕跡なのか、巨大な虫の魔物の死骸が転がっていたりする。


(6年前……か)


 その時には、僕じゃなくて、クオリナさんがパーティーにいた。


 それ以外は、同じメンバーだ。


 当時は、今より全員、実力が低くて、探索も大変だったのかな……なんて思った。


(…………)


 目の前には、『白翼の槍』を持つイルティミナさんがいる。


 それは、6年前の戦利品。


 僕は、少し首を傾けて、


「見つけたタナトス魔法武具がイルティミナさんの物になったのは、やっぱり話し合いで決まったの?」


 と口にした。


 みんなが僕を見る。


 タナトス魔法武具は、希少品だ。


 そして、とても強力な力も秘めていて、冒険者なら誰でも欲しがると思ったんだ。


 当時のメンバーは、5人。


 見つけた1本の槍を、どうしてイルティミナさんが所持することになったのか、ちょっと気になったのだ。


 だって、


(それを売って、全員で平等に報酬を分けることもできたよね?)


 とも思うのだ。


 そんなことを伝えると、レオルクさんは、少し遠くを見て、


「そうだな。その方法もあったかもしれない。でも、イルティミナがその槍を所持することに、誰も不満はなかったよ」


 と言った。


 寡黙なジャックさんも、頷く。


 オルファナさんは、


「当時の探索で、イルナさんは凄い活躍でしたからね」


 と笑った。


 6年前も、遭遇した魔物の半数以上は、イルティミナさんの『鋼の槍』が倒したのだそうだ。


(ひぇぇ)


 それは本当に凄いや。


 やがて、5階層まで到達して、この『白翼の槍』を発見した。


 もちろん、どうするかを話し合った。


 けど、結論は思った以上に、簡単に出たそうで、それがイルティミナさんの物にするってことだったそうだ。


「見つけたのは、ちょうど槍だったしな」


 ポン


 レオルクさんは、イルティミナさんの肩を軽く叩く。 


 彼女は『槍使い』。


 そして、当時の探索における最大の功労者だ。


 彼女がいなければ、レオルクさんたちは地下5階まで来ることはできなかっただろうし、そうなれば、この『白翼の槍』を見つけることもできなかった。


 槍使いがいるのに、槍を売却するのも勿体ない。


(なるほど)


 それに、


「6年前の探索では、その『白翼の槍』以外にも、たくさんのタナトス時代の資料や遺物が見つかったからな」


 とのこと。


 その売却金額も、結構な数字だったんだって。


 ……具体的には、


「1人当たり、2万リドはいったな」


(おぉ……200万円)


 その金額に、僕は驚いてしまった。


(う~ん、これが『真宝家』の求めるロマンと魅力なんだね?)


 僕の表情に、『真宝家』の3人は楽しげに笑った。


 イルティミナさんも微笑み、


「私自身は、この『白翼の槍』を頂くことで、そちらの報酬は頂きませんでしたね」


 と、槍を撫でながら付け加えた。


 ちなみに、タナトス魔法武具は最低でも10万リド――1000万円から取引されるというから、報酬抜きでも、イルティミナさん自身は、充分以上に得をしている。


 それと、もう1つ。


 レオルクさんは、同期の年下であるイルティミナさんを、妹みたいに心配していた。


 そういう思い。


 それも含めて、色々な条件が重なり合って、結果、イルティミナさんは『白翼の槍』を入手することになったんだ。


 …………。


 なんとなく、イルティミナさんと3人の間に、信頼の絆みたいのを感じるよ。


 僕は笑って、


「本当によかったね、イルティミナさん」

「はい」


 彼女ははにかみながら、頷いた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 それからも、僕らは探索を続けた。


 地下3階の空間では、あれから2度ほど、オークたちと戦闘になった。


(でも……)


 ガシュッ ザキュン


 僕は一度も剣を振るうことはなく、オークたちは倒されていった。


 そして、倒されたオークの中には、他のオークたちよりも体格が大きくて、より豪華な装備をしたオークもいたんだ。


「群れのボスかもな」


 とレオルクさん。


 彼曰く、ボスを倒してしまえば、残されたオークたちは、巣となる遺跡を放棄して、別の場所に移動するだろうとのこと。


 つまり、


(この遺跡でのオークの脅威は、ほぼ消えたってことだね)


 もちろん、残党はいるかもしれない。


 でも、積極的に僕らを襲うよりも、こちらの気配を感じたら、逃げていく可能性の方が高くなったそうだ。


 オルファナさんは、


「こんな楽なオーク討伐は、オルファナは初めてですよ」


 だって。


 僕らの視線は、自然とイルティミナさんに集まってしまう。


 遭遇したオークのほぼ8割は、彼女が倒したのだ。


 ボスを倒したのも、イルティミナさん。


「…………」


 イルティミナさん自身は、澄ました顔だ。


 彼女にとっても、オーク討伐など楽な作業だったのかもしれない。その表情は、何だか退屈そうにも見えてしまう。


「さすが『金印』ってことだな」


(うん)


 レオルクさんの言葉に、僕らは頷く。


 そうして僕らは、地下3階を抜け、脅威のなくなった地下4階も踏破して、6年前の到達点である地下5階へと向かったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、3日後の月曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミックファイア様よりコミック1~2巻が発売中です!
i000000

i000000

ご購入して下さった皆さんは、本当にありがとうございます♪

もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひご検討をよろしくお願いします。どうかその手に取って楽しんで下さいね♪

HJノベルス様より小説の書籍1~3巻、発売中です!
i000000

i000000

i000000

こちらも楽しんで頂けたら幸いです♪

『小説家になろう 勝手にランキング』に参加しています。もしよかったら、クリックして下さいね~。
『小説家になろう 勝手にランキング』
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です!そして少し遅れましたが3周年おめでとうございます!!! さすがイルティミナさん。金印なだけあって強さも圧倒的ですね! マールは光鳥以外はずっと付き添いだけでも大丈夫なんじ…
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ 活躍した槍使いが居たとは云えども、『白翼の槍』を躊躇なく譲る事が出来るたのは凄い決断力!Σd(⌒ー⌒) 恐らくはレオルク以外のジャックや、この場に居ないクオリナ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ