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292・逃走の日々

第292話になります。

よろしくお願いします。

 気がついたら、僕は、真っ白な世界にいた。


 白い空。


 白い大地。


 それがどこまでも続いている。


(……ここは、どこなんだろう?)


 そう思いながら、視線を巡らせた。


 離れた白い大地に、『黒い何か』があった。


 巨人だ。


 白い大地の上に、『黒い巨人』が横たわっているのが見えた。


 生気は感じない。


 死んでいるんだと思った。


「…………」


 僕の足は、なんとなく、そちらへ1歩、踏み出した。


 ほぼ同時だった。


『黒い巨人』の身体から、真っ黒いタールのような液体が流れ出し、それが白い大地へと広がっていった。


(なんだ、あれ?)


 足が止まる。


『黒い液体』は、巨人の死体を中心にして、大地の白さを侵食していった。


 白い大地が、黒く染まっていく。


 それは音もなく、離れた僕のいる場所まで広がってきた。


 思わず、逃げだす。


 でも、その浸食速度は驚くほどに早くて、気がついたら僕の両足の下には、『黒い液体』が満ち溢れていた。


 チャポッ


 気泡が浮かぶ。


 そして、その黒い水面から、たくさんの『黒い手』が生えてきた。


「!?」


 僕の全身が『黒い手』に掴まれる。


 逃げることもできず、叫ぶことも口を塞がれてできなくなり、僕はドプンと黒い水面下へと引きずり込まれてしまった。


 ゴボボッ


 息が……できない。


 黒い水中の中でもがき続け、やがて僕は、そこで溺死をしてしまった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「――はっ」


 突然、息が吸えるようになった。


 身体が揺れている。


 青い瞳を開くと、目の前には、艶やかな深緑色の髪に包まれたイルティミナさんの後頭部があった。


(イルティミナさんに、背負われている?)


 そう気づいた。


 周囲は森だった。


 薄く、白い霧がかかっていて、視界は悪い。


 森の景色は、凄い速度で後方へと流れていて、イルティミナさんが森の中を走っているのがわかった。


「気がついたのですね、マール!」


 動いた気配でわかったのだろう、イルティミナさんの泣きそうな声が聞こえた。


 振り返った横顔は、泣き笑いだった。


「うん……」


 僕は、ぼんやりした意識で頷いた。


 ……いったい、僕は?


 記憶を辿り、そして『黒い手』に胸部を貫かれたことを、ハッと思い出す。


 慌てて胸元を見た。


(!)


『妖精鉄の鎧』には丸い穴が開いていて、旅服には、乾いた黒い血の跡が広く残っていた。


 夢じゃない。


 僕は、心臓を貫かれて殺されたんだ。


(でも、それならどうして、僕は今、生きているんだ?)


 そう思った時、首から下げられているペンダントに気づいた。


「あ……」


 その『命の輝石』の魔法石は、灰色になっていた。


 そうか。


 僕は一度、殺されて、それから再び生き返ったんだ。


「よかった……本当に良かった、マール」


 イルティミナさんの声は震えている。


 僕が死んでしまったことを嘆き、本当に生き返るかどうか、ずっと心配してくれていたことが窺えた。


(イルティミナさん……)


 生き返ったばかりの胸が温かい。


「目が覚めたか、マール」


 ふと横からキルトさんの声がした。


 見れば、ソルティスを背負ったキルトさんが、走るイルティミナさんの隣を並走していた。


 更に奥には、ポーちゃんの走っている姿もある。


(キルトさん、ポーちゃん……)


 みんなの姿を見て、僕はなんだか安心する。


 でも、キルトさんの表情には、僕の様子に安堵しながらも、それ以上のただならぬ緊張感が宿っていた。


 それから、ふと気づいた。


 僕らの他にも、霧の中を走っている王国騎士団、冒険者団の人たちの姿があったんだ。


 全員、同じ方向を目指して走っていた。


(???)


 ここはいったい?


 それに、みんな、なんで走っているの?


 そう思っていると、疑問が顔に出ていたのか、キルトさんが教えてくれた。


「ここは『霧の森』じゃ」

「え?」

「そなたが殺されてから、すでに8時間が経っておる。そして、わらわたちは今、逃走している最中なのじゃ」


 逃走……?


 聞き返そうと思った時、


 ゴッ ゴゴゴッ


 突然、大地が震動した。


 地震だ。


「くっ……また来たか! イルナ、ポー、油断をするな!」

「はい」

「…………(コクッ)」


 キルトさんの鋭い声。


 イルティミナさんとポーちゃんが頷いたとほぼ同時に、何本もの『黒い手』が地面から生えてきた。


(えっ!?)


 3人とも、地面を蹴って跳躍し、必死に避ける。


 けれど、周囲を走っている王国騎士団、冒険者団の中には、その『黒い手』に貫かれている人たちもいた。


(あ……) 


 血飛沫を上げながら、その人たちは倒れていく。


 殺された……。


 蒼白になる僕に、イルティミナさんが叫んだ。


「振り落とされぬよう、しっかり掴まっていてください、マール!」

「!」


 有無を言わさぬ声。


 僕は慌てて、イルティミナさんの首に両手を回す。


「何が……何が起こってるの?」


 僕は、震えながら問いかけた。


 イルティミナさんは唇を噛み締め、それから教えてくれた。


「マールが殺されて以降、地震が起きるたびに、あの『黒い手』が地面から現れ、私たち『開拓団』は襲われ続けています」

「…………」


 あれから、ずっと?


「『廃墟の都市』は、地面から染み出した黒い液体に飲み込まれ、それは岩石地帯にも広がり続けています。私たちはそれから逃れ続け、現在は『霧の森』に到達したところ、といった状況です」


 タンッ


 語っている途中でも、『黒い手』が地面から生えてきて、イルティミナさんはそれを跳躍して避けた。


 着地の衝撃が、僕の身体を揺らす。


 僕は、何も言えなかった。


(なんだ、それ?)


『蛇神人』を倒して、『神霊石』を手に入れ、ようやく目的を達成してあとは帰るだけだと思っていたのに。 


 それなのに。


「が……っ」

「ぐあっ」


 周囲で悲鳴が上がる。


 王国騎士団や冒険者団の人たちが『黒い手』に貫かれて、次々に地面に倒れていく。


(どうして、こんなことに!?)


 その時、ふと夢で見た光景を思い出す。


 白い大地を侵食する『黒い液体』。 


 もし、あの夢が現実を暗示していたならば、それはつまり、この地にいる『悪魔の欠片』は、液状の存在で、この暗黒大陸の大地を侵食し、増殖しながら、その上にいる僕らを襲っているということだ。


(あぁ……そうか)


 ようやく僕は理解した。


 パーガニアの夜、


『――暗黒大陸に行ったなら、には見つからないように気をつけて。には知性はなく、本能のみが支配している』


 あの『闇の子』の警告した意味を。


 ギュッ


 小さな拳を握り締める。


 僕らの最後の敵は、この『暗黒大陸の大地』そのものだったんだ――。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 夜になった。


『霧の森』の中では、いくつもの焚火が燃やされて、そばで大勢の『開拓団員』が休んでいる。


 僕らも、その内の1つだ。


 焚火の前に座っている僕は、イルティミナさんに背中側から抱き着かれ、ずっと髪を撫でられていた。


 焚火の反対側では、ソルティスが横になっている。


 もう目は覚めているようで、彼女は、ぼんやりと紅白の月と星々が輝く夜空を見上げていた。


 そのそばでは、キルトさんとポーちゃんが、それぞれ木を背もたれに休んでいた。


「大丈夫、ソルティス?」


 僕は声をかけた。


 少女の視線だけがこちらに向く。


「まぁね。ちょっと脳に負荷をかけすぎただけよ。しばらく休んだら、回復するわ」

「そう、よかった」


 僕は息を吐いた。


 それから、


「でも、驚いたよ。まさか『神術』を使うなんて」


 と笑った。


 少女も笑顔を返してくる。


「ふふん、尊敬していいのよ?」

「うん。これでも、いつも尊敬しているよ、ソルティスのこと」

「あらそ?」


 僕らはお互いに笑い合った。


 パチッ


 焚火の火の粉が弾け、夜空へと消えていく。


「でも、驚いたわ。目が覚めたら『蛇神人』は倒されてて、『神霊石』は手に入っていて、それなのに『黒い手』に襲われてるなんて。本当、わけわかんない状況だわ」


 まぁ、ソルティスにしたらそうだろうね。


 彼女は唇を尖らせ、


「まるで、悪夢の中に迷い込んだみたいよ」


 と呟いた。


 悪夢……か。


(本当に、悪夢だったら早く目が覚めたいよ……)


 僕は、そう思った。


 そんな僕らに、キルトさんが声をかけてきた。


「そなたら、話はそれぐらいにして、もう休め。いつ、また『黒い手』の襲撃があるかわからぬからの」

「あ、うん」

「そうね」


 僕らは頷いた。


 そして僕は、力を抜いた。


 自然と、僕を抱いているイルティミナさんに、寄りかかる体勢になってしまう。


 イルティミナさんが耳元に優しく囁いてくる。


「おやすみなさい、マール」


 うん……。


「おやすみなさい、イルティミナさん」


 そう笑って、目を閉じる。


 イルティミナさんの髪を撫でてくれる手が、心地好かった。


 そのまま眠りにつこうと思った。


 でも、


 ゴゴゴ……ッ


「!」


 地震だ。


 僕は、弾けるように目を開ける。


 キルトさんが険しい表情で、素早く立ち上がった。


「もう追いつかれたか!」


 そして、


「見張りは、寝ている者を叩き起こせ! 『黒い手』が来るぞ! 全員、襲撃に備えよ!」


 大きな声を周囲へと張り上げる。


 ポーちゃんは、まだ動き辛そうなソルティスに手を貸して、立ち上がるのを手伝っていた。


 すぐにキルトさんが少女を背負う。


「マール!」


 イルティミナさんも立ち上がった。


 疲労があるのか、少し重そうな動きだった。


 伸ばされた手を握って、僕も立ち上がる。


(…………)


 いつもより手のひらが熱い気がした。


「来たぞ!」


 キルトさんが叫び、走りだした。


 同時に、今まで彼女がいた場所の地面から、滲み出るように『黒い手』が伸びていく。


(くっ!)


 僕も地面に集中する。


「止まってはいけません、マール! こちらです!」


 イルティミナさんに手を引かれて、僕も走りだす。


 バキッ ガララン


 焚火を貫き、無数の『黒い手』が生えてきた。


 同じように、森の中の焚火たちのそばから、たくさんの『黒い手』が生えてきて、『開拓団員』たちが必死に逃げているのが見えた。


 何人かは、『黒い手』に掴まっていた。


(くそ……っ!)


 夜だからといって、のんびり休むこともできない。


 ――真っ暗な森の中を、僕らは、ただひたすら走り、必死に逃げ続けた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 あれから、5日間が経過した。


 昼夜関係なく、僕らの逃走の日々は続いている。


 疲れた……。


 休める時に休み、動ける時に動いている。


 でも、休んでいる時にも襲撃があって、まともに休めることも少なかった。


 今、僕らは『赤茶けた荒野』にいた。


 その日の昼、僕ら5人は、ロベルト将軍に呼び出された。


「よく来てくれた」


 疲労を色濃く残した顔の将軍が、けれど、気迫に満ちた表情で僕らを出迎えてくれる。


 そばには、レイドルさん、アーゼさんもいた。


 ロベルト将軍は、僕らを見つめる。


 そして、


「単刀直入に問う。君たちに、あの『悪魔の欠片』を倒すことはできるだろうか?」


 と問われた。


「無理じゃ」


 答えたのは、金印の魔狩人キルト・アマンデスだ。


「最初の襲撃時に、わらわは応戦してみた。しかし、剣で斬っても意味はなく、魔法の雷も通じなかった。神龍ナーガイアの『神気』でも同じくじゃ」


 コクッ


 横にいたポーちゃんも、頷いた。


「お前たちでも同じか」


 ロベルト将軍たちも試していたのだろう、彼は重い表情で頷いた。


 キルトさんは言う。


「あれの正体は、意思のある『黒い水』じゃ。それも、大地を埋め尽くすほどの大水じゃ」

「…………」


 ロベルト将軍は、『霧の森』のある方向を見た。


 荒野は、地平の果てまで見渡せる。


 その地平線上に、太陽の光を反射する黒い輝きがあった。


 ――『黒い水』だ。


 あの『黒い手』を生み出す大量の水が、地平線の彼方から少しずつ迫っていた。


 それは、地平線の左右、見える範囲全てに及んでいる。


(…………)


 まるで黒い津波だ。


「あれを倒す術はない。少なくとも思いつかぬ」

「…………」

「今、わらわたちにできることは、一刻も早く『開拓船』まで戻り、この大陸を脱出することじゃ。それ以外ないと思えるぞ」


 キルトさんは、そう断言した。


 ロベルト将軍は、目を閉じる。


 何かを考えるように沈黙し、やがて決断したように目を開けた。


「わかった。ならば、お前たちに提案がある」

「提案?」


 キルトさんが聞き返す。


 ロベルト将軍は、隣にいる竜騎士隊長に視線を送りながら、


「このレイドル・クウォッカたち『竜騎隊の竜』に乗ってもらい、お前たちと『神霊石』だけでも先に『開拓船』に送り出そうと思っている」


 と口にした。


(え……?)


 僕らは5人とも驚いた。


「『神の眷属』である2人も『神霊石』も、この先の人類のために必要な存在だ。他の3人には、その護衛を任せたい」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 何言ってるの……?


 ロベルト将軍は、僕らを見つめた。


「これまでの『黒い手』の襲撃で、すでに『第5次開拓団』の3分の1が亡くなっている」


 3分の1も!?


 初めて知る情報に、僕は衝撃を受ける。


「『開拓船』までは、どれほど急いでも20日はかかる。その間に『第5次開拓団』が全滅しないとは言い切れない。そのための提案だ」


 彼はそう締め括った。


 キルトさんが黄金の瞳を細める。


「そなたらはどうする?」

「逃げ続けるさ」


 ロベルト将軍は、清々しく笑った。


「だが、そう易々とは逃げ切れぬだろう。万が一の時は、我らを待たず、お前たちだけで脱出しろ」


 そばで、レイドルさんは苦しそうな顔をしている。


 一方で、残される側であるアーゼさんは、美しく微笑んでいた。


 死を覚悟している――そう感じる美しさだった。


 僕は、キルトさんを見上げた。


「…………」


 彼女の横顔は、酷く悩んでいるようだった。


 でも、その提案に対する否定の言葉を口にしない。


(まさか……キルトさん?)


 僕は慌てた。


 彼女に代わって、僕は口を開こうとした。


 でも、その前に、


「――ふざけないでください」


 イルティミナさんの静かな怒りの声が、この場に響いた。


 皆の視線が集まる。


 そのただ中で、イルティミナ・ウォンは言う。


「貴方たちはいったい、どれほどの重荷をこの子に背負わせようというのですか? そのような真似をして、マールの心が傷つかぬと本気で思っているのですか!?」


 強い怒気が、他の大人たちにぶつけられる。


 でも、ロベルト将軍は揺るがなかった。


「人々のためだ」


 イルティミナさんも引かない。


「そのためならば、マールを傷つけても良いと?」

「そうは言わん。だが、そうしなければ、マール君の命も危ういのだぞ」

「心が壊れれば、同じことです」


 ギュッ


 イルティミナさんは、ロベルト将軍たちを見据えながら、僕を抱きしめた。


「マールは優しい子です」

「…………」

「大勢を見捨てて、自分だけが助かったとあれば、この子はもう二度と戦えなくなるでしょう。……キルト、貴方も『大迷宮』での過ちを繰り返すつもりですか?」


 キルトさんは、ハッとした顔をした。


(イルティミナさん……)


 僕は、ギュッと彼女の腕を掴んだ。


 気づいた彼女は、僕の手を握り返し、それからもう一度、その場の大人たちを睨みつけた。


「貴方たちの命の重さを、勝手に、この子に押しつけないで。『神狗』などと呼ばれていますが、この子は、ただの子供です。身勝手な大人の考え方で、優しいこの子をこれ以上、追い詰めないでください!」


 大気が震えるような、強い叫び声だった。


 それを受けて、みんな、黙ってしまった。


 僕は、正直に言った。


「……僕も、そんなこと、したくないです」


 ポタッ


 口にした拍子に、感情が溢れて、涙がこぼれてしまった。


 キルトさんの表情が強張る。


 ロベルト将軍、レイドルさん、アーゼさんは息を呑んだ。


 4人は、互いの顔を見る。


 やがて、キルトさんがため息をこぼした。


「そうじゃな。結果がどうあれ、最後まで足掻かねば、納得はできぬであろうの」


 ロベルト将軍が、眉間にしわを寄せる。


「キルト・アマンデス」

「すまぬな、将軍。わらわもマールの保護者の1人として、その提案は受けかねる」


 キルトさんは、そう苦笑した。


 レイドルさんが、将軍さんの肩に手を置いた。


「これは駄目だね。マール君には、まだ僕らの考え方を受け入れるほどの『諦め』がないんだよ」

「ぬぅ……」


 渋い顔をする将軍さんに、レイドルさんは苦笑しながら肩を叩く。


 アーゼさんは、不思議そうにこちらを見ていた。


 やがて、


「神狗様は……私たちのような存在も、とても大切に思ってくださっているのですね」


 そう告げて、どこか嬉しそうに微笑んだ。


 ロベルト将軍は吐息をこぼす。


「……わかった。今回の提案は、いったん保留としよう」


 将軍さん……。


 その言葉に、僕は心の底から安堵してしまったんだ。


 それから、イルティミナさんを見上げる。


「ありがとう、イルティミナさん」

「いいえ」


 心からのお礼に、彼女は穏やかに微笑んだ。


 そして、彼女は大きく息を吐き、


 フラッ


 その身体が斜めに傾いた。


(え?)


 慌てて支える。


「ど、どうしたの、イルティミナさん? 大丈夫?」


 イルティミナさんは、額を押さえ、片膝をついていた。


 みんなも驚いたように彼女を見る。


「どうした、イルナ?」

「イルナ姉?」

「…………」


 キルトさん、ソルティスが声をかけ、ポーちゃんも心配そうに見つめている。


 でも、イルティミナさんは、すぐに立ち上がった。


 そして、


「ごめんなさい、少し興奮しすぎたようですね」


 と苦笑した。


(…………)


 僕は、疑うように彼女を見つめる。


 それに気づいて、イルティミナさんは僕の髪をクシャクシャと撫でてきた。


「ふふっ、大丈夫ですよ」

「……うん」


 強がりか本当かわからない。


(……しばらく、イルティミナさんのことを注意して見ていよう)


 そう決めた。


 そうして僕ら5人は、その場をあとにする。


 歩いている途中で、


「…………」


 イルティミナさんは、ふと青い空へと手を伸ばして、その真紅の瞳を細めていた。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、3日後の月曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ マールの為なら全てを敵に廻せる女、イルティミナの静かなる雷が落ちた! 流石はマール至上主義……と言いたい処ですが、保護者としては当然の意見ですね(苦笑) [一言…
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