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416・6年前の痕跡

第416話になります。

よろしくお願いします。

 地下1階では、それ以上の戦闘はなく、やがて辿り着いた階段を下って、僕ら5人は、地下2階へと到達した。


(ふ~ん?)


 地下1階よりも、地下2階の方が空間が広くなっていた。


 天井も高い。


 通路に面した部屋も、1つ1つが教室ぐらいの大きさがあった。


 興味深く眺めていると、


「このミューグレイ遺跡はね、400年前に『タナトス魔法武具』の製造所だったみたいなの」


 と隣を歩くオルファナさんが教えてくれた。


 というか、


(タナトス魔法武具の製造所?)


 その言葉に、僕は驚いた。


「見た目は、神殿みたいな感じだったのに?」


 森の木々の中にあったミューグレイ遺跡の外観を思い出して、僕は首をかしげる。


 彼女は頷いて、


「タナトス魔法武具は、神魔戦争の時代に造られた武具だから」


 と言った。


(???)


 理解の遅い僕に、オルファナさんは言う。


 タナトス魔法武具とは、400年前の神魔戦争で、人々が悪魔やその眷属に対抗するための武器として造ったものだ。


 その神魔戦争で、人類は神々と共に戦った。


 言い換えれば、その時代の人々は、生きるために『神の使徒』となったのだ。


 つまり、タナトス魔法武具は『神の使徒』のための武具。


(なるほど)


 神魔戦争の時代は、ある意味、人類が最も神々を信仰していた時代でもあったんだ。


 だからこそ、使徒のための武具は『神聖なもの』として、その製造所も、神々への信仰を表すような神殿のような形状になることもあったんだね。


「うん、そういうこと」


 理解した僕に、オルファナさんは笑った。


 そっか。


 僕は改めて、前を歩いているイルティミナさんの手にある『白翼の槍』を見る。


(…………)


 美しい槍だ。


 実用品であるけれど、まるで美術品のような洗練された美が感じられる。


 そこには、神聖さもあるようだ。


 400年前、悪魔やその眷属を討ち倒すために造られた魔法の槍……その意味を、僕は今一度、噛み締めてしまった。


「? どうかしましたか?」


 僕の視線に気づいて、イルティミナさんが首をかしげる。


 サラッと綺麗な長い髪が揺れる。


 僕は「ううん」と笑って、誤魔化した。


 その『白翼の槍』は、現代においても、金印の魔狩人イルティミナ・ウォンの手によって、悪魔やその眷属との戦いで活躍をしてくれたのだ。


(なんだか、拝みたい気分だよ)


 僕の視線の先で、その美しい純白の槍は、揺れるランタンの光にキラリと輝きを放っていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 僕ら5人は、ミューグレイ遺跡内部を進んでいく。


 その途中で、


(!?)


 ランタンと『光鳥』の光源の中に、突然、奇妙な物体が照らされた。


 虫……かな?


 見た目は、赤い外骨格をしたカブトムシみたいだった。


 けれど、体長が1メードぐらいある。


 そして、その角や手足、羽根などが千切れていて、通路上に散乱していたんだ。


 つまり、死んでいる。


 光の照らす範囲が広がると、その巨大カブトムシの死骸は、10匹ぐらい見つけることができた。


(何これ……?)


 困惑していると、


「6年前の探索の名残りですね」


 と、イルティミナさんの声がした。


 え?


「6年前は、このような虫の魔物がたくさん、このミューグレイ遺跡には生息していたのですよ。それを当時の私たちが駆除した残骸です」


 コンッ


 槍の石突部分で、赤いカブトムシの甲殻を叩く。


 レオルクさんが苦笑して、


「ほとんど、イルティミナが1人で倒したけどな」


 と付け加えた。


(つまり、6年前の戦闘跡なんだね)


 思わず、この通路で戦っている17歳の頃のイルティミナさんを幻視してしまう。


 僕は16歳。


 1つだけ年上のお姉さん。


 当時の装備だという『鋼の槍』を使って、この赤いカブトムシたちを必死に倒していく姿を思ったら、なんだか加勢したくなってしまった。


 でも、その頃の彼女は人間不信だから、


「手助けなど要りません」


 とか言われそう。


(う~ん、会ってみたいな)


 思わず、そんな妄想をしてしまう僕だったけれど、


「マール?」


 はっ。


 今の23歳のイルティミナさんに不思議そうに声をかけられて、我に返った。


 他の3人も怪訝そうだ。


「あはは、何でもない」


 僕は笑って、誤魔化した。 


 イルティミナさんは、綺麗な髪を肩からこぼしながら、首をかしげている。


 うん、美人さんだ。


 今は僕のお嫁さんとなってくれた彼女を見つめて、


「ほら、先に行こう」


 僕は笑顔で促す。


 そうして、6年前の痕跡があった通路を、僕らは歩いていく。


 やがて、地下3階への階段を見つけると、もう時刻も遅かったので、その日は、近くの部屋で野営をすることになった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、明後日の水曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ あ~、確かに17歳当時のイルティミナならばマールの助力を断りそう。 でも出会った頃のマールならば無下には扱わない予感もする(笑) 結局レオルク達は10代前半のマ…
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