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415・瞬殺

第415話になります。

よろしくお願いします。

 ミューグレイ遺跡で遭遇した3体の魔物に、僕らはそれぞれの武器を構えた。


 ガシャン


 レオルクさんは、スタンダードに剣と盾だ。


 隣にいた大柄なジャックさんは、全身を隠すような大盾を構えながら、右手に戦槌を持っていて、ズシンと1歩前に出る。


 オルファナさんは、いつでも魔法を使えるよう杖を持って備えている。


(……ん)


 僕も『妖精の剣』を正眼に構えた。


 僕の前にいるイルティミナさんも『白翼の槍』を構えながら、腰を低く落としていた。


『グギャアアオ!』


 オークが吠える。


 オークは、ゴブリンと同じように知性があり、その身には金属や革の鎧が装備されていた。


 その手には、錆びた斧や両手剣がある。


 つまりは、武装する魔物だ。


(侮れないぞ)


 人間より優れた肉体を持つ魔物が、武器や防具を持っているのだ。


 その脅威は、誰しもわかるだろう。


 重戦士であるジャックさんは、その攻撃を引きつけるため、少しずつ間合いを詰めていく。


 レオルクさんは、半歩下がった位置であとに続く。


『ゴギャアッ!』


 3体のオークの内、2体が突っ込んできた。


 手にした斧と両手剣が振り下ろされる。


 ガギィイン


 ジャックさんの大盾が受け止め、金属の衝突音と共に、激しい火花が散った。


「はっ!」


 その隙を狙って、レオルクさんが片手剣を振るう。


 オークの1体は、その剣に腕を浅く裂かれながらも、それを脅威的な身体能力でかわした。


 次の瞬間、


 キュボン


 そのオークの心臓部分に、大穴が開いた。


『ギョ……?』


 驚いた顔のオーク。


 レオルクさんも驚いている。


 そんな彼の横からは、翼飾りのついた美しい純白の槍が伸ばされ、オークの胸部を貫いていた。


(イルティミナさん!)


 1列後方の彼女は、その長尺武器の特性を生かして、その位置から攻撃を仕掛けたのだ。


 ヒュン


 彼女は槍を引く。


 仲間のオークがやられたことで、残された2体は茫然となっていた。


 いや、それはレオルクさん、ジャックさん、オルファナさんも同じだったかもしれない。


 時が止まったような錯覚。


 その中で、ただ1人、『金印の魔狩人』だけは動いていた。


 キュドッ


 今度は、ジャックさんの横から槍を伸ばし、その正面にいたオークの頭部を貫いた。


 崩れ落ちるオークの死体。


『ギ……ギ、ギャア!』


 1体だけ残されたオークは、武器を捨て、身を翻して逃げ出そうとした。


(あ……)


 ドパァン


 その背中に『白翼の槍』が直撃して爆発、オークの肉体を四散させる。


 通路の床と壁に、血肉が張りつく。


 僕の目に前には、槍を投擲した体勢のイルティミナさんがいた。


「我が手に戻れ、白翼の槍よ」


 短い命令。


 通路の床に刺さっていた槍の魔法石が輝くと、翼飾りが羽ばたいて、イルティミナさんの方へと飛んでいく。


 パシッ


 片手で槍を受け止めるイルティミナさん。


 その表情には、戦いの興奮も勝利の余韻も何もなく、ただ単純作業を終えただけというような、平坦な落ち着きだけがあった。


「……マジか?」


 レオルクさんは唖然としながら、彼女を見つめる。


 他の2人も驚きの表情だ。

 

 3体のオークは、物の10秒もかからずに倒されてしまっていた。


 僕は苦笑する。


(うん、いつも通り)


 これが、金印の魔狩人イルティミナ・ウォンの実力なんだ。


「お疲れ様、イルティミナさん」


 そう労いの言葉をかけると、イルティミナさんは僕を振り返って、


「はい、マール」


 そう嬉しそうに、はにかんだんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「お前、強くなりすぎだろ……」


 通路を歩きながら、まだショックだったのか、レオルクさんが呟く。


 ジャックさん、オルファナさんも頷いた。


「まさか、オーク3体を瞬殺とか、あり得んわ。ってか6年前と同じで、本当に連携してくれないな?」


 ジト目のジャックさん。


 イルティミナさんは澄まして答える。


「そんなことありませんよ」

「…………」

「レオルクたち前衛2人が注意を引きつけたことで、私は攻撃ができたのです。……まぁ、いなくても問題ありませんでしたが」

「お前な! せめて、最後の一言は隠せよ!」


 叫ぶ獣人さん。


 僕と隣のオルファナさんは、顔を見合わせ、苦笑した。


 そして、オルファナさんは、


「でも、イルナさん、昔よりもっと強くなってて、オルファナは驚きました。さすが『金印』なんですね」


 瞳をキラキラさせて、イルティミナさんを見つめる。


 僕の奥さんは、


「まぁ、色々と経験を積みましたので」


 と微笑んだ。


(う~ん、余裕だ)


 そんな受け答えに、レオルクさんはため息をこぼしてしまう。


 と、イルティミナさんは少し表情を引き締めた。


「しかし、オークがいるとは、少し厄介ですね」


(厄介……?)


 僕はキョトンとする。


 その様子に気づいて、レオルクさんが教えてくれた。


「オークっていう魔物は、ゴブリンみたいに群れを形成するんだよ。そして、人気のない洞窟や遺跡に、巣を作ることもあるんだ」


 え……。


「それって、この遺跡も巣になってるってことですか?」

「可能性はある」


 頷くレオルクさん。


「けれど、入り口付近の埃の具合を見た感じ、それほど多くの足跡はなかった。まだ繁殖時期でもないし、いたとしても個体数は少ないだろうな」 


(へぇ……)


 さすが『真宝家』だ。


 遺跡の状態から、そんなことまでわかるんだね。


 僕は、ちょっと尊敬の目で、レオルクさんを見てしまう。


「む……」


 それに気づいたイルティミナさんは、


「まぁ、どれほどの数がいようとも、オーク如き、私が全て駆逐してみせましょう。ですから、マールは安心していてくださいね」

「う、うん」


 僕の眼前に、その美貌を近づけて、そう力説してきた。


 隣にいたオルファナさんは呆気に取られ、レオルクさんは嘆息する。


 それから苦笑して、


「リーダーは俺なんだから、指示には従ってくれよ?」


 と付け加えた。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、3日後の月曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ やはり鬼人くらいならば脅威にはならなかったですね。 ……少し位はマールにも出番あげないと、旦那の実力をレオルク達に見せ付けて自慢する事が出来ないが、いいのか?(…
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