410・冒険者ギルドにて
第410話になります。
よろしくお願いします。
討伐クエストの合間の休暇のとある日、僕とイルティミナさん夫婦は、ソルティスとポーちゃんの家を訪れた。
そこは、冒険者ギルドから徒歩10分弱ぐらいの場所。
閑静な住宅街だ。
そこにある平屋の1軒が、ソルティスの新住居だった。
引越しの手伝いの時にも訪れたけれど、庭もあるし、部屋も綺麗で、とてもいい物件だった。
広さはそれほどだけど、2人暮らしなら充分。
ソルティスは、自分用の書斎と研究室も確保できて、とても満足そうだったっけ。
そんなソルティスとポーちゃんの家を、僕らは今、訪れている。
「はい、お裾分けですよ」
そう言いながら、イルティミナさんが風呂敷包みを妹に渡す。
中身は、手作りの煮物。
この家の家事は、ポーちゃんに任されているのだけど、妹の面倒を全て見てもらってばかりでは申し訳ないと、イルティミナさんが料理を多めに作って、持ってきたのだ。
「わ~い、ありがと、イルナ姉!」
嬉しそうなソルティス。
ポーちゃんは、ペコッとイルティミナさんに頭を下げている。
イルティミナさんは微笑み、妹を見る。
「私がいないからと、あまり不規則な生活になってはいけませんよ? 食事と睡眠は、しっかり取ってくださいね」
「わかってるって、大丈夫!」
中身の美味しそうな煮物料理を確認して、瞳をキラキラさせながら答えるソルティス。
(……本当にわかってるのかな?)
僕は、ちょっと苦笑してしまう。
ソルティスの姉は、嘆息をこぼした。
「ポー、すみませんが、ソルのことをよろしくお願いしますね」
「…………」
コクッ
金髪の幼女は、しっかりと頷いた。
頼もしい限りだ。
あの不思議なハイエルフのコロンチュードさんのお世話もしていたし、ソルティスのことも安心して任せられる。
「ねっ? せっかくだから、うちでお昼も食べて行ったら?」
ソルティスがそう笑った。
僕とイルティミナさんは顔を見合わせる。
「うん」
「それでは、お言葉に甘えて」
笑顔で、そう答えた。
そうして、その日のお昼は、僕ら夫婦とソルティス、ポーちゃんの4人で楽しく食べたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
午後になり、僕ら夫婦は、ソルティスとポーちゃんの家をあとにした。
他愛もない会話をしながら、通りを歩いていく。
(あ、そうだ)
ふと思い出して、
「ごめん、イルティミナさん。僕、水の魔石を買い足す予定だったんだ。冒険者ギルドに寄ってもいい?」
「はい、構いませんよ」
僕のお嫁さんは、優しい笑顔で頷いてくれる。
「ありがと」
その微笑みに、僕も心が温かくなってしまった。
そんなわけで、進路を変更。
そのまま僕らは、帰り道の途中で、冒険者ギルド『月光の風』へと足を運んだんだ。
ギルド内には、何人も冒険者が歩いている。
その中を歩きながら、
(普段着で来るのは、珍しいなぁ)
なんてことを思ったり。
そうして僕は、ギルド内の売店で、必要だった『水の魔石』を購入することができた。
(よしよし)
これで次の冒険も大丈夫だ。
「お待たせ。それじゃあ、帰ろうか?」
「はい」
僕らは、笑顔で頷き合った。
キュッ
新婚らしく、お互いの手を繋いで歩きだす。
(えへへ)
繋いだ手が温かい。
ふとギルドの受付カウンターを見ると、顔馴染みのギルド職員クオリナ・ファッセさんがいるのに気づいた。
(ちょっと挨拶していこうかな?)
と思ったけど、彼女の前には、3人の冒険者がいる。
どうやら、仕事中みたいだ。
知り合いなのか、クオリナさんはその冒険者たちと談笑しながら、書類の記入をしたりしていた。
イルティミナさんも、それに気づく。
そして、少し驚いたように、
「おや、あの者たちは……?」
と呟いたんだ。




