156・帰還の空1
第156話になります。
よろしくお願いします。
――コキュード地区での戦いから、1週間が過ぎた。
僕らは今、空の上にいる。
そう飛行船の中だ。
僕らの乗船した2台の飛行船は、3日前、神帝都アスティリオに向けて、戦いの終わった防衛砦を出発したのである。
窓の外には、青い空が広がっている。
眼下には、地上の大自然。
雲は少なくて、太陽はとても眩しかった。
「痛いところはないですか、マール?」
柔らかな声がかけられる。
僕ら4人に割り当てられた客室――そのベッドに座ったまま振り向けば、寝台脇の木の椅子に座るイルティミナさんの姿があった。
シャリシャリ
彼女の手は、小さなナイフを手に、リンゴのような果物の皮を剥いてくれている。
僕は笑った。
「大丈夫。まだちょっと、筋肉痛みたいな痛みは残ってるけど」
「そうですか」
彼女は、気遣わしそうな表情で頷いた。
あの戦いで、僕は『神気』を使い過ぎた。
おかげで、『大迷宮の探索』が終わった直後のように、また身体が上手く動かせなくなり、ベッドの上での生活に戻ってしまったのである。
ちなみに他のみんなは、昼食で食堂に行っている。
なので今は、付き添いで残ってくれたイルティミナさんと2人きりだ。
彼女に心配かけて申し訳ないけれど、
(でも、それだけの価値はあったよね)
僕自身は納得していた。
コキュード地区での戦いは、僕らアルン側の勝利で終わっている。
大勝だった。
さすがに被害がゼロとはいかなかったけれど、3万の魔物に対して、3万5000人の兵士の被害は数百人以下で済んだのは、完勝と言っていいと思う。
生き残った兵士たちを、皇帝陛下自らが防衛砦の外で出迎え、僕らは勝鬨を上げた。
合流した将軍さんも、フレデリカさんも、魔物の返り血で汚れていたけど、僕らはそんなの関係なく抱き合っていた。
「貴殿らが、教主だという『飛竜の女』を倒したおかげだわい」
ダルディオス将軍は、勝利の要因をそう語った。
(……実際は、倒したんじゃなくて、自爆されたんだけど)
そう訂正したけれど、そこまで追い込んだことを評価され、おかげで神血教団ネークスは統制を失って、戦局を一気に握れたのだと熱く語られた。
よかった。
少しでも役に立ててたのなら、僕も嬉しかった。
ただキルトさん曰く、
「今回は、人と魔物の戦いじゃ。そんな単純な話ではないぞ」
とのこと。
人はリーダーを失って、戦意を失うだろう。
けれど、魔物は『人の支配』を失っても、その強い闘争本能は変わらない。むしろ、戦場の血の臭いで、より興奮してしまう。
つまり戦闘能力は、まるで変わらないのだ。
それでも、アルン軍は完勝した。
その理由を、『金印の魔狩人』は、こう分析してくれた。
1つ目は、やはり猛将ダルディオス将軍の用兵能力の凄さ。戦いの大局を読み切り、全ての要所で先手を取り続け、戦場の主導権を握った。
2つ目は、その将軍さんの命令を即座に実行できる、フレデリカさんを始めとしたアルン騎士の練度の高さ。
3つ目は、皇帝陛下がいるという事実が、軍の士気を維持したこと。
これら3つが重なることで、今回の大勝が生まれたんだって。
(でも、口で言うのは簡単だけど……)
実際に、その3つを揃えるのは、かなり大変なんだと思う。
「それを実現できる。そこがアルンという国の凄さであるの」
キルトさんは、そう唸るように賞賛していた。
(そうなんだ?)
僕は感心した。
でも、その時、心の大部分を占めていたのは、やはり安堵感だった。
(なんにしても、勝ててよかったよ)
その思いは、飛行船にいる今も変わらない。
僕は、窓の外に広がる美しい景色を、あの激戦を夢のように思い出しながら眺めていた。
飛竜の女。
あの人のしてきたことは、決して許せない。
けれど、それでも僕は、あの人自身のことは許したかった。
その罪を犯す道しか、彼女は選べなかったのだろうと思えたから。
「……マールは、それでいいと思いますよ」
僕のその考えを伝えた時、イルティミナさんは、そう悲しげに微笑んだ。
彼女は、両親や村の人たちを殺されている。僕と同じ心境には、決してなれないだろう。
それでも、そう言ってくれる。
その強さと優しさが、心に沁みた。
そうしてコキュード地区の戦いは終わり、僕らは防衛砦をあとにした。
そうそう、『封印の岩』に封じられていた悪魔は、ラプトとレクトアリス、2人の『神牙羅』によって、やはり絶命が確認された。
強引に封印を破ろうとした反動だ。
飛竜の女の自爆が、思ったより、封印に影響を与えなかったこと。
また内部の悪魔自身が、想像以上に衰弱していたこと。
そのおかげで、悪魔本体の復活は起きなかったそうだ。
「運が良かったで」
ラプトはそう息を吐いた。
(……『悪魔の欠片』が出現したけど、これは不幸中の幸いだったんだね)
なんとも背筋が凍る話だよ。
今後は、その悪魔の死体を調べるために、神帝都アスティリオから専門の調査隊が派遣されるという。
そのため、『封印の岩』がなくなっても、しばらく防衛砦には3000人の兵士が駐留することになったそうだ。
その3000人に見送られ、僕らは、飛行船で砦を出発した。
「はい、マール」
イルティミナさんの声で、ふと我に返る。
僕の目の前に、丁寧に切られた林檎のような果物が、お皿に綺麗に並べられていた。
「あ、ありがと」
僕は、手を伸ばす。
(イテテ……)
まだちょっと、動かす腕が痛い。
気づいたイルティミナさんが、優しく僕の手を押さえた。
「無理はしないでください。私が食べさせてあげますから」
(え?)
驚く僕の前で、彼女は、木製のフォークを果物に刺し、
「はい、マール」
「…………」
「あ~ん」
あ、あ~ん、するの?
優しく微笑む大好きな人の笑顔に、僕はドキドキしてしまう。
「あ、あ~ん」
ぎこちなく口を開ける。
そこに、優しく果物が押し込まれ、
シャクッ
瑞々しいそれを、僕は噛み切った。
「ムグムグ……う、うん、美味しい」
「ふふっ、それはよかった」
いや、正直に言うと、ドキドキしすぎて味は、あんまりわからなかった。
(じ、人生初の『あ~ん』だよ)
生きててよかった。
転生してよかった。
僕はしみじみと、口の中にある甘い味を噛み締める。
「…………」
そんな僕の姿を、イルティミナさんはしばらく見つめていた。
と、その真紅の瞳に、悪戯な光が灯った。
「もう1つ、食べますか?」
「あ、うん」
また、あ~ん、かな?
僕は、ちょっと期待しながら、頷いた。
でも違った。
彼女は、どこか艶っぽく微笑むと、フォークに刺した果物を自分の口へと運んだのだ。
(え?)
驚く僕の前で、彼女はそれを軽く噛みながら、
「ん……」
まるでキスをせがむように、僕の方へと、咥えた果物を差し出してくる。
…………。
硬直。
(え? こ、これを食べろってこと?)
混乱しながら、僕は、そう理解する。
いいの?
本当にいいの?
戸惑う僕の耳に、
「ん……マァ~ル?」
口に物を咥えて、甘えたような舌っ足らずな彼女の声が届く。
ドックン
心臓が跳ねる。
よく見たら、イルティミナさんも恥ずかしいのか、その頬が桃色に染まっていた。
(こ、これは応えなければ、男じゃないぞ!)
僕は、覚悟を決めて、顔を近づける。
フワリといい匂いがする。
「……ん」
薄目でこちらを見て、彼女は、再び目を閉じる。
少し震えながら、僕は口を開いて、唇が触れないようにしながら、果物の端っこを噛んだ。
シャクッ
一噛み。
シャクッ シャクッ
二噛み、三噛み。
顔が近づいていく。
彼女の吐息をかすかに感じる。
あと一口で、唇が触れてしまう。
(ど、どうしよう?)
思わず動きが止まってしまう。
「ん」
イルティミナさんが、催促するように、軽く顔を動かした。
(~~~~)
ええい。
シャクッ ムニュッ
柔らかな唇が触れた。
イルティミナさんの口が開いて、歯から外れた果物が舌で押されてきた。彼女の唾液に濡れたそれを、僕は口に含む。一瞬だけ、お互いの舌の先が触れた。
(き、気持ちいい)
電流が流れたような感覚。
唇が触れたまま、舌が離れる。
シャクッ
甘い。
甘すぎて、心がどうにかなりそうだ。
「…………」
「…………」
ゆっくりと顔が離れた。
お互いに赤くなった顔で見つめ合う。
彼女は、艶っぽい大人の笑みで、
「……美味しかったですか?」
「う、うん」
僕は、コクコクと頷いた。
とっても美味しかったです。
(……でも、なんか普通にキスするよりも恥ずかしいよ)
なんだろう?
幸せなんだけど、居た堪れないような、不思議な感じ。でも、決して嫌じゃない。むしろ、嬉しい。
イルティミナさんは、
「マールの口も、とても美味しかったですよ」
「…………」
少し照れて、はにかむようにそう言った。
(……うわぁ)
その表情は、年上だけど、とても可愛い。
うん、綺麗なのに可愛いって、反則だと思うんだ。
2年間の約束なんて、反故にしてしまいたくなる。うぅ、我慢するんだぞ、マール。
心の中で悶えていると、
「もう1つ……食べますか?」
悪魔のような甘い囁きが、もう1度、僕の耳に告げられた。
…………。
コクンッ
僕は、真っ赤になりながら、正直に頷いた。
「ふふっ」
イルティミナさんも、少し恥ずかしそうな顔で微笑み、再び、果物を一切れ、口に咥える。
「……ん」
それを、僕へと差し出してきて、
「あ、あ~ん」
僕は、口を薄く開きながら、それを食べようとする。
と、その時、
コンコン
(!?)
部屋の扉がノックされて、僕らはビクンと跳ねた。
シャクッ ポトッ
「あ」
「あ」
思わず噛み切ってしまったのか、イルティミナさんの口から、果物がベッドの上に落ちる。
沈黙。
コンコン
再びのノック音が響く。
「き、今日はここまでだね」
「そ、そうですね」
僕らは照れながら、そう笑い合った。
そして、イルティミナさんは誤魔化すように「だ、誰でしょうね?」と言いながら、椅子から立ち上がる。
僕はベッドの上に座ったまま、自分の頬に触った。
(あ、熱いね)
大きく息を吐いて、体内の熱を逃がそうとする。
イルティミナさんも客室の扉の前で、一度、大きく深呼吸をしてから、「はい」と返事をして、ドアノブを回した。
カチャッ
扉が開く。
途端、珍しくイルティミナさんが硬直した。
(……え?)
僕も、呆けた。
「やぁ、少し時間をもらっても良いだろうか?」
扉の向こうにいた人物が、気さくに美しい声をかけてくる。
イルティミナさんが呻くように言った。
「皇帝……陛下」
そこには、柔らかな微笑みで片手を上げる金髪蒼眼の美男、誰あろう世界一の大国、アルン神皇国の皇帝アザナッド・ラフェン・アルンシュタッド陛下がいらっしゃったのだ。
◇◇◇◇◇◇◇
飛行船の廊下には、陛下の他にも、護衛らしい近衛騎士たちが控えている。
「そちたちは、ここで待て」
「はっ」
近衛騎士さんたちは機械のように揃って一礼し、僕らを一瞥する。
(!)
強い『圧』。
皇帝陛下に何かあったら許さないという気迫を感じた。
けれど、皇帝陛下はしなやかな動きで、当たり前のように室内に入ると、パタンと扉を閉じてしまった。
「ふぅ、やれやれ」
近衛騎士の視線がなくなったからか、彼は大きく息を吐いた。
「…………」
「…………」
僕とイルティミナさんは、呆然である。
そんな僕らに気づいて、彼は、いつもの神々しさとは違う、まるで子供のような屈託のない笑顔を見せた。
「突然すまないね。なに、ただの見舞いだよ」
「は、はぁ」
僕は、戸惑いながら頷く。
イルティミナさんは、用意していたお皿を片づけ、今まで自分が座っていた椅子を陛下に示す。
「もしよろしければ、どうぞ」
「ありがとう」
彼は、穏やかに応じた。
座ろうとしながら、彼は、イルティミナさんが手にしていたお皿の果物を、一切れ、その美しい指で摘まんで、シャクッと食べた。
「ふむ。瑞々しくて美味しいね」
と笑う。
「…………」
「…………」
イルティミナさんは真紅の瞳を丸くし、僕は、もう苦笑するしかなかった。
「相変わらずですね、陛下」
前に離宮で会った時のように、公の場にいる時と違って私人としての陛下は、実に気さくなお人柄だった。
彼は指を舐めながら、「そうかい」ととぼけた。
気を利かせたイルティミナさんが、濡れた布巾を渡して、陛下は「ありがとう」とそれで指を拭く。
「えっと、それで今日はどうされたんですか?」
僕は訊ねた。
ベッドに座る僕を、彼は、透き通った蒼い瞳で見つめてくる。
「改めて、そちに礼が言いたかった」
「礼……?」
キョトンとする僕に、
スッ
アルン神皇国の皇帝は、静かに頭を下げた。
……わっ?
(へ、陛下……!?)
「神狗殿のおかげで、人類は救われた。アルンという国を統べる者として、余はアルン国民を代表して、感謝を述べたいと思う。――本当にありがとう」
最後の一言。
そこに、陛下の万感の思いが込められていた。
(…………)
僕は少しだけ、自分の為したことに自信を与えられた気がした。
「頭を上げてください、陛下」
彼はゆっくり、顔を上げる。
僕は、笑った。
「僕だけの力じゃありませんよ。みんながいたから、みんなで頑張ったから、勝てたんです」
それぞれに役目があった。
それを皆が、懸命に果たした。
だから勝利があった。
「僕は、僕の役目を果たしただけです。そして、陛下も陛下の役目を果たしてくれました。だからこそ、こうして、みんなで勝てたんです」
「…………」
「僕こそ、ありがとうございました、陛下」
今度は僕から、頭を下げた。
陛下は驚いた顔をする。
それから、苦笑した。
「あのような勇ましい姿を見せてくれながら、なんとも神狗殿は優しいのだな」
僕は顔を上げる。
陛下は続けた。
「あの時、『悪魔の欠片』と戦う神狗殿の姿は、遠目にも神々しく、また頼もしく映った。それは余だけでなく、あの戦場にいた誰もが思ったことだろう。最後の一投を放った姿を、余は生涯、忘れることはない」
陛下の瞳は、純粋な憧れを宿して、僕を見ていた。
(そ、そうなんだ?)
そこまで言われると、ちょっと照れる。
僕は頭をかいた。
「あ、ありがとうございます。……でも、本当は怖かったんですよ?」
「…………」
「みんながいたから戦えたけど、1人だったら、逃げていたかもしれません」
正直に、告白した。
陛下は驚いた顔をする。
いや、客室の壁の方に立っていたイルティミナさんも、少し目を見開いて、僕を見つめた。
「僕、意外と臆病なんです」
みんながいるから、我慢できるけど。
みんなのためだから、戦えるけど。
でも、本当は殺し合いなんてしたくなくて、できれば、誰とでも笑い合える方法があるなら、そうしたかった。
陛下は眩しそうに、瞳を細めた。
「神狗殿は……本当に、尊い心をお持ちだね」
そう呟いた。
彼は大きく息を吐くと、
「これは内緒だよ?」
「?」
「実は、余も臆病で、砦から戦況を眺めながら、けれど、内心は怖くてブルブルと震えていたんだよ」
人差し指を唇に当て、彼は悪戯っぽく笑った。
(陛下……)
その笑顔に、僕はやられた。
「あはは」
つい笑顔がこぼれた。
陛下も「はははっ」と白い歯をこぼして、笑ってくれる。
壁際に立つイルティミナさんは、なんだか優しい表情で、臆病者だという僕ら2人を眺めていた。
しばらく笑うと、
「そろそろ時間だね」
彼は部屋の時計を見て、立ち上がった。
飛行船での移動中も、アルンの皇帝である陛下には、やるべきことが山積みにあるらしい。
「ゆっくりと養生するんだよ、神狗殿」
「はい」
優しい陛下に、僕は笑って頷いた。
と、
「陛下」
今まで黙っていたイルティミナさんが、不意に声を発した。
(え?)
「失礼ですが陛下。その子は、神狗として生まれましたが、彼自身は、マールという存在です」
「…………」
「どうか、お忘れなきように」
恭しい一礼。
そして上げられた美貌にある真紅の瞳には、大国の皇帝であろうと譲らないという気概の強い光があった。
(イ、イルティミナさん?)
突然の言葉に、僕は驚く。
無礼にも思える発言に、けれど陛下は、穏やかな表情で『銀印の魔狩人』を見つめ返した。
「そちは、イルティミナ・ウォンだったね」
「はい」
「そちの言う通りだ。彼は、確かにマール殿であったね。すまなかった。教えてくれて、ありがとう」
陛下は、そう微笑んだ。
イルティミナさんも美しい表情で、また一礼する。
(陛下……?)
彼は、そんな美女を見つめ、それから僕を見た。
「余も、アルン皇帝である前に、アザナッドという1人の人間の男なのだ。多くの者は、それを忘れてしまうのだが、余の妻のアナトレイアだけは、それを決して忘れぬ」
「…………」
「マール殿、どうか彼女のことは、大切になされよ」
とても優しく、真摯な口調。
世界一の大国を統べる人物からの言葉は、けれど、1人の人間の言葉として、心に真っ直ぐ響いた。
「はい」
僕は、大きく頷いた。
陛下は、満足そうに微笑んだ。
「では、邪魔をしたね。どうかあとは、2人の時間を楽しんでおくれ」
「…………」
「…………」
陛下が来訪する直前を思い出して、僕とイルティミナさんは少し赤くなった。
彼は穏やかに笑い、そして、客室を出た。
廊下で待っていた近衛騎士たちと合流する。
その瞬間、彼はアザナッドという1人の人間から、みんなの求めるアルン皇帝という役目を、再び背負うことになる。
その重さを、その心を思うと、少しだけ悲しくなった。
でも、それを背負える強さを、あの人は持っている。
(……アザナッド様、か)
皇帝陛下ではない彼。
僕も、それを忘れないようにしよう、そう強く思った。
イルティミナさんが、彼の座っていた席へと戻って来る。
「マール」
優しく微笑み、僕の頭を抱きしめる。
僕は目を閉じて、それを受け入れた。
トクン トクン
触れ合う身体から、彼女の鼓動が聞こえてくる。
そこに彼女の存在を感じる。
僕は言った。
「イルティミナさんのこと、大切にするからね」
「……はい」
僕をいつも守ってくれる彼女は、とても嬉しそうに笑った。
そろそろ、キルトさんとソルティスも昼食を終えて、食堂から戻って来るだろう。
でも、それまでの時間だけでも、僕らは身を寄せ合い、互いの温もりを感じながら、心を通わせ合った。
――神帝都アスティリオまでの空の旅は、もう少しだけ続いた。
ご覧いただき、ありがとうございました。
今週更新の3話にて、アルン編は終わりになります。
その次からは、マールたちの冒険の舞台は、またシュムリア王国へと戻ります。もしよろしければ、アルン編の最後まで、どうか見届けてやってくださいね~。
※次回更新は、明後日の水曜日0時以降になります。よろしくお願いします。




