417・封じられた魔法の扉
こんばんは、月ノ宮マクラです。
今話の更新前日の5月11日で『少年マールの転生冒険記』は、なんと3周年となりました!
これまで読んでくれた皆さん、本当にありがとうございます!
もしよかったら、これからも、どうかマールたちの冒険を見守ってやって下さいね。
それでは本日の更新、第417話です。
どうぞ、よろしくお願いします。
「はい、お茶ですよ」
野営中の部屋で、僕らは夕食を食べる。
お嫁さんの淹れてくれたお茶に、僕は「ありがとう」と笑って、その味を楽しんだ。
(うん、美味しい)
なんだか幸せだ。
お茶を味わいながら、携帯食料をかじる僕に、イルティミナさんは優しい眼差しだった。
他の3人も笑っている。
その時、僕は、ふと気になっていたことを思い出した。
「そういえば、レオルクさん。最下層への別ルートって、どうやって見つけたの?」
「ん?」
彼は、キョトンとする。
僕らがここにいるのは、6年前には行けなかった、このミューグレイ遺跡の最下層へと行くルートが、新しく見つかったからだ。
僕は最初、それはレオルクさんたちが見つけたのだと思った。
でも、
(レオルクさんたちも、6年ぶりに遺跡に来た……みたいな口ぶりだったよね?)
しかも、遺跡にはオークもいた。
つまり、レオルクさんたちだけでなく、他の冒険者たちも来ていないという証拠だ。
それなのに、なぜ別ルートが見つかったのか?
僕は、それが不思議だったのだ。
そんな僕の疑問を伝えると、レオルクさんたちは「あぁ」と納得したように頷いた。
それから、
「実は6年前に来た時にな、地下5階に、魔法で封印されている扉があったんだよ」
と教えてくれた。
(封印された扉?)
驚く僕。
そんな僕の髪を、イルティミナさんは白い手で撫でながら、
「古いタナトス時代の遺跡には、そういうまだ機能の生きている魔法的に施錠された扉があるのですよ。そして、それは珍しいことではないのです」
とのことだ。
3人も頷く。
それから、レオルクさんは、荷物の中から『見取り図』のような紙面を取り出した。
床に広げる。
それは、ミューグレイ遺跡の見取り図のようだった。
彼は、その上に指を走らせて、
「これは俺の作った地下5階の地図でな。この大きなバツ印のある場所が崩落して、進めなかった通路だ」
(ふむふむ)
「封印された扉があったのは、ここだ」
彼の指が、また別の場所を示す。
(うん)
僕は頷いた。
「構造的に見て、この扉を抜けられれば、崩落地点の奥の区画へと通じるはずだ。そして、上階と同じなら、ここには最下層へと通じる階段がある」
僕は、レオルクさんを見る。
(もしかして……)
「この扉を開ける方法が見つかったの?」
彼は笑った。
「あぁ、その通りだ」
なんと!
レオルクさんの話によれば、扉には、鍵となっている魔法陣が描かれていた。
そして、タナトス時代の遺跡などで魔法陣を見つけた場合、冒険者には、それを王立魔法院へと報告する義務があるのだそうだ。
それは、もちろん研究のため。
6年前のレオルクさんたちも、その魔法陣の報告をしていた。
そして、
「先月な、発見者である俺たちに、その魔法陣の開錠方法がわかったと王立魔法院から連絡があったんだ」
おぉっ!?
(それは凄いや)
……でも、
「6年もしてから、連絡が来るの?」
僕は、唖然となった。
レオルクさんたちも苦笑している。
イルティミナさんが、
「王立魔法院には、日々、膨大な量のタナトス時代に関する発見が報告されています。その1つの解析には、それぐらい時間がかかることもあるようですね」
と言った。
(なるほどね)
研究の結果が出るまで時間がかかるし、それに加えて順番待ちもあるってことか。
…………。
僕らも王立魔法院のお世話になったことがあるけど、そんなに時間はかからなかった。
それは、コネがあったからなのかな?
(ムンパさんや王家、キルトさん、コロンチュードさん……)
そういう繋がり。
それがなければ、僕も何年も待たされていたのかもしれない。
閑話休題。
僕はレオルクさんを見て、
「じゃあ、その扉を開けるの、楽しみだね!」
と笑った。
レオルクさんも、嬉しそうに頷く。
「あぁ、全くだ」
ジャックさん、オルファナさんも大きく頷いている。
彼らは『真宝家』だ。
一攫千金を求めて、危険な遺跡を探索する冒険者。
僕やイルティミナさんよりも、ずっとずっと、最下層に行けることを楽しみにしていることだろう。
(しかも、6年もかかったんだもんね)
レオルクさんは、瞳を細めて、
「順調なら明日、地下5階まで辿り着く。最下層を拝めるのももうすぐだ」
思いを込めて呟いた。
そのまま、その夜は就寝し、僕らは翌日の探索に備えたんだ。
ご覧いただき、ありがとうございました。
※次回更新は、明後日の金曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。