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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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217・旅エルフさん♪

第217話になります。

よろしくお願いします。

 僕とイルティミナさんは、エルフのお姉さんと一緒に近くの喫茶店へと入った。


 天気も良かったので、木陰となったテラス席へ。


 席に座ると、


「ミミント、アロ、ナタリア♪」


 彼女は、流暢なドル大陸の公用語で話しかけてくる。


 さすがに僕では全て聞き取れなかったので、イルティミナさんが通訳になってくれた。


「彼女の名前は、ナタリアというそうです」


(へ~?)


 さすがエルフさん、綺麗な名前です。


 僕は、自分の顔を指差して、


「マール」


 と言ってから、笑った。


 ナタリアさんは、一瞬キョトンとして、すぐに理解したのか笑って頷いてくれた。


「ミミント、アロ、イルティミナ」


 イルティミナさんも自己紹介したみたい。


「マール、イルティミナ」


 ナタリアさんは、僕らの顔を見ながら復唱する。


(うん)


 僕は頷いた。


 言葉は通じなくても、意思を伝えることはできている。


(なんか、異国にいるって感じ!)


 少し緊張するけど、こういうのは、なんだか楽しい気分になる。


 喫茶店の店員さんが、僕らの飲み物を持ってきてくれて、まずは3人でそれを飲む。


 ヴェガ国のお茶だというそれは、ちょっと苦い。


「砂糖を入れましょうか」

「うん」


 パラパラ


 席に備え付けの砂糖を落とす。


 見れば、ナタリアさんも同じことをしていて、つい顔を見合わせて、それから笑ってしまった。


 そうして、イルティミナさんに通訳してもらいながら、お話をする。


 そこでわかったのは、やはり彼女はヴェガ国の人ではなくて、エルフの国からやって来た旅人さんだったということ。


(荷物も大きくて、外套も汚れてたもんね)


 それにヴェガのお茶にも、慣れてなかったみたいだし。


 でも、


「どうして旅をしているの?」 


 僕は訊ねた。


 エルフの国は、長命な種族だからか閉鎖的な人が多いと聞いていた。


 イルティミナさんが、僕の質問を訳してくれる。


 ナタリアさんは頷いて、


「ミミント、ロデシュ、レリーナカパルサ」


 と答えた。


 イルティミナさんは頷いて、僕に教えてくれる。


「退屈が私の心を殺すから、だそうです」


 …………。


 思わず、まじまじとナタリアさんの美貌を見つめちゃった。


 ナタリアさんは、まだ140歳と若いエルフさんらしい。


(……140歳って若いのね)


 と、ちょっと思ったけど、それはひとまず置いておいて。


 彼女が言うには、『エルフの国』は確かに閉鎖的だけれど、それを受け入れているのは、ある程度、年を重ねたエルフさんだけなのだそうだ。


 つまり若いエルフさんは、好奇心も強くて、国外にも興味があるんだって。


 だから、若いエルフさんの中には、自分のように意外と旅人になる人も多いんだそうだ。


(へ~?)


 そういうものなんだね。


 驚き感心する僕らに、ナタリアさんは笑って、


「パラル、エドンラ、コロンチュード・レスタ。クエイトラッカル、ミミントパルサ」


 と言った。


 ん?


(今、なんだか知ったような単語があったような……?)


 隣の通訳お姉さんを見る。


 彼女は、驚いた顔をしていたけれど、僕の視線で我に返った。


「あ……えっとですね」

「うん」

「彼女が言うには、自分みたいな旅人が多いのは、コロンチュード・レスタという『エルフの国』の3大長老の1人の影響なのだそうで」

「…………」


 ……おおっと、これは予想外です。


 ナタリアさんの話によれば、3大長老の1人であるコロンチュード・レスタさんは、もう1000年以上前に好奇心のために、国を捨てて旅人になったエルフさんなんだって。


(そっか~、そうなんだ~)


 思わぬところで、あのハイエルフさんの新事実を知ってしまったよ。


 ナタリアさんにとっては、『コロンチュード・レスタ』という人物は、自分たちのような若い旅エルフの先駆者であり、勇気ある偉大な先人なんだそうだ。


「…………」

「…………」


 僕とイルティミナさんは、ちょっと遠い目だ。


 なんだかキラキラした瞳で語るナタリアさんに、僕らは真実を知らせないことにした。


 うん、世の中には知らない方が良いことって、あるよね。


 ちなみに、


「『エルフの国』でその大長老さんを探したりしてないの?」


 と聞いたら、


「まぁ、2000~3000年もしたら、旅にも飽きて帰ってくるのでは? と考えているそうです」

「…………」


 さすが長命な種族。


(気長さのスケールも大きいです……)


 僕は、カップの中のヴェガ茶をすする。


 砂糖を加えたけれど、その味は、僕にはまだちょっと苦かったのでした……。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 それからも他愛もない話をしてたんだけど、


「え? ナタリアさん、絵描きさんなの?」


 そんな事実も知ることになった。


 驚く僕に、彼女は笑って頷くと、リュックの中から何枚もの絵を取り出してくる。


 わ?


「凄い上手!」


 そこに描かれた水彩画は、本当に上手だったんだ。


 大抵は風景画。


 中には、動物や魔物を描いた物や、彼女が旅の間に出会ったらしい人物画もあった。


(へ~?)


 僕の描いている素人の絵とは比べ物にならない。


 風景画の中には、他の国の絵もあった。


 巨大な蟻塚みたいな塔が何本も並んでいる砂漠の街の絵もあれば、河の水面に浮かんでいる何隻もの船の上に家々が建てられている水上都市の絵もあった。


(凄いなぁ)


 思わず魅入っちゃう。


 あとは、100メード以上もある大きな樹々が立ち並び、その枝や葉がそのまま道や階段になっていて、その幹の中が家屋となっている大森林の都市の絵もあった。


 森林都市の中心には、他の何倍も大きな樹があって、その幹はお城になっていた。


 ――凄く幻想的な街だ。


「ミミント、ファバン」


 ナタリアさんが優しく笑う。


 イルティミナさんは頷いて、


「どうやら、これが『エルフの国』のようですね」

「これが……」


 ここがエルフ天国……もといエルフさんの暮らす国なんだ?


 他の人種の立ち入りは禁止していて、鎖国されてるのも知っていたけど、こうして知れるとは思わなかった。


(いつか行ってみたいなぁ)


 素直にそう思ってしまったよ。


「ナタリアさんは、色んな国に行ったんだね」


 僕は、尊敬の眼差しだ。 


 彼女は、ちょっと照れ臭そうにはにかんだ。


 彼女は、こんな風に旅先の絵を描いては、それを売り、旅を続けているんだそうだ。


 そんなナタリアさんに、


「実は、僕も絵を描くの、好きなんだ!」


 そう言って、筆とスケッチブックを借りて、サラサラと赤牙竜の絵を描いてみた。 


「ワーナ!」


 ナタリアさんは驚き、それから楽しそうに笑った。


「上手です、って」


 イルティミナさんも嬉しそうに通訳してくれる。やった!


(えへへ……)


 鼻高々になりながら、僕は「でも、まだ質感とか上手く出せないんだ~」と悩みを打ち明ける。


 するとナタリアさんは、


「影の付け方を丁寧にするのが大切です。そうすれば、もっと良くなりますよ」


 と教えてくれた。


 それから僕の描いた絵に、実際に筆を加えてくれて、


(おぉ、本当だ!)


 赤牙竜の硬質な皮膚の感じがよく出てるし、全体にズッシリした重さも感じられるようになった。


 まさにプロの技だ。


 感動して見つめる僕に、ナタリアさんは優しく笑い返してくれた。


 それから僕らは、いっぱい絵の話をした。


 他にも、せっかくなので僕とイルティミナさん2人を絵に描いてもいいかと聞かれて、喜んで了承したりした。


 ちなみにモデルになることに、イルティミナさんは、ちょっと恥ずかしそうだった。


 30分ほどで絵は完成。


(うわぁ……)


 イルティミナさんの柔らかくて真っ直ぐな髪とか、綺麗な真紅の瞳とか、凄く細かくて、よく描けてる。


 そのイルティミナさん自身も、


「マールの格好良さと可愛さを、よく捉えていますね」


 僕の絵を眺めながら、『うんうん』と満足そうに何度も頷いていた。


 そんな風に楽しんでいると、時間はあっという間に過ぎていた。


 気がつけば、太陽は、西へとだいぶ傾いていて、


「あ、いけない」


 僕は、まだソルティスへの誕生日プレゼントを買っていないことを思い出した。


 イルティミナさんも『うっかりしてた』という顔だ。


「マール、イルティミナ?」


 ナタリアさんに問われて、僕らは事情を説明した。


 彼女は『なるほど』と頷いて、


「皆さんは、冒険者でしたね」


 と言うと、リュックの中から地図を取り出した。


(ん?)


 キョトンとなる僕とイルティミナさん。


 ナタリアさんは、地図の一点を指差してから、スケッチブックに筆を走らせる。


 サラサラ


 完成したのは、森にある小さな崖の絵だった。


 崖は少し崩れていて、そこから折れた柱の残骸が生え、近くに真っ黒な亀裂が見えている。


「これは……?」


 ナタリアさんを見返す。


「ウェア、ラツカンドイーヴァネス」


 銀髪のエルフさんは、真面目な顔でそう答えた。


 イルティミナさんは、少し驚いた顔だ。


「彼女が旅の途中で見つけた、未発掘の遺跡だそうです」

「え!?」


 未発掘の遺跡!?


 詳しく聞けば、旅の途中で大雨に降られて森で雨宿りをしていた時、崖崩れが目の前で起きたそうなんだ。


 その崩れた土砂から現れたのが、この遺跡の入り口なんだって。


 ナタリアさんは、この遺跡のことを、まだ誰にも知らせていないそうで、


「だから中には、何かしらのお宝があるかもしれませんよ」


 と教えてくれた。


「…………」

「…………」


 僕とイルティミナさんは、顔を見合わせる。


 ナタリアさんは、彼女にとっては危険な場所でも、冒険者である僕らならば、と教えてくれたんだそうだ。


 イルティミナさんは、


「未発掘の遺跡情報は、冒険者にとってかなり貴重なものです」


 と言う。


(そうなんだ?)


 僕はなんだか申し訳なくなってしまったけれど、


「財布を拾ってくれたお礼です」


 もし無一文になっていたら、旅も続けられなくなっていた、とナタリアさんは笑ってくれた。


 ナタリアさん……。


「――クラロ」


 僕は、万感の思いを込めて言った。


 ナタリアさんは笑みを深くする。


 そうして僕らは、楽しいひと時を過ごし、その優しい旅エルフさんとは喫茶店の前で別れた。


 夕日に赤く染まった道を、僕とイルティミナさんは、王宮殿目指して歩いていく。


「ねぇ、イルティミナさん?」


 僕は、隣のお姉さんに声をかけた。


 凄腕の『金印の魔狩人』さんは、優しく微笑み、頷いて、


「はい、わかっています」

「…………」

「明日の朝、2人で一緒に行ってみましょう」

「うん!」


 僕は嬉しくなって、大きく頷いた。


 そのまま手を繋ぐ。


「あは」

「ふふふっ」


 お互いの顔を見つめ、そして笑い合った。


 ――そうして明日は、その未発掘の遺跡の中で、僕はイルティミナさんとデートをすることに決まったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、3日後の月曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >彼女は『なるほど』と頷いて、 >「皆さんは、冒険者でしたね」 なる程は『』なのに、下の文は「」なので、突然公用語を話し始めたのかと思いました。 こちらも『』に揃えた方が良いのかな、…
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