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【書籍化&コミカライズ!】少年マールの転生冒険記 ~優しいお姉さん冒険者が、僕を守ってくれます!~  作者: 月ノ宮マクラ


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121・大迷宮17~22階層

第121話になります。

よろしくお願いします。

 17階層への階段を降りている途中で、僕は、()()に気づいた。


(……水の匂いだ)


 もしかしたら、またどこか水没しているのかな?


「どうしました、マール?」


 僕の些細な変化に気づいて、イルティミナさんが声をかけてきたので、正直に答える。


 他の人たちにも情報は伝えられて、ラプトやフレデリカさんが鼻を鳴らす。


「ワイには、ようわからんわ」

「同じくだ」


 どうも、他の人たちには、わからないらしい。


(こんなに湿っぽい匂いなのに……?)


 僕も困ってしまう。


「いいのよ、マールは犬だもの。私たちみたいに、わからないのが普通だわ」

「…………」


 うん、ソルティスさん、もうちょっと言い方ってあると思わない?


 むくれる僕に、キルトさんは苦笑して、


「どちらにしても、わらわたちには先に進む以外の道はないのじゃ。そのまま進むぞ」


 僕らは頷き、再び歩き出した。


 やがて、階段は終わり、真っ直ぐな白い通路が続いていた。


 20分ほど歩くと、


 ドゥドゥ……


 通路の先から、腹の底に響くような重低音が、僕らの耳に届くようになった。


(何の音?)


 顔を見合わせ、僕らは進んだ。


 水の匂いは強くなり、肌に触れる空気は湿気を帯びている。


 やがて通路の終わりにあったのは、昨日、目撃したのと同じ巨大な塔だった。


 その塔は、この17階層を頂上として、21階層までをぶち抜いていたのだけれど、なんと19階層から21階層までの下側の3階層分が水没していた。


 そして、17階層の天井付近の壁は、大きく崩落していた。


 そこからは地層の岩盤が見え、その亀裂から地下水と思われる大量の水が、まるで滝のように流れ込んでいた。


 ドゥドゥ……


 水面にぶつかった水が音を響かせ、白い水飛沫を上げている。


(何だ、これ?)


 予想外の光景に、思わず、みんな唖然としてしまった。


 崩落した瓦礫が直撃したのか、よく見れば、巨大な塔には、大きな損傷があり、半ばから折れ曲がっていた。天井と繋がるコードもほとんどが千切れている。


 ヒィン パシュッ


 赤く光る『神文字』が塔の内部を流れていき、コードの先から飛び出ると、赤い光の粒子となって散っていく。


 どうやら、この制御塔は壊れてしまっているようだ。


「ふむ、地殻変動か?」


 キルトさんが呟いた。


(……地殻変動?) 


 僕の様子に気づいて、イルティミナさんが教えてくれる。


「地震などによって、地下にある古い遺跡が崩壊することは、珍しくないのですよ。この遺跡も、大地の圧力によって壊されたのかもしれません」


 なるほど。


(そういうこともあるんだね)


 遺跡全てが水没していないのは、きっと他の場所から、水が外に流れ出ているからなんだろう。


 納得する僕の前で、ソルティスが嫌そうに、眼下の水中を見つめた。


「水の中に、何かいるわ」

「え?」


 僕らも、下を覗き込む。


 青く濁った水の中に、巨大な黒い影が見えた。

 それも、3つも。


 ……何だ、あれ?


「龍魚ですね」


 イルティミナさんが、その正体を口にした。


(龍魚?)


 その名前には、聞き覚えがある。


 僕らの冒険者ギルド『月光の風』の職員である赤毛の獣人クオリナ・ファッセさんが、冒険者を引退する原因となった、彼女の右足を喰い千切った魔物の名前が、それだったはずだ。


 …………。


「恐らく、地下水と共に流れ込んだのでしょう。たまに遺跡の中で、本来いないはずの魔物と遭遇することもありますが、その原因は、大抵はこういう理由なのですよ」


 イルティミナさんは、水中の魔物を見つめながら言う。


(……そうなんだ)


 なんだか、遺跡の脅威をまた1つ、教えられた気がした。


「…………」

「…………」

「…………」


 みんなも、しばらく龍魚の影を見つめていた。


 やがて、ラプトが顔を上げ、


「なぁ、それでどうするんや? 水没してたら、ワイら、これ以上、先に進まれへんで?」


(……あ)


 言われてみれば、その通りだ。


 ここにも螺旋階段はあるけれど、19階層から先は、完全に水没していた。


 キルトさんも難しい顔になる。


「ふむ、『雷光斬』の雷を水中に流して、龍魚を駆除することはできるであろうが……」 


 ダルディオス将軍は、首を振った。


「いや、龍魚がいなくなったとしても、この規模では、さすがに300秒で水没していない区画まで辿り着けるとは思えんわい」

「……で、あるの」


 キルトさんも認めた。


 僕らは全員、考え込む。


 と、


(おや……? 水以外の匂いがあるぞ?)


 クンクン


 僕は、鼻を鳴らして集中する。


「どうした、マール殿?」


 気づいたフレデリカさんの声で、みんなも僕の様子に気づいた。


 ん~?


 匂いの元は、水面近くの壁からだ。


 僕は、そこを指差した。


「あそこから、風が流れてる。別の道があるのかも」

「何?」


 驚くキルトさん。


 ソルティスは、「うわ、犬マール」とか言っている。


 イルティミナさんは笑って、


「なるほど。では、一緒に確認しに行ってみましょうね」


 僕のことを信頼してくれて、僕の手を握ると、そのまま下へと続く螺旋階段を降り始めた。


「お、おい待て、イルナ、マール」


 キルトさんたちも、慌ててついて来る。


 10分ほどで、18階層と19階層の境付近にある水面近くまで辿り着いた。


 そして、わかった。 

 螺旋階段に面した白い壁に、大きな亀裂があったんだ。


 匂いと風は、そこから吹いている。


 皆が感心したように僕を見て、レクトアリスが第3の目を開いて、確認する。


「そうね、ここからなら、別の階層に行けそうだわ」

「ふむ、そうか」


 キルトさんは、満足そうに頷いた。


「さすが、私のマールですね」


 イルティミナさんは誇らしげに言うと、僕のことを褒めるように、優しく頭を撫でてくれた。

 えへへ。


 と、その時だ。


 ザパァア


 突然、背後から波の音が響いた。


(え?)


 振り返ると、僕らの話し声や足音に反応したのか、1匹の龍魚が水面近くまで浮き上がっていた。


 体長およそ5メードの巨体。


 龍魚という魔物は、前世の映画で見たことのある海の恐竜、モササウルスにそっくりの恐ろしい姿だった。


 感情の感じられない瞳が、水中から僕らを見つめている。


「…………」


 ゴクッ


 思わず、唾を飲む。


「いかんな、急ぐぞ」


 キルトさんの警戒した声に促されて、僕らは、龍魚の視線を感じながら、急いで亀裂の中へと足を踏み入れた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 数メードほど壁の亀裂を進むと、僕らは、18階層の通路に出た。


 白い通路は、左右に続いている。


 けれど、地殻変動の影響が大きかったのか、巨大な柱は幾本も倒れ、壁も崩落していて、少し離れた床には大きな穴が開いていた。


「ふむ。あの穴から、下の階層に行けそうじゃな」


 キルトさんが言う。


 僕らは、床に空いた大穴へと近づいた。


 18階層の床であり、19階層の天井でもある部分は、10メード近い厚みがあった。更に下、19階層の床までは、そこから30メードほどの距離がある。


「マール、灯りを」

「うん」


 命じられた僕は、『妖精の剣』を走らせる。


「光の鳥たちよ、力を貸して。――ライトゥム・ヴァードゥ」


 ピィイン


 魔法石から3匹の光の鳥たちが飛び出した。


 その魔法の鳥たちは、僕らの頭上を一周すると、僕の意志に従って、そのまま穴の中へと侵入する。


 奥の闇を、光が払う。 


 光鳥の輝きに浮かび上がった19階層は、どうやら、ここと同じ通路のようだ。しかも、ここと同じで崩壊の跡が残っている。


「ふむ」


 頷き、キルトさんはロープを取り出した。


 一方の端を、近くの柱に巻きつけると、もう一方の端は、自分の腰ベルトに固定して、


「わらわが先に入り、様子を見てくる。しばし待て」


 そう言い残して、穴へと入っていった。


 銀色の髪を逆さまにこぼして、穴の縁から19階層の前後左右を目視で確認すると、腕にロープを絡めて速度を調節しながら、そのまま30メードの高さを降下していく。


 無事、床へと着地すると、息を殺して周囲の気配を窺った。


 そのまま、3分ほど。


「よし、1人ずつ降りてこい」


 安全を確認したキルトさんの指示で、僕らもロープで降下することになった。


「ゆっくりですよ、マール」

「うん」


 キルトさんの伝ったロープを手首に巻いて両手で掴み、両足で挟みながら、慎重に降りていく。 


 一応、万が一に備えて、もう1本のロープが僕の腰ベルトに固定されていて、それは上にいるイルティミナさんたちが握ってくれていた。


(ゆっくり、ゆっくり……)


 イルティミナさんのアドバイスを心の中で繰り返し、なんとか降下に成功する。


「よし、いいぞ」


 最後は、キルトさんが僕を抱くようにして、床に下ろしてくれた。


 続いて、ラプト、レクトアリス、ソルティス。


「ひゃあ!?」


 最後のソルティスが、手を滑らせた。


 ちょっと焦ったけれど、命綱のおかげで無事だった。そのまま、プラプラと揺られながら、床まで下りてくる。少女の顔色は、真っ青だった。


 アルンの父娘は、上手だった。


 シュゥゥ…… ギュッ


 2人とも滑るようにロープを降りてきて、床直前でピタッと止まる。


「日頃の訓練の成果だ」


 フレデリカさんは、そう笑った。


 1番最後は、イルティミナさん。


 彼女だけは、命綱を持ってくれる人がいないんだけど、まるで危なげもなく、むしろ颯爽と降りて着地を決めた。

 さすが、何でもできるお姉さん。


 ロープを回収した僕らは、


「よし、行くぞ」


 また8人で隊列を組んで、19階層の通路を歩きだした。


 レクトアリスの第3の目のおかげで、道に迷うこともなく、20階層への階段を見つけ、そして、更に半日ほどで21階層にも到達した。


 そこまで邪魔になったのは、崩落した瓦礫ぐらいだった。

 魔物の姿も、騎士像の姿も、見ることはなかった。


 数時間後、22階層への階段も無事に見つけて、僕らは、そこで野営をした。


(順調すぎて、ちょっと怖いな……)


 イルティミナさんの腕の中で、そんなことを思いながら眠りにつく。


 ――翌日、僕らは22階層に向かった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 チャポッ


 階段を降り切ると、靴底が水を叩いた。


 22階層は、他の階層と違って、水没した区画からの水が流れ込んでいるのか、水たまりがあちこちにあった。


 肌に触れる空気も、じっとりと湿っている。


「……水没していないだけ、マシかな?」

「そうね」


 隣のソルティスと、そんな会話。


 そうして僕ら8人は、足元に水音を響かせながら通路を歩いていく。


 チョロチョロ……


 どこからか、ずっと水の流れる音がしている。


 よく見たら、壁の白い石の隙間から、少しずつ水が染み出していた。壁面を伝った水が、水たまりに流れ込んでいく。


(…………)


『光鳥』の輝きを反射する水たちを眺めながら、僕らは進んだ。


 やがて、30分後。


 僕らの歩いていた通路は、大きな広間に繋がった。


(広いなぁ)


 まるで騎士像たちがいた広間ぐらいの空間だ。


 そして、奥の方に、別の通路への入り口が見えている。


(ルートは、あそこかな?)


 でも、その広間の床には、全面に水が張っていた。ただ、深さは2~3センチほどだから、特に問題はなさそうだ。


 だから、先頭のラプトとレクトアリスは、そのまま歩こうとする。

 でも、


「――待て」


 キルトさんの鋭い声が、それを止めた。


 2人の『神牙羅』は、怪訝そうに振り返る。


 僕とソルティス、ダルディオス家の父娘も同じ表情だ。


 けれど、キルトさんの黄金の瞳は、水浸しになった広間の床をジッと見つめている。

 そして、


「イルナ、そなた、どう思う?」


 最後尾にいる仲間に問いかけた。


 イルティミナさんも前に出て、同じように広間の水を見つめる。


「……可能性を感じますね」

「そうか」


 難しい表情で答える『銀印の魔狩人』に、キルトさんは頷いた。 


 そして彼女は、通路の小さな瓦礫を拾う。


 ヒュッ


 広間の奥に放り投げた。


 チャポッ ジュオ……ッ


(え?)


 水に入った瞬間、石が溶けたように見えた。


 錯覚?

 いや、でも……。


 困惑する僕の耳に、確信したようなキルトさんの呟きが届いた。


「やはり、スライムの群れか」


 スライム?


「スライムって、あの、なんかゼリーみたいな魔物のこと?」

「そうじゃ」


 頷き、


「どうやら、この水の中で、擬態しておるようじゃな」


 と続けた。


(……擬態)


 目を凝らすけれど、そこに広がっているのは、ただの水たまりにしか見えない。


 戸惑う僕に、イルティミナ先生の講義が始まる。


「スライムとは、無色透明の軟体生物です。それゆえ、水中にひそまれると、よほどのことがない限り区別がつきません」

「…………」

「しかしながら、その肉体は、強力な酸です。それは鉄さえも溶かします。もしも知らずに踏み込めば、装備ごと足を溶かされ、逃げられなくなった獲物は、その全身も同じ運命を辿るでしょう」


 そして、1つ間を置いて、


「恐らく、この広間には、そのスライムの集団がいます。数百、或いは数千か……一斉に襲われたのなら、溶けるのも一瞬でしょうね」

「…………」


 ゴクッ


 前世の世界では、有名な雑魚モンスター。


 けど、実際に遭遇してみたら、とんでもなく恐ろしい魔物のようだった。


(……異世界って、怖いなぁ)


 ふと見たら、先頭を歩こうとしていたラプトとレクトアリスの顔色も悪かった。


 いや、気づいた2人の『魔狩人』以外、みんな同じ顔色だった。


 僕は問う。


「そのスライムは、どうやったら倒せるの?」

「火です」


 イルティミナさんは答えた。


「剣などを差しても、刃が溶けるばかりで意味はありません。火で焼くのが、有効な対処法です。……しかし、ここは水の量が多すぎますね。焼く前に、水で火が消えそうです」


 確かに……。


(じゃあ、どうしたらいいんだろう?)


 キルトさんの『雷光斬』の雷を水に流す? いやいや、通路全体が濡れているんだ。下手したら僕らまで感電する。


 見れば、2人の魔狩人も悩ましげな顔だ。


 と、


 トントン


「マール」


 ソルティスに肩を叩かれた。


「ちょうどいいわ。アレ(・・)、やってみましょ?」


 ……アレ?


 キョトンとする僕に気づいて、彼女の美貌が怒ったように頬を膨らませる。


「出発前に、屋敷で教えたでしょ! 忘れたの!?」

「あ」


 そっか、そうだった。


『大迷宮の探索』に出発する前、ダルディオス将軍のお屋敷で、僕はソルティスに新しい魔法を教わっていたんだ。


(うん、あの魔法ならいけるかも!)


 理解した僕に、ようやく少女も満足そうに頷いた。


「なんじゃ、いい手があるのか?」

「うん!」

「まぁ、任せてよね!」


 キルトさんたちに向かって、顔を見合わせた僕らは、笑って大きく頷いたのだった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 広間に入る手前の通路に、僕とソルティスは並んで立つ。


 少し離れて、みんなは後ろだ。


 僕の右手には、『妖精の剣』と『魔法石のついた腕輪』。


 ソルティスの両手には、『魔法石のついた大杖』。 


「じゃあ」

「行くわよ」


 僕らは互いの顔を見て、頷き合った。


 そして、集中する。


 思い出すのは、ディオル遺跡にいた凄まじい数のスケルトンを駆逐した、あの美しい赤い輝きたち。


 ヒュッ ヒュオン


 僕は神気を、ソルティスは魔力を、それぞれの武器に流して、空中に走らせる。


「――炎の蝶よ」

「――赤き破壊の羽ばたきたちよ」


 僕らは紡ぐ。


「――僕らの道を切り拓け」

「――立ち塞がる魔物たちを破壊しろ!」


 そして唱和する。


『――フラィム・バ・トフィン!』


 ヒュオン


 空中に描かれる2つの赤いタナトス魔法文字が完成し、次の瞬間、そこから何百、何千という数の『炎の蝶』が舞い上がった。


 それは広間一面に広がる水へと舞い降りて、


 ドパパパパァアアアアン


 無数の爆発を引き起こした。


 弾け飛ぶ水たち。


 その空中に舞った飛沫にさえも、炎の蝶は殺到し、爆発と共に蒸発させていく。


 ジュオ ジュォオオ


 白い水蒸気が舞い上がる。


 ドパッドパパァアン


 炎の蝶は、止まることなく吐きだされ続け、広間の爆発は続く。


(お?)


 僕は見た。


 広間の水の一部が、不自然に炎の蝶から遠ざかっていくのを。


(あそこも焼け!)


 僕の意志に反応して、炎の蝶は、その不自然な水たちにも襲いかかり、爆散させて、そのまま蒸発させていく。


 ドパパパァアアアン


 連続する爆発音で、鼓膜が痺れる。


 無色透明なスライムたちの蠢きは、もはや誰の目にもわかるほど顕著になった。もう擬態なんてしてる場合じゃないんだ。


 ビュッ ビュッ


 スライムが、『炎の蝶』に向かって、水のような物を吐いた。


 バチュン


 空中で『炎の蝶』が弾ける。


 酸だ。


 強力な酸で、スライムは迎撃を開始したのだ。


(スライムって、酸を吐くこともできるんだね?)


 なんて恐ろしい能力。


 でも、数の暴力とでもいえばいいのか、こちらの『炎の蝶』は、今もタナトス魔法文字から生み出され続けている。何百匹落とされても、新しい何千匹の『炎の蝶』がスライムたちを襲っていく。


 ドパパパァアアン


 白い水蒸気の中で、連続する爆発の炎だけが見え続けた。


 そうして、


「……はっ」

「ふぅぅ」


 1分ほどの『炎の蝶』たちの狂宴は終わった。


 空中にあったタナトス魔法文字が消え、僕らはそれぞれの武器を引く。


 ゆっくりと水蒸気が消える。


 そして、あとには、すっかり床の水がなくなった広間があるだけだった。


 いや、隅に一部残っていたけれど、壁の白い石の隙間から、どこか別の場所へと逃げていった。


(よし!)


 もう安全だ。


 僕はソルティスを見る。


 ソルティスも僕を見た。


 パンッ


 思わず、お互いの右手同士を打ち合わせていた。


「やったね、ソルティス」

「ふふん♪ マールも、なかなかやるじゃない?」


 健闘を称え合い、笑い合う。


 後ろのダルディオス将軍が、あご髭を撫でながら、感心したように唸った。


「ふぅむ、大した子らじゃわい」


 フレデリカさんも頷く。


 キルトさんとイルティミナさんは、どこか誇らしげに微笑み、2人で視線を交わしている。

 そして、


「よし、マールとソルのおかげで道は開けた。先に進むぞ」


 金印の魔狩人の号令で、僕ら8人は、広間の中へと入っていった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


※次回更新は、明後日の金曜日0時以降になります。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 広間一面に水溜りに擬態したスライムなんて、どんなふうに切り抜けるのかと思ったら超絶力技で笑ったw
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