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002・転生した僕

第2話です。

よろしくお願いします。

 気がついたら、僕は、白い光の世界に浮かんでいた。


(あ……僕は死んだんだね)


 不思議と、そうわかった。


 日本人として成人するまで生きて、けれど寿命を迎える前に、事故で死んでしまったのだと、なぜか理解した。


 でも、生前の記憶が曖昧だった。


(名前……なんだっけ?)


 それも思い出せない。


 そのせいか、死んでいるというのに不安や恐怖は、そんなになかった。


 むしろ安らいでいる感じだった。


 ふと見たら、僕の身体は光でできた人型になっていた。


 そして、その光の肉体は、足元から少しずつ光の粒子となって散っていく。


(あぁ……)


 これが『魂』の最期なんだと思った。


 白い光の世界で、人の魂は、こうして溶けて消えていくんだ――そう悟った、その時だ。


 グンッ


(え……?)


 何かに強く引っ張られた。


 光の粒子になっていく僕の肉体は、崩壊しながら、ある方向へと吸い寄せられている。


(な、なんだ?)


 少し慌てて視線を送る。


 その先には、僕よりもずっと大きな『魂の光』があった。


 僕の肉体を構成していた光の粒子は、そのより強い輝きの中へと吸い込まれていく。


(……あれは、いったい?)


 その存在を見つめていると、


 ポワン


 見つめる瞳も含めて、ついに僕の頭まで、光の粒子になってしまった。


 思考が……ぼやける。


 あぁ……僕は、いったい……何が……あれは……、…………。


 ……………………。


 ………………。


 …………。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 次に気がついたら、今度は、青い空を見上げていた。


「……え?」


 思わず、目を瞬いた。


 慌てて身体を起こすと、自分が古びた石の台座に横になっていたことに気づく。


 台座の表面には、魔法陣のような図形が刻まれていた。


(なんだ、これ?)


 石の表面を撫でるとザラザラしていて、けれど、角は風化して丸くなっている。


 何十年、もしくは、何百年も前に造られた台座みたいだ。


 緑色の苔が付着している部分もある。


(…………)


 唖然としながら、周囲を見回した。


 森だ。


 360度、視界に入ってくるのは、背の高い木々が並んだ森だった。


 ここは、その森の中で、少しだけ開けた空間だった。


「…………」


 言葉がない。 


 僕は茫然としながら、石の台座から降りようとする。


 高さは50センチほどで、何気なく、地面に向かって片方の足を伸ばした。


(ん……わっ?)


 なぜか地面が遠い!


 ゴロ ゴロン


 僕は、無様に地面に転がってしまった。

 いてて……。


 何が起きたのかわからないまま、僕は石の台座に手をついて、起き上がろうとした。


 その自分の手を見て、動きが止まる。


 ――これ、誰の手?


 そう思った。


 人間は、他人を認識する時は、相手の顔を見てすると思う。


 でも、自分を認識する時は、鏡や写真、映像などでしか見られない顔よりも、よく目にする手を見て認識しているんだろう。


 だから、わかる。


 これは間違いなく、僕の手じゃない。


 生前の記憶は曖昧だけれど、それだけは、はっきりわかった。


 こんなに小さく、細くもない。


(っていうか……これ、子供の手だよね?)


 そう気づいて、改めて自分の身体をペタペタ触って、確認した。


 うん、やっぱり子供の肉体だ。


 年齢は、10~12歳ぐらいかな?


 着ている物は、麻のような白い生地で、けれど袖や襟には金糸で刺繍がされているので、安物ではなさそうだった。


 ズボンの中を覗く。


「あ、ついてる」


 どうやら性別も、生前と同じみたいです。


 でも、ツルツル。

 まだ生えていませんでした。


 思わず、ちょっと笑っちゃった。


 ここまで来たら、さすがに僕も、自分の身に何が起きたのかを理解する。


(……やっぱり転生かな)


 うん、生前の僕は、ラノベや漫画が好きだったみたいだ。


 その可能性が、すんなりと心に落ちる。


 とはいえ、それが我が身に降りかかるとは、さすがに予想もしていなかったよ。


 せめて、神様の説明とか、チートがあればいいんだけどな。


(……でも、僕の転生には、そういうのはなさそうだ)


 ため息をこぼして、顔を上げる。


 見回せば、やはり、あるのは広がる森の景色ばかりだった。


 いつまでもここにいても、仕方がない。


 とはいえ、どっちに向かえばいいんだろう?


「…………」


 森を抜けた風は、少し冷たくて、僕の体温を奪って空に消えていく。


 と、視線を上向けた時、


(あれ?)


 背の低い僕の視界の中で、森の木々より頭1つ高く、三角形の何かが見えた。


 あれは、屋根?


「つまり人工物だ!」


 冷えてきた心の奥に、パッと希望の光が灯る。


 まだ慣れない子供の身体で、僕はそちらへ向かって、走りだそうとした。


 ゴツッ


 履いている革靴の先に、何かが当たった。


「?」


 草むらの中に、灰色の石の破片が転がっていた。


 結構、大きい。


(…………)


 改めて周囲を見回すと、僕が寝ていた『石の台座』は、ここに7つも存在していた。


 ただ、無事だったのは、僕の『石の台座』だけ。


 他の6つの『石の台座』は、長年の風化によってか、砕け、地面に転がって、みんな壊れていた。


 冷たい風が吹く。


(まるでお墓みたいだ)


 なんとなく、そう思った。


 もしかしたら、僕の『石の台座』も壊れていたら、僕はここにいなかったのかもしれない。


(…………)


 いけない。

 少し気持ちが、不安に飲まれそうだった。


 パンパン


 軽く自分の頬を叩く。


「よし!」


 そうして気持ちを切り替えると、僕は小さな足を踏み出して、三角屋根の見えた方向の森の中へと入っていった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


優しいお姉さん登場までは、しばらく主人公1人の物語になります。

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