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330・王墓に侵入せよ!

第330話になります。

よろしくお願いします。

 やがて、僕らは『タナトス王の王墓』へと辿り着いた。


 でも、


「どこが入り口?」


 僕はそう呟いた。


 目の前には、高さ20メードはある土と雪の積もった盛り上がりがあるだけだ。


 それが左右に数百メード、続いている。


 そして、所々、土と雪が剥がれて、下の建造物の外壁などが見えていた。


 でも、入り口となる場所は見当たらない。


(どうする?)


 モタモタしていたら、後方からアンデッドたちがやって来るかもしれない。


 アルン騎士たちの負担も増すだろう。


 すると、神牙羅の美女レクトアリスが前に出た。


 ギュルン


 その白い額に、第3の眼が開かれる。


 そして、そこから放射状に照射された赤い光が、目前の『タナトス王の王墓』を照らした。


 彼女はゆっくりと首を巡らせ、全体を照らしていく。


 ウォォン


 その構造をスキャンをしているみたいだ。


 やがて彼女は「ふぅ」と息を吐き、第3の眼が閉じる。


「わかったわ。ここから200メードほど向こうよ」


 そう示されたのは、右手の方角だ。


 僕らは、すぐにそちらへ向かった。


「ここよ」


 レクトアリスが示したのは、土と雪に埋もれた場所だった。


「皆、下がっておれ」


 キルトさんがそう言いながら、背負っていた『雷の大剣』を抜き放つ。


 そして、


「むん!」


 ドガァアン


 巨大な大剣で、その部分の土砂を吹き飛ばしてしまった。


(凄いや)


 感心しつつ、土砂の消えた部分を見つめる。


 そこには黒い金属の壁があり、そこに造られた金属製の扉があった。


 中央に赤い魔法石が嵌められ、取っ手などは見当たらない。


「これ、どうやって開けるんや?」


 ラプトが困ったように言った。


 多分、魔法で開閉できる仕組みみたいだけれど、その方法を僕らは誰も知らなかった。


(……強引に破壊する?)


 いや、無理だ。


 キルトさんの大剣が当たったはずなのに、金属の扉には傷1つなかったんだ。


 きっと魔法的な防壁が張られている気がする。


「どうしよう……?」


 僕は呟く。


 と、その金属扉の前へとソルティスが進み出た。 


 小さな指が魔法石に触れる。


「ここが発動点でしょ? ってことは、魔素の流れは、この紋様に沿ってるから……」


 ツツッ


 その指は、扉の表面に刻まれた溝をなぞっていく。


「ここで分岐」


 少女は上下を見比べて、


「こっちはデコイ。こっちが本線。つまり開錠の手続きがあるのね。なら……」


 ブツブツ


 扉の前でしゃがんだり、立ったりしながら、ソルティスはその構造を確認しているみたいだった。


 みんな、その様子を見守っている。


 その時、後方から『嫌な気配』を感じた。 


(!)


 振り返れば、アルン騎士たちが足止めし切れなかったのだろうアンデッドの群れが、こちらに近づいてきていた。


 数は100体前後。


 距離は、300メードほど。


「ソ、ソルティス、まだ?」

「黙ってて」


 僕の声を、ピシャリと弾く少女。


 キルトさんが言う。


「皆、武器を構えよ。ソルが扉を開けるまで、ここを死守するぞ」


 そして、『雷の大剣』を構えた。


(うん!)


 僕らも、近づくアンデッドに武器を向ける。


『グァ……』

『ヒギィ……』

『ウキキッ』


 不気味な声をあげながら、少しずつ接近してくる。


 その距離が100メードを切った時、


「わかったわ、こうね!」


 ソルティスは歓喜の声をあげながら、その手を扉の魔法石に押しつけた。


 ヴォン


 そこから魔力を流し込む。


 すると、魔法石の赤い色は青い光へと変わり、その輝きは扉に刻まれた紋様に沿って流れていった。


 ガコッ


 何かの外れる音。


 そして、


 ズゴゴゴゴッ


 重い金属の擦れる音を響かせながら、『王墓』の扉が左右に開かれていった。


「中に入れ!」


 キルトさんが叫んだ。


 僕らは、すぐに開いた扉の奥へと飛び込んでいく。


 と、ダルディオス将軍が小さな金属筒を取り出して、それを空へと向けた。


 発光信号弾だ。


 太い指がトリガーを引く。


 シュルル…… パァアアン


 青い空に、魔法の光が大きく輝いた。


 これは僕らが『タナトス王の王墓』に入ったという作戦完了の合図であり、アンデッドの足止めをしてくれていた200名のアルン騎士たちに撤退を促す合図でもあった。


「将軍、急げ!」

「わかっとるわい!」


 キルトさんが急かし、将軍さんは巨体からは想像できぬ速度で扉の中に入る。


 アンデッドは、もはや10メードほどの距離まで近づいていた。


『ギュアア!』

『ヒギィ!』


 腐乱した不死人たちが走ってくる。


「閉めて、ソルティス!」


 僕は叫んだ。


 ソルティスは、


「わかってるわよ!」


 と叫び返しながら、扉の魔法石に魔力を注いでいく。


 ズゴゴッ


 魔法石の光が赤く変わり、今度は扉が閉まっていく。


(早く、早く!)


 先頭のアンデッドが、僕の方へと腐った手を伸ばしてきた。


 ゴゴンッ


 その瞬間、扉が閉まった。


 伸ばされた手は、扉に挟まれて切断され、僕の目前の床にボトンと落ちる。


 ピクピク


 それでも、不死の肉体は活動を停止せず、その指が藻掻くように動き続けていた。


「…………」


 硬直している僕。


 フレデリカさんが『烈火の剣』で触れ、その不死の手を焼いた。


 ジュオオ……ッ


 それは炎の中で浄化され、黒く砕けて、消えていく。


「ふぅぅ」


 それを見届けて、僕らは大きく息を吐いた。


「よくやったぞ、ソル」


 キルトさんは笑って、大活躍だった少女の頭を撫でてやった。


 彼女は、ちょっと照れ臭そうな顔だ。


 みんなも笑顔をこぼす。


 こうして僕ら9人は、無事に『タナトス王の王墓』の内部へと侵入することに成功したのだった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 扉の魔法石の赤い光が、周囲をぼんやりと照らしている。


「マール、光の魔法を」

「うん」


 キルトさんの言葉に、僕は頷いて『妖精の剣』を鞘から抜き放った。


 腕輪の魔法石を輝かせながら、


「輝きの鳥たちよ。僕らの周囲を照らせ。――ライトゥム・ヴァードゥ」


 ヒュッ ヒュン


 剣先でタナトス魔法文字を、空中に描きだす。


 最後に強く剣を振ると、腕輪の魔法石から『光の鳥』が3羽、飛び出した。


 ピィン


 綺麗な鳴き声が響く。


 同時に、その光に照らされて、周囲が明るくなった。


(通路だね)


 光鳥たちの輝きに浮かび上がったのは、金属の壁に覆われた直線の道だ。


 壁には、青い光の輝く溝が刻まれている。


 ソルティスは、


「ふぅん?」


 小さな指で、興味深そうに壁の溝に触っていた。


 キルトさん、ダルディオス将軍もランタンを灯して、僕らは2種類の光源を確保する。


「よし、奥へ行くぞ」


 キルトさんの号令で、僕らは歩きだした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 隊列は、先頭にラプト、レクトアリスの『神牙羅』2人。


 次がキルトさん、ダルディオス将軍。


 真ん中に、魔法使いのソルティス。


 その後ろに、僕とポーちゃん。


 最後尾は、イルティミナさんとフレデリカさんのお姉さんコンビだ。


 この隊列で、通路を進む。


(……空気が冷たいね)


 冬だからというわけでなく、王墓の中そのものが冷えている感じだ。


 臭いは、あまりしない。


 ただ停滞した空気みたいな、どんよりした重さを感じる。


 しばらく歩いたけれど、通路は終わらない。


(全長1キロぐらいあったもんね)


 丘の上から見た『タナトス王の王墓』は、それぐらいの規模があった。


 やがて、分岐が現れる。


「ちょっと待ってね」


 レクトアリスがそう言うと、額に第3の眼を開き、そこから赤い光を放って、それぞれの道を照らした。


 そして、


「こっちよ」


 正解の道を、その指で示してくれる。


(さすが)


 神界の同胞の頼もしさに、僕は笑ってしまった。


 そうして10分ほど歩くと、僕ら9人は広い空間へと出くわした。


 大きさは、ドーム球場かな?


 天井は高くて、たくさんの椅子が円形に並んでいる。


 中央には、神像みたいなものがあった。


 大きさは、10メードぐらい。


「アルゼウス様やな」


 その像を見つめて、ラプトは自らの主神の名前を呟いた。


(うん)


 去年、万竜の山で見た『正義の神』様の姿と、確かによく似ている。


 でも、よく見たら、アルゼウス像の他にも2つ、神像があった。


 こちらは女神像。


「モア様とシュリアン様ね」


 レクトアリスが、そのモデルとなった神様を見抜く。


 確かに。


 どちらも万竜の山であった姿にそっくりだ。


 特にシュリアン様は、シュムリア王国の教会にある像とも特徴が似ていて、わかり易かった。


 それぞれの神像は、背中合わせで3方向を向いている。


 ソルティスが「なるほどね」と呟いた。


「最後のタナトス王が亡くなったのは、神魔戦争が終結したあと。つまり、その時代から、自分たちを守ってくれた3柱の神様が祀られるようになっていったのね」


 そっか。


 この3柱の神様は、神魔戦争における『神々の軍勢』の中心となった神様だ。 


 現在は、その3柱の神への信仰が世界に大きく広がっている。


 その信仰の始まりが、この『王墓』が造られた時代なんだ。


「歴史の始まり、か」


 フレデリカさんが感慨深そうに呟いた。


 キルトさんは「ふむ」と頷き、


「なかなか興味深いの。しかし、今は王墓や歴史への興味より、『神霊石の欠片』を探すことに集中しようではないか」


 と注意する。


(あ、そうだったね)


 僕らは反省し、頷いた。


 それからレクトアリスがまた周囲を調べてくれて、この礼拝堂みたいな空間から続く幾つかの通路の1つへと、僕らは向かった。


 やがて、地下へと続く階段を発見する。


 オォォオオ……


 更に冷たい空気が、奥の闇から上ってくる。


「行くぞ」


 キルトさんの鉄の声。


 僕らは頷いて、『タナトス王の王墓』の地下へと続く階段を下り始めた。

ご覧いただき、ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ レクトアリスとソルティスの活躍で『タナトス王の王墓』の地下へ突入に成功! ソルティスは出来る子! 只の食いしん坊じゃない(笑) [一言] 『タナトス王の王墓』の…
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