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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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番外編・転生マールの冒険記02

本日2回目の更新です!


番外編・転生マールの冒険記02になります。

どうぞ、よろしくお願いします。

 暗黒大陸5日目の朝だ。


 僕ら『第5次開拓団』が集まった前には、各団代表4人が立っていて、今後の探索方針を全団員に伝えていた。


 内容は、昨日、キルトさんに聞いたのと同じもの。


『黒大猿』のいる南方の森を避け、東の森を探索して、『航海日誌』にあった遺跡を探すのだ。


 なお、川向こうと通じる3つの吊り橋は、『黒大猿』がこちらに来ないよう撤去する予定なんだって。


「以上だ。何か質問は?」


 ロベルト将軍が問う。


(……今は、特にないかな)


 みんなも僕と同じように思ったみたいで、誰からも質問はなかった。


 そんな僕らを見回して、彼は頷く。


「よし。ならば準備ができ次第、東の森の探索を行うこととする! 総員、すぐに準備にかかれ!」


 将軍さんの言葉に、僕らは一斉に動き出した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「よし、行くぞ」


 30分後、キルトさんの号令で、僕らは『開拓村・拠点』を出発した。


 進路は、東だ。


 今回の探索も、冒険者団50名、王国騎士団200名の計250名で行われる。


 期間は20日間。


 成果があっても、なくても、20日後には『開拓村・拠点』に報告に戻るんだって。


(……遺跡、見つかるといいな)


 そんなことを思いながら、僕ら5人は東の森へと入っていった。


 …………。

 …………。

 …………。


 歩き始めて、数時間が経過した。


 東の森の中は、これまでの森と特に変わりはなかった。


 緑の草木。


 動物たちのかすかな気配。


 それは、よくある森の景色だ。


 視線を右側に向ければ、遠くに峻険な南方の山脈がそびえ、その向こうには、青い空が広がっている。


(……あの山の向こうには、何があるんだろう?)


 ふと、そんなことを思った。


 その日は何事もなく日暮れを迎え、僕らは、森の一角で野営をした。


「退屈だったわね」


 焚火を囲んで食事をしながら、ソルティスがそう言った。


 みんな、彼女を見る。


「もしかしたら、『黒大猿』が現れるかもって警戒してたのに、無駄だったわ」


 うん、そうだね。


 僕も、万が一に備えて、ずっと剣の柄に手を当てて歩いていた。


 でも、何もなかった。


 僕の隣に座っているイルティミナさんが、口を開く。


「悪いことではないでしょう。それはつまり『航海日誌』の情報は正しかった、ということなのですから」


 まぁね。


『黒大猿』の主な生息域は、川向こうの森――その情報は正しかったんだ。


 なら、


「日誌にあった遺跡も、確かに存在するってことだよね」


 僕は、期待を込めて言った。


 イルティミナさんは笑って、「はい」と頷く。


 パチッ


 焚火の火の粉が、夜空に昇っていく。


 ソルティスは、それを見上げながら、


「未知の文明の遺跡かぁ。……この暗黒大陸には、いったい、どんな文明があったのかしらね?」


 どこか切なそうに言った。


 モグモグ


 その隣のポーちゃんは、少女の横顔を見上げながら、乾燥肉を小動物みたいに噛んでいる。


 僕らはその文明に、少しだけ思いを馳せた。


 やがて、


「その遺跡を見つけるためにも、食事が終わったら休むとしようぞ。長期の探索には、体力の温存も重要じゃからの」


 キルトさんがそう言った。


 僕らは頷く。


 それから交代で見張りをしながら、東の森での初めての夜は過ぎていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 東の森に入ってから、5日が過ぎた。


 探索は、特に目新しい発見もなく進んでいる。


 この5日の間に、戦闘は2回だけあった。


 相手は、どちらも『黒大猿』だ。


 だけど、最初に遭遇したのは3体の群れで、2回目にいたっては1体だけだったんだ。


 しかも、これまで見てきた『黒大猿』と比べても、体格は小柄だった。


 危なげもなく、勝利できた。


 キルトさんは、その痩せた魔物の死体を見つめて、


「もしかしたら、『黒大猿』は、弱った個体を群れから追い出す習性があるのかもしれぬな」


 と言っていた。


(ふ~ん?)


 つまり、東の森にいるのは、群れからはぐれた『黒大猿』ってことかな。


 ……ちょっと可哀相。


 でも、その魔物も僕らを殺そうとする。


(同情してる余裕はない……よね)


 そう自分に言い聞かせる。


 そんなこともありながら、僕ら5人は、東の森の中を進んでいった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 6日目は、雨が降っていた。


 灰色の空から落ちてきた雨粒たちが、僕らの防水ローブで弾けている。


(視界が悪いなぁ)


 雨のせいで、遠くまで見通せない。


 フードや木々の葉に当たる雨音のせいで、音もよく聞こえなかった。


「いつも以上に、周囲を警戒せよ」


 キルトさんは、そう忠告する。


 僕らは頷いた。


 そのまま、雨の森の中を歩いていく。


 ザァ ザァ


 しばらく歩いていると、森の中に小川が流れているのを見つけた。


 幅2メードほど。


 深さも30センチぐらいだ。


 ソルティスが、パチャッと水面を蹴った。


「南の森とを隔てる川の支流かしら?」

「そうかもね」


 僕は頷いた。


 キルトさんは「ふむ」と、少し考え込む。


(?)


 どうしたんだろう?


「よし、しばらくは、この小川沿いを探索していくぞ」


 え?


 驚く僕に、


「遺跡というものは、人の造ったものじゃ。そして、人が生きるために水は必須であろう? 水辺の近くにあるやもしれぬ」


 とキルトさん。


(あ、なるほど)


 僕も納得の理由だ。


 それから僕ら5人は、小川に沿って、森の中を歩いていった。


 …………。

 …………。

 …………。


 3時間ほどしただろうか?


「……見つからないわね」


 ソルティスがぼやいた。


 イルティミナさんが苦笑して、


「見つからない方が当たり前なのです。そう焦っては駄目ですよ?」


 そう妹を窘める。


 ソルティスは「むぅ」と防水フードの奥で、頬を膨らませた。


(あはは……)


 僕とキルトさんも苦笑する。


 と、その時、


 ズルッ


「わっ!?」


 ソルティスに気を取られていたからか、僕はぬかるんだ土に滑って、転んでしまった。


 い、痛い……。


 尻もちをついた僕に、


「まぁ、大丈夫ですか?」

「何やってるのよ、馬鹿マール」


 イルティミナさんは驚き、ソルティスは実に嬉しそうに笑っている。


(くぅ……)


 恥ずかしくて泣きそうだ。


 優しいポーちゃんは、無言のまま、僕を助け起こそうと手を差し出してくれる。


 僕は、それを握ろうとして、


(……あれ?)


 低い姿勢から見る森の景色に気づいた。


 立っている時とは違って見える木々の隙間――その先に、大きな黒い何かが見えたんだ。


「どうした、マール?」


 気づいたキルトさんが問いかけてくる。


 僕は立ち上がりながら、


「あっちに、何かある」


 と呟いた。


 キルトさんは「何?」と驚いた顔をした。


 姉妹も顔を見合わせている。


 ポーちゃんは、僕の横顔を見つめながら、小首をかしげた。


 僕は1人、そちらへと歩きだす。


「あ、待ってください、マール」


 慌ててイルティミナさんが後を追いかけ、他の3人もすぐに続いた。


 ザァアアア


 雨音が響く、灰色の世界。


 僕らは、その森を歩き続けた。


 そして――不意に、木々が途切れて、広い空間へと出くわした。


(!)


 僕の足が止まった。


 遅れてやって来た4人も、それを見て、すぐに停止する。


「……あった」


 僕の口から、そう言葉が漏れた。


 目の前の空間には、高さ30メードはある石造りの巨大なピラミッド遺跡がたたずんでいたんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※本日の夕方に、もう1話更新いたします。どうぞ、よろしくお願いします。

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