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122・深淵よりの凶兆

第122話になります。

よろしくお願いします。

 スライムの広間を抜けて数時間後、僕らは、地下への階段を見つけた。


 23階層。

 そこは、22階層と同じく水たまりの多い、崩壊の跡の残った階層だった。


 ドパパァン


「よし」

「ふぅ」


 スライムの生息している場所も多くて、僕とソルティスの魔法は大活躍だ。


 スライムの数が少なそうな場合は、ソルティスには魔力を温存してもらって、僕1人で駆除したりもした。


 また23階層では、スライム以外の魔物にも遭遇した。


 通路の奥の闇から現れたのは、


 ゲコゲコ


(……巨大カエル?)


 だった。


 体長は、1メード弱ぐらい。


 緑やオレンジの原色の皮膚には、黒いまだら模様がついており、その全身は粘液に包まれて、ヌラヌラと輝いている。


 それが7匹。


 通路の奥から、こちらにピョコピョコと近づいてくる。


「子供たちだけでなく、たまには、わらわたちも働かねばの」

「同感だわい」


 キルトさんとダルディオス将軍、最強コンビが、そんなことを言いながら前に出る。


 ヒュッ ドチャッ グチョン


 正確無比な『炎の剣』がカエルたちの頭部を綺麗に割り、豪快な『雷の大剣』がカエルたちを叩き潰して、その圧殺された肉体を床や壁に貼りつけさせた。


 2人が前に出て10秒もかからず、7匹のカエルは全滅した。


(うわぁ、やっぱり強いや)


 みんなと一緒に感心してしまう。


 と、イルティミナさんが言う。


「マール、あれは『毒ガエル(ポイズン・フロッグ)』という魔物です。決して、あの血や粘液には触れないでくださいね。人間など30秒で死にます。竜でさえ、間違って、あのカエルを食べてしまうと、5分で死ぬのですから」

「…………」


 そ、そうなんだ?


 見れば、戦った2人は、息を止めながら『炎』と『雷』で、血と粘液に汚れた武器をしっかりと焼き、仕上げにボロ布で丁寧に拭き取って、それを床に捨てていた。


 カエルの動きを見た感じ、そう強そうには感じなかった。


 だけど、その殺傷能力は凄まじい。


(……スライムもそうだけど、『魔物』って侮れないね)


 また1つ勉強になった。


 そんな魔物たちを殺すプロのお姉さんは、


「死体の横を通り抜ける時は、立ち止まることなく素早く、そして、しっかりと息を止めながら行きましょうね」

「うん」


 そのアドバイスに、僕はもちろん、大きく頷いた。


 そうして8人で、前に進む。


 時折、そんな魔物たちと戦闘になりながら、更に数時間後、僕らは24階層への階段を見つける。


 その日は、そこで野営をすることになった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その夜。

 焚き火の前で、携帯食料を食べながら、僕は呟いた。

 

「この遺跡って、階層によって出る魔物が、全然、違うよね?」


 みんな、僕を見る。


 7人の視線を感じながら、僕は、なんとなく思ったことを説明した。


 1~11階層は、骸骨王や不死オーガ、石化の魔蛇女などがいた。


 12階層は、門番の騎士像たち。


 13~18階層は、魔物なし。


 そして、19~23階層は、龍魚、スライム、毒カエル。


 ほら、魔物の種類が、ガラッと変わった。


(まぁ、13階層から魔物がいなかったのは、騎士像のせいだと思うけどね)


 その先に侵入しようとした魔物を、12階層の騎士像たちが駆除していたんだと思う。だから、せき止められた11階層には、73名のアルン騎士を全滅させるぐらい、大量の魔物が集まってしまったんだ。

 

「あ~、そうかもね」


 モシャモシャしながら、頷くソルティス。


 イルティミナさんも頷いて、


「マールの言う通り、本来なら12階層以降には、魔物はいなかったのでしょう。ですが、あの地殻変動の地下水によって、外の魔物たちが流入し、新しい魔物の生態系が生まれたのだと思います」

「ふぅん」


(じゃあ、あのスライムや毒ガエルも、地下水でこの遺跡に?)


 確かに、あれは水系の魔物みたいに思えた。


 パキッ


 キルトさんが、固い携帯食料のスティックをかみ砕いて、


「あれら以外にも、この遺跡に侵入した魔物はいるかもしれんの」


 焚き火の炎に照らされながら、そう呟いた。


(まだ見ぬ魔物……か)


 みんな、少し黙りこんでしまった。 


 砕いたスティックを飲み込み、キルトさんは、白い手を伸ばして僕の頭を撫でる。


 グシャグシャ


「ま、やることは変わらぬ。明日からも注意して進み、最下層を目指すぞ?」 

「うん」


 それもそうだ。


 大きく頷く僕に、みんなも笑った。


 また順番を決めて、2人1組の組み合わせで、今夜もイルティミナさんと一緒に、夜の見張りに立った。


 魔物の襲撃はなく、無事、朝を迎える。


 太陽もない、暗い『大迷宮』の中での朝だ。

 少し太陽が恋しいけど、


(よし、今日もがんばるぞ)


 パンパン


 頬を叩いて、気合を入れる。


 全員、出発準備を整えると、僕らは24階層へと続く階段を降りていった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 24階層も、上と似たような階層だった。


 水たまりと、崩壊した遺跡内部。


 現れる魔物は、スライムに毒ガエル、また今回は、それ以外にも、11階層の水没した通路で、ソルティスに襲いかかった触手イソギンチャクも、水たまりの中に生息していた。


 ヒュパンッ


 足に絡みついた触手を、僕は、簡単に斬り払う。


(地上でなら、剣技も使えるもんね)


 うん、敵ではない。


「この、このこのっ」


 一方、隣の少女は、11階層での恨みを晴らすように、触手が斬られたイソギンチャクを何度も蹴っていたりする……なんか弱い者いじめっぽいよ、ソルティス?


 やがて、半日かけて、25階層への階段を発見した。


 ついに25階層。


 けれど、感慨に浸る間もなく、僕らは探索を開始する。


(……あれ?)


 そして、すぐに異変に気づいた。


「……なんや? 魔物が全くおらんやないか?」

「で、あるの」


 ラプトが拍子抜けしたように呟き、キルトさんも怪訝そうに頷いた。


 水たまりと、崩壊した遺跡内部。


 環境は、上の階層と変わらないはずなのに、スライムも毒ガエルも触手イソギンチャクも、姿が見えなかった。


 オォォオオオ


 通路の奥の闇は、不気味に静まり返っている。


(……嫌な感じ)


 不吉な予感を感じながら、僕らは前に進んでいく。


 やがて、歩いていた通路は、1つの広間へと繋がった。


 特に魔物の姿はない。


 そのまま歩いていこうとした時、


「……なんだ、あれは?」


 突然、黒騎士のフレデリカさんが頭上を見上げながら、驚きの声をあげた。


 僕らの視線も、彼女の視線の先を追いかける。


(……は?)


 穴だ。


 天井に、大きな穴が開いている。


 直径は、5メードほどだろうか?


 遺跡の厚い壁をぶち破り、外側の岩盤まで見えている。真下の床には、大量の瓦礫と土砂が落ちていた。


 ポタ ポタタ……


 穴からは、僅かな水滴が垂れている。


「何、あれ?」


 僕は、呟く。


 イルティミナさんが珍しく、緊張感の滲んだ声で答えた。


「瓦礫や土砂が、遺跡の内側に落ちています。つまり、外から、『何か』がこの遺跡内に侵入してきたのだと思われます」

「……何か?」


 数秒、間があってから、


「正体までは、わかりません。ただ、遺跡のこの厚い壁を貫けるほどの力があるのは確かでしょう」


 と、『銀印の魔狩人』は告げた。


(…………)


 僕は思わず、何もいない広間の中を見回した。


 魔物が全く目撃できなくなった25階層――その原因と、この大穴は関係があるのかな? そして、侵入してきた『何か』の正体は?


 大穴の直径は、5メード。


 そのサイズの正体不明の存在が、この遺跡の中にいる。

 その事実に、なんだか得体の知れぬ恐怖を感じてしまった。


「恐れるな、マール」


 クシャ


 キルトさんは、僕の頭を1度、強く撫でる。

 それから全員の顔を見回して、


「何度も言うておるが、やることは変わらぬのじゃ。皆、このまま先へと進むぞ」


 皆の士気を高める声。


『金印の魔狩人』の号令に、僕らは頷き、再び、止めていた足を歩ませ始めた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 数時間後、魔物に出会うこともなく、僕らは26階層への階段を見つけた。


 階段に通じる通路は、右側が崩落して、水没してしまっている。

 まるでプールみたいだ。


(……左側によって、と)


 水に気をつけて、全員で横を通り抜けようとした時、その水の中に、白い塊が幾つか沈んでいるのに気づいた。


「む?」


 キルトさんも、気づいたようだ。


 片手を上げて皆の歩みを止め、


 ジャボッ ジャボッ


 太ももまで水に濡らしながら、1番近くにあった白い塊を手にして、床まで引き上げる。


 みんなで覗き込んだ。


(……骨だ)


 そうわかった。


 1メードほどの白骨だ。

 きっと、もっと大きな生物の一部分なのだと思う。骨には、幾つもの穴が並んで、ひび割れていた。


 キルトさんは、眉をしかめた。


「これは……」

「もしや、鬼蜘蛛大蛸おにぐもおおだこの骨でしょうか?」


 屈んで覗き込むイルティミナさんが、そう続けた。


(……鬼蜘蛛大蛸?)


 僕らの表情に気づいて、凄腕の魔狩人のお姉さんは教えてくれる。


「体長3~8メードほどの、蜘蛛のようにも見える巨大な蛸の魔物です。空腹時には、あの龍魚も捕食する危険な生物です」

「……あ、あの龍魚を?」

「はい。水中での戦闘は、私たち魔狩人も絶対に避けなければいけない魔物の1種ですね」


 ……そうなんだ。


 フレデリカさんの白い指が、その魔物の骨に並んだ穴を差して、


「これは何だ?」


 と訊ねる。


 キルトさんが難しい表情のまま、答えた。


「捕食された跡じゃな」

「…………」


 え?


「……捕食、された?」

「うむ、要するに歯形じゃ。何かがここで、鬼蜘蛛大蛸を襲い、喰ったのじゃ。――それも捕食されたのは、1匹や2匹ではなさそうじゃの」


 水中に見える無数の白い塊たちを見て、そう断言する。


 僕らは声がなかった。


 ソルティスが、かすかに震える声で問う。


「何が、鬼蜘蛛大蛸を捕食したのよ?」

「わからん」


 ジャボン


 手にしていた骨を水面に放り投げて、キルトさんは立ち上がる。


「わからんが、もしかしたらソレが、さっきの広間の大穴から侵入した『何か』なのかもしれぬの」

「…………」

「そして、ソレが、この階層の魔物を喰らい尽くしたのかもしれん」


 水面に生まれた波紋が消えていく。


 僕らは、26階層へと続く階段の闇を見つめた。


「…………」

「…………」

「…………」


 やがて大きく息を吐き、僕らは階段を降り始めた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 コツーン コツーン


 無人の26階層を、光鳥の灯りを頼りにしながら、僕ら8人は歩いていく。


 この階層にも、魔物がいない。

 そして、


「あの壁、なんか変な傷があるわね」

「え?」


 隣のソルティスが、突然、そんなことを呟いた。


 幼い指が示す先は、床から3メードほどの高さにある壁の部分だった。


 そこに、何かが擦れたような、石が削られた線のような跡が十数メードほどの長さで残されている。よく見たら、その傷は途切れ途切れに、けれど、ずっと奥まで続いていた。


「何だろう、これ?」


 僕も首をかしげる。


 と、後ろのイルティミナさんが何かを言おうとして、けれど、迷ったように言葉を飲み込む様子に気づいた。


「イルティミナさん?」


 見つめると、彼女は観念したように息を吐く。


「……あれは……何か、巨大な生物が通った跡だと思われます」

「…………」


 3メードの高さに傷を残す大きさの生物……?


(き、聞かなければ良かったかな?)


 隣のソルティスも、僕と同じ顔だった。


 黒騎士のフレデリカさんは、表情を青ざめさせながら、壁の傷を見上げる。


「……この遺跡は、本当に私たちの人智が及ばぬ、恐ろしい場所だな」


 そう漏らした。


 イルティミナさんは軽く肩を竦め、彼女の言葉を、肯定も否定もしなかった。

 代わりに、


「さぁ、行きますよ、マール、ソル」

「あ、うん」

「わかってるわ」


 優しく微笑んで、立ち止まってしまった僕らの背中を、手で軽く押してくれた。


 数時間後。


 僕ら8人は、28階層への階段を見つけた。


 壁の傷は、その階段の壁にも続いていた。


(…………)


 その日は、そこで野営をすることにした。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「あと3階層だね」


 その夜、焚き火を囲みながら、僕は呟いた。


 アルン神皇国の伝承によれば、この『大迷宮』――『灰色の女神コールウッドの遺跡』は、30階層から成っているという。


 生きた『神武具』があるのは、その最下層、30階層だと推測されていた。


「そうじゃな」

「ですね」

「ここまで、長かったわ~」


 うん。

 遺跡に到着してから、すでに20日が過ぎている。


 アルン騎士の精鋭300名も犠牲になった。


(……でも、ようやくだ)


 ようやく、もう少しで手が届くところにまで来たんだ。


 ギュッ


 色々な物を噛みしめるように、両手で拳を握る。


 焚き火の炎に照らされながら、みんなも物思いに耽るような表情を浮かべていた。


 その時、ふと思った。


「そういえば、もし『神武具』が見つかったとして、それは僕とラプトとレクトアリスの3人の内、誰が使うべきなの?」

「え?」

「ふむ?」


 全員、今、気づいたという顔をする。


 いや、この遺跡に『神武具』がたくさんあるならいいけれど、もし1つしかなかったら、誰が所有権を得るんだろう?


 僕は、シュムリア王国に保護される『神狗』。


 2人は、アルン神皇国に保護される『神牙羅』。


 世界の危機とはいえ、人の世にはややこしいしがらみが多いから、誰が所有するかは色々と問題になる気がした。


「…………」

「…………」


 キルトさんとダルディオス将軍、両国の代表となる2人も、ちょっと困った顔だった。


 多分、状況によって柔軟に対応するため、まだ結論をつけてなかったのだろう。


 と、


「そんなん、その『神武具』に選ばれた奴に決まっとるやろが」


 ラプトが呆れたように言った。


(え?)


 レクトアリスは、紫色のウェーブヘアを耳の上にかき上げながら、『癒しの霊水』を一口飲む。


 光る水で濡れた唇を、親指で軽くこすってから、


「忘れたの、マール? 『神武具』は生きてるのよ?」


 と、少し艶っぽく笑った。


「使い手は、向こうが自分で決めるの。私たちに選択権はないわ」

「そ、そうなんだ?」


 大人っぽい仕草に、ちょっとドキドキしてしまった。


 と、僕の様子に気づいて、イルティミナさんが僕の身体を、背中側から抱きしめる。……って、わ?


「では、きっと私のマールが選ばれますね」


 と断言した。


 レクトアリスはムッとして、


「聞いていなかったの? それは『神武具』が決めるの」

「それでも、マールに決まります」


 譲らない過保護なお姉さん。


「……はぁ。話にならないわね」


 こめかみを押さえるレクトアリス。


 キルトさんと将軍さんは苦笑し、ソルティスは呆れている。

 フレデリカさんは、「私も、マール殿の気が……」などとボソボソと小さく呟いていた。


 ラプトは、僕を見る。


「自分、ずいぶんと信頼されとるんやな」

「あはは……」


 褒められているのか、呆れられているのか、わからない。

 でも、


「でも、誰が選ばれても、僕はいいよ。きっとラプトとレクトアリスなら、正しく使ってくれると思うし、大丈夫だって信じてるから」


 そう笑った。

 2人も笑って、


「ワイも、マールとレクトアリスのこと、そう思っとるわ」

「私もよ」


 僕らは互いの目を見つめて、頷き合う。


(うん、誰が選ばれても大丈夫!)


 その信頼の心に、3人とも嘘はない。


 他のみんなは、そんな僕ら3人の『神の眷属』の姿を、どこか眩しそうに見つめていた――。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌朝、僕らは28階層に入った。

 目の前には、どこまでも真っ直ぐな通路が続いていて、僕らはそこを歩いていく。


 ヒィイン


(……あ)


 その時、久しぶりに赤く光る神文字が、白い壁の中を流れてきた。


 みんなも気づく。


 どうやらこの階層では、まだ遺跡の機能が生きているみたいだ。ひょっとしたら、近くに無事な『制御塔』が存在しているのかもしれない。


「…………」


 遠ざかる赤い光を見送って、僕らは、再び通路を歩きだした。


 カシャッ カシャン 


 鎧の擦れる音と、靴底が床を叩く音だけが反響する。


 15分ほどしただろうか?


 ふと歩んでいる通路の先の暗闇に、何か、大きな影が佇んでいるのが見えた。


 全員の足が止まる。


 こちらに気づいていないのか、その黒い塊は動く気配がない。


「マール」

「うん」


 キルトさんの小声での指示。

 僕は頷き、その意思に反応して、1羽の光鳥が音もなく前方へと飛んでいった。


 やがて、その輝きに黒い塊が照らされて、


「!?」


 反射的に、僕の手は『妖精の剣』の柄に触れていた。


 いや、全員が、それぞれの武器に手をかけていた。


 その黒い塊の正体は、僕らが12階層で戦った、あの『2枚の翼を生やした騎士像』だった――ただし、その上半身が潰れて、なくなっている。


(……壊れてる?)


 赤い神文字の光が宿るはずの頭部もなく、動き出す気配はない。


「――周囲を警戒せい」


 キルトさんの警告。


 僕らは、すぐにソルティスを中心に円陣を組んで、外側に武器を構えた。


 その間に、キルトさんは騎士像に近づいて、それが完全に沈黙していることを確認し、レクトアリスは第三の目を輝かせて、その放射状の赤い光を周辺へと送る。

 

 20秒ほどして、


「……大丈夫。近くには、何もいないわ」


 レクトアリスの声に、僕らは大きく息を吐いた。


 キルトさんは、騎士像の残骸の前に膝をつきながら、


「ふむ……この鎧の部分には、噛み千切られた跡が残っておるの」


 と言った。


(噛み千切られた跡……って)


 身長2メードの人間サイズの騎士像の上半身を、このように噛み潰してしまえる存在とは、いったいどれほどの大きさだというのか。


 ソルティスが、嫌そうに口を開いた。


「それも、鬼蜘蛛大蛸を喰った奴の仕業?」

「わからん」


 キルトさんは、首を振りながら立ち上がる。


 そして、通路の先を見た。


 僕らも皆、その闇に包まれた空間を凝視する。


「どっちにしても行くしかない、でしょ?」

「そうじゃ」


 僕の言葉にキルトさんは苦笑し、頷く。


 すぐに表情を改めて、僕ら8人は、ここに騎士像の残骸を残したまま、通路の先へと進んでいった。


 ――なんとなく『大迷宮の探索』が大詰めに来ているのだと、僕は感じていた。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、アジアカップ日本戦の関係で1日前倒ししまして、明後日の日曜日0時以降になります。どうか皆さん、いつもの時間は、日本代表の応援に集中してくださいね。(もちろん作者も応援します!)

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