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師走を知らず

執筆日:2015年12月9日

お題 :遅い関係

 夏には向日葵でいっぱいになる家の庭も、十二月ともなればうら寂しく、木枯らしの通り道になっている。

 ただ、今年は暖冬の影響で、庭の隅にある楓がちょうど見頃を迎えており、鮮やかに色づいていた。

 とくにすることもない日曜日の午後。

 西日が差し込む一階の居間。畳にごろりと仰向けになって、私は逆さまの楓を眺めていた。

 師走師走というけれど、暇なのである。

 学校の宿題は午前中に終わらせた。家族は全員出かけていて、家には私ひとり。飼い猫のサスケもどこかへ散歩に出ているらしい。テレビをつけても、何度も見た刑事ドラマの再放送くらいしか興味をそそるものがなく、しかし既にトリックも犯人も分かっているドラマを見る気は起きない。何冊か積んでいた本も、平日のうちに一気に読んでしまった。

「することがぁ、ないぃ~」

 暇すぎて、意味もなく歌ってみる。誰もいない母屋に、歌声は存外によく響いた。少し恥ずかしくなる。

 することがないので、逆さまのまま庭を眺め続ける。

 じっと見ていると、ゆっくり、ゆっくり、日の光が傾いてくるのが分かった。楓の影が徐々に動いてきて、一分、五分、十分と、分刻みで表情が変わる。意味もなくその変化に魅せられて、私はしばらく、影の動きを観察していた。

 コチ、コチ、コチ。壁にかかった古い時計が、ゆるやかに針を進める音がする。

 やがて、影の観察にも飽きてくると、私はごろん、ごろんと転がって、縁側へ移動した。ガラス戸を閉めているとはいえ、板張りの上は畳よりもひんやりとしている。さすがに体を起こし、胡坐をかいて再び庭を眺めてみた。

 さっきよりも、少し薄暗い。だんだんと日暮れが近づいていた。

 けれど、ちらりと時計を見てみると、最後に時刻を確認したときから三十分も経っていない。楽しい時間は早く流れ、退屈な時間は遅いというナントカの法則を思い出した。

「やっぱり暇なのだな~」

 また歌ってみる。ガラスに息がかかって、白く曇った。外はそれなりに寒いらしい。

 日はどんどん陰ってくる。時計は遅々として進まない。

 暗くなる世界と、進まない時の境にいると、なんだか変な感じがした。

 外が真っ暗になれば、もう寝る仕度をしなければならない気がするけど、時計の上ではまだまだ寝る時間には早い。遅くて早く、早くて遅く。どっちつかずの困った季節。

「暇なのです~」

 十二月の日曜の午後に、私は暇で暇で仕方がないのである。

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