表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

315/825

番外編・転生マールの冒険記18

番外編・転生マールの冒険記18になります。

よろしくお願いします。

(……狭いなぁ)


 僕は今、20人ほどの開拓団員と一緒に、薄暗く狭い倉庫みたいな場所に閉じ込められていた。


 ここは、船倉だ。


 あの車輪のついた木造船の中にいるんだ。


 その船倉内で、みんなと膝を抱えて座っている。


 ゴトゴトと床から伝わる振動は、木造船が今、大地の上を走っていることを伝えてくる。


 これが、話し合いの結果だった。


 戻ってきたロベルト将軍からの言葉を、僕は思い出す。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「我らは、帝都レダに招かれることになった」


 固唾を飲んで待っていた僕ら『第5次開拓団』の全員に、ロベルト将軍はそう伝えた。


 帝都レダ。


 それは『トルーガ帝国』の首都だ。


 話し合いの場に置いて、ロベルト将軍は、僕たちの立場を伝えていた。


・自分たちがシュムリア王国という異国の人間であること。


・『神霊石』を求めて、北の大海を渡り、この大陸へとやって来たこと。


・『トルーガ帝国』と敵対する意思はないこと。


 もちろん、知らなかったとはいえ、無断で帝国領内に侵入してしまったことへの謝罪も伝えたんだって。


 その返答が、


『アメルダス女帝陛下の判断を仰ぐ』


 というものだった。


 どうやら『アメルダス女帝陛下』というのが、トルーガ帝国の頂点に立つ人物らしいね。 


 もちろん本来は、そう簡単に会わせてもらえるものではない。


 けれど、僕らはトルーガ帝国の人々を助けるため、『黒大猿』たちと戦ったことが評価されたんだとか。


 特に、そこで『強さ』を示したこと。


 これが一番良かったみたいだ。


 話し合いに参加したイルティミナさんは、


「逆に『強さ』を示していなければ、いくらトルーガ人のために戦ったとしても、無断入国の罪は許されなかったという雰囲気でしたね」


 と語っていた。


(強さこそ正義……か)


 そのトルーガ流の国是に救われたみたいだ。


 ちなみに、彼ら5000人の『トルーガ神民』の戦士団は、大繁殖を起こした『黒大猿』の討伐軍の1つだったそうだ。


 同じような規模の討伐軍は、各地に向かっているんだって。


(つまり数万人、あるいはそれ以上の軍があるんだ?)


 トルーガ帝国は、やはり大国だ。 


 そして、それだけの軍を動員するほど『黒大猿』も脅威だということ。


 ここ以外にも、1000体以上の群れがあちこちで存在するみたいだ。


(これが暗黒大陸……)


 その恐ろしさを思い、僕は、少しだけ身震いする。


 そうして僕ら『第5次開拓団』は、20人ずつ20隻の木造船に分乗して、帝都レダへと向かうことになったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 木造船に乗ってから、3日が経った。


「……退屈ね」


 ソルティスがぼやいた。


(うん)


 僕も心の中で頷く。


 この3日間、1歩も外に出ていない。


 この船倉には、個室トイレが1つあるぐらいで、それ以外には、10センチほどの小さな丸い窓がある他は、何もないんだ。


 日差しも、その窓からのものだけ。


 食事は、日に2回。


 穀物と肉を中心にしたものは出してもらえている。


(個人的には、もうちょっと野菜が欲しいかな……)


 なんて思ったり。


 ちなみに、乗船する時に、荷物や武装を預けるよう要求もされなかった。


(いいの?)


 と思ったけれど、


「むしろ『戦いを望むならば、受けて立つ』という感じじゃの。『強さ』を誇る連中にとっては、『戦い』とは歓迎すべきことなのじゃろうて」


 と、キルトさんが言っていた。


(なるほど)


 金印の魔狩人キルト・アマンデスが言うと、説得力があるよね。


 まぁ、退屈だけど、待遇に不満があるわけじゃない。


(あまり身体を動かせないのは、辛いけど……)


 でも、自分たちは不法入国者。


 立場を考えたら、充分、人道的に扱ってもらえているもの。


 それに『帝都レダ』までは、2週間ほどだと聞かされていた。


(うん、それまでの辛抱だね)


 僕は、その日が来るのを、じっくりと待つことにした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 木造船の旅も、10日目を迎えた。


 僕らは船倉に閉じ込められたままだったけれど、旅の途中で戦闘があった。


 荒野の大地に、巨大な百足が集まっていたんだ。


 体長は1メードぐらい。


 中には、5メードサイズの『巨大百足』も存在していた。


『アゥラララァアア!』


 雄叫びをあげる『トルーガ神民』たちは、大百足たちに襲いかかり、あっという間に蹴散らしていた。


(強い)


 小さな窓から見える光景に、改めて思った。


(もしも『トルーガ神民』の戦士400人がいたとして、果たして僕ら『第5次開拓団』の400人は勝てるのかな?)


 絶対に勝てる、と断言はできない気がした。


 それからも、木造船団は、何度か魔物の襲撃を受けた。


 そして、『トルーガ神民』の戦士たちは、それを簡単に倒していく。


 それを眺めていたソルティスが、


「ふ~ん? 南下するほど、魔物の種類が増えてる感じね」


 ふと、そんなことを言った。


(え?)


「暗黒大陸の北部は、『黒大猿』の縄張りになっているから他の魔物がいないんだわ。逆に、南部には『黒大猿』がいないから、多種多様な魔物が存在しているみたいね」 


 そうなんだ?


(アルバック大陸同様に、暗黒大陸にも、たくさんの魔物がいるんだね)


 トルーガ文明の『強さ』を尊ぶ文化も、もしかしたら、そういう環境だから生まれたのかもしれない。


 そんなことを思いながら、旅は続いていく。


 12日目には、大河に出くわした。


 対岸まで、1000メードはありそうだ。


 その水の流れへと、『トルーガ神民』の木造船は、止まることなく突っ込んでいった。


 ザパァアン


 衝撃があり、激しい水飛沫が窓に弾ける。


(わ、浮いてる!)


 木造船は、そのまま水上を進んでいた。


 今更だけど、僕は、この木造船が陸上を走る船ではなく、水陸両用の船なのだと思い知った。


 他の開拓団の人たちも『おぉ』と感心した顔である。


 ザパァ


 波に揺られながら、やがて船団は、対岸へと渡った。


 車輪が水底を踏み、陸上へと上がっていく。


(格好いいなぁ)


 僕は少しワクワクしてしまう。


 目を輝かせる僕に、「やはり、マールは男の子ですね」とイルティミナさんは笑っていた。


 でも、水陸両用船なんて、凄い技術。


『トルーガ帝国』は、シュムリア王国のように武を尊ぶだけでなく、アルン神皇国のように技術大国でもあるみたいだ。


 その首都である帝都レダ。


(いったい、どんな場所なんだろう?)


 そう思いを馳せてしまう。


 そして、大河を渡った翌日――僕ら『第5次開拓団』は、トルーガ帝国の首都、帝都レダの荘厳な姿を目にすることになったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※番外編・転生マールの冒険記は、終了まで毎日更新の予定です。どうぞ、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミックファイア様よりコミック1~2巻が発売中です!
i000000

i000000

ご購入して下さった皆さんは、本当にありがとうございます♪

もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひご検討をよろしくお願いします。どうかその手に取って楽しんで下さいね♪

HJノベルス様より小説の書籍1~3巻、発売中です!
i000000

i000000

i000000

こちらも楽しんで頂けたら幸いです♪

『小説家になろう 勝手にランキング』に参加しています。もしよかったら、クリックして下さいね~。
『小説家になろう 勝手にランキング』
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ 薄暗く狭いい空間に10日以上。 閉所恐怖症でなくともストレスが凄そう。 ましてや未成年の3人の精神負荷は倍率ドン! ……いや、案外ポーちゃんは平気か?(苦笑) …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ