独りぼっちになった女神様の御伽噺
前々から考えていて、他の作品を書いている途中だったので投稿していなかったのですが、もう投稿しちゃいます!どっちの作品もまだまだ序盤しか書けてませんがそんなの関係ないのです!
と、言うわけで投稿します。
遠い遠い昔、破壊と創造の相反する二つの力を持つ女神様がいました。しかし、女神様は自分の破壊の力を忌み嫌い創造の力のみを使っていました。ある日女神様は一人の少女に出会いました。少女は女神様のことを知りませんでしたが他の人間に接するのと同じ様に接しました。そのうち少女と同じ街の人間とも交流するようになりました。女神様は人間が大好きになりました。
しかし、そんな時間も長くは続きませんでした。
ある日、山向こうにある街に行商に行っていた青年が大慌てで帰って来ました。青年は隣国が攻めてきたと言うのです。隣国は新しい王が即位たばかりでした。その王は支配欲が強くとても好戦的な人でした。その事は皆噂に聞いていたのですぐに信じました。街の人たちは避難することにしました。皆は女神様も一緒に逃げようと提案しましたが女神様は断りました。例え隣国に蹂躙されようともその地は何千年も住み続けた故郷なので離れたくなかったのです。
そして、街の人達が避難する日が来ました。女神様は皆が山を越えるまでは付き添うことにしていました。皆が街を出ようとした時です。森から隣国の軍の兵士達が出てきたのです。皆驚き別の道から逃げようとしましたがその全ての道から兵士達が出て来たのです。街は完全に包囲されてしまいました。皆は酷く怯えていました。このままでは自分達は殺され何もかも奪われてしまうと考えていました。その時です。最初に女神様に出会った少女が突然平伏し言いました。
「お願いです。私は死んでも構いません。だからどうかこの街を・・・皆を守ってください。」
それを聞いた女神様は創造の力を使い街を囲む大きな壁を造りました。これでもう安心だ。そう思った時です。大きな音をたてて壁が崩れ始めました。皆驚きましたが一番驚いたのは女神様自身でした。女神様が創造の力で作り出したものは何があろうと女神様以外は干渉することは出来ないはずだからです。もし干渉出来るとしたら破壊の力を持つ神しかいません。
女神様は破壊の神様を知っていました。数千年前に戦争が起きる様に人間を唆し、それを知り止めに入った神々を返り討ちにし、多くの神々を巻き込む戦争に発展した事がありました。長い戦いの末、破壊の神は殺されてしまいました。しかし、神にとって死は大したことではないのです。例え死んだとしても数千年もすれば復活するからです。破壊の神が復活しない方法を神々は探しましたが結局見つかりませんでした。それからと言うもの多くの神々はいつ復活するかも分からない破壊の神に怯え地上から去ってしまいました。それどころか同じ破壊の力を持つ女神様の事も恐れ避ける様になったのです。それ以来女神様は一人ぼっちになり、前よりも破壊の力が嫌いになりました。
破壊された壁の向こうに居たのは破壊の神でした。女神様は自分が時間を稼ぐからその間に逃げる様に言って馬車を作り出しました。皆は馬車に乗り逃げました。途中で兵士達に捕まらないように狼や熊等を生み出し皆を守るように命じました。皆が見えなくなった頃女神様は破壊の神になぜ隣国の兵士達と攻めてきたのか問いました。すると破壊の神は獰猛な笑みを浮かべて言いました。
「理由など無い。ただ面白そうだから力を貸しているのだと。」
女神様は怒りました。そんな事で自分の故郷は蹂躙され大好きな皆が危機に晒されているなんて。言い返そうとした時後ろの方から悲鳴が聞こえました。まさかと思い女神様は悲鳴が聞こえた方へ走りました。そこでは皆の護衛に付けた動物達が殺され街の人も数人が殺され残りの人も傷つき殺されそうになっていました。女神様に気づいた人達が叫びました。
「助けて。死にたくない。」
守らなければ
そう強く思い、皆の元に駆け寄ろうとした女神様の後ろから破壊の神の声が聞こえます。
「脆弱な人間など守って何になる。殺せ。壊せ。何もかも全てを。この世界は神のものだ。人間などただの玩具に過ぎん。」
その言葉が合図だったかのように兵士が少女に剣を突き立てました。それは女神様に最初に出会い皆を守って欲しいと願った少女でした。
その瞬間女神様は自分の心に暗く冷たいドロドロとした感情が湧いてきたのを感じました。それは破壊の神に対する憎悪でした。
早くあいつを壊さなければ。
そう思った瞬間女神様の体から破壊の力が溢れ出しました。白い髪は黒く染まり、背中には黒い大きな羽が生え瞳孔は獣の様に鋭くなり皮膚には黒い模様が浮かび上がりました。女神様が手をかざすと大きな槍が出てきました。槍を手に取り空に向け
「滅びを」
と言って破壊の神に向かって振り下ろしました。すると振り下ろした方向に向かって黒い波が降り注ぎました。黒い涙が触れた所にあったはずの森が消えていました。波に触れるギリギリのところで避けた破壊の神はこれを見て笑い女神様に言いました。
「うぬも我と同じ破壊の力を持っておるではないか。どうだ?我と共に全てを破壊せんか?」
しかし、女神様にその言葉は届きません。一気に間合いを詰め槍を突き出しました。破壊の神はそれを避け腕を掴みますが女神様はもう片方の手で顔面を殴りました。その衝撃で破壊の神は吹っ飛びました。さらに追い討ちをかけようと吹っ飛んだ破壊の神の上に飛び破壊の神目掛けて槍を突き立てました。槍は破壊の神の心臓に刺さりました。槍が抜けないように押さえ、破壊の神の体を踏みつけ固定しました。槍を媒介にして破壊の神の体に破壊の力を注ぎ始めました。すると破壊の神の体は見る見るうちに粉々に崩れていきます。完全に崩れ去る前に破壊の神が言いました。
「復活したてで全力が出せぬとは言えたった一人で我を倒すとは。愉快なり。我を楽しませた礼として今回は大人しく負けてやろう。だが次はこの世界が壊れるまで破壊し合おうぞ。」
破壊の神が消えると槍は消え女神様の姿は元の美しい白に戻りました。破壊の力を使い果たした女神様は疲れその場に座り込み辺りを見渡し驚きました。街の周りにあったはずの森が無くなり更地になっていたのです。街があったはずの場所には女神様が作った馬車だけがありました。女神様は急いで馬車に駆け寄りました。近くに行くと馬車の中から街の人達が恐る恐る出て来ました。それを見た女神様は安堵し近づこうとしました。すると誰かが
「化け物!」
と叫びました。まさかまだ破壊の神が生きているのではと思い周囲を見ますが誰もいません。化け物はどこにいるのか聞こうと近づく女神様にまた誰かが言いました。
「近寄るな!化け物!」
街の人達はとても怯えていました。女神様は気付きました。街の人達は女神様の事を言っているのだと。誤解を解こうと女神様が口を開くと誰かが石を投げてきました。それをきっかけに何人もの人が化け物と叫びながら女神様に石を投げつけ始めました。女神様はとても傷つきました。石を投げられたからではありません。大嫌いな破壊の力を使ってまで守った人達に化け物と言われたからです。女神様が傷つき呆然とし、されるがままになっている間に街の人達は馬車に乗っていなくなりました。
女神様は悲しみ街の人達に憤りました。都合のいい時だけ助けを乞い自分達に害を及ぼすかもしれない力を持っていると知ると手の平を返し罵倒し遠ざけようとする。破壊の神の言う通り人間など守る価値もない。破壊した方が良いのではないか、と思いました。ですが、実行する気にはなりませんでした。人間に憤る反面大好きな気持ちが僅かに残っていたからです。もしあの少女が生きていたら違う結果になっていたのではないか。どうしてもそう考えてしまうのです。
その後、街の人達が戻ってくる事はありませんでした。破壊の神が居なくなった後隣国は進軍を辞め撤退した様ですが独りぼっちになった女神様は知りませんでした。
数年が経ちました。女神様の人間に対する怒りは薄れました。そしてまた人間と友達になりたいと思いました。その反面、また化け物と言われるのではないかと言う恐れもありました。何度も何度も考えた結果、女神様は街を作ることにしました。まず、更地になった場所の一部を除いた場所に森を作りました。森を作らなかった所には街を作りました。もしあの時の様に隣国が攻めてきても大丈夫なように街を囲む壁を造り、四ヶ所に門を付けました。そして街の中央に女神様が住むためのお城を造りました。お城の周りにも壁を造りましたが街を囲むものとは違い、門がありませんでした。こうすれば誰もお城に近づけず女神様に出会うことも出来ないと思ったからです。出会えないから友達になることは出来ませんが、お城から見守ることは出来ます。それだけで充分でした。
それから、女神様は人間達がこの街を見つけて住む日を待ち続けましたが誰も来ませんでした。あの騒動の後、人間達はこの地を化け物が住む呪われた土地と言い、寄り付かなくなったからです。それを知らない女神様はいつまでもいつまでも待ち続けました。
もう一つの作品の方を優先しているので投稿の間隔がかなり開くと思いますがご了承ください。もしよかったら、もう一つの作品 " 魔王に召喚されました!? "も見てやってください(*´・ω・`)
誤字、脱字、これおかしくない?、などありましたら是非教えて下さい!あと、一応ジャンルはローファンタジーにしているんですけど、もし、これローファンタジーじゃなくて〇〇だよ?、などあれば教えて下さい!