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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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215・ヴェガの未来

第215話になります。

よろしくお願いします。

「皆さん、よくぞ太古の災いを討ち倒してくれました」


 僕らの前のシャマーン陛下が、穏やかな声で称賛してくれる。


 そこはヴェガ国の首都カランカにある王宮殿、その謁見の間だ。


 あの戦いから、20日間が過ぎている。


 そして今、僕らはヴェガ国の国王様より、多くの貴族たちの前で、今回の出来事への感謝の言葉を伝えられているんだ。 


 初めて入った謁見の間は、少し変な感じだった。


 僕らがいるのは謁見の間の中央で、そこは円形の空間になっていた。


 その周囲には水路。


 水路を挟んで、貴族の方々のいる円周の空間がある。


 そしてまた水路を挟んで、今度は、騎士さんたちの並んでいる空間があるんだ。


(まるで神殿の祭場みたいな感じ……?)


 僕としては、そんな印象だ。


 シャマーン陛下の前で、キルトさんとアーノルドさんが跪いている。


 その後ろに、僕、イルティミナさん、ソルティス、コロンチュードさん、ポーちゃんの5人が跪いている。


「大いなる獣神の加護を、皆さんに」


 そう言うと、シャマーン陛下は、僕ら1人1人の胸に勲章を授けてくれる。


 チャリン


 僕の胸にも、つけられる。


「ありがとうございます」


 お礼を言うと、シャマーン陛下は温和な笑顔で応えてくれた。


(……綺麗な宝石)


 自分の胸で揺れる輝きを見つめる。 


 でも、


(これ、魔法石だね?)


 精緻な細工と彫刻が施されたその正体に、僕はちょっと複雑な気持ちだった。


 ヴェガ国の象徴である魔法石。


 でも、それは『聖神樹』と呼ばれる神々の残した封印の結晶だ。


「…………」


 そんな僕の胸中も関係なく、式典は進んでいく。


 その中で、今後のヴェガ国についても色々と伝えられた。


 まず、今回の件の公式発表について。


 これまで『聖神樹』の切削作業を停止したのは、倒壊する危険があったため、と発表されていた。


 今回、その原因は、巨大な魔物が結晶内に寄生したため、ということになった。


 これは、デモの人たちに、結晶内にいる悪魔を見られたことと、キルトさんたちシュムリアの『金印の冒険者』が3人も、この国に集まった理由にもするためだ。


 そして、その戦いで、秘密裏に召喚されたヴェガ国の『金印の冒険者』2人が犠牲になったとされた。


(……そっか)


 2人が『魔の眷属』にされたなんて、本当のことは発表できないもんね。


 こういう嘘の内容を、ここ数日間、キルトさんとアーノルドさん、シャマーン陛下たちは話し合って、公式発表とすることにしたそうだ。


 それから、


「ヴェガ国の魔法石産業は、もう20年は続けられることになりました」


 とのこと。


 実は、『悪魔』や『悪魔の欠片』を倒したあとも、『封印の結晶』は残っていた。


 倒壊したり破損したことで、利用できる部分は大幅に減ったけど、それでも、20年分の産業を支えるだけの結晶はあるらしい。


 つまり、ヴェガ国は、次の主要産業を見つける20年の猶予が生まれたんだ。


 この件については、実は、僕とポーちゃんは、アーノルドさんから相談を受けていた。


「これからも神の結晶を削って、良いのだろうか?」


 と。


 悪魔が消えたとはいえ、これまでの行いに対する罪悪感、反省から、この先も『封印の結晶』を自国のために利用することに迷いがあるみたいだった。


 僕は言った。


「いいと思いますよ」


 あっさりと。


 アーノルドさんは驚いた顔だった。


「神様たちは、人のために『封印の結晶』を創ったんです。目的は変わってしまいましたけど、もう悪魔もいないんだし、このあとも人の役に立つならいいんじゃないですか?」


『封印の結晶』だって、言い方を変えれば、ただの道具だ。


 大事なのは神様を敬い、感謝する心であって、それを忘れないのであれば構わないと思ったんだ。


「ポーちゃんはどう思う?」

「…………」


 カチッ


 何かの切り替わる気配がして、


「不敬」

「…………」

「けれど、封印すべき悪魔はもういない」


 その水色の瞳が、僕を見る。


「それに、人に最も近い『神の眷属』がそう願うなら、ポーは『構わない』と答える」


 ……そっか。


 僕ら『神の子』は、アーノルドさんを見た。


「だ、そうです」

「……(コクッ)」


 彼は、僕らの瞳を見つめた。


 それから大きく頷いて、


「大いなる神々の慈悲に、ヴェガ国の民を代表して深く感謝する」


 両手を組み合わせ、驚く僕らの前で、こうべを垂れながら跪いたんだ。


 ――そうして、ヴェガ国の20年の猶予が決まった。


(この先、この国は変わっていくんだろうな)


 シャマーン陛下は高齢だ。


 そして次の王様になるのは、あのアーノルドさんだ。


 これからの20年、ヴェガという国は、きっと激動の時代を迎えるんだろう。


 その先に、どんな国が生まれるのか、僕は少しだけ楽しみだった。


 僕らの胸に煌めく勲章は、その時代の変わり目を象徴する『何か』なのかもしれない。


(……うん)


 そう思ったら、少しだけ、これをもらえた自分が誇らしくなった。


 そうして謁見という式典は、無事に終わった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「さて。では、わらわたちは1ヶ月、この国でバカンスといこうかの」


 控室に戻った僕らに、キルトさんは、そんな長期の休養宣言をした。


 実は、ヴェガ国政府と交渉して、『悪魔の死体』はシュムリア王国で引き取ることができるようになった。


 ただあの巨体だ。


 あの巨人を『王船』の貨物室まで運び込むのに、20台の獣車を使っても1ヶ月はかかるのだ。


(大変だね……)


 更に、こちらからはコロンチュードさんが『重力軽減の魔法』を使えるということで、その作業に同行することになった。


 もちろん護衛の役目もあるので、ポーちゃんも一緒に。


(休めるのが僕ら4人だけでいいのかな?)


 とも思ったけれど、


「新鮮な『悪魔の死体』を間近から観察できるから、バカンスより楽しみ……」 


 と、ハイエルフさんはウキウキとおっしゃり、ポーちゃんも異論がなさそうだったので、いいことにした。


 ちなみに、その『悪魔の死体』がある『聖神樹』周辺の土地は、あの戦いの結果、かなりの被害が出ているそうだ。


 まず、あの窪地にあった町は、完全に壊滅だ。


 家屋は全て倒壊し、焼き払われ、おまけに切削作業用の道具や設備も、全てなくなってしまった。


(3人の『悪魔の欠片』が集まって、戦ったんだもんね……)


 あの魔力と魔法は凄かった。


 正直、僕ら6人とも、よく大きな怪我なく勝てたと思うんだ。


 そして、周辺の大地も、かなり地形が変わっているとのこと。


 だから、新たな魔法石の産出や、町の復興には、まだまだ時間がかかるんだって。


「だが、未来は明るい」


 その話をした時、アーノルドさんは、そう笑った。


 悪魔の脅威が消えたこと。


 また新しい時代に向けて、猶予が与えられたこと。


 それだけでも未来の希望に満ちていて、やる気に燃えているそうだ。


(うん)


 僕らは応援するしかできないけれど、どうかがんばって欲しいな。


 さて、そんな理由で、僕らがシュムリア王国に出発するのは、1ヶ月後の話となった。


 現在、レクリア王女には、翼竜便で手紙を送っている。


 返事が来るのも、また1ヶ月後くらいらしいけど……。


「まぁ、のんびりすることじゃ」


 キルトさんは笑った。


「『闇の子』の動向に関しては、アーノルドの協力で調査もしてもらえることになった。わらわたちは、座して待てばよい」


 そうなんだ?


 でも、何もしないというのも落ち着かないんだけど。


「それがいかんのじゃ」


(え?) 


 キルトさんは困ったように笑って、


「そなたは子供のくせに、色々と背負いすぎておる。たまには、荷物を下ろせ」


 モミモミ


 僕の背中に回り、小さな肩を揉んでくる。


 あ……なんか気持ちいい。


 フニャリとする僕の表情に、みんな、おかしそうに笑っていた。


 キルトさんも笑みを深くし、


「今日から1ヶ月間、そなたはただの子供に戻るがよい」

「…………」

「わかったの?」


 モミモミ


 あ……いい。


 ちょっと悩んだけれど、せっかくの気遣いなので、僕は素直に頷くことにした。


「うん、わかったよ」

「よし」


 キルトさんも頷いて、


 パンッ


 最後に思いっきり、両肩を叩かれました。


 い、痛ぁ……。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 さて、ということで、コロンチュードさんとポーちゃんは、早速、『聖神樹』のある土地へと出発した。


「……じゃあ、ね」

「…………」


 パタパタ


 2人とも手を振って、獣車に乗っていった。


「では、わらわも、アーノルドと細かい話を詰めてくるかの」


 そう言って、銀髪の美女も客間を出ていく。


 キルトさんはあれだ。


 部下にしっかり休めと言いながら、自分は休日返上でガンガン働いていく上司みたいな人だ。


(困ったもんだね)


 あとで、しっかり文句を言ってあげよう、うん。


 そんなこんなで、王宮殿の僕らの客間には、僕とイルティミナさんとソルティスの3人だけになってしまった。


 …………。


「これからどうしよう?」


 いきなり休みになってしまったので、何をしていいのかわからない。


 途方に暮れる僕の顔を見て、イルティミナさんは、白い手で口元を押さえながら、クスクスと可愛く笑った。


「では、私と出かけましょう」

「え?」

「せっかくですから、カランカの街を観光しませんか?」


 あ、それいいかも。


「うん、行く!」


 僕の返事に、イルティミナさんも満足そうに頷いた。


 そして彼女は、妹を見る。


「ソルはどうしますか?」

「私? ……そうねぇ、せっかく時間もできたんだし、今日は部屋で本でも読んでるわ」


 さすが、インドア派少女。


(じゃあ、今日はイルティミナさんと2人きりのデートだね)


 ちょっと楽しみ。


 と、その時、ソルティスはふと思い出した顔をした。


「あ、そっか」


(ん?)


「どうかしたの、ソルティス?」


 僕は訊ねた。


 少女は、紫色の髪を揺らして、首を横に振り、


「ううん、大したことじゃないのよ。ただ私、こんな異国で()()()になるんだなぁって思って」

「……え?」


 14歳……?


 僕は、思わず青い瞳を見開いて、目の前の少女を凝視する。


 イルティミナさんが「あぁ、そういえば」と呟いた。


 ソルティスの小さな指が、自分の顔を指差して、まさかの爆弾発言。


「だって私、来週、誕生日だもの」


 な、なんだってーっ!

ご覧いただき、ありがとうございました。


ラクビー日本代表、残念でした。

ですが、今日までの戦いには本当に勇気がもらえました。ありがとうございました! そしてお疲れ様でした!

どうか、しばらくはゆっくり休んでくださいね。

(相変わらず、小説と関係ない内容ですみません……)



※次回更新は、明後日の水曜日0時以降になります。どうぞ、よろしくお願いします。

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