番外編・転生マールの冒険記08
番外編・転生マールの冒険記08になります。
よろしくお願いします。
村の方からも、僕らの姿は見えたようだ。
見張り台の上にいる人たちが、とても慌ただしい動きをしている。
そして、彼らは手に弓を持っていた。
(……あれで射られないかな?)
ちょっと心配……。
すると、トルキアが、
「ミンナニ、話シテクルネ。チョット待ッテテ」
そう笑って、1人で村に向かった。
門の前に辿り着くと、見張り台の人たちと大きな声で話をする。
……聞こえてくるのは、知らない言語だ。
(トルーガ語かな?)
やがて、彼女は、門の中へと入っていった。
僕ら5人は取り残される。
…………。
10分ほどして、トルキアは戻ってきた。
一緒に、剣と槍、弓で武装した10人ぐらいの大人たちもいる。
トルキア以外は、みんな、僕らを警戒しているみたいだった。
(…………)
僕は、いつでも剣を抜けるよう心掛けた。
もちろん、こっちから手を出す気はないけれど……。
キルトさん、イルティミナさん、ポーちゃんは自然体で立っている。でも、いつでも動ける体勢だ。
ソルティスは、少し緊張した顔だった。
と、トルキアと一緒に、小柄な老人もいることに気づいた。
腰が曲がって、杖を突いている。
そのご老人さんは、他の村人に声をかける。
武装した村人たちはその場で止まり、そのご老人さんは、トルキアと2人で僕らの前にやって来た。
彼は、僕ら5人をゆっくりと見つめる。
その瞳を細めて、
「ナルホド……ドウヤラ、本当ニ『海渡リ人』ノヨウデスナ」
と、アルバック共通語を口にした。
僕は、トルキアを確認するように見た。
トルキアは「ウン」と笑って、
「私ノオジイチャン。チナミニ、コノ村ノ村長ダヨ」
と教えてくれた。
僕らは驚き、小柄なご老人さんを見つめてしまった。
彼は、ゆっくり頭を下げる。
そして、
「我ガ孫ヲ助ケテイタダイタソウデ、アリガトウゴザイマシタ。何モナイ村デスガ、ドウゾ中ヘ、オ入リクダサイ」
そう穏やかに微笑んだんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
村長さんの名前は、モハイニさん。
彼に案内されて、僕ら5人は、丸太の柵の内側にある村の中へと入っていった。
(へ~?)
谷間に挟まれた村には、木造の家屋が並んでいた。
村人の数は、300人ぐらいかな?
鹿のような動物を解体していたり、その肉を軒先で干したりしている。
トルーガ人の村人は、みんな、白い髪だった。
頬に、赤い染料で文字みたいな、模様みたいなものを描いている。
着ているのは、麻みたいな素材の質素な服。それと男女を問わず、動物の骨を削った装飾品を身に着けていた。
(凄いなぁ)
異国情緒たっぷりだ。
シュムリア王国に比べて、少し文明レベルは落ちているように感じるけど、それがトルーガ帝国全体に当てはまるかは、まだわからない。
「ほほ~?」
ソルティスも、大きな瞳をキラキラ輝かせている。
キルトさん、イルティミナさん、ポーちゃんも珍しそうに村の様子を眺めながら、歩いていた。
もちろん村の人たちも、異国人である僕らを注目してくる。
好奇心。
警戒。
色んな視線があった。
モハイニさんを先頭に歩く僕らの後ろを、トルキアと武装した村人たちがついてくる。
やがて案内されたのは、村で一番大きな建物だった。
(モハイニさんの家かな?)
モハイニさんは、武装した人たちと少し話して、彼らは家の外で待機をすることになったみたいだ
僕らとトルキア、モハイニさんだけが中に入る。
応接室のような部屋で、
「ドウゾ、オカケクダサイ」
モハイニさんに促され、僕らは木製の椅子に座った。
すると、キルトさんが、
「突然の来訪を受け入れて頂き、感謝します」
と頭を下げた。
イルティミナさんも頭を下げて、ポーちゃんも真似をするように、僕とソルティスは少し慌てて、それに倣った。
モハイニさんは微笑んだ。
「ナンノ。皆サンハ、孫ヲ助ケテクダサッタ恩人。ワタシニ、デキルコトガアレバ、ナンナリト」
「ウンウン」
横にいるトルキアも頷いている。
キルトさんも微笑んだ。
それから僕らを代表して、キルトさんは、自分たちのことを語った。
僕らが、シュムリア王国という異国の人間であること。
400人ほどで、海を渡ってきたこと。
とある目的を持って、この大陸を訪れたこと。
しかしながら、この大陸について何も知らず、だからこそ大陸についての情報を求めていること。
モハイニさんは、黙って話を聞いてくれた。
そして、
「トルキア、『アレ』ヲ」
「ウン」
祖父に命じられて、トルキアは奥の部屋から、1枚の服を持ってきた。
赤い服だ。
結構、古い。
そして、その服には、4つの手を持った女神の刺繍が施されていた。
(女神シュリアン……)
僕らは気づく。
キルトさんは、モハイニ村長を見た。
「これは、もしや」
「ハイ、30年前ノ『海渡リ人』ガ持ッテイタ物デス」
やっぱり。
つまり、トルキアのおじいちゃんが会ったという『海渡り人』は、間違いなく『第3次開拓団』の人だったんだ。
モハイニさんの僕らを見る瞳は、どこか懐かしそうだった。
キルトさんは言う。
「詳しく聞かせてもらえますか?」
「エェ、モチロン」
モハイニさんは、はっきりと頷いてくれた。
ご覧いただき、ありがとうございました。
※番外編・転生マールの冒険記は、終了まで毎日更新の予定です。どうぞ、よろしくお願いします。