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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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267・未知なる歩み

第267話になります。

よろしくお願いします。

 暗黒大陸での2日目の朝だ。


 僕ら5人は、開拓拠点の中で一番大きな天幕に呼び出されていた。


 そこには、『第5次開拓団』の本部だ。


 天幕の中には、僕らの他にも、王国騎士団の代表ロベルト将軍、神殿騎士団の代表アーゼさん、竜騎隊の代表レイドルさんの各グループの代表が集まっていた。


 ちなみに、キルトさんは冒険者団の代表だ。


 どうやら、代表同士の話し合いがあるみたい。


(そこに、僕もいていいのかな?)


 と思ったけれど、


「そなたとポーは、『神霊石』と関係の深い『神の眷属』じゃ。イルナは『金印の冒険者』。ソルもパーティー仲間であるからの、1人だけ仲間外れもおかしかろう? 4人とも話に参加するが良い」


 とのこと。


 まぁ、あまり邪魔にならないよう、大人しくしていようと思う。


 話の司会進行は、ロベルト将軍だ。


「まずは、今後の探索方針について伝えたい」


 彼はそう言うと、


「これより、レイドル・クウォッカを始めとした『竜騎隊』は、上空から周辺を確認して欲しい。そして、目標物となる物を発見、および地図の作成を頼む」


 とレイドルさんに言う。


「わかった」


 レイドルさんは頷いた。


 ロベルト将軍も頷いて、その視線はキルトさんへ。


「キルト・アマンデス。君たち冒険者団50名は、その目標物へと地上から向かって欲しい。道中の調査、安全の確保が役目だ」

「ふむ、よかろう」

「王国騎士200名も、同様の任務に当たる」

「うむ」


 銀髪を揺らし、キルトさんも頷いた。


 ロベルト将軍の視線は、最後にアーゼさんに向く。


「アーゼ・ムデルカ、および神殿騎士団50名は、この拠点の防衛に当たって欲しい」

「いいだろう」


 承諾するアーゼさん。


「我ら神殿騎士団は、探索よりも防衛が得意だ。存分に力を発揮してみせよう」


 と、兜から見えている口元に笑みを作る。


 頼もしい言葉に、ロベルト将軍も笑った。


「頼むぞ。外敵がいた場合は、この拠点が皆を守る最終防衛地点となる。また王国騎士100名も、防衛のために拠点に残す」


 ロベルト将軍は言葉を重ねた。


 アーゼさんは、


「承知した」


 と頷いた。


 各代表の話し合いの様子を、イルティミナさんは黙って見つめている。


(僕らは、地上の探索班だね)


 レイドルさんたちが空から発見した何かを、実際に確認しに行く部隊だ。


 …………。


「レイドルさん」


 僕は、彼に声をかけた。


「ん?」


 黒髪に金の瞳をした青年が、こちらを振り返る。


 僕は、ポケットからある物を取り出した。


 それを彼へと差し出す。


 丸い円形の物体で、中央には透明な魔法石が填まっている――『神霊石』に反応して光る『探査石円盤』だ。


「これを持っていってください」


 僕は言った。


 地上を歩く僕らよりも、空を飛ぶレイドルさんたち『竜騎隊』の方が、より遠方へと移動する。


『探査石円盤』が反応する可能性も高くなると思ったんだ。


「…………」


 レイドルさんは、円盤を見つめる。


 そして、


「いや、それはマール君が持っているべきだよ」


 と首を振った。


(え?)


 予想外の言葉に驚く僕。


 レイドルさんは微笑んだ。


「この暗黒大陸がどれほどの広さを持っているのか、わからない。ひょっとしたら、アルバック大陸よりも大きいかもしれないんだ。その中から、見たこともない『神霊石』を見つけ出すのは、俺たち『竜騎隊』でも天文学的な確率だろう」

「…………」

「だからこそ、それは君が持っていて欲しい」


 ……意味がわからない。


 困惑する僕を見つめて、彼は言う。


「これまで君は、様々な困難を乗り越えてきた」

「…………」

「アルン神皇国では、誰1人不可能だった『大迷宮』の踏破を成功させ、シュムリア王国では、王国兵1万人が動員されても発見できなかった神龍ナーガイアを見つけ出した。『闇の子』とも停戦と共闘を結び、『悪魔の欠片』を3体も倒している。――自覚はないかもしれないが、これは本当に凄いことだ」


 気づいたら、この場の全員が僕を見ていた。


「君は、誰もが成しえないことを成してきた」

「…………」

「そんな君だからこそ、マール君……俺は、君こそが『神霊石』を見つけ出す気がしているんだ」


 …………。


 なんだか、過剰な期待をされてる気がする。


 でも、ロベルト将軍やキルトさんは何も反論しないし、アーゼさんなんか、大きく頷いていたりする。


「この任務は、砂漠から1粒の宝石を見つけるようなものだ」

「…………」

「でも、君ならば、そんな奇跡も起こせてしまう、そんな気がするんだよ」


 レイドルさんは、そう笑った。


 そして、その手を僕の小さな指に添えて、『探査石円盤』を僕に握り直させる。


「それは君が持っていてくれ」


 静かな声。


 僕は困って、隣のイルティミナさんを見上げた。


 コクン


 イルティミナさんは微笑み、頷く。


(……うん)


「わかりました」


 僕は頷いた。


 正直、不安だけれど、しばらくは僕が持っていることにしよう。


 ロベルト将軍が、口を開く。


「では、レイドル」

「あぁ、わかった。俺たちは、すぐに発つよ」


 レイドルさんは頷いた。


「頼んだぞ」

「しっかりな」


 キルトさん、アーゼさんも声をかける。


 彼は頼もしく笑うと、マントをひるがえし、天幕の出入り口へと歩きだす。


 レイドルさんたち『竜騎隊』が『第5次開拓団』の先鋒として、誰よりも先に、この『暗黒大陸』の探索を開始する。


 未知なる危険に、真っ先に向き合うんだ。


「…………」


 僕は、天幕を出るその背中を、真っ直ぐに見つめ続けた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 2時間ほどがして、拠点上の青い空に4騎の『竜』が帰還した。


(無事に帰ってきた!)


 そのことに深く安堵する。


 やがて、レイドルさんたちの報告は、各グループへと代表者を通じて伝えられることになった。


「ここより南方10000メード地点に、川があるそうだ!」


 冒険者団に向けて、キルトさんが大きな声で話しかけている。


 僕らは、それを黙って聞いている。


「その先には、荒野があり、さらに南方に向かえば大地を遮るように峻険な山脈がある! それ以外の地域は、基本は森だ! また現時点では、人里のようなものは発見されていない!」


 与えられる情報から、頭の中に地図を描く。


 ふむふむ。


「わらわたちはまず、その川を目指す! 各パーティーごとに準備をし、30分後より探索を開始する! 皆、準備にかかれ!」


『おう!』


 冒険者たちは力強く応えた。


 周囲の人たちは動きだし、やがて、僕らの下にキルトさんがやって来る。


「よし、わらわたちも準備に入ろう」

「うん!」

「はい」

「オッケー」

「…………(コクッ)」


 そうして僕らも自分たちの簡易テントに戻り、探索のための装備を整えた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 僕らは、森へと入った。


 冒険者団50名と王国騎士200名も、同じように森に入っている。 


 250名が各パーティーごとに別れて、だいたい100メード間隔で、横に並び、森の奥へと進んでいく予定なんだ。


 ザッ ザッ


 森の中を歩いていく。


 僕らのパーティーは5人だ。


 先頭から、キルトさん、ポーちゃん、ソルティス、僕、イルティミナさんの順で並んでいる。


(……普通の森だね)


 そう思った。


 森の木々は、背が高く20メードぐらいだ。


 木漏れ日が、葉の隙間から地面へと落ちている。


 地面は、草と土。


 背の低い草木の他に、花も咲いている。


「なんか綺麗だ」


 僕は、思わず呟いた。


 前を歩くソルティスが、振り返る。


 僕は言う。


「暗黒大陸っていうから、もっとおどろおどろしい土地を想像してたのに、全然違った」


 花の一つに、顔を近づける。


「この花も、凄く良い匂いがする」

「そう?」


 ソルティスが足を止める。


「でも、それ、食虫植物よ」

「…………」


 少女の言葉に、僕は慌てて顔を離した。


 ソルティスが笑う。


 小さな指で、花弁の表面を撫でる。


 ヒュル


 花弁が閉じた。


 まるで花が咲く様子を、逆再生したみたいだった。


 …………。


 固まっている僕に、ソルティスはケラケラと笑った。


「いい匂いで虫を誘き寄せて、こうして閉じ込めるのよ。マールが虫だったら、即、やられてたわね」

「…………」


 うぅ、反論できない。


 ソルティスは笑いを少し納めて、周囲を見回す。


「でも、植生はアルバック大陸と、そんなに変わらないのは同意だわ」


 と言った。


「多少の種類の違いはあるけれど、基本は変わらない。その食虫花だって、アルバック大陸にも咲いているしね」

「そ、そうなんだ?」


 頷く僕。


 と、


「私も、ここまで平穏なのかと驚いていますよ」


 後ろのイルティミナさんも、話に参加してきた。


 彼女は、地面に触りながら、


「ここには、獣の足跡もあります。恐らく、鹿か何かでしょう。他にもいくつか、痕跡が」

「…………」

「少なくともここは、アルバック大陸とそう違わない生態系が築かれているのでしょう」


 とのことだ。


(ふぅん?)


 姉妹と一緒に、僕も周囲を見回してしまう。


 平穏な森の景色。


 特に恐ろしいものはなく、ただただ静かな緑の世界が広がっている。


「とはいえ、油断は禁物です」


 と、イルティミナさん。


 彼女は指を1本立てながら、僕とソルティスに言う。


「もしかしたら、この平穏な景色の一部に擬態している魔物もいるかもしれません。いつ襲われてもいいように、緊張感だけは保っていてくださいね」

「うん」

「わかってるわ。マールと一緒にしないで」


 僕は頷き、ソルティスは不満そうに答えた。


 イルティミナさんは「結構」と笑って、頷いた。


「3人とも何をしている。勝手に離れるでない」


 前方のキルトさんが、足を止めた僕らに声をかけてきた。


 ポーちゃんも、ジッとこっちを見ている。


「あ、ごめんなさい」


 謝って、僕らはすぐに前の2人を追いかけた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 それから数時間、森の中を歩き続けた。


 森には、小さな崖や倒木などはあったけれど、それ以外は特に何もない。


 歩みも順調だった。


 チチッ ギャ ギャ


 時折、鳥や獣の鳴き声のような声が聞こえる。


 でも、姿は見えなかった。


 人の気配を感じて、先に逃げているのかもしれない。


 と、


「そろそろ、一息入れるか」


 ふと、キルトさんが言った。


 僕らも異論はなく、大きな木の根元で、盛り上がった根を椅子代わりにして腰を下ろす。


(ふぅ)


「はい、マール」

「あ、ありがと」


 イルティミナさんが差し出した水筒を受け取り、中の水を、一口飲む。


 うん、美味しい。


 結構、歩いていたから、喉が渇いていたんだ。


「ごちそうさま」

「フフッ、いいえ」


 水筒を返すと、イルティミナさんは嬉しそうにはにかんだ。


 そのまま、水筒に口をつけて、彼女も水を飲む。


(はわわ……間接キスだ)


 気づいて、ちょっとドキドキしてしまった。


 そうしている間も、キルトさんは、1人立っていた。


 見張りをしてくれているのかもしれない。


 彼女は、森の木々の間から見える太陽を見上げて、


「ふむ……そろそろ、川に突き当たっても良い頃じゃな」


 と呟いた。


 ソルティスが、僕に言う。


「犬マールは、水の匂いを感じないの?」


 え?


「うん、特には」

「そう……役立たずねぇ」


 グサッ


 そ、そう言われても、水がないのは僕のせいじゃないよ。


 言い返そうと思ったけれど、ソルティスに遊ばれているだけの気がして、グッと言葉を飲み込む。


 でも、ちょっとだけ恨みがましい目で見てしまった。


「…………」


 ふと気づいたら、ポーちゃんが、ジッと森の奥を見ていた。


「ポー? どうしました?」


 同じく気づいたイルティミナさんが問いかける。


 ポーちゃんは言った。


「人の気配」

「え?」 

「ここから300メード向こうに、人がいる。恐らく、同じ冒険者だとポーは推測する」


 あ、そうなんだ。


 100メード間隔で歩いているけれど、数時間も経過して、きっと距離が開いてきたんだ。


 各パーティーによって、森を進む速さも違っているだろうしね。


(もしかしたら、僕らよりも足の速いパーティーなら、もう川へと辿り着いているのかも?)


 キルトさんも「そうか」と頷いている。


 と、その時だ。


 ヒュルルル パァアアン


(え?)


 木々の向こうの青い空に、突然、緑色の光が輝いた。


 発光信号弾だ。


 思わず見上げた僕ら全員の顔を、その緑色の光は照らしている。


 緑色の発光信号弾、それは『何か』を発見した時の合図だ。


「キルトさん!」

「うむ」


 僕の声に、キルトさんも力強く頷いた。


「休憩は終わりじゃ。皆、あの信号弾の下へと急ぐぞ!」


 その声に、僕らは一斉に立ち上がった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、明後日の金曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ 探索早々に何やら発見の報が。 これは幸先のよいスタートとみるべき事ですかね! [一言] “あの”シュムリア国王が認めただけあって、周囲からのマールの評価は高いよ…
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